影法師にラブコール!(krk)※抜け番あり
DREAM
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IH優勝という輝かしい成績で修めた洛山男子バスケ部。もちろん女子バスケ部も優勝したらしい。さすが洛山。強豪校と言われるわけだ。
しかし、まだ難関が立ちふさがっていた。それは。
「まゆゆ助けてえええええ夏休みの課題が!夏休みの課題が終わってません助けてええええええ!!」
「ちなみにどれくらい終わってないんだ」
「全部!!」
「お前この夏休み一体何してたんだよ…」
「部活してたよね?!みんな部活してたよね?!えっ、まさか、そんな、みんな、終わって…?!」
体育館に来るなり、すでにアップを始めていたまゆゆに突撃して嘆くも、肩をすくめられるので、まさかと私は実渕先輩達を振り返る。三人とも、ぐっと親指を立てた。
「最初の一週間で終わらせたぜ!」
「オレはちょうど昨日終わったな」
「アタシは休み明けのテストの時に慌てないように進めてるから、明日には終わるわね」
「ちなみにオレももう終わってる」
「いやあああああなんでみんな要領良いのおおおおお!!葉山先輩とか絶対『レオ姉宿題写させてー』っていうタイプじゃないすかああああ!!」
「オレのイメージ!!」
「去年はそうだったわね」
「そうだったな」
「そうだったけど!今年はちゃんと終わらせたもんねー!」
がくり、と床に四つん這いになる。休み明けのテストもだが、課題が未提出になるのはとてもまずい。洛山はとても厳しい学校で、課題の未提出やテストの点数が低いと補習を入れられるのだ。部活をやっている人達には死活問題であり、みんな気をつけている。なのに!なぜ私は忘れてしまっていたのか!!これが赤司に知られたら…!!
「課題が、終わっていない、だと」
ですよねー!こうなるよねー!
案の定、話をばっちり聞いていたらしい赤司がゆらりと魔王オーラ全開でボールを片手に現れた。やばい、あれ兄貴がぶち切れた時と同じオーラじゃん。
死を覚悟していると、赤司はボールをドリブルし始める。
ダンッ、ダンッ、ダンッ
「IHで陽泉と試合して、今後キセキ獲得校との試合のためにスキルアップが必要だとわかった」
ダンッ、ダンッ、ダンッ
「そして優姫の3Pで真太郎対策を万全にする必要がある。故に、補習に時間を割いている余裕はない」
ダンッ!!
「練習後、全員で優姫の課題を終わらせるため勉強合宿を行う」
力強いドリブルの後、赤司はそのまま3Pを決める。ドリブル並の力強い言葉に、まずまゆゆが反論しようと手を上げるも、黙殺される。
赤司の眼が言っている。
僕の言うことは絶対だ、頭が高いぞ。そして優姫殺す、と。
練習後につれて行かれたのは、なんと赤司の家だった。赤司曰く別宅らしい。金持ちって怖い。
「寮にも自室はあるが、広くて静かな方が勉強しやすいだろう」
ということらしい。そういえばたまに寮に帰っていくよね。なるほど納得だ。
赤司の部屋に案内され、中に入ると広々とした空間で私達はこれが金持ちか、と貧富の差を実感した。
「ていうかマジで広っ!ベッドでけー!」
「畳のイメージだったけど、フローリングなんだな」
「ってアラ、優姫ちゃん何してるの?」
「エロ本探してます!!」
「ベッドの下は定番だけど、さすがに昨今のラノベでもんなとこに置いてねーよ。隠すなら図鑑とかの中だろ」
「なるほど!!」
「そんな俗物的なものはこの部屋にはない」
「ぎゃいん!!」
足払いをかけられ、綺麗なフローリングに頭から落ちる。痛みに悶えている私を放置して、赤司は広いテーブルの上に私の鞄の中身をぶちまけた。
ほぼ真っ白なノートをめくり、溜息を吐く。心なしか頭を抱えているように見える。
「まさかこれほどとはな…。小太郎は世界史、永吉は日本史、玲央は古文を見てやってくれ。千尋は物理を頼む」
「残りはどうすんだ」
「僕がやろう」
「ひえっ」
「幸い明日の練習は午後からだ。今から十一時までに四割終わらせる。睡眠時間を六時間確保し、起床後朝食を取ったら残り六割を一時までに終わらせる」
それって、起きてる間は常に課題をしてるってことで。
ぶるぶる震えながら赤司を見ると、わあびっくり兄貴と同じ怒りの笑顔だ!
