天使と奏でるシンフォニー(TOX2)
DREAM
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「最後の道標が見つかった?!」
カナンの地へ入るための、道標。
それがとうとう、最後の一つとなった。
27.ミラ=マクスウェル
ヴェルさんから連絡を受け、私とルドガーとエルはクランスピア社へと急いだ。
皆は用事を済ませてから集合予定だ。
なんと最後の道標が探知されたらしい!
「とうとう最後だよ、これでカナンの地に行けるねエル!!」
「うん!」
そういえば、起きた時にエルが何故か私から離れるので無理やり後ろから抱きしめたら「…大丈夫なの?」と言われ、起きるまで何があったのかを教えてもらった。
どうやら、エルが触った途端私は悲鳴に近い声を上げて悶えだしたらしい。全くもって記憶にないわけだけど。
ていうかどこも怪我してないらしく、ジュードくん達も首を傾げていた。かくいう私も首を傾げた。
何はともあれエルがやっと私と手を繋いでくれるようになった矢先に、ヴェルさんからの朗報。
これは順調に進んでる気がしますな!
「ですが、最後の道標を探しに行くことはできません」
「えっなんで?!」
「精霊マクスウェルと思われる物体が、分史世界進入の障害になっているのです」
これ以上は社長からお話されます、とヴェルさんは私達を社長室へ案内しようとするが、私は耳に入った情報に驚いている。
マクスウェル、というと今はミラだ。
つまり、ミラが行方不明なのはそのためなのか?!
「ルドガー!ユウキ!」
「ジュードくん!大変大変!」
「マクスウェルがじゃましてて、最後のミチシルベがとれないの!」
「マクスウェルが…?」
エルの言葉に反応したのは、ジュードくんと一緒に来たミラだった。
後ろではふよふよと浮かんでいるミュゼが聞き捨てならないとこちらを見据えている。
一緒に来たガイアスも腕を組んで難しい顔だ。あれ、いっつも難しい顔だっけ。
「クランスピア社とは、一度話しておく必要がありそうだな」
「…王様と大精霊まで一緒に行って大丈夫なの?」
「大丈夫…じゃなくても、どっちも止めても聞いてくれないから…」
行く気満々のミュゼとガイアスに、ミラとジュードくんははあとため息を吐く。
エルははやくはやくと私の手を引っ張ってくる。エルたん可愛い。
ルドガーもエルの勢いに苦笑しながら、社長室へと向かった。
「時空の狭間に障害物が存在し、進入点を塞いでいるのです。リドウ室長の話によると、四大精霊の力で跳ね返されたそうです」
「四大って…ミラ?!」
社長室で待っていたビズリー、ヴェルさん、そしてリドウ。
ヴェルさんからの説明を受けて、私達に衝撃が走る。行方不明だったミラが、時空の狭間にいるなんて。
「ミラ=マクスウェルが最後の道標への壁になっていてね」
「多分、クロノスに飛ばされたんだ」
ジュードくんの言うクロノス、っていうのはたしか、分史世界でジュードくん達と戦ったという大精霊だ。
くっそー私まだ会ったことないけど、ミラになにしてくれてんだー!
「でも、ミラなら戻ってこれるんじゃ?」
「戻らないのか、戻れぬのか…」
戻らない、はさすがにない気がする。
なら、やっぱり何か事情があって戻れないのかな?
「マクスウェルをどうにかしないことには最後の道標は手に入らない。そこでリーゼ・マクシアの皆さんにも協力してもらいたいのだ」
「わかった。こちらでも方法を探してみよう」
と、ビズリーさんにガイアスが返事をする。
そういえばさっき上に立つ者としての握手、半端なくドキドキしたっす。
その時、ずっと黙っていたミラが口を開いた。
「方法ならわかってるわ」
「え?」
振り返った瞬間、ミラの悲痛な表情が一瞬だけ見えた。
ミラは踵を返し、社長室を飛び出す。
何か、様子が変だ。
そう思うや否、私も同じように飛び出してミラの後を追った。
「ミラ!どうしたの、ミラ?!」
「………」
港まで走ってきたミラの背中に、必死に声をかけるけどミラはこちらを振り返ってくれない。
そうこうしてる内にルドガーとエル、ジュードくんも追いかけてきた。
「…ルドガー、あなたは気づいてるんでしょ?」
「……マクスウェルを、復活させる方法だな」
「そう…」
どういうこと?ルドガーもミラも、どうしてそんなに悲しそうなの?
