天使と奏でるシンフォニー(TOX2)
DREAM
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私がいたのは、ドヴォールという街で。
ちょうどそこに列車事故に巻き込まれた人達が運ばれてきたのだった。
04.負債は道連れと共に
自然工場アスコルドへ列車が突っ込んだことはすぐに列車テロによるものだと発表された。
文明の発達したエレンピオスでは当たり前のようにあるテレビで、ニュースは忙しなくそのことを流している。
アルクノアめ…同じ人間同士なんだから仲良くしろっての…!
主張だけならまだしも、こんな大勢の人を巻き込むなんて間違ってる!
「ユウキ!!」
「おう?!」
駅のテレビを見ながら憤怒していたら、いきなり腕を掴まれて無理やり振り向かされる。
目に入ってきたのは、心配していたジュードくんだった。
「じゅ、ジュードくんんんんん!!わああんよかった無事だったああああ!!」
「わ、わわっ、そ、それはこっちのセリフで…お、落ち着いてってばユウキっ」
ガバっと抱きついてわんわん泣いたら、ジュードくんは慌てながらもぽふぽふと私の背中を撫でてくれた。
よかった…怪我もひどくないみたいで本当によかった。
しばらくジュードくんに抱きついて困らせて、私は離れて周りを見渡す。
「ジュードくん、ルドガーとエルは?」
「あ、うん…。少し怪我の具合がひどくて…」
「えっ?!まさか列車事故に巻き込まれて…?!」
「…大丈夫だよ。さっきクランスピア社の医療エージェントの方が来てくれたから」
クランスピア社。とはさっきの社長さんのとこの会社か。
思えば、世界情勢にほとんど目を向けなかった私は世間についていけてなかったりする。
GHSもジュードくんからもらった物だし。
とはいえ、ちゃんと無事かどうか確認しないと。
ユリウスさんにも頼まれたことだし!
「二人のとこ案内して、ジュードくん!」
「僕も今から行くところ。一緒に行こうか」
「うん!」
「ところで、ユウキはどこにいたの?気がついたら僕達変なところにいて…」
「ああ、それならルドガーもいるときに説明するね。私も今軽くパニック状態でさー」
「リドウさん、ルドガー達の様子はどうですか?」
「あっ!ルドガー!!わあああよかったよおおおお!!」
「わっわわっ!」
また裏路地に入ると、中の酒場に案内されて本当にここにいるのかと疑ってしまった。
が、入るとそこにはルドガーが立っていて、私は半泣きでルドガーに抱きついた。
「怪我大丈夫?!痛いとこない?!ああもうルドガー可愛いよおおおおお!!」
「え、え、え?!」
「ユウキ、ルドガーが困ってるし、病み上がりなんだから少し落ち着こうか。ね?」
「ぎゃんっ!」
ばしっとチョップをされて、私はその場に蹲る。
うう…最近マジでジュードくんが鬼嫁に…でもジュードくんも可愛いよ!
とは空気を読んで言わないでおいた私は大人になったと思われる。
「騒がしい子だね」
「ああ、すみませんリドウさん」
「いいや、別にいいよ。で、二人とも問題なく治療完了」
「さすがクランスピア社の医療エージェントですね」
「俺の医療黒匣が精霊術より優れてるだけだよ」
と、あのリドウとかいう男は嫌味を言ってきたではないか。
ガバっと起き上がってリドウに突っかかろうとしたらルドガーに後ろから両腕を掴まれて拒まれた。
くそー!あの男ぶん殴らせてよおおおお!!
ジュードくんも少し表情を歪めるも、何も返さずにいたら不意にGHSが鳴った。
「あ、レイア。うん、僕もユウキも無事だよ。…ごめん、ちょっと」
そう言ってジュードくんは酒場を出ていった。
残された私達の間には嫌な空気が流れている。主にこのリドウってやつのせいだ。絶対そうだ。
「……」
「あ、エルも無事だ~…よかったよ~」
「ああ…ユウキは大丈夫だったのか?」
「おうよ!あ、そういえばユリウスさんから色々話聞いたからさ、その話を…って、あれ、その時計」
「これは…兄さんのだ」
座席に寝ているエルの側、テーブルの上に時計が置いてあった。
それをルドガーは手に取り、じっと見つめる。
そういえば、エルも時計がどうのって言ってたような…。
「うう…ん…?」
「あ、エル起きた!」
「ユウキ…?…あ!エルの時計!返して!」
目を覚ましたエルは飛び起きると、ルドガーの持ってる時計を奪おうとぴょんぴょん跳ねて手を伸ばす、も、身長的にも届かず取り返せないでいた。
ルドガーもこれは兄のだと主張して返さない。
「違う!パパがエルにくれたのだってばっ!」
「それよりも、怪我大丈夫なのか?」
「え…うん…へいき…」
「そっか」
と言って気をそらしたところでルドガーはスっと時計をしまってしまった。
なんたる手腕…おそるべし駅のコック…!