「終わらなかった場合、その携帯を踏みつけて壊す」
「全力でやらせていただきます!!!」
そして地獄の勉強合宿(別名馬鹿優姫の課題を片付けて優姫もぶん殴る会)が始まった。始まってしまった。
時計の針が、十一時を指した。タイマーをセットしていたらしく、ピピッと赤司の携帯が音を鳴らした。停止を押さえ、テーブルの上を見下ろして、ふう、と溜息。
「三割半、といったところか。明日は三十分早く起床するとしよう」
「ひえええええ」
悲鳴をあげるもギロリと睨まれては反論できない。申し訳ありません、でも結構頑張ったから許してください。すぐさま土下座すると、まゆゆが「プライドゼロかよ」と呆れていた。
「さて、これから布団を用意するが、枚数が足りなくてね。雑魚寝でも構わないかい?」
「おう、オレはいいぜ」
「オレもオレもー!合宿の時みたいで楽しーし!」
「オレは寝られればどこでも」
「アタシも大丈夫だけど、優姫ちゃんはどこで寝るの?」
実渕先輩に言われて、てっきりみんなと一緒に雑魚寝だと思っていた私は驚いて顔を上げる。問われた赤司はというと、とくに気にもしておらず、すっと指を指す。その先は赤司のベッドだ。
「優姫にはそのベッドを使ってもらうつもりだ」
「家主のベッドを私が使うの?!いいって!赤司のベッドなんだし、赤司使いなって!私はまゆゆと暖を取り合って寝ます」
「優姫はベッドな。それじゃ布団取りに行くか。手伝うから行こうぜ赤司」
「ありがとう千尋。それじゃあ永吉にもついてきてもらおうかな」
「おー」
またスルーされた!!まゆゆ手厳しい!!
赤司と根武谷先輩を連れて、まゆゆはさっさと部屋を出て行ってしまった。まゆゆのツンに項垂れていると、残された葉山先輩と実渕先輩がによによと近寄ってきた。
「また振られちゃったわねー優姫ちゃん」
「つーか、一緒の布団で寝るの緊張しねーの?この間あーん、で照れてたじゃん」
「あっ、あれはまゆゆがいきなりデレたからで、一緒に寝るのはむしろバッチコイって感じで!」
「ほんとにー?だってさ、一緒に寝るってことはこーんなに近いんだよ?」
そう言って葉山先輩が、私の肩を掴んで引き寄せた。目の前には、葉山先輩の顔。改めて見ると、葉山先輩もイケメンだ。猫系イケメン。葉黛も葉赤も最高じゃねーの。
「ってふぎゃっ!!」
「ぎゃいん!!」
まじまじと葉山先輩の顔を見ていたら、まず葉山先輩が猫のような悲鳴を上げた。布団に潰された、と気づいた瞬間私も布団に埋もれる。藻掻いてなんとか顔を出したら、葉山先輩がまゆゆに十文字固めを食らっていた。いつそうなった。私が布団に埋もれていた間に何があった。
「あそこは放っておいて、優姫ちゃんはもう寝ましょ。明日もスパルタよ~?」
「うぐうっ!!わかりました…おとなしく寝ます…明日赤司の髪が爆発していますように」
「いいから寝ろ」
「痛い!!普通にチョップされた!!」
深夜、ふと目が覚めた。暗闇の中に、小さな灯りが見えた。時刻は四時。起きるにはまだ早く、外も暗い。ならこの灯りは、勉強机のライトの灯りだろうか。誰か座っていて、何か書いている。
「…あかし?」
小さな声で名前を呼んだら、気づいてくれたらしく赤司が振り返る。
「起こしてしまったか?」
「そうじゃないけど、なんか目が覚めて…何してるの?」
「キセキ獲得校との試合のために今後の練習メニューを考えていた。陽泉は…正直、拍子抜けだったけどね」
それはきっと、紫原君が全力じゃなかったからだろう。
そういえば、赤司に聞いてみようと思っていたんだった。
「赤司はさ、どんな中学生活送ってたの?」
「…どうしてそんなことを聞くんだ」
「なんか、さつきちゃんも紫原君も、赤司を見る目が違うっていうか…よくわかんないんだけど、知ってる人が変わっちゃった、みたいな視線っていうか…」
はっきりとこうとは言えないんだけど、そんな感じの雰囲気を感じた。赤司は少し間を置いて、それからまた私の方を向いた。