聞きたくない、聞きたくないと私の心が叫んでいる気がした。でも、聞かないと。
ミラは、話を続けた。マクスウェルを復活させる方法を、悲痛な表情を浮かべたまま。
「マクスウェル復活の障害は、私よ。正史世界では、同じモノは同時に存在できない。…あなた達のミラがこの世界に戻れないのは、私が…ここにいるせいなの」
ミラ、なんで。
「ミラ=マクスウェルを復活させる方法は、一つ。私を殺せばいい」
そんなこと、言うの。
「ころす…?」
「おい…子供の前でやめろよ」
「事実なんだからしょうがないでしょ」
「わりーが、今はもめてる場合じゃねーんだよ」
いつの間にか来たアルヴィンが、エルの前では物騒な話はやめろとたしなめる。そして、問題が起きたと話し始める。
アルクノアがテロを計画してるとか、和平条約の調停式が狙われてるとか、そんなの、今は聞いてられない。
「何でそんな言い方するのさ、ミラッ!!」
「!」
「殺せばいいなんて、何でそんなこと、口にするの!!いいわけないじゃん!!大体、あなた達のミラって言い方、嫌だ!ミラはミラだ!こっちのミラも、目の前にいるミラもミラじゃんか!!そんな方法認めない、認めちゃいけないッ!!」
「ならどうするって言うのよ!そもそもここは私の世界じゃない、私はここにいるべき存在じゃ」
「そんなことないッ!!そんなことないんだよ…ッ!!」
ポロポロと、目から涙が落ちていく。
ミラが私を見て目を見開いているけど、止まらない。
そんな悲しいこと言わないでよ、ミラ。
ミラはミラで、私達の仲間じゃんか。仲間になった経緯は、ひどく残酷なものだったけど、それでもこれまで一緒に過ごした時間は、いらないものなんかじゃない。
ツンデレで、子供と動物にはすっごく優しくて、料理が上手で、たまにルドガーと良い雰囲気だしちゃったりして。
目の前にいるミラは、私達の知ってるミラとは違うけど、それでも目の前にいるミラだってミラなんだ。
だから、そんな世界に一人ぼっちみたいな言い方、しないでよ。
「…あーもう、これじゃどっちが生死問題に直面してるのかわからないじゃない」
はあ、と盛大にため息を吐いたミラは、私の顔を上げさせてポケットから取り出した綺麗なハンカチでぽろぽろ溢れる涙を拭ってくれる。
「啖呵切ったんだから、考えなさいよ。私も、この世界のミラも死ななくて良い方法を」
「!…うん!私頭悪いけど、一生懸命考える!!」
「エル、むずかしーことわかんないけど、エルも考えるよ、ミラ!」
「俺も考える。いや、俺達全員で考える」
「もちろんだよ。ミラさんもミラも、二人とも救える方法を探そう」
「おーおー。ユウキの泣き脅しが成功したみたいだな」
「泣き脅しなんかしてないわいアホヴィン!!」
「ある意味脅しよね」
「ある意味な」
「ミラとルドガーまで!!あっちょっとジュードくん何で笑うの?!」
ごめんごめん、と言いつつ笑っているジュードくん。見ればルドガーもミラも笑っている。
エルもアルヴィンも。
そうだよ、一人じゃないんだ。みんなで考えれば、きっと良い方法が浮かぶ。
ネバーギブアップ、だよ!戦う前から諦めるべからず!
「それじゃあ、マクスバードに急ごうか。アルクノアのテロを阻止しないと」
でもその前に、この平穏を脅かそうとする輩を懲らしめないとね!