chapter 02
DREAM
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自分には何ができるのだろう。
私のなすべきこと、使命ってなんだろう。
私は、このままジュードくん達についていっても、いいのだろうか。
13.悩むだけムダです
「ん……ん?」
「気がついた?」
車椅子の揺れに目を覚ますと、いつの間にかル・ロンドに着いていた。
キョロキョロと視線を動かしたらレイアが気付いて私の顔を覗き込む。
「ジュード!」
「え、わっ」
足音がしたと思えば、ジュードくんを誰かが抱き締めた。
エリンさんだ。
「どこかケガはない?鉱山に行ったのよね?どうして黙って行ったの」
「母さん…ごめ」
「ジュード!」
バシッ
(ひ、ひぃぃ可愛いジュードくんのほっぺに平手打ちだとぉぉぉ!!)
「あなた!」
ジュードくんを平手打ちしたのはディラックさんだ。
エリンさんが慌てるも、ディラックさんはジュードくんを怒鳴り付ける。
「三人に何かあったらどうするつもりだった!最悪の事態を考えなかったのか?!」
「…できることをしないなんて…僕は父さんと一緒じゃないから…」
「お前はっ!」
ディラックさんが手を振り上げた瞬間、動いたのは私とミラだ。
ジュードくんの前に立つと、ディラックさんは驚いていた。
「もう許してやってほしい。ジュードはやり遂げたのだから」
「そうだ!私はジュードくんのおかげで、いや三人のおかげでこうして立てるんだ。むしろ褒めてあげてほしいですね!」
ディラックさんはジュードくんを見つめて息を呑んだ。
やり遂げた息子を、どんな気持ちで見つめたんだろう。
私も親になったらわかるのかな?予定はないですがね!
「もう優姫!ムリしちゃダメだよ!早く座って!」
「レイアちょい待って。ジュードくんの故郷……走り回っていいかな?!答えは聞いてなーい!!」
「あっこら優姫!」
ウヒャホーっと走り出すも、久しぶりに足を動かす私は見事に転び、ミラに支えられて車椅子に戻され治療院に連行された。
――――――三週間後。
「リハビリ…きついなう…」
歩けるようになってから、毎日リハビリを重ね、三週間が経った。
今まで息災で生きてきたためリハビリなんてテレビでしか見たことなかったが、怪我の重さできついものになるようだ。
一緒にリハビリしてくれた患者さん達に「頑張れよ」と応援された。
レイアとミラも率先して手伝ってくれた。
もちろんジュードくんも。
(てかほんと…ミラがすぐにイル・ファンに行かないのが不思議だ…)
私の怪我が治るのを待ってくれている。
なんか…すごく嬉しい。
「もう、季節風が吹く時期なんだね」
外に出たら、レイアの声が聞こえた。
ジュードくんも一緒だ。
「けど、優姫がこんなに早く退院できるなんて。大先生もびっくりしたんじゃないかな」
「知らないよ。父さんとは全然話してないし」
「反抗期ジュードくんカワユスはぁはぁ!」
「ってうわ!優姫?!」
ジュードくんのムスっとした顔をにやけ顔で見ていたら、治療院からため息を吐きながらディラックさんが出てきた。
「まったく…ここまで落ち着きのない患者は初めてだよ」
「優姫、荷物を忘れていたぞ」
「あっ!ミラありがとー!」
ミラから荷物を受け取ると、なぜかほっぺを両手で挟まれぐにぐにされた。
ほわわわわ何してんのミラ様ぁぁぁ?!
「ジュード、こんなものが届いた」
私とミラがそんなやり取りをするも、ディラックさんはジュードくんに手に持っていた手配書を突き付ける。
レイアは初めて見るようで驚いていた。
「指名手配までされていたとは…」
「別に迷惑かけてないでしょ」
「何をした?文面を見る限り、何かを強奪したとも読めるが?」
「奪った…?ひょっとして…ミラがイバルに渡してた…あれ…?」
「イバル?」
「な、何でもないよ…それで何?ミラと優姫に文句が言いたいの?父さんは二人が嫌いみたいだし」
はぁ、とまたため息を吐いたディラックさんは私達を見た。
「なんですかこんにゃろ!私だってジュードくんに平手打ちしたこと許してないんですからね?!」
「キミは少しぐらい自分のことを考えたほうがいいと思うがね…ジュード、この子はやめておけ。毎日うるさそうだ」
「がぁん!!お義父さんひどい…!」
「誰がお義父さんだ」
ディラックさんに冷たいお言葉を貰っていたら何故か顔を真っ赤にしたジュードくんが私の腕を引いて「散歩行こう散歩!」と海停の方へ引きずっていく。
ミラとレイアはクスクス笑いながらも私を支えに来てくれた。
しかし照れたジュードくん可愛いなぁもう!