「もしこの僕が、さつきや敦の知らない僕だったとしたら、どうする?」
「いや私この赤司しか知らないから、どうもしないけど」
思わず即答したら、赤司が目を瞬かせた。赤司の珍しい表情に、レア度を感じたけど、段々眠気がやってきて薄ぼんやりとした意識の中でしゃべり続けた。
「私の知ってる赤司はねー、私除く女子に紳士で、自分にも他人にも厳しくて、バスケ馬鹿で、んで、面倒見が良い赤司君です。わざわざ私のためにありがとね」
「…部の勝利のためだよ」
「えへへー。そうだね、赤司だけじゃなくて、みんなで勝つためだよね。起きたら、私めっちゃ頑張るね…おや、すみ…」
スヤスヤと寝息が聞こえる。言い逃げをして眠ってしまったようだ。ふと雑魚寝をしている千尋達を見るも、彼らも狸寝入りとかではなく本当に眠っている。それもそうだ。部活は全力のメニューを組んでいるし、今日も休む間もなく勉強合宿なんて名前で働かせたのだ。身体は休息を求めている。もちろん、それは僕もだが。
なぜこんな夜中に目が覚めて、IHのことを思い出していたのか。きっと、今頃になって皆の視線を思い出したからだ。僕を、知らない人間を見る目をした、かつてのチームメイト達のことを。
僕は、赤司征十郎。弱い『僕』が生み出した、勝利を渇望する赤司だ。その赤司しか知らない優姫は、このままでいいと言った。僕は、赤司なのだと。
(部の勝利のため、か)
僕がそんなことを口にするとは、思わなかった。いつの間にか、僕は変わっていたらしい。けど、不思議と悪い気はしなかった。それはかつて、『オレ』が求めた勝利の形だったからだろうか。
「うふふ……まゆゆったら……赤司ともうそんなことまで……」
「………」
とりあえず、起きたら優姫には新しく覚えた技を食らわせることにしよう。
しかし、まだ難関が立ちふさがっていた。それは。
「まゆゆ助けてえええええ夏休みの課題が!夏休みの課題が終わってません助けてええええええ!!」
「ちなみにどれくらい終わってないんだ」
「全部!!」
「お前この夏休み一体何してたんだよ…」
「部活してたよね?!みんな部活してたよね?!えっ、まさか、そんな、みんな、終わって…?!」
体育館に来るなり、すでにアップを始めていたまゆゆに突撃して嘆くも、肩をすくめられるので、まさかと私は実渕先輩達を振り返る。三人とも、ぐっと親指を立てた。
「最初の一週間で終わらせたぜ!」
「オレはちょうど昨日終わったな」
「アタシは休み明けのテストの時に慌てないように進めてるから、明日には終わるわね」
「ちなみにオレももう終わってる」
「いやあああああなんでみんな要領良いのおおおおお!!葉山先輩とか絶対『レオ姉宿題写させてー』っていうタイプじゃないすかああああ!!」
「オレのイメージ!!」
「去年はそうだったわね」
「そうだったな」
「そうだったけど!今年はちゃんと終わらせたもんねー!」
がくり、と床に四つん這いになる。休み明けのテストもだが、課題が未提出になるのはとてもまずい。洛山はとても厳しい学校で、課題の未提出やテストの点数が低いと補習を入れられるのだ。部活をやっている人達には死活問題であり、みんな気をつけている。なのに!なぜ私は忘れてしまっていたのか!!これが赤司に知られたら…!!
「課題が、終わっていない、だと」
ですよねー!こうなるよねー!
案の定、話をばっちり聞いていたらしい赤司がゆらりと魔王オーラ全開でボールを片手に現れた。やばい、あれ兄貴がぶち切れた時と同じオーラじゃん。
死を覚悟していると、赤司はボールをドリブルし始める。
ダンッ、ダンッ、ダンッ
「IHで陽泉と試合して、今後キセキ獲得校との試合のためにスキルアップが必要だとわかった」
ダンッ、ダンッ、ダンッ
「そして優姫の3Pで真太郎対策を万全にする必要がある。故に、補習に時間を割いている余裕はない」
ダンッ!!
