chapter 04
DREAM
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「たく、この変な道なんとかなんねーのかよ」
「おそらくマクスウェルは人間が通るなどとは考えなかったのだろう」
「でも歩きにくいわよね。あ、ユウキそこは右よ」
「……あの、何でナチュラルについてきてんですか……」
40.天使に捧げるラブソング
「目的地は同じなんだからいいじゃない」
という理由らしく、フォーブの三人はガイアスのところを目指して歩き出した私の後ろをついてきていた。
いや、まぁ道を教えてくれるのは助かるけど…魔物出たとき倒すの手伝ってくれるのも助かるけど…なんか違くない?
一応、ほんのさっきまで私達敵対してたよね?
「なぁ単細胞女、お前って…」
「単細胞女?!なんちゅーあだ名つけてくれてんの?!」
「もう。変なとこにこだわらないの。話を遮られてアグリアが拗ねたじゃない」
「拗ねてねーよ!!」
「変なとこ?!私の不名誉なあだ名が変なとこ?!」
「……ユウキ、お前は陛下と貴様らの決着がついたら消えるというのは本当なのか」
コホンと軽く咳ばらいを入れ、ウィンガルがそう聞いてきた。
どうやらアグリアはそれを聞きたかったらしく、少しバツの悪そうな顔だ。
「えーと、私のコピー情報?それともガイアス?」
「両方だ」
「あなたのコピーさんはあなたが『消滅』すると言っていたわ。元の世界に帰れるかどうかの保証もないって…」
「えー…マジかー…」
コピー情報ならおそらくマジだろうな…。
まさかの消滅!つまり死ぬってことなわけで。
元の世界にも、帰れないかもしれないわけで。
「やり残したこと山ほどあるのになー…ジュードくんにあんなことやそんなこともしてないし、ミラやアルヴィンにも」
「いいのかよ、死ぬって言われてんのに」
「ああ、うん。だって私にはやらなきゃいけないことがある。だからやっぱりガイアスとコピー止めなきゃ」
「死ぬなと俺達に言った奴が、死を受け入れるのか?」
「うぐ……そりゃ私だって死にたくないよ。でも、タイムリミットが近いのが自分でもわかるんだ」
時々視界がぶれる。
その間隔が短くなってきた。
これはいよいよ覚悟を決めなければならない。
一大決心をしていたら、プレザに頭をポフリと撫でられた。
「…あなたって、不思議な子よね」
「そっかな?あ、私消える前にプレザに言いたいことあったんだよ」
「なに?」
「私さ、プレザの本当の名前、好きだよ」
「!」
プレザが目を見開く。
プレザにはつらい思い出しかない名前でも、私は好きだ。意味とか込められた思いは知らないけど、プレザの名前だから。
私みたいな得体の知れない人間に言われても嬉しくないと思うけど、私は言いたかった。
「私の知る物語のアルヴィンも、プレザの名前好きだって言ってた。あれは嘘じゃない。アルヴィンの本当だと思うよ」
「…そう、なの…」
「あ、単細胞女がババア泣かせた!」
「最低だな」
「えぇーっ?!なんでフォーブは私に冷たいのかな?!」
「泣いてないわよ…」
プレザは泣きそうに顔を歪ませたが、泣かない代わりに私の頭をギュッと抱き込んだ。
手が震えていた。
プレザのこと、ちゃんと思ってる人がいるってわかってもらえたかな。
何もしてあげられないけど、言葉を伝えられてよかった。
グワンッ
(あ、また、だ)
プレザから離れた瞬間、また視界がぶれた。
まずいなぁ。ガイアスにたどり着く前に消滅するのだけは免れないと。
じゃないと私の最期にやるべきことができなくなる。
「ユウキ?どうしたの?」
「あーうん…だいじょぶ。ところで、ガイアスのいる場所ってまだ遠いの?」
「いや、もうすぐだ」
と、ウィンガルが言った瞬間、今度は私の視界ではなく地面が大きな音を立てて揺れ始めた。
ゴゴゴゴッ
「うわっ!なんだよこれ!」
「まずい…マクスウェルがウルスカーラを切り離そうとしてるんだ!早く行かないと!ウィンガル!道案内!」
「命令するな」
不満げなウィンガルだったが先頭をきって道案内をしてくれる。
その後ろを私達も駆け足で追いかけた。
「!いたわ、陛下達よ」
プレザが下の方で戦うガイアスとジュードくんとミラを見つけた。
あの様子だと、ミュゼはマクスウェルのところへ向かってしまったんだろう。
走りながら見ていたら、ガイアスが膝をつき、空間を切り裂いて退いていった。
それをジュードくんとミラが追いかけていく。
「早く行かなきゃ!!」
「行かせないよ」
「えっ…ほぎゃっ?!」
唐突に響いた声に驚いたと同時に、身体が何かに縛られた。
これは、前にプレザにやられた術?!