エルはハッと気づいて、ルドガーをぽかぽかと叩き始める。
「エルの時計とったー!!ドロボー!!」
「お取り込み中すまないが、二人合わせて千五百万ガルドだ」
「せっ、千五百万ガルドおおおおお?!」
「治療費さ。二人の命の値段」
エルの腕を掴んで、リドウは急にそんなことを言い出したではないか。
驚いて目を見開くルドガーとエル、そして叫んでしまった私。
命の値段だと、そう言われると反論できやしない。
「エル…お金もってない…」
「稼ぐ気さえあれば、いくらでも金をつくる手段はあるんだよ。子供だろうがなんだろうがな」
「っ!」
エルを掴むリドウの手を、ルドガーが掴んで放す。
それに大して驚くこともせず、目を細めるリドウ。
「おっと、力ずくかい?社会のルールは守ろうぜ、ルドガー君?」
「くっ…」
「社会がなんぼのもんじゃい!!じゃあ病院に運ばれた人達はいくらかかってるのか教えろコルア!」
「いちいちうるさいガキだな。じゃあ君が代わりに払うのかな?」
「ちょい待てコルア!…私まだお金の見方わかんないんだよな…」
文字は読めるし書けるようにもなった。
この一年でジュードくんやたまに会うエリーやドロッセル達に教えてもらったからだ。
しかし、お金の見方だけは未だにわからず、財布にしまわれたお金をあさって見ることに。
実はこの世界に戻ってきてから、このお金には手をつけていない。
その他の生活費は人材派遣で請け負うことができるクエストで稼いでいたからだ。だってこれ使うの怖いしいくらかわからないし。
本当は研究費用で困っているジュードくんに役だってもらおうと思っていたりもしたのだが、ジュードくんに拒否されてしまったのだ。
自分がしたいと思って始めた研究で、私に頼るのは嫌なんだそうだ。ジュードくんマジ頑固。
私はリドウに背を向けて、財布をルドガーにこそこそと見せる。
「ねね、ルドガー、これでどれくらい返せるかな」
「!!…千五百万ガルド、全部返せる…!」
「マジか!!やった私達の勝利だよ!!」
「っ、でも、ユウキの生活が…!」
「いいっていいって。私これ使って生活してたわけじゃないし、こういう時に役立ってもらわなきゃ!それに、ルドガーやユリウスさんには助けてもらったからお礼ってことで」
「…ごめん…」
「!!ルドガー可愛いマジ可愛い!!わかった身体で払ってもらうってことでどうだろう?!」
「ええっ?!」
「ちょっと君達、返せるの?返せないの?」
目を伏せてごめんと声を絞り出すルドガーが可愛すぎて、この萌えキャラめええええと興奮していたら、無粋な横槍が入ってむっと振り返る。
どやっと、財布からお金を出してリドウの手に押し付ける。
「…へえ、たしかに千五百万ガルド。この紙幣、よく君みたいな小娘が持ってたね?」
「これで治療費は払ったので、下衆やろうはお帰りくださいー」
「残念、まだ残ってるんだよ」
「は?」
リドウがにや、と笑いやがるので、なんだコルアと思っていたら、酒場に誰かがやってきた。
最初はジュードくんかと思ったら違って、女の人が入ってきた。
「あの、リドウ様はこちらに?」
「よく来てくれたミス・ノヴァ。ああ、彼女はヴェランド銀行のスタッフだ」
「って、ルドガー?!借金の申し込みって、あなたなの?!」
「…ノヴァ、無事だったんだな」
「?無事って、なんのこと?」
ルドガーと彼女、ノヴァさんは知り合いらしい。
ルドガーの言葉にノヴァさんが首を傾げると、ルドガーは驚きに目を見開いていた。列車で何かあったのだろうか。
「って、借金の申し込み?!千五百万ガルドは今払ったからもう必要ないじゃんか!」
「言い忘れてたけど、そこの家族の分もあったんだよ。五百万ガルド、ね」
「ナァ……」
「で、でぶ猫…」
リドウの視線の先にはでぶ猫がいた。
さみしそうに鳴くでぶ猫の頭を撫でて、気にしなくていいとルドガーは言ってあげていた。
それから、意を決したように席に座る。
「契約するよ」
「ちょ、ルドガー!五百万なんてそうそう返せないのに…!」
「いいんだ。なにより千五百万なんて大金をユウキに払ってもらったんだから、俺もけじめをつけないと」
「うう…ルドガー…」
「…わかったわ」
ノヴァさんの差し出した契約書に、ルドガーはさらさらとペンを走らせる。
くそう…あんな下衆やろうにいいいい!!許すまじいいいい!!
「ごめん、話し込んじゃって…って、何してるの?!」
「治療費が払えないっていうから、ローンをね」
「っ、ルドガー、契約すると、君の行動がGHSで管理されて制限されるようになるんだよ。預金残高も細かくチェックされるはず」
「!」
「んなっ?!」
「高額債務のリストにあがった人は、返済できるのにぱーって使っちゃう人も多いから」
「で、ぱーっと人生棒にふると。ルドガー君はそんな人じゃないだろ?ま、こんな女の子に千五百万も払ってもらうんだからどうかはわからないか」
「千五百万?!ユウキ、あのお金使ったの?!」
「使いました!!でもまさかあとから五百万追加されるなんて思いませんでしたちくしょおおお!!」
ああもう、とジュードくんが呆れるも、私は全く微塵も後悔はしていない。
強いて言うならちゃんと確定した金額を聞くべきだったことくらいだ。
書き終えたルドガーは、スっとノヴァさんに契約書を渡す。
「…いいんだ、ジュード。それに怒るなら俺を怒ってくれ」
「ルドガー…。ごめん、僕も手伝えたらよかったんだけど…」
「無理だよなあ?源霊匣の研究費用が足りてないみたいだし」
「…っ」
ちょっとマジであの下衆やろう殴っていいですか、いいともおおおお!!
セルフいいともして特攻しようとしたら、またルドガーに羽交い絞めにされて止められた。
「契約成立です。では、貸出した五百万ガルドはリドウ様の口座に」
「また治療が必要になったら呼んでくれ。格安で相談にのるよ」
「誰が呼ぶか!!はよ帰れこの下衆やろおおおおお!!」
塩まけ塩おおおお!!と暴れる私をルドガーとジュードくんの二人がかりで抑えてくる。
その横でエルは不安そうにでぶ猫を撫でていた。