「練習後、全員で優姫の課題を終わらせるため勉強合宿を行う」
力強いドリブルの後、赤司はそのまま3Pを決める。ドリブル並の力強い言葉に、まずまゆゆが反論しようと手を上げるも、黙殺される。
赤司の眼が言っている。
僕の言うことは絶対だ、頭が高いぞ。そして優姫殺す、と。
練習後につれて行かれたのは、なんと赤司の家だった。赤司曰く別宅らしい。金持ちって怖い。
「寮にも自室はあるが、広くて静かな方が勉強しやすいだろう」
ということらしい。そういえばたまに寮に帰っていくよね。なるほど納得だ。
赤司の部屋に案内され、中に入ると広々とした空間で私達はこれが金持ちか、と貧富の差を実感した。
「ていうかマジで広っ!ベッドでけー!」
「畳のイメージだったけど、フローリングなんだな」
「ってアラ、優姫ちゃん何してるの?」
「エロ本探してます!!」
「ベッドの下は定番だけど、さすがに昨今のラノベでもんなとこに置いてねーよ。隠すなら図鑑とかの中だろ」
「なるほど!!」
「そんな俗物的なものはこの部屋にはない」
「ぎゃいん!!」
足払いをかけられ、綺麗なフローリングに頭から落ちる。痛みに悶えている私を放置して、赤司は広いテーブルの上に私の鞄の中身をぶちまけた。
ほぼ真っ白なノートをめくり、溜息を吐く。心なしか頭を抱えているように見える。
「まさかこれほどとはな…。小太郎は世界史、永吉は日本史、玲央は古文を見てやってくれ。千尋は物理を頼む」
「残りはどうすんだ」
「僕がやろう」
「ひえっ」
「幸い明日の練習は午後からだ。今から十一時までに四割終わらせる。睡眠時間を六時間確保し、起床後朝食を取ったら残り六割を一時までに終わらせる」
それって、起きてる間は常に課題をしてるってことで。
ぶるぶる震えながら赤司を見ると、わあびっくり兄貴と同じ怒りの笑顔だ!
「終わらなかった場合、その携帯を踏みつけて壊す」
「全力でやらせていただきます!!!」
そして地獄の勉強合宿(別名馬鹿優姫の課題を片付けて優姫もぶん殴る会)が始まった。始まってしまった。
時計の針が、十一時を指した。タイマーをセットしていたらしく、ピピッと赤司の携帯が音を鳴らした。停止を押さえ、テーブルの上を見下ろして、ふう、と溜息。
「三割半、といったところか。明日は三十分早く起床するとしよう」
「ひえええええ」
悲鳴をあげるもギロリと睨まれては反論できない。申し訳ありません、でも結構頑張ったから許してください。すぐさま土下座すると、まゆゆが「プライドゼロかよ」と呆れていた。
「さて、これから布団を用意するが、枚数が足りなくてね。雑魚寝でも構わないかい?」
「おう、オレはいいぜ」
「オレもオレもー!合宿の時みたいで楽しーし!」
「オレは寝られればどこでも」
「アタシも大丈夫だけど、優姫ちゃんはどこで寝るの?」
実渕先輩に言われて、てっきりみんなと一緒に雑魚寝だと思っていた私は驚いて顔を上げる。問われた赤司はというと、とくに気にもしておらず、すっと指を指す。その先は赤司のベッドだ。
「優姫にはそのベッドを使ってもらうつもりだ」
「家主のベッドを私が使うの?!いいって!赤司のベッドなんだし、赤司使いなって!私はまゆゆと暖を取り合って寝ます」
「優姫はベッドな。それじゃ布団取りに行くか。手伝うから行こうぜ赤司」
「ありがとう千尋。それじゃあ永吉にもついてきてもらおうかな」
「おー」
またスルーされた!!まゆゆ手厳しい!!
