chapter 04
DREAM
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ヘリオボーグへ向かおうとしたら、たくさんの人が慌てて走っているのが見えて声をかけてみた。
「ヘリオボーグが攻撃を受けたんだ!」
「信じられないわ、仮にも政府軍の基地なのよ!黒匣の生産と研究の拠点だからって…」
「誰が襲ったの?」
「わからない…女の子だった…。あ!き、君…!」
男の人は私を指差して怯え、腰を抜かす。
ああなるほど……犯人は私のコピーか!
37.変化していく道筋の先
「ひ、ひぃぃっ!!やめてくれ、殺さないでくれ…!」
「お、落ち着いてください!彼女は違うんです!」
ジュードくんが宥めようにも、同じ顔をした私にみんな怯えてしまっている。
(やっぱり仕掛けてきたか…てことは、バランさんが危ない!!)
「ジュードくん、私はバランさんの救出に向かおうと思う。コピーの私が狙うなら多分バランさんだよ!」
「!なら、僕達も…!」
「ダメだ!この街を守る人がいる!多分ヘリオボーグを私のコピーが襲撃してる間に、ガイアスが送り込んだ軍で街を襲うつもりだと思う!」
「では二手に別れましょう。街を守る組、バランさんを救出する組と」
ローエンがそう提案すると、エリーとレイアが意を決したように顔を上げた。
「わたし、残るよ」
「私も残ります」
「ぼくもー!」
「…でしたら私も残りましょう」
「みんな、なら…私も…!」
「いえ、優姫さんは救出へ向かってください。私達はここを守りながら、これからのことを考えようと思います」
うん、とレイアもエリーも頷く。
たしかに術者が残った方がいいかもしれない…けど、こんなとこで二手に別れるなんて、未来が変わっている。
大丈夫、だろうか。
このまま三人と別れて、いいのだろうか。
「わかった。ここは任せる」
「みんな、気をつけてね」
「ほら、早く行くぞ優姫」
「で、でも…!」
アルヴィンに頭を掴まれるが、不安で一杯の私が残るといった三人プラスぬいぐるみを見ると、ニッと笑われた。
「優姫、未来はわたし達で創るものなんでしょ?」
「筋書き通りにはいかないからこそ、生きているといえるのですよ」
「街の人達は、任せてください!」
「ぼくがいればヒャクニンリキだよー!」
もう、もう…もう!!
「みんな大好きだコノヤローッ!!行ってきます!!」
(そうだ、みんなを信じなきゃ!私は私のコピーを止めないと!)
―――――――…
「人の気配がない…」
ヘリオボーグ基地。
機会仕掛けの大きな建物には人の気配はなく、破壊された黒匣が転がっているだけだった。
「施設や倉庫も壊されてやがる…これ全部、あいつ一人でやったのか?」
「優姫のコピーは大精霊として生み出されていたな。マクスウェルを捕縛できることを考えると、これくらい容易いのかもしれない」
「早くバランさんを探そう!私のコピーならバランさんを殺そうとするかもしれないし!」
「うん。とにかく中に入ろう」
(にしても、私のコピーはなんであんなに使命とかにこだわるんだろ…マクスウェルにそう植え付けられたから?)
いや、今はコピーの心情は置いとこう。
バランさんを助けないと。
筋書き通りなら目的は黒匣の破壊だけだ。
バランさんを探して階段を駆け上がる中、ジュードくんが後ろにいた私に尋ねてきた。
「優姫、ガイアスの目的って…もしかして」
「当たりだよジュードくん。ガイアスは異界炉計画を潰すために世界から黒匣をなくすつもりなんだ」
「そうか…ガイアスは、黒匣をなくすことで二つの世界の問題を根本から解決する気なんだね」
「正直しんどい話だが、ヤローなら有り得るか。けど、なんでバランがあぶねーんだ?」
「バランさんは結構物語の重要な人なんだよ。万が一バランさんが死んだら…大変なことになる!」
「では急ぐしかあるまい」
あーもう!なんで私のコピーなのに人の迷惑になるようなことするんだよ!
私のコピーのバホー!
