天使と奏でるシンフォニー(TOX2)
DREAM
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「物好きな奴らだな、十年もあいつのことを待つなんて」
イル・ファンのある街路樹の下で、男はそう呟いた。
言葉の割にはどこか嬉しそうな声音の男に、思わず吹き出してしまいそうになるが我慢しておく。
男の姿もしっかり歳を重ねており、十年前より随分と大人びた姿をしている。
十年前も子供らしくはなかったけども、今はきちんと中身も大人になっているように思えた。
「そういう君も、大事な妹をこちらに送ったのだから大概だと思うがね」
「…あいつの我が儘は、基本聞いてやっている」
「そうだったな。君は彼女のためにと色んな手回しをしていたようだし」
そう言ってやれば、嫌そうな顔を向けられてしまった。
くっく、と笑いを堪えながら、十年前のことを思い出す。
そう、彼はずっと妹の…ユウキのために動いていた。
列車テロが起こる前に、この男は俺に接触してきた。
骸殻を使っても、時歪の因子化しない方法がある、と。
『分史世界に飛べない女がいる。いつもへらへらしてアホ面だが、芯はしっかりしている奴だ。そいつを傍においておけば、時歪の因子化は進まない』
「思えば、君はルドガーのことも心配してくれていたんだな。俺に言えば、俺は必ず彼女をルドガーの傍におくと考えて…」
「結末が気に入らなかっただけだ。もし自分が妹を殺さないと世界を救えないとなった場合どうするか考えた。そんな世界ならくそくらえだと思った」
「そしてそれは、妹も同じだろう、と?」
「俺の妹は馬鹿が付くくらいのお人好しだ。挙句、自分の命は省みない。…俺はただ、そういう生き方を選ばせてしまった自分に後悔したんだよ」
七年前、彼はユウキを殺そうとしたと言っていた。
けれど彼女は、笑って許した。
それがどれほど尊いことなのか、俺にはわかる。
自分の命と引き換えにしてでも、守りたいと思う気持ちが俺には痛いほど理解できてしまった。
「これから君はどうするんだ?」
「さて、どうするかな。どうせこれからあいつはジュードと一緒に他の奴らに会いにいくんだろう。近々お前達のところにも行くだろうから、ルドガーに美味いもん作らせてやってくれ。あいつはルドガーの手料理が食べたいとうるさかったからな」
「いいだろう。うちのシェフもあれから更に上達したから、頬を落としても知らないぞ」
「このブラコンめ」
「シスコンに言われたくないな」
酒は?と問うたら、嗜む程度に、と言われたので、行きつけのバーを紹介することにした。
通路の真ん中、薄明かりに照らされている二つの人影。
優秀な医学者であり研究者である博士と世界を愛した少女は、再会を噛み締めるよう抱きしめ合っていた。
fin
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実は近くにいた少女のお兄さんとユリウス。
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