赤司と根武谷先輩を連れて、まゆゆはさっさと部屋を出て行ってしまった。まゆゆのツンに項垂れていると、残された葉山先輩と実渕先輩がによによと近寄ってきた。
「また振られちゃったわねー優姫ちゃん」
「つーか、一緒の布団で寝るの緊張しねーの?この間あーん、で照れてたじゃん」
「あっ、あれはまゆゆがいきなりデレたからで、一緒に寝るのはむしろバッチコイって感じで!」
「ほんとにー?だってさ、一緒に寝るってことはこーんなに近いんだよ?」
そう言って葉山先輩が、私の肩を掴んで引き寄せた。目の前には、葉山先輩の顔。改めて見ると、葉山先輩もイケメンだ。猫系イケメン。葉黛も葉赤も最高じゃねーの。
「ってふぎゃっ!!」
「ぎゃいん!!」
まじまじと葉山先輩の顔を見ていたら、まず葉山先輩が猫のような悲鳴を上げた。布団に潰された、と気づいた瞬間私も布団に埋もれる。藻掻いてなんとか顔を出したら、葉山先輩がまゆゆに十文字固めを食らっていた。いつそうなった。私が布団に埋もれていた間に何があった。
「あそこは放っておいて、優姫ちゃんはもう寝ましょ。明日もスパルタよ~?」
「うぐうっ!!わかりました…おとなしく寝ます…明日赤司の髪が爆発していますように」
「いいから寝ろ」
「痛い!!普通にチョップされた!!」
深夜、ふと目が覚めた。暗闇の中に、小さな灯りが見えた。時刻は四時。起きるにはまだ早く、外も暗い。ならこの灯りは、勉強机のライトの灯りだろうか。誰か座っていて、何か書いている。
「…あかし?」
小さな声で名前を呼んだら、気づいてくれたらしく赤司が振り返る。
「起こしてしまったか?」
「そうじゃないけど、なんか目が覚めて…何してるの?」
「キセキ獲得校との試合のために今後の練習メニューを考えていた。陽泉は…正直、拍子抜けだったけどね」
それはきっと、紫原君が全力じゃなかったからだろう。
そういえば、赤司に聞いてみようと思っていたんだった。
「赤司はさ、どんな中学生活送ってたの?」
「…どうしてそんなことを聞くんだ」
「なんか、さつきちゃんも紫原君も、赤司を見る目が違うっていうか…よくわかんないんだけど、知ってる人が変わっちゃった、みたいな視線っていうか…」
はっきりとこうとは言えないんだけど、そんな感じの雰囲気を感じた。赤司は少し間を置いて、それからまた私の方を向いた。
「もしこの僕が、さつきや敦の知らない僕だったとしたら、どうする?」
「いや私この赤司しか知らないから、どうもしないけど」
思わず即答したら、赤司が目を瞬かせた。赤司の珍しい表情に、レア度を感じたけど、段々眠気がやってきて薄ぼんやりとした意識の中でしゃべり続けた。
「私の知ってる赤司はねー、私除く女子に紳士で、自分にも他人にも厳しくて、バスケ馬鹿で、んで、面倒見が良い赤司君です。わざわざ私のためにありがとね」
「…部の勝利のためだよ」
「えへへー。そうだね、赤司だけじゃなくて、みんなで勝つためだよね。起きたら、私めっちゃ頑張るね…おや、すみ…」
スヤスヤと寝息が聞こえる。言い逃げをして眠ってしまったようだ。ふと雑魚寝をしている千尋達を見るも、彼らも狸寝入りとかではなく本当に眠っている。それもそうだ。部活は全力のメニューを組んでいるし、今日も休む間もなく勉強合宿なんて名前で働かせたのだ。身体は休息を求めている。もちろん、それは僕もだが。
なぜこんな夜中に目が覚めて、IHのことを思い出していたのか。きっと、今頃になって皆の視線を思い出したからだ。僕を、知らない人間を見る目をした、かつてのチームメイト達のことを。
僕は、赤司征十郎。弱い『僕』が生み出した、勝利を渇望する赤司だ。その赤司しか知らない優姫は、このままでいいと言った。僕は、赤司なのだと。
(部の勝利のため、か)
僕がそんなことを口にするとは、思わなかった。いつの間にか、僕は変わっていたらしい。けど、不思議と悪い気はしなかった。それはかつて、『オレ』が求めた勝利の形だったからだろうか。
「うふふ……まゆゆったら……赤司ともうそんなことまで……」
「………」
とりあえず、起きたら優姫には新しく覚えた技を食らわせることにしよう。