「んがーっ!なにここ広すぎる!!私達今どこにいんの?!」
「倒れてる人はたくさんいたけど、みんな気絶してたから聞けないしね…」
早く行かないといけないのに、私達は部屋に飛び込んだり階段を駆け上がったりしたが広すぎて疲れてしまった。
私のコピーがやったであろう傷ついた人達、そして破壊された黒匣を頼りに進んできたが、とうとう手詰まりとなったのだ。
「おい、ここ見てくれよ」
「ん?」
アルヴィンがどこかの扉の前で何か見ている。
みんなで覗き込んだら、入口を壊そうとした形跡があった。
「…入ろうとして、やめたのか。それとも入れない事情ができたのか」
「さっきの奴からとったキーで入ろうぜ」
「とったんだ…」
「アルヴィンまじ屑」
「なんで俺こんな扱いになってんだ」
とにもかくにも、アルヴィンが強奪したキーを使い部屋の中に入ると、奥のモニターを強奪犯が操作し始めた。
「間違いない。アルクノアから渡ったデータで源霊匣の…ヴォルトをつくってたようだぜ」
「ヴォルトだと?」
「…ジランド、本気で源霊匣でエレンピオスを救おうとしていたんだね」
「あ、そいや、セルシウスはどうなったの?」
「ああ、そうだったな。セルシウス」
ミラが呼ぶと、ヒンヤリとした空気を纏いながらセルシウスが姿を現した。
ミラが使役してたのか。
「久しぶり、セルシウス!調子はどう?」
「マクスウェル様…」
「や、話は聞いたと思うけど、私はマクスウェルじゃないよ~。これからはミラの力になってあげてね」
「はい…!あなたに救われたこの命、大切に使わせていただきます」
ニコリと笑ってセルシウスは消えた。
なんか、ああやって感謝されると照れる。めちゃくちゃ照れる。
「そういえば、優姫はどうやってセルシウスを救ったんだ?ただ手を差し出したようにしか見えなかったが」
「うーん…なんかね、触れたらなんとかなる気がしたんだよね」
「おい、源霊匣のやろう…半刻ぐらい前に強制起動された記録があるぞ。どうやらこの研究棟の上の階にのぼったみたいだ」
「!それだー!バランさんもヴォルトもいるはずだ!でかした屑ヴィン!いこうジュードくん、ミラ!ってあだだだだ!」
褒めたというのにアルヴィンは私の頭をぐりぐりしてから部屋を出る。
その後を追いながら、階段をのぼっていたらまたジュードくんが話し出した。
「ガイアスも、いるかな」
「なんでそう思うんだ?」
「確信はないけど、ガイアスはジランドと同じことを考えたのかも。源霊匣の可能性を。だから、ガイアスと話がしたいんだ」
「けど、あっちは黒匣壊す気満々だぜ。話が通じると思うか?」
「その時はその時だよ」
「でもジュードくん。ジュードくんはガイアスのこと尊敬してるのに、敵対とかするのつらくない?」
そう尋ねたら、ジュードくんは小さく首を振った。
「僕はガイアスを尊敬してる。でも、ガイアスと同じ道じゃないと歩めないわけじゃないよ。そうじゃなきゃ、ガイアスやミラみたいな大人にはなれない」
「ジュード……」
「綺麗にアルヴィン省いたね……」
「じいさんも省かれてんだろーが!」
「えっあっ、別に深い意味はないよ?!二人は別格というか、ちゃんとアルヴィンも尊敬してるから?」
「聞かないでくれ優等生…あ」
照明が点滅し、一気に真っ暗になった。
ヴォルトが起動したせいで動力が落ちまくってるんだ。
ゲームならたしかすぐ明るくなったのに一向に照明が点く気配はない。
「すぐ予備動力が動くはずだが…動かねーな」
「目的地はもうすぐだ。このまま進もう」
「待って前見えない…誰か手を繋ごう手を…えい」
「ひゃあ?!優姫それ僕のお、おおお尻だよっ!」
「え、マジか絶対はなさねぇ」
「離せっての!」
「痛い!なんでアルヴィン私の位置わかったの?!猫目なの?!」
「ふむ。では私はこのあたりを」
「ふわぁっ?!み、ミラそれは僕の胸だよっ!」
