天使と奏でるシンフォニー(TOX2)
DREAM
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「ルドガー二刀流!かっこいい!」
先頭車両目指して歩く私達に立ちふさがるアルクノアを切り伏せながら、私はルドガーの戦闘スタンスに感動していた。
02.一年越しの始まり
話していてわかったことは、ルドガーは結構無口だが、いざ話したときの一撃は結構すごいということ。それから身体能力がずば抜けていること。
何をしてるのか聞いてみたら、今は無職なんだそうだ。
「今日、本当は就職の決まった駅の食堂に行こうとしたんだけど…」
「ルドガーは、駅で変な集団に襲われて列車に逃げ込んだんだって…」
「わかった、じゃあルドガー私と何でも屋しようよ!困ったことは何でも解決!的な」
「ユウキ、ルドガーを巻き込もうとしないの」
ジュードくんに怒られてしまった。
巻き込もうなんてそんなそんな。ただ、何となくだがルドガーとなら何でもできる気がしたのだ。それと、ルドガーなら大丈夫だと思わせてくれるというか…。
うーん、と考えていたら、ジュードくんが「そういえば」とアローサルオーブを取り出した。
これはリリアルオーブが断界殻を解いた際に使用不可能になってしまい、その代用として作られた物だ。
どうやらルドガーが持ってなかったから、その説明をしているようだ。
予備のアローサルオーブがあるから、とルドガーに渡しているのを見て、私も自分の持ってるアローサルオーブのことを思い出す。ジュードくんには言っていないけれど、実は。
(…一年前、この世界に戻ってきた時にはもう持ってたんだよね…これ…)
あの時には、まだアローサルオーブは生まれていなかった。それだというのに、私は持っていたのだ。
未来に作られるものを持っているとジュードくんに知られたくなくて、私は黙っていたのだけど、なんとなく、予感がしていた。
これから、大きな何かが始まるのだと。
とりあえず周囲の死体を意識しないように、私は明るく振る舞って先に進もうと意気込む。死体をちゃんと見てしまったら、きっと足を止めてしまうだろうから。
「…というわけ。あとは実践で覚えようか。くるよ!」
「え?うわおっ?!」
「ユウキ!」
いきなりの敵襲に、考え事をしていた私は少し反応が遅れ、相手の振りかぶるナイフを必死に避けた。体勢が崩れた私を庇うように、ルドガーが席を蹴り上げながら軽やかに飛んできて、目の前の敵を一掃する。
その身のこなしは、どうみても駅のコックさんではない。
「ルドガーかっけええええ!!」
「えええ?!」
「ユウキ!遊んでると怪我するよ!」
またジュードくんに怒られた。最近のジュードくんは怒りっぽい…だがそこもいい。ジュードくんマジ天使。
狭い中必死に敵を倒して、先頭車両までやってくると、ルドガーが何かに気づいて階段を駆け上がった。
「どしたのルドガー?!」
「っ、兄さんが…!」
「え?ルドガーのお兄さん?!」
ルドガーを追いかけるようにジュードくんと二人で追うと、階段の上では誰かが死体の傍で立っていた。ぞっとするような姿に反して、振り返った男の人は優しい瞳をしていた。
ルドガーを見て、驚きに目を見開く。
「ルドガー?!なぜここに…!」
「兄さんこそ、どうして…?」
「お前には関係ない」
バッと切り捨てるように、ルドガーのお兄さんはそう言い切る。ルドガーは唇を噛んで、悔しいという感情をあらわにしていた。
「ジュードくん、これどういうことなの…?あの人はアルクノア倒してるんだから、列車テロとは無関係だよね?」
「そう、思うけど…でも何か隠してることはたしかだと思う」
あの人は、何を隠しているのだろう。
聞いてみようかと思った時、私達の後ろからエルとビズリーさんとクールビューティさんがやってきた。
タッタッとエルが来て私の服を引っ張る。
「ねえ、パパの時計知らない?!」
「え?時計?うーん、私は知らないけど…」
「僕も」
エルはがくりとしたが、すぐに持ち直して今度はルドガーに聞きに向かった。
思えばエルって迷子なんじゃ…。
ふと気づけば、やってきたビズリーさんを見てルドガーのお兄さんは目つきを変えた。
「さすがはクラウンエージェントだな、ユリウス。仕事が早い」
「…戯れはやめてください、社長」
「しかし、こんな優秀な弟がいたとは。大事に守ってきたようだな?優しい兄さんだ」
「…当然だろうッ!!」
いきなり、ルドガーのお兄さんがビズリーさんに斬りかかったではないか。それに驚いていたら、お兄さんの後ろで起き上がってくるアルクノアが見えた。
「っ!!危ないッ!!」
バッ、と、エルの前に飛び出す。
エルを守らないとと思って飛び出した私を呼ぶジュードくんの声が遠のいて、私は誰かの声を聞いた。
《――選べ、優姫――》
《――お前の道を、お前の意志で――》
(え…?)
ルドガーが変身して敵を倒して、エルが叫んで、それから目映い光に包まれて。
私は、もう二度と聞くことはできないと思っていた兄の声を聞いたのだ。