「海停キターッ!船乗ろうよ船!ミラ、旅再開だよ!」
「落ち着け優姫。船は逃げない」
ミラと並んで海を眺めながらそんな会話をする。
足はズキズキするけど、三週間前に比べたらマシだ。
リハビリの効果もあってか、前と同じくらい動けるようにもなった。
「えへへ~…みんなの期待に応えて走り回ろうかな~」
「ふふ、それは見たいな」
「よっしゃー!任せろミラ!なんなら追いかけてきてもいいのよ!」
「鬼ごっこだな!では本気でいくぞ!」
「え?ってぎゃぁぁファイアーボールはダメだってぶほぁ!」
本気になったミラに慌てて走ろうとしたら、前にいた人にぶつかり転びかける。
だがぶつかった人に支えられて転ばずにすんだが、なんか懐かしい雰囲気が…。
「お見舞いに来たのですが、もう歩けるようになったのですね、優姫さん」
「ローエン?!わぁわぁ久しぶりローエン!ってほぎゃ!」
「優姫…!よかったです…!」
「エリーも久しぶり!えへへありがとね~♪」
エリーに後ろから抱き着かれ、正面にはローエン。
なにこのサンド幸せすぎる。
ちなみにティポはジュードくんに食らいついていた。
「お久しぶりです。ジュードさん、ミラさん。そちらは初めましてですね。ローエンと申します」
「あ、ども…」
優雅な物腰のローエンに、レイアは困惑していたようだった。
「ふむ…医療ジンテクスというのですか。これでこのわずかな期間に…」
これまでの経緯を話すと、ローエンは私の太股についた医療ジンテクスを見て感心したように頷く。
私もこれ一つで足が動くようになるとか信じられないよ。医療ジンテクスぱねぇ。
「ねぇローエン。しばらくこっちにいるの?」
「ドロッセルお嬢様から、しばらく休むよう言いつけられました。それに、エリーゼさんが優姫さんとミラさんに会いたいとあまりに申されるもので」
「ぼくたちのせいじゃないぞー!この頃ローエン君がボーッとしてたからじゃないかー!」
「ほう、らしくないな?」
「いえいえ。私も悩みはいっぱいありますよ?」
「あのお姫様がエリーゼで、あのぬいぐるみはティポ。んでこのカッコイイご老体はローエンだよ!」
「へぇ~…優姫達って色んな人と知り合いなんだね…」
「うん!あ、そだ、私ちょっと買い物してくるね!」
「えっ、うんわかった」
みんなが話している間に、私は船着き場へ移動する。
少し、悩もうと思った。
明日ミラ達は発つ、そういう話になっている。
クルスニクの槍を壊すために、世界を守るために。
まずはガンダラ要塞に行かなければいけない。本当は危険だから回避する場所だけど、私にツテはないから仕方ない。
私の足がこうなった、場所。
大丈夫、怖くはない。
私は一人でも…いや、元々一人じゃないか。
(今、船に乗れば、ジュードくん達より先に行ける。私は…)
「よっと」
「へ?ほぐむむむ」
ぷはっ
「な、アルヴィン?!」
「よ」
背後から口を塞がれ店の裏側に引きずられると、ようやく離してもらえ振り返ったら見知った顔。
てか、え?
「あああアルヴィン早すぎるここじゃないよ何してんのストーリーは守ろうよ?!」
「落ち着けっての。てか、おたく足治ったんだな」
「お、おぅよ!ジュードくん達が治してくれたんだ!」
「ふーん…で?一人で旅に?」
ぐはっ
なぜアルヴィンにバレてんだ…!ここはジュードくんとかミラが私を気遣う場面でよくないか神様!
