天使と奏でるシンフォニー(TOX2)
DREAM
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《クランスピア社のヴェルです。ユリウス前室長の目撃情報が入りました》
イラート海停です、と淡々とした声がルドガーのGHSから聞こえたのはアルヴィン達と合流してからのことだった。
12.クランスピア社
ユリウスにゃんと壮絶な争いをしたというアルヴィンは結局ユリウスにゃんを取り逃したらしい。
で、その時タイミング良くルドガーに連絡が入り、次の目的地が決まったというわけだ。
ルドガーとエルはイラート海停を知らなかったらしく、エリーに「リーゼ・マクシアにある港です」と説明してもらっていた。
「それじゃ、移動制限解除するために借金返済しないとね」
「ここでクエストの王者優姫の登場ですね!」
「はいはい…じゃあそこでクエスト受けてこようか」
「あれぇ?!ジュードくんスルースキルフルスロットルしすぎじゃない?!」
ジュードくんがクエストを受けに斡旋所に向かうのを、レイアとエリーとエル、ルルがついていく。
ぐぬぬ…この扱い解せぬ…。
「おたく、ジュードと喧嘩でもしてんのか?」
「してないよ!ていうかジュードくんに嫌われたら私死ぬよ?!」
「ほっほっほ、違いますよアルヴィンさん。むしろ、距離が近くなったのです。あのお人好しのジュードさんが、幼馴染のレイアさんに対する態度で接するということはそれだけ親しい間柄になったということなのでしょう」
「なんと!!いやあまいったなあ!!」
「ユウキは本当にジュードが好きなんだな」
「もちのろんよ~。あっでもルドガーもラブだからね!!ところでユリウスさんとの生活の中で押し倒されたりとかは」
「おたくはもっと女らしくなろうな!!」
「ぎゃいん!!」
アルヴィンにチョップをくらう私を見て、ローエンとルドガーは呆れたようにため息を吐いていた。泣きたい。
クエストでお金を稼ぎ、さっさと移動制限を解除した私達は船に乗ってイラート海停までやってきた。
やっとユリウスさんに会えるのかー!楽しみですな!
降りた先ではなんと情報屋のジョウさんと再会し、クラン社の探索エージェントは宿屋にいるわよ、と告げられた私達は情報屋ぱねえと思いながら宿屋へと向かった。
そこには、傷ついたエージェントの二人が息も絶え絶えといった様子で座り込んでいたではないか!
「?貴方達、何の用…?」
「診せてください、僕は医学者です」
困ってる人が見過ごせないジュードくんは、二人に駆け寄ろうとするが警戒されてしまい、足を止める。
その時、ものすごくタイミングよくルドガーのGHSが鳴った。
《イラート海停への到着を確認しました。ただちに探索エージェントからデータを回収し、クランスピア社に帰還してください》
「っ、失礼しました。これがデータです」
ルドガーがGHSを切ったと同時に、エージェントである女性がポケットからデータと呼ばれる物を取り出してルドガーに渡す。
それは円盤の形で、まるでクルスニクの鍵みたいだなと思った。
「でも、この人達は…?」
「データの回収は最優先事項です。大至急帰還を」
「そんなに重要なものなの?」
「ユリウス前室長が収集解析した、分史世界データのコピーだ…」
近くで横たわっていた男性がそう起き上がって説明してくれた。
ローエンがユリウスさんに会ったのですね?と確認するように問えば、肯定と共にユリウスさんを感服するような返答が返ってくる。
「ええ、でも十人でかかって、誰一人相手にならなかった…でも、なんとかそれだけは手に入れたの」
「本社に早く!これで、“道標”の探知精度が格段に上昇するはずです…!」
と、ここでニューワードだ。
道標、とは一体なんぞ?ユリウスさんはそれに関しては言ってなかったなあ。
「みんなは先に行っててー!」
「私、この人達を癒します」
「んじゃ俺も手伝おっか?」
「エスコートならローエンがいいです!」
「ご指名とあらば」
「ちぇっ、ふられちまったー」
「ぶふぉっ、ふ、ふられヴィン…っ、ってあだだだだ冗談だってあだだだだ」
「わかった、じゃあ僕達はクランスピア社に行ってくる」
ここにエリーとローエンを残し、私達は分史世界データなるものを持ってトリグラフへと向かうことにした。
それにしても、なんだかとんでも展開になってきた気がする。
……嫌な予感がする。でも、進まないといけないんだよね。
(…兄貴の声も、全然聞こえないし…)
「お待ちしておりました、ルドガー様、例の物は社長に直接お渡しください」
「すごー!」
「広ーい!きれー!」
「クランスピア社ぱねえええ!!」
「声大きいよ三人とも…」
「…この方々は?」
クランスピア社に到着すると、ヴェルさんが受付近くで待ってくれていた。
そして会社の大きさに感動するエルとレイアと私をジュードくんが諌め、ヴェルさんはルドガーにそう聞いた。
それにルドガーが「俺の仲間です」と答えると、ヴェルさんは相変わらずのクール声で「ルドガー様しかお呼びしていませんが」と返答した。
「僕はルドガーの友人として同行します」
「俺は未成年どもの保護者」
「私は保護者その二!」
「エルは……あっ、ルルの保護者!」
「私は天使と妖精の旦那ってことで!」
「……少々お待ちを」
あれ!ちょっとツッコミ待機してたのに何もなかった!切ない!
後ろではアルヴィンが「レイアが保護者ね~?」と言ってからかっている。
ヴェルさんはGHSでどこかへと連絡をし、すぐに戻ってきた。
「皆様ご一緒でかまいません。社長が感心されていました、ルドガー様はなかなか人望があると」
「そりゃ妖精さんだもの!」
「ところで、ユウキ様はご一緒ではないのですか?できれば彼女にも同行をとのことなのですが」
「ぶふっ!!」
「くっ…!」
「ご、ごめ…笑っちゃダメなのに、我慢できな…っ」
「…?」
最初に噴出したのはアルヴィンで、その次がルドガー、そして笑いを必死にこらえようとしているのがジュードくんだ。
レイアも後ろでお腹を抱えて悶えている。
その様子にヴェルさんは首を傾げると、エルが私の手を握ってイタズラが成功した子供の笑みを浮かべた。
「ユウキはここにいるよ!ね、ユウキ!」
「え………?」
「…私が…髪を下ろしただけの…優姫です…」
クールビューティな顔が硬直した瞬間だった。
「待っていたよ、ルドガー君」
ヴェルさんに案内され、クランスピア社四十階にある社長室に案内されると、だだっ広い部屋の奥に、ビズリーさんがこちらに背中を向けていた。
私達が入ってきたことに気づき、振り返った顔は私が今一番叩いてやりたい顔だ。
ちくしょー!ルドガーだけじゃなくて私のことも何とかしやがれちくしょー!
ルドガーの前へとやってきたビズリーさんに、ルドガーがデータを渡せばそれを確認して胸ポケットへとしまった。
「それで、あれからユリウスの手がかりは見つかったかね?」
「…いいえ」
「ふむ。さて、君に良い知らせと悪い知らせがある。どちらから聞きたい?」
「悪い知らせって…?」
「警察が、ルドガー様を公開手配するようです」
なんですと?!
いや私なんてすでに公開手配されてるんだけども!
全員が驚いていたら、ビズリーさんはとくに困った様子もなく淡々と現状を述べてくる。
「警察もなかなか強硬でな」
「ルドガー、捕まっちゃうの?」
「で、でも、いい知らせもあるんですよね?」
エルの心配そうな声にかぶせて、レイアがそう聞くともちろんだとビズリーさんは頷いた。
「ルドガー君、君を我社のエージェントとした迎えたい」
「!」
「驚くことはない。君の行動を観察させてもらった結果だ。君には現状に立ち向かう意志、そしてなにより力がある」
「なっ!ルドガーはただ巻き込まれただけだってのに何を偉そうに!ああもう我慢ならんトマト持ってこーい!!」
「観察、でもそれはあなたがそう仕向けたからでしょう」
暴れる私をアルヴィンが押さえている間に、ジュードくんも少し怒った様子でビズリーさんに向かう。
だがビズリーさんは相変わらずの余裕な態度でそれを受けた。
「筆記試験や口先だけでは器は量れないからな。悪いが試させてもらった」
「……」
「どうだ。君がエージェントになるなら、警察は無理にでも抑え込むが」
「そんなの、ルドガーに選択の余地はないじゃないですか!」
「一石二鳥と考えてはどうかね?エージェントには十分な報酬を出す。逮捕を免れ、結果を出せば莫大な借金もすぐに返せる」
「…っ」
「ルドガーに、何をさせる気ですか?」
言葉を詰まらせたルドガーに代わって、ジュードくんがそう聞き返せば、ビズリーさんは先程とは打って変わって真剣な口調になった。
そして言われた仕事内容は。
「分史世界の破壊だ」
「ブンシ、セカイ…それって、ユウキが言ってた名前?」
「…ほう、髪をおろしているから気がつかなかった。君はユウキか」
「…そうですけど。ていうか、警察に捕まんないように髪をおろしてるんですけど」
「ふ、なるほど、それなら気づかれないだろうな。で、君は分史世界も知っているのだな」
も?なんで、分史世界も、なんて聞き方をしたんだ?
それについて問いただそうとしたら、ビズリーさんは部屋の隅に飾られた花の前へと立ち、咲いている花を指差した。
「今、我々がいるここ。そして本来の歴史が流れる正史世界から分かれたパラレルワールド、それが分子世界だ」
周囲に未だ花を咲かせていない蕾を、彼は分子世界と称した。
「分史世界が生まれると、正史世界に存在すべき魂のエネルギーが拡散していきます」
「拡散って…まずくない?」
「…放置すると、どうなるんですか」
「この正史世界から、魂が消滅するだろう。当然、人間も死に絶える」
そんなの、聞いたことがない。
少なくとも、私が体験した一年前の世界でそんな話題一度だって出ていなかった。
「エレンピオスの荒廃、源霊匣の実用化失敗。それが、魂のエネルギーが消失している影響だとしたらどうかね?」
「まさか!」
「クランスピア社は世界を守るため、密かに分子世界を消し続けていたのだ」
「でも、世界を消すなんて、どうやって…」
「ルドガーはすでになしている。ルドガーの変身、骸殻こそ分子世界に進入し、破壊する力なのだ」
「世界を、壊す力…」
でも、あの骸殻は使わせないでくれとユリウスさんに言われた。
ということは、きっとその力には何か秘密があるはずだ。
悶々と考えていたら、エルが周りを見渡してから、もー!っと怒った。
「子どもにもわかるように言ってよー!」
「ルドガー、世界のため君の力を貸してほしい。ユウキ、君もだ」
「はいいい?!なんで急に私?!私まず変身できないし、素性わからない奴は守ってくれないんでしょちくしょー!!」
「どうして、ユウキにも協力を求めるのか聞かせてくれ」
私と一緒にそう聞いてくれたのはルドガーだ。
ジュードくん達も同じ思いらしく、返事を待っている。
ビズリーさんは私を一瞥したあと、フッと笑った。
「彼女はきっと、君の助けとなる。私にはわかるのだ」
「それは一体、どういう」
「おいおい分かることだ。今私が説明せずとも、な」
「…兄さんは、関わっているのか?」
「ああ、最強のエージェントだったよ。ユリウスが消した分史世界は百以上になるだろう」
うう…私のことも気になるが、ユリウスさんのことも気になるよう…。
続けてヴェルさんが言うには、ユリウスさんは分子世界に逃げ込んでいる可能性もあるのだとか。
ルドガーは少し思案して、それからわかったと言ってビズリーさんの手を握り返した。
ヴェルさんがルドガーにエージェントの証を服につけ、ルドガーはクランスピア社の分子対策エージェントとなった。
それでも、ルドガーの表情が晴れることはない。
横目でそれを見て、ジュードくんはまたビズリーさんに問う。
「一つ、教えてください。なぜ分史世界は生まれるんですか?」
「ある者が糸を引いているのです」
「カナンの地に棲む大精霊―――クロノス」
カナンの地…!まさか、本当に存在する場所だったの?!
エルも目的地の名前が出たことに驚いた声を上げる。
「大精霊、クロノス?!」
「恐ることはない。我々には奴に対抗する力がある」
ビズリーさんはルドガーの肩に手を置き、地下訓練場に来いと言った。骸殻の使い方を教えてやると。
「ビズリー・カルシ・バクー。噂通りのタマだったな」
「すごい迫力だったよー…まるで」
「エレンピオスの王、だったな」
「うん、それ間違ってないかもしれないよルドガー」
「ああ、ビズリーはエレンピオスの政財界に絶大な影響力をもってる。異界炉計画だって、最初は推進してたんだ」
「でも、今はルドガーの上司、ってことなんだよね?」
「…ルドガー、気をつけてね。ビズリーさんは嘘言ってないけど、本当のことも言ってない気がするんだ」
「…わかってる」
「ねえねえルドガー、ユウキどうしたの?かちんこちんだよ?」
「っと、そうだ。なんでユウキにも協力を求めたんだ?あれじゃ、いまいちよくわかんねえけど…なあユウキ。……ユウキ?」
「……どうしよう。ビズリーさんがルドガーの肩に手を置いた瞬間、私の中でビズリー×ルドガーがビビッときた!教えてやるって、手とり足とり腰とり?!ひえええ上司にエロいことを強要される新米社員!!けしからんもっとやれええええ!!」
「その妄想癖いい加減直せ!ルドガー反応に困ってんだろ!!」
「ぎゃいん!!」