「…コピーか」
「四象刃のくせに、こんなオリジナルと仲良しごっことはな」
「誰がそいつと仲良くしたかよ!」
「まぁ、あなたよりはその子と仲良くする方が何倍もいいけども」
また何処かから現れたコピーは私を術で縛り、宙へ浮かせる。
ていうか、皆さん言いたい放題ですね!
コピーは私に向き直ると、冷たい目で言い放った。
「オリジナル、貴様には特別に最前列でジュード・マティス達がやられるのを見せてやるよ」
「!何を……うわぁぁぁッ!!」
「ユウキ!」
プレザにやられた時とは比べものにならないくらい、全身を締め付けられ痛みに叫ぶ。
そんな状態の私を連れて、コピーは空間を切り裂き飛び込んだ。
「!ユウキッ?!」
ジュードくんの声がした。
どうやら、私をジュードくん達の戦っている舞台へ連れてきたらしい。
とは言え縛られて締め付けられる今の私からは痛みに悶える声しか出ない。
「ユウキッ!!」
「ユウキを離せッ!!」
「ジュード・マティス、ミラ=マクスウェル…なぜだ、こんな人間を、なぜそこまで思う…私だって…私だって…」
「…コ、ピー…?」
「……っ!!」
ブォンッと空間を遮断された。
縛りから解放された私は地面に膝をつけて目一杯酸素を取り込む。
ドーム状に空間を作ったコピーは、肩を震わせていた。
「なんでだよ…貴様と私、何が違うんだよ」
「…?何の話…?」
そう口にした瞬間、コピーは私に剣を振りかぶってきた。
慌てて軋む身体を捻って避け、私も剣を構える。
けど休む間もなくコピーは切り掛かってきた。
キィンッキィンッ
「ちょ、おま…いつもの冷血キャラどうした?!」
「うるさい!うるさいうるさい!!」
コピーの剣を受け止め、たまに発動される術を避けてを繰り返す。
どのくらい時間が経ったのだろう。
ジュードくん達の様子がこのドーム状の空間からは見えないから、みんながどうなったかわからない。
コピーも段々覇気がなくなってきた。
むしろ、痛々しくも思えるくらい、表情が歪んできている。
「いらない、全部、いらない…!」
「……コピー」
弱くなってきた剣を軽く弾けば、剣はコピーの手からは簡単に離れていく。
コピーはガクリと膝をついた。
(そっか。なんか今のコピー、イバルとかミュゼに似てる)
「なんで…なんで…」
戦意喪失した姿を見て私も剣を鞘におさめる。
それからコピーの前に立ち、見上げてきたコピーの頭を私は。
思い切りひっぱたいた。
パコンッ
「っ?!な、何を」
「こんのお騒がせコピー!みんなに迷惑かけんな!」
「な、な、な」
「あと、ごめん!」
ぎゅうっと、抱きしめてやったらコピーは身体を強張らせた。
ああもう、こんなに追い詰めてたなんて気づかなかった。これじゃミュゼを情緒不安定にさせたマクスウェルと同じじゃないか。
コピーは、誰かに必要とされたかったんだ。
「私のネガティブ思考も、コピーされちゃってたんだね。マクスウェルが感情を消してコピーをつくったはずなのに、それだけが残っちゃったんだよね」
「…ぁ……あ…」
「ごめん!私ネガティブすぎてほんとごめん!」
コピーが使命にこだわったのも、存在理由が欲しかったから。
ガイアスに居場所が欲しいと頼んだのは、私の持つ記憶からガイアスなら居場所をくれると判断したから。
ミラから貰った友達の証を大切にしていたのはきっと、見ているだけで、私の記憶を思い出して仲間を感じられたからだろう。
コピーは、イバルのように劣等感を感じ、ミュゼのように居場所を求めていたんだ。
「怖い……いやだ、助けて」
私にしがみつきながら泣くコピー。
コピーから漏れてくるこの感情は、きっと一番最初の私の救難信号。
「一人はいやだ…怖い、怖い」
「ばっかだなー。思い出しなよ。一人で怖くて仕方なかった私のとこに、天使が舞い降りてきたじゃん」
「…『ジュード、くん』」
「そうそう!んで、ミラ、アルヴィン、エリー、ローエン、レイア!他にもたくさんの人と出会った」
「……私は、一人じゃ、なくなった」
「そゆこと。でもそれは私の記憶。コピーにはコピーの居場所が出来たじゃんか。自分から求めた、大切な居場所」
正直、コピーは私よりもすごいと思う。
自分から居場所を求めて一歩を踏み出して、世界を広げたのだ。
怖がってばかりの私とは違う。
だから、もっと誇っていいんだよ、コピー。
「…うぁ…ぁぁ…っ」
「よし、んじゃまずはみんなに謝る。んでガイアス達にお礼を言う。オッケー?」
コクコク、と泣きながら頷くコピー。
…私の顔でそんな萌え仕種されても…!
ちくしょうかわいいと思った私ってナルシスト?!
パァンッ
「おお、ほんとに触れただけで壊れた…」
ドーム状につくられた空間は大精霊クラスの精霊術だったらしく、コピーから触れただけで消せると言われておそるおそる触れたらほんとに壊れてびっくりした。
ようやくみんなと対面だ。
「ユウキ!遅刻だぜ!」
「アルヴィン!!そいやっ!」
どうやらまだガイアスとミュゼと戦っていたらしい。
みんなはもう来ていて、私に気付いたアルヴィンが剣を下に向けたからコピーをそのままにして飛び乗った。
「飛んでけッ!」
「ガイアスくらえッ!!」
「!ぐぅっ?!」
死角から飛び込めたようで、アルヴィンが放り投げた勢いで突っ込んだら綺麗にぶつかった。
すぐに体勢を整えて剣を構えたら、みんなも構え直す。
ジュードくんが隣に来て、ガイアスの方を向きながら話し掛けてきた。
「無事だったんだね、ユウキ」
「おぅよ!お騒がせコピーには後で謝らせるよ。今は…」
「ああ、ガイアスとミュゼを倒す!」
反対側の隣に来てくれたミラがそう宣言し、剣をガイアスとミュゼに向ける。
ミュゼは忌ま忌ましそうに、しかしガイアスは何だか嬉しそうに笑っていた。
「フ…やはり来たか、ユウキ」
「ちょ、私を主人公みたいな扱い方するのはやめてガイアス!」
「いいのか、このまま我らの戦いに決着をつけても」
「もちのろんよ!何度も言うけどそのために私はここまで来たんだ。みんなの創る、明日のためにな!」
ドヤァ…とドヤ顔をしたものの、さすがにこの流れで突っ込む人は誰ひとりいなかった。
KYな私に思わず羞恥で死にそうになるが、何やらみんなはそのまま受け止めてくれたようだ。
「そうだ、私達は誰かを犠牲にして築き上げる明日を創る気はない」
「エレンピオスもリーゼ・マクシアも平和に暮らせる道があるなら、そっちを選ぶのは当たり前だろ」
「私達は、自分で選んだんです!」
「誰かの決めた使命じゃないぞーっ!」
「全て、己の意志で選び抜いた答えなのです」
「これが、わたし達の信念だよ!」
ミラが、アルヴィンが、エリーが、ティポが、ローエンが、レイアが。
そして。
「僕達は、人も精霊も平和に暮らせる未来を創るんだ!」
ジュードくんが、思いを叫ぶ。
(ああもう…みんな天使だよ…!!)
「ってわけだから、全力でいくよガイアス!ミュゼ!!」
「いいだろう…ならば俺も、この戦いを避けようなどとはもう思わん。…ミュゼ!力を!」
ガイアスはミュゼの身体から剣を抜き、闘気を身に纏い、力を放出する。
ミュゼの力を全身に纏ったガイアスは、服装も髪型も変わり、尋常ではないオーラを放っていた。
こちらにもビリビリとオーラが伝わってくる。
けど、戦わなくてはいけない。
ジュードくん達を、勝たせるんだ!
「はぁぁぁぁっ!!」
向かってくるガイアスにみんなが陣形を崩した。
詠唱を始めるミュゼを見て、後ろにいたエリーと目配せをする。
「エリー!お願い!」
「はい!…ティポプレッシャー!!」
「どーん!!」
エリーがティポを巨大化させ、重力に従い地面にたたき付ける。
それを避けたミュゼは標的をエリーにして身体の向きを変えた瞬間を見逃さない。
「ミュゼ!!」
「なっ?!きゃぁぁッ!!」
「まだです、タイダルウェイブ!!」
背後から繰り出した攻撃がクリーンヒットし、そこをローエンが精霊術で追い撃ちをかける。
「ぶっとべ!ぐるぐるーッ!お母さん直伝、活伸棍・神楽ッ!!」
のけ反るミュゼに、今度はレイアが棍術を披露してみせた。
棍を振り回し旋風を巻き起こして跳び上がり、地面を叩き割る勢いでミュゼを叩き伏せる。
息を切らしながらペたりと膝をつけたミュゼ。
「ユウキ!!」
「!はいよッ!」
ミラが呼び、私は剣を構え治してガイアスに向かう。
ガイアスと、目が合った。
お互いニヤリと笑うと剣を振りかぶる。
「「うぉぉぉぉぉぉッ!!」」
キィンッと金属の重なる音が何度も響く。
ミラが術を放ち、アルヴィンが銃で援護しているが、ガイアスはなかなか崩れない。
さぁどうするかと距離を取ろうと思ったが、ジュードくんが構えているのが見えた。
そしてミラも、魔法陳を展開し始めている。
やっぱ最後は、主人公で締めなきゃね!!
「ガイアス!!うちの天使は強いからね!!」
「何…?!」
「うぉりゃぁっ!!」
もう最後の力と言わんばかりに力を込めて、ガイアスを押し返す。
よろけた私をガイアスが蹴り飛ばしたが、好都合だった。
「始まりの力、手の内に!我が導となり、こじ開けろ!」
「殺劇!……はぁぁぁぁッ!」
「スプリームエレメンツッ!!」
「舞荒拳ッ!!」
ジュードくんとミラの技…私の世界で言う秘奥義がガイアスに一斉攻撃された。
避けることも出来ずすべてを喰らったガイアスは、それでも倒れることはなく剣を支えに膝をつく。
「くっ……!」
ガイアスとミュゼの動きが止まる。
私達の勝利だ。
「マクスウェル!」
ミラが四大を召喚し、クルスニクの槍を破壊する。
捕われたマクスウェルが力無く解放されるのを見て、ミュゼが涙を流した。
「また、何もなくなった…私は、もう…」
「お前達が望む未来は民を苦しめるだけ…たとえ源霊匣があろうとだ」
ミュゼの傍に膝をついていたガイアスがふらふらと立ち上がる。
「ましてや世界を一つにしたところで、互いが協力しあうことなど幻想に過ぎない」
「僕が信じた未来って、甘くてバカなのかもしれない。でもミラも、ユウキも、僕を信じてくれた。それにガイアス、あなたも」
「それがなんだというのだ…!」
ガイアスが問えば、ジュードくんは少し目を伏せた。
「どれだけ強気なことを言っても、僕はここまで来るのがずっと怖かった」
(でも、ジュードくんは選んでここまで来たんだ)
「僕はまだ弱くてちっぽけな人間だよ。だけど、いつか強くなってみせる。僕を…信じてほしいんだ」
「人は強くなろうとするから、誰かのために成長しようともがくから、私達の未来は、想像もできないくらいすばらしい可能性に満ちていると信じている」
(ミラが、みんなが、選んだ答えを…信じるよ)
「ガイアス、お前ならわかっているはずだ」
「…お前達の可能性とやらが挫かれた時、俺は再び立ち上がるぞ」
ハッ、とガイアスが息を詰める。
ジュードくんはガイアスの前に立ち、手を差し出して微笑んだ。
「そうはさせないよ」
「……」
ガイアスは視線を泳がせる。
動揺したのかな。
そしてミラはミュゼの前へ行き、ジュードくんのように手を差し出した。
「ミュゼ。一人で生きていくのがつらいのなら、共に生きよう」
「ミラ……」
ミュゼも、ちゃんと居場所があったんだ。
私は四人の和解を見ながら、コピーを連れてマクスウェルのところへ行く。
「マクスウェル」
「ユウキ…それと…」
「…ま、マクスウェル…」
コピーはおそるおそる、顔を上げた。
マクスウェルが驚くが、コピーは意を決して声を搾り出した。
「私を、つくってくれて、ありがとう…!」
「私をこの世界に連れてきてくれて、ありがとう!」
「!お前達は…私を恨んではいないのか?私の勝手で何の関係もないお前をこの世界に連れてきて、死なせようとした私を…」
「正直、私は戸惑ったよ。自分の使命なんて考えたことなかったし、怖かったし…でもそれ以上に、最高の出会いができた」
振り返ったら、みんなが私を見ていた。
友達として、仲間として、かけがえのない出会いをした。
みんなと出会えたことを、私は幸せに思う。
「ほら、コピー!みんなに言うことあるっしょ!」
背中を押したら、コピーはコクリ、と頷きまずはジュードくん達のところへ。
「め、迷惑をおかけして、ご、ごめんなさい…!」
みんなが微笑んで、言葉に出さずに許すと、ペコリと頭をさげて次はガイアスのところへ。
いつの間にかフォーブの三人も来ていた。
「が、ガイアス…あの、私に居場所をくれて…ありがとう…!」
「フ…気にするな」
「!…本当に、ありがとう…」
うん。すごく微笑ましい会話だけどね。
しおらしく話して、ガイアスに頭撫でられて頬染めしてるの私と同じ顔だから、少し複雑な気持ちだよ…。
みんなに挨拶が終わり、コピーは私のところへ駆け足で戻ってきた。
「オリジナル、ありがとう」
「んーん。むしろ私のせいで、イロイロごめんね?」
「……それでも私、生まれてよかった。だから、私の力をあなたに」
「え、わ…!」
コピーが私に抱き着き、マナを放出する。
コピーを包む淡い光が私に移動し終わると、コピーは身体を離して、今度は悪意のない顔をして笑った。
「私はあなたのコピー。あなたが何をしようとしてるかくらい、理解している」
「コピー…」
「人は死ぬと精霊に、精霊は死ぬと人に生まれ変わる。大精霊として生み出された私は、今度はコピーでもなく、誰かの代わりでもない『私』として、生まれ変わるよ」
「…うん…うん!」
「さよなら、『優姫』」
サラサラ、とコピーの身体はマナに分離し消滅した。
手から消えていくそれは、何だか暖かかった。
(生まれ変わったら、今度は幸せになるんだよ)
「ユウキ、決心はついておるのだろう?」
マクスウェルは私を呼び、私はそれに頷いた。
「ユウキ…?」
マクスウェルの言葉の真意が掴めず、ミラが私を呼ぶ。
私は振り返り、ミラの手を取った。
「ミラがマクスウェルになるって決めてるのは、知ってる」
「!」
「けど、ミラがみんなと会えなくなるのは私は嫌だ。最期なんだから、堂々とわがままを言うよ私は!」
「何をする気だ…?」
マクスウェルが私を通して力を込める。
その流れに任せるように、私の中にあるコピーの力と私の力を流し込んでミラへと纏わせる。
ふぅ、と一息ついたら、ミラは身に纏う得体の知れない力に困惑し、私を見つめた。
「シェルがなくなっても、ミラが人間界と精霊界を行き来できるようにしました!」
「な…?!」
「ご都合展開バッチコイだよ。トリップ主人公の特権だよ。な、マクスウェル!」
「そうだな。お前にしか出来得ぬことだ」
「え、いきなり褒められた…!」
マクスウェルは微笑むと、両手を広げた。
命と引き換えに、断界殻を解く。
リーゼ・マクシアに、エレンピオスにマナが広がった。
下に広がる大地に、自然が芽吹き、空が晴れていく。
とても綺麗で、幻想的な風景。
二つの世界の統一。
これから、ジュードくん達の目指す明日を創りあげていくんだ。
想像するだけで、胸がワクワクする。
「!ユウキ…!手が…っ」
「え…?あ…」
ミラが握られた手を見て、喉を震わせた。
私の手が、透けていたから。
よく見たら足も透けてきている。
いましがた消滅したコピーとマクスウェルと同じように、私も消えようとしているんだ。
「あー、えと。みんな!私は今から消えます!今までイロイロごめんなさい!ありがとう!」
「なんだよ、それ。ユウキ!」
「わたし聞いてないよ、ユウキっ」
「聞いてない、です…!」
「また復活するんでしょー?!そうだよねー?!」
「ユウキさん…っ」
みんなが私の名前を震えながら呼ぶから、私も声が震えていく。
気付いたら、涙もボロボロ零れていた。
「あれ、おかしいな。言わなきゃいけないこと、たくさんあったのに、まとまらないや」
「ユウキ…っ」
「泣かないでよ、ミラ。ミラまで泣いたら、私どうしたらいいか…」
「…私はミラ=マクスウェル。精霊の主だ。…泣いてなどいない」
うん、知ってる。
私にとって、最初からミラがマクスウェルだった。
ミラの信念に憧れた。惹かれた。
好きになったんだから。
「…っ、さよならなんか、言わねぇからな。…またな、ユウキ!」
『俺がここで背筋を伸ばして立っていられるのは、ユウキがいたからだ』
「ユウキ、ずっと、大好きです…っ!」
『はい…ユウキとお揃いです!』
「お疲れ様でした、ユウキさん。また…お会いしましょう」
『ほっほっほ、ユウキさんのその元気が、じじいにはやる気の源ですよ』
「わたし達ずっと、ずっとずっと友達だよ!だから、またね…っ、ユウキ!」
『ミラとは違う形でユウキはジュードを変えたんだよ』
みんなが、『またね』と言ってくれた。
口を開くも嗚咽が邪魔をして言葉にならない。
『ありがとう』って、たくさん言いたいのに、声が出てくれない。
身体だけが消えていく。
泣くな、バカ優姫。
最期は笑顔で別れるんだろ、アホ優姫。
「…っ、ユウキっ!!僕……また、見つけるよ!!」
「!ジュード、くん」
私の前に立ったジュードくんは、涙を堪えて首を振り、笑顔で私を見つめてくれた。
ああ、私の大好きな笑顔だ。
この笑顔を、守りたかったんだ。
「ユウキが助けを求めたら、僕が見つけるから…それで、また心配する。今度こそ、ずっと傍にいるから」
「うん。でもジュードくん、それプロポーズ?」
「そうだよ。だから返事を聞かせてよ、ユウキ」
もう、私の扱いを最期に上手くなるとかずるいよジュードくん。
ジュードくんからの、天使からのプロポーズだよ?そんなの。
「そんなの、ウェルカムに決まってんじゃん!ジュードくんの天使!」
「ふふ…またね、ユウキ」
「うん!またね、ジュードくん!…みんなも、またね…!」
身体が消えるその瞬間まで、私は笑うことが出来た。
ジュードくんに出会い、始まった私の旅。
長くて、短く感じた私の旅は、ここで幕を閉じたのだ。
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