私はバタバタと手を振りなんとか誤魔化そうとするも、アルヴィンには何のその。
「悪いけど、まだおたくに行かれちゃ困るわけよ」
「?なんで?」
「そんなの優姫ちゃんが心配だからに決まってるでしょーよ」
嘘くせぇ…思わず口調荒げてしまうほど胡散臭いよこの大人。
「優姫ーッ?!」
あ、ジュードくんの声だ。
「おたく、優等生にそんな未練がましい顔するのに一人で行けると思ってんの?」
「ぬう…じゃあ一緒に出ようアルヴィン」
「俺はちょっと用事あるから、また明日な」
胡散臭い…胡散臭すぎる…。
去り行くアルヴィンの背中を見ながら私はアルヴィンに飛び蹴りするのを忘れていたことを思い出した。
くそぅ…!私としたことが!
ちなみに出て行ったらジュードくんとミラにフラフラするなとお説教されました。
さて一泊することになったわけですが。
ローエンとエリーはレイアの実家である宿へ、ミラは私の隣の診察室に、ジュードくんは自分の部屋に泊まることになった。
とはいえ、寝れないわけで。
「ぐぬぬ…こんなに痛いもんなのか…?」
原因は足の痛みだ。
夜更けにも関わらず眠ることが出来ず、私は上半身を起こし、足を抱える。
まぁ、ミラがこんな目に遭わなかったんだし、まだ私のしたことは間違ってないのかな。
「ああもう…どうすりゃ寝れんのさ…」
「眠る時は医療ジンテクスを外すんだ。外しても機能は失われないから安心するといい」
「あっそうか!ありが…先生?!」
部屋に入ってきたのはディラックさんだった。
びっくりした…一瞬幽霊かと思った…。
「あ、でもどうやって外すんですか?」
「この止め具を…」
「お、おおなるほど!ありがとうございます!」
ディラックさんに手伝ってもらい、医療ジンテクスを外すと身体を横に倒してもらうのも手伝ってもらった。
楽だけど、今敵襲きたら私死ぬな…あははなんちゃって。
「よっ、マティス先生。連絡は行ってるだろ?」
敵襲、きました。
アルヴィンを見て目を見開いた瞬間、ディラックさんに口を塞がれ意識が遠退く。あれ、なにこれ。薬っぽい。
テレビで良く見るクロロなんちゃら?あれ確か即効性ではないんだっけ…。
てか何だこの急展開?!
一体何が起こってるか誰か説明プリーズ!
目が自然と閉じていき、くたりと枕に顔を埋めると、アルヴィンが確認するようにディラックさんに聞いてくる。
「薬か?」
「ああ…即効性だ。もう意識はない」
意識はまだある。
もしかして、会話を聞かせるために?
「そうか。で、『カギ』の在処は聞き出せたか?」
「…私はもう何の関係もない。アルクノアなどとは」
「あーら、寂しいこと言ってくれるね」
「この子には感謝している。いや、それ以上に恩がある」
感謝?恩?
私何かしたっけ?
「一人息子をオトコにしてくれたってか?」
「…そうだ。この子のおかげで、あの子は強くなった。人を好きになれたんだ…」
「俺は、知ってることさえ教えてくれれば、それでいい」
あ、やばい…そろそろホントに…意識が…。
ディラックさんが何かをアルヴィンに伝え、それを聞いて出ていくアルヴィンが扉を閉めた音と同時に私は眠りについた。
――――――…
「…むにゃ?」
「優姫、そろそろ行くぞ。ジュード達はもう外で待っている」
「ほへ?…早くねッ?!」
ミラに起こされ、飛び起きると足が動かないことに気付く。
そうだ、昨日医療ジンテクス外したんだった。
ミラに付けてもらい、自分の足で立ち上がる。
よし、大丈夫だ。
「行こう!…てかローエンとエリーは?」
「ふふ…みんなお節介だぞ?自分のなすべきことのためと同時に私と優姫が心配だからついてくるらしい」
だから、心配ってなんだぁーっ?!
「クレイン様にこの国を救ってほしいと託され、私は悩んでしまった」
レイアを除くみんなと合流し海停に向かって歩いていたら、ローエンが私に話をしてくれた。
「今の私にできることがあるのだろうか。ナハティガルを止められるだろうかと」
「うん」
「ナハティガルは、古くからの友人なのです」
「…友達と、戦えるかどうか…ってことだよね」
「ええ。このことを話したら、ミラさんが一緒に来ないかと言ってくれました。悩むのは時間がもったいないと」
ミラは、人を気遣えるようになってきた。
人間らしくなってきたのだ。
「そうだよローエン。悩まなくたっていいじゃん!そもそも、ナハティガルを倒しに行くんじゃなくて、止めに行くんだから」
「優姫さん…」
「友達なら喧嘩の一つや二つはしないと!それに友達が間違ってたら止めてやる、そうだろ?」
「そうですね…ほっほっほ、優姫さんはずっと優姫さんのままですな」
「それミラにも言われたけど…褒められてるんだよね?褒められてるんだよね?!」
もちろんですよと言われたけど、褒められてるんだよねほんとに?!
「レイアの姿はないか…」
海停に着くが、レイアの姿は見えない。
ミラが呟き周りを見渡すもやはりいなかった。
今頃…樽の中に入ってるのかなぁ…。
「この船ってア・ジュール行きだけど、これがローエンの言ってた考え?」
ジュードくんが船を見上げながら聞くと、ローエンは「はい」と微笑む。
ローエンには考えがあるらしく、イル・ファン行きではなくア・ジュール行きに乗ることになった。
ローエンが言うのだからとみんなが頷いていたら、後ろからエリンさんが来た。
「ジュード、お父さんと仲直りしないの?」
「必要ないよ……じゃあ、行ってくるね」
「お父さんはあなたが心配なのよ。わかってあげて」
うん、とジュードくんが頷く。
んもう思春期可愛い!
「ジュード!」
おお、今度はお父さんきた!
ジュードくんは背を向けると、未練はないように言い放つ。
「父さんごめん。僕、ミラと優姫と行きたいんだ」
「ダメだ!行かせるわけにはいかない。彼女達は…お前が関わろうとしているのは…!」
「おいおい、俺達どんな縁なんだよ」
わざとらしくディラックさんの言葉を遮ったのは、やはりアルヴィンだ。
ジュードくんは突然のアルヴィンの登場に驚いている。
「新しい仕事、クビになっちまってね。その様子じゃ、また行くんだろ?俺、そこのチンチクリンからもらった分の働きしてないぜ」
「誰がチンチクリンだこの万年発情期!お義父さんこいつジュードくんに発情してますよ早く成敗しあだだだだだ」
「アルヴィン、来てくれるんだね!」
「知り合い…なのか?」
「うん。前にずっと一緒だったんだ」
アルヴィンが来てくれるのが嬉しいのか、ジュードくんは微笑んでいる。
あああもう可愛いけどなんでみんな私を助けてくれないの?!
今アルヴィンに頭をわしづかみされてますよ私?!
「ジュード君、よろしくな?」
「うん!」
私を離すとアルヴィンはジュードくんをまた後ろから抱き寄せてる。
アルジュ萌えるちくしょう悔しいでも萌える!!
「そろそろ出発しますよー。ご乗船お急ぎくださーい」
みんなが船に向かう。
ジュードくんは両親に最後の挨拶をして、船に向かうので引き止める。
「ジュードくん、あれ言わなきゃ!」
「…父さん」
振り返ったジュードくんは、少し大人の顔をしていた。
「行ってきます」
「…忘れるな、ジュード。大人になるということは、自らの行動に責任を取ることだぞ」
ジュードくんはもう振り返らなかった。
ジュードくんの成長を見てにやけるも、私も言わなきゃいけないことがあった。
「先生、たくさんありがとうございました!エリンさんもリハビリありがとうございました!」
「キミは…どうしてそこまで頑張る?キミのなすべきこととはなんなんだ?」
「えっへへー…今はジュードくんを守ることです!私がこの世界に来たのはきっとそのためなんです」
勝手にそう思ってるだけだけど。
「だから、必ずジュードくんを守り抜きます。ご安心を!」
エリンさんは苦笑し、ディラックさんは難しい顔をしている。
そうだ、ディラックさんにプレゼントをしよう!
「先生、昨日ありがとでした!んで今からやるのは、先生へのプレゼントです。見ててくださいね!」
「?一体何を…」
私は二人に背を向け、船に乗ろうとする背の高い胡散臭い男の背中目掛けて走り、飛んだ。
「うぉりゃぁぁぁ!!」
「のぁっ?!」
ドゴンと船までアルヴィンを蹴り飛ばし、振り返ってブイサインをしたら、珍しくディラックさんは笑って手を振ってくれた。
このあとアルヴィンに逆さ吊りにされたけど、よしとしますか!
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私のなすべきこと、使命ってなんだろう。
私は、このままジュードくん達についていっても、いいのだろうか。
13.悩むだけムダです
「ん……ん?」
「気がついた?」
車椅子の揺れに目を覚ますと、いつの間にかル・ロンドに着いていた。
キョロキョロと視線を動かしたらレイアが気付いて私の顔を覗き込む。
「ジュード!」
「え、わっ」
足音がしたと思えば、ジュードくんを誰かが抱き締めた。
エリンさんだ。
「どこかケガはない?鉱山に行ったのよね?どうして黙って行ったの」
「母さん…ごめ」
「ジュード!」
バシッ
(ひ、ひぃぃ可愛いジュードくんのほっぺに平手打ちだとぉぉぉ!!)
「あなた!」
ジュードくんを平手打ちしたのはディラックさんだ。
エリンさんが慌てるも、ディラックさんはジュードくんを怒鳴り付ける。
「三人に何かあったらどうするつもりだった!最悪の事態を考えなかったのか?!」
「…できることをしないなんて…僕は父さんと一緒じゃないから…」
「お前はっ!」
ディラックさんが手を振り上げた瞬間、動いたのは私とミラだ。
ジュードくんの前に立つと、ディラックさんは驚いていた。
「もう許してやってほしい。ジュードはやり遂げたのだから」
「そうだ!私はジュードくんのおかげで、いや三人のおかげでこうして立てるんだ。むしろ褒めてあげてほしいですね!」
ディラックさんはジュードくんを見つめて息を呑んだ。
やり遂げた息子を、どんな気持ちで見つめたんだろう。
私も親になったらわかるのかな?予定はないですがね!
「もう優姫!ムリしちゃダメだよ!早く座って!」
「レイアちょい待って。ジュードくんの故郷……走り回っていいかな?!答えは聞いてなーい!!」
「あっこら優姫!」
ウヒャホーっと走り出すも、久しぶりに足を動かす私は見事に転び、ミラに支えられて車椅子に戻され治療院に連行された。
――――――三週間後。
「リハビリ…きついなう…」
歩けるようになってから、毎日リハビリを重ね、三週間が経った。
今まで息災で生きてきたためリハビリなんてテレビでしか見たことなかったが、怪我の重さできついものになるようだ。
一緒にリハビリしてくれた患者さん達に「頑張れよ」と応援された。
レイアとミラも率先して手伝ってくれた。
もちろんジュードくんも。
(てかほんと…ミラがすぐにイル・ファンに行かないのが不思議だ…)
私の怪我が治るのを待ってくれている。
なんか…すごく嬉しい。
「もう、季節風が吹く時期なんだね」
外に出たら、レイアの声が聞こえた。
ジュードくんも一緒だ。
「けど、優姫がこんなに早く退院できるなんて。大先生もびっくりしたんじゃないかな」
「知らないよ。父さんとは全然話してないし」
「反抗期ジュードくんカワユスはぁはぁ!」
「ってうわ!優姫?!」
ジュードくんのムスっとした顔をにやけ顔で見ていたら、治療院からため息を吐きながらディラックさんが出てきた。
「まったく…ここまで落ち着きのない患者は初めてだよ」
「優姫、荷物を忘れていたぞ」
「あっ!ミラありがとー!」
ミラから荷物を受け取ると、なぜかほっぺを両手で挟まれぐにぐにされた。
ほわわわわ何してんのミラ様ぁぁぁ?!
「ジュード、こんなものが届いた」
私とミラがそんなやり取りをするも、ディラックさんはジュードくんに手に持っていた手配書を突き付ける。
レイアは初めて見るようで驚いていた。
「指名手配までされていたとは…」
「別に迷惑かけてないでしょ」
「何をした?文面を見る限り、何かを強奪したとも読めるが?」
「奪った…?ひょっとして…ミラがイバルに渡してた…あれ…?」
「イバル?」
「な、何でもないよ…それで何?ミラと優姫に文句が言いたいの?父さんは二人が嫌いみたいだし」
はぁ、とまたため息を吐いたディラックさんは私達を見た。
「なんですかこんにゃろ!私だってジュードくんに平手打ちしたこと許してないんですからね?!」
「キミは少しぐらい自分のことを考えたほうがいいと思うがね…ジュード、この子はやめておけ。毎日うるさそうだ」
「がぁん!!お義父さんひどい…!」
「誰がお義父さんだ」
ディラックさんに冷たいお言葉を貰っていたら何故か顔を真っ赤にしたジュードくんが私の腕を引いて「散歩行こう散歩!」と海停の方へ引きずっていく。
ミラとレイアはクスクス笑いながらも私を支えに来てくれた。
しかし照れたジュードくん可愛いなぁもう!
「海停キターッ!船乗ろうよ船!ミラ、旅再開だよ!」
「落ち着け優姫。船は逃げない」
ミラと並んで海を眺めながらそんな会話をする。
足はズキズキするけど、三週間前に比べたらマシだ。
リハビリの効果もあってか、前と同じくらい動けるようにもなった。
「えへへ~…みんなの期待に応えて走り回ろうかな~」
「ふふ、それは見たいな」
「よっしゃー!任せろミラ!なんなら追いかけてきてもいいのよ!」
「鬼ごっこだな!では本気でいくぞ!」
「え?ってぎゃぁぁファイアーボールはダメだってぶほぁ!」
本気になったミラに慌てて走ろうとしたら、前にいた人にぶつかり転びかける。
だがぶつかった人に支えられて転ばずにすんだが、なんか懐かしい雰囲気が…。
「お見舞いに来たのですが、もう歩けるようになったのですね、優姫さん」
「ローエン?!わぁわぁ久しぶりローエン!ってほぎゃ!」
「優姫…!よかったです…!」
「エリーも久しぶり!えへへありがとね~♪」
エリーに後ろから抱き着かれ、正面にはローエン。
なにこのサンド幸せすぎる。
ちなみにティポはジュードくんに食らいついていた。
「お久しぶりです。ジュードさん、ミラさん。そちらは初めましてですね。ローエンと申します」
「あ、ども…」
優雅な物腰のローエンに、レイアは困惑していたようだった。
「ふむ…医療ジンテクスというのですか。これでこのわずかな期間に…」
これまでの経緯を話すと、ローエンは私の太股についた医療ジンテクスを見て感心したように頷く。
私もこれ一つで足が動くようになるとか信じられないよ。医療ジンテクスぱねぇ。
「ねぇローエン。しばらくこっちにいるの?」
「ドロッセルお嬢様から、しばらく休むよう言いつけられました。それに、エリーゼさんが優姫さんとミラさんに会いたいとあまりに申されるもので」
「ぼくたちのせいじゃないぞー!この頃ローエン君がボーッとしてたからじゃないかー!」
「ほう、らしくないな?」
「いえいえ。私も悩みはいっぱいありますよ?」
「あのお姫様がエリーゼで、あのぬいぐるみはティポ。んでこのカッコイイご老体はローエンだよ!」
「へぇ~…優姫達って色んな人と知り合いなんだね…」
「うん!あ、そだ、私ちょっと買い物してくるね!」
「えっ、うんわかった」
みんなが話している間に、私は船着き場へ移動する。
少し、悩もうと思った。
明日ミラ達は発つ、そういう話になっている。
クルスニクの槍を壊すために、世界を守るために。
まずはガンダラ要塞に行かなければいけない。本当は危険だから回避する場所だけど、私にツテはないから仕方ない。
私の足がこうなった、場所。
大丈夫、怖くはない。
私は一人でも…いや、元々一人じゃないか。
(今、船に乗れば、ジュードくん達より先に行ける。私は…)
「よっと」
「へ?ほぐむむむ」
ぷはっ
「な、アルヴィン?!」
「よ」
背後から口を塞がれ店の裏側に引きずられると、ようやく離してもらえ振り返ったら見知った顔。
てか、え?
「あああアルヴィン早すぎるここじゃないよ何してんのストーリーは守ろうよ?!」
「落ち着けっての。てか、おたく足治ったんだな」
「お、おぅよ!ジュードくん達が治してくれたんだ!」
「ふーん…で?一人で旅に?」
ぐはっ
なぜアルヴィンにバレてんだ…!ここはジュードくんとかミラが私を気遣う場面でよくないか神様!
私はバタバタと手を振りなんとか誤魔化そうとするも、アルヴィンには何のその。
「悪いけど、まだおたくに行かれちゃ困るわけよ」
「?なんで?」
「そんなの優姫ちゃんが心配だからに決まってるでしょーよ」
嘘くせぇ…思わず口調荒げてしまうほど胡散臭いよこの大人。
「優姫ーッ?!」
あ、ジュードくんの声だ。
「おたく、優等生にそんな未練がましい顔するのに一人で行けると思ってんの?」
「ぬう…じゃあ一緒に出ようアルヴィン」
「俺はちょっと用事あるから、また明日な」
胡散臭い…胡散臭すぎる…。
去り行くアルヴィンの背中を見ながら私はアルヴィンに飛び蹴りするのを忘れていたことを思い出した。
くそぅ…!私としたことが!
ちなみに出て行ったらジュードくんとミラにフラフラするなとお説教されました。
さて一泊することになったわけですが。
ローエンとエリーはレイアの実家である宿へ、ミラは私の隣の診察室に、ジュードくんは自分の部屋に泊まることになった。
とはいえ、寝れないわけで。
「ぐぬぬ…こんなに痛いもんなのか…?」
原因は足の痛みだ。
夜更けにも関わらず眠ることが出来ず、私は上半身を起こし、足を抱える。
まぁ、ミラがこんな目に遭わなかったんだし、まだ私のしたことは間違ってないのかな。
「ああもう…どうすりゃ寝れんのさ…」
「眠る時は医療ジンテクスを外すんだ。外しても機能は失われないから安心するといい」
「あっそうか!ありが…先生?!」
部屋に入ってきたのはディラックさんだった。
びっくりした…一瞬幽霊かと思った…。
「あ、でもどうやって外すんですか?」
「この止め具を…」
「お、おおなるほど!ありがとうございます!」
ディラックさんに手伝ってもらい、医療ジンテクスを外すと身体を横に倒してもらうのも手伝ってもらった。
楽だけど、今敵襲きたら私死ぬな…あははなんちゃって。
「よっ、マティス先生。連絡は行ってるだろ?」
敵襲、きました。
アルヴィンを見て目を見開いた瞬間、ディラックさんに口を塞がれ意識が遠退く。あれ、なにこれ。薬っぽい。
テレビで良く見るクロロなんちゃら?あれ確か即効性ではないんだっけ…。
てか何だこの急展開?!
一体何が起こってるか誰か説明プリーズ!
目が自然と閉じていき、くたりと枕に顔を埋めると、アルヴィンが確認するようにディラックさんに聞いてくる。
「薬か?」
「ああ…即効性だ。もう意識はない」
意識はまだある。
もしかして、会話を聞かせるために?
「そうか。で、『カギ』の在処は聞き出せたか?」
「…私はもう何の関係もない。アルクノアなどとは」
「あーら、寂しいこと言ってくれるね」
「この子には感謝している。いや、それ以上に恩がある」
感謝?恩?
私何かしたっけ?
「一人息子をオトコにしてくれたってか?」
「…そうだ。この子のおかげで、あの子は強くなった。人を好きになれたんだ…」
「俺は、知ってることさえ教えてくれれば、それでいい」
あ、やばい…そろそろホントに…意識が…。
ディラックさんが何かをアルヴィンに伝え、それを聞いて出ていくアルヴィンが扉を閉めた音と同時に私は眠りについた。
――――――…
「…むにゃ?」
「優姫、そろそろ行くぞ。ジュード達はもう外で待っている」
「ほへ?…早くねッ?!」
ミラに起こされ、飛び起きると足が動かないことに気付く。
そうだ、昨日医療ジンテクス外したんだった。
ミラに付けてもらい、自分の足で立ち上がる。
よし、大丈夫だ。
「行こう!…てかローエンとエリーは?」
「ふふ…みんなお節介だぞ?自分のなすべきことのためと同時に私と優姫が心配だからついてくるらしい」
だから、心配ってなんだぁーっ?!
「クレイン様にこの国を救ってほしいと託され、私は悩んでしまった」
レイアを除くみんなと合流し海停に向かって歩いていたら、ローエンが私に話をしてくれた。
「今の私にできることがあるのだろうか。ナハティガルを止められるだろうかと」
「うん」
「ナハティガルは、古くからの友人なのです」
「…友達と、戦えるかどうか…ってことだよね」
「ええ。このことを話したら、ミラさんが一緒に来ないかと言ってくれました。悩むのは時間がもったいないと」
ミラは、人を気遣えるようになってきた。
人間らしくなってきたのだ。
「そうだよローエン。悩まなくたっていいじゃん!そもそも、ナハティガルを倒しに行くんじゃなくて、止めに行くんだから」
「優姫さん…」
「友達なら喧嘩の一つや二つはしないと!それに友達が間違ってたら止めてやる、そうだろ?」
「そうですね…ほっほっほ、優姫さんはずっと優姫さんのままですな」
「それミラにも言われたけど…褒められてるんだよね?褒められてるんだよね?!」
もちろんですよと言われたけど、褒められてるんだよねほんとに?!
「レイアの姿はないか…」
海停に着くが、レイアの姿は見えない。
ミラが呟き周りを見渡すもやはりいなかった。
今頃…樽の中に入ってるのかなぁ…。
「この船ってア・ジュール行きだけど、これがローエンの言ってた考え?」
ジュードくんが船を見上げながら聞くと、ローエンは「はい」と微笑む。
ローエンには考えがあるらしく、イル・ファン行きではなくア・ジュール行きに乗ることになった。
ローエンが言うのだからとみんなが頷いていたら、後ろからエリンさんが来た。
「ジュード、お父さんと仲直りしないの?」
「必要ないよ……じゃあ、行ってくるね」
「お父さんはあなたが心配なのよ。わかってあげて」
うん、とジュードくんが頷く。
んもう思春期可愛い!
「ジュード!」
おお、今度はお父さんきた!
ジュードくんは背を向けると、未練はないように言い放つ。
「父さんごめん。僕、ミラと優姫と行きたいんだ」
「ダメだ!行かせるわけにはいかない。彼女達は…お前が関わろうとしているのは…!」
「おいおい、俺達どんな縁なんだよ」
わざとらしくディラックさんの言葉を遮ったのは、やはりアルヴィンだ。
ジュードくんは突然のアルヴィンの登場に驚いている。
「新しい仕事、クビになっちまってね。その様子じゃ、また行くんだろ?俺、そこのチンチクリンからもらった分の働きしてないぜ」
「誰がチンチクリンだこの万年発情期!お義父さんこいつジュードくんに発情してますよ早く成敗しあだだだだだ」
「アルヴィン、来てくれるんだね!」
「知り合い…なのか?」
「うん。前にずっと一緒だったんだ」
アルヴィンが来てくれるのが嬉しいのか、ジュードくんは微笑んでいる。
あああもう可愛いけどなんでみんな私を助けてくれないの?!
今アルヴィンに頭をわしづかみされてますよ私?!
「ジュード君、よろしくな?」
「うん!」
私を離すとアルヴィンはジュードくんをまた後ろから抱き寄せてる。
アルジュ萌えるちくしょう悔しいでも萌える!!
「そろそろ出発しますよー。ご乗船お急ぎくださーい」
みんなが船に向かう。
ジュードくんは両親に最後の挨拶をして、船に向かうので引き止める。
「ジュードくん、あれ言わなきゃ!」
「…父さん」
振り返ったジュードくんは、少し大人の顔をしていた。
「行ってきます」
「…忘れるな、ジュード。大人になるということは、自らの行動に責任を取ることだぞ」
ジュードくんはもう振り返らなかった。
ジュードくんの成長を見てにやけるも、私も言わなきゃいけないことがあった。
「先生、たくさんありがとうございました!エリンさんもリハビリありがとうございました!」
「キミは…どうしてそこまで頑張る?キミのなすべきこととはなんなんだ?」
「えっへへー…今はジュードくんを守ることです!私がこの世界に来たのはきっとそのためなんです」
勝手にそう思ってるだけだけど。
「だから、必ずジュードくんを守り抜きます。ご安心を!」
エリンさんは苦笑し、ディラックさんは難しい顔をしている。
そうだ、ディラックさんにプレゼントをしよう!
「先生、昨日ありがとでした!んで今からやるのは、先生へのプレゼントです。見ててくださいね!」
「?一体何を…」
私は二人に背を向け、船に乗ろうとする背の高い胡散臭い男の背中目掛けて走り、飛んだ。
「うぉりゃぁぁぁ!!」
「のぁっ?!」
ドゴンと船までアルヴィンを蹴り飛ばし、振り返ってブイサインをしたら、珍しくディラックさんは笑って手を振ってくれた。
このあとアルヴィンに逆さ吊りにされたけど、よしとしますか!
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