「おたくらピンポイントでジュード攻めんな!おら、早く行くぞ!」
「はわぁっ?!あああアルヴィンそこは…っ!!」
「ジュード!どこを触られたんだ?!」
「ちょ、ジュードくんからの返事がかえってこない!アルヴィンなにしたの?!」
「奪っちゃった」
「アルヴィンんんんん!!」
その後、四苦八苦しながらなんとかたどり着いた扉を開けると、明るさに目を細める。
そうか、基地の中は窓とかなかったから照明消えたら真っ暗なんだ。
目の前には丸い球体。
ビリビリ…
「あれが源霊匣、ヴォルトか…?」
ジジ……ガガ……ドンッ
「ぎゃ!今ビリビリした!」
「雷を司る大精霊か…」
「ジランドみたいに使役する人間が見当たらない…これって暴走してるの?」
「そうだよ。君達のために『暴走させた』んだけどね」
唐突に声がした。
聞き覚えのある声だ。当たり前か。
私の声なんだから。
「お前は!」
「バランっ!」
声のした方を見上げると、止まってしまったエレベーターの上にバランさんを精霊術で捕らえて私達を見下ろす私のコピーがいた。
あの術はプレザがキジル海瀑で私を捕らえた時と同じようだ。
「バランさんを離せ!」
「オリジナル、お前は筋書き通りの展開にしたいんだろうけどそうはいかない。この男がいなくなれば未来への可能性は潰える」
「なんだってそんなことすんのさ!私のコピーのくせに!」
「私を生み出したマクスウェルは私を棄てた。だから私はガイアスの元へ行くと決めた。居場所を作ったんだよ。お前がジュード・マティスにしたことと同じだろう」
「私がジュードくんにしたことと、同じ?」
「お前は居場所が欲しくて、ジュード・マティスを守るなんて勝手につくった使命に縋ったんだよ」
そうかもしれない。
私はこの世界での居場所を欲しがってジュードくんに縋ったんだ。
けど、それの何が悪い。
と言ってしまったら、私のコピーのことを何も言えなくなる。
私のコピーはオリジナルの私と違って口が達者で困るっての。
「お前にも信念があるのなら、それに関しては何も言わない」
ミラが私の前に行き、剣を構えた。
「だが、お前と優姫には決定的な違いがある。わかるか?」
「わからないね、ミラ=マクスウェル」
「人を、精霊を想う気持ちだ」
(ミラ…)
「そうだよ。優姫はいつだってみんなのことを想ってた。君みたいに、未来を知ってるからって悪用したりはしない!」
「悪用だって?酷い言われようだ。未来を変えることは悪いことかい?」
「ああ悪いね。正しくないってわかってて変えようとするのはな」
「アルフレド・ヴィント・スヴェント…何度も裏切った挙げ句、残されたその居場所にしがみつこうとしたくせに…」
コピーに言われ、アルヴィンは剣を肩に担いで「そうだな」と頷いた。
それから、私の頭をポンと叩く。
「けどよ、こいつは俺が最低なことをする前に止めてくれた。レイアを傷つけて、ジュードを傷つけるなんて馬鹿げた未来を変えてくれた」
「……」
「俺がここで背筋を伸ばして立っていられるのは、優姫がいたからだ。優姫は未来を筋書き通りに進んできたわけじゃねぇ、良い方向にいくよう努力してきたんだよ」
「……もういい、黙れ。私はお前らの仲間ごっこに付き合う気はない。こいつをお前らの前で殺すために………!なっ!」
「あ、ホントに苦手なんだ」
バランさんが身じろぎした途端、コピーの顔は青ざめ術を解いて五メートルは離れた。
ふよふよ浮きながらコピーは身体を震わせる。
術が解け、バランさんは落ちるもアルヴィンがなんとかキャッチした。
バランさんが地に足をつけながら、胸ポケットから小さな小瓶を取り出し、私達に見せてくれたが。
「ほら、ご飯食べてた時に言ってたからさ。優姫ちゃんそっくりの子が襲撃してるの見たとき、こっそり持っておいたんだ。たまたま仲間に研究材料って持ってる奴がいて助かったよ」
「……ジュード、これはなんだ?私には『虫』にしか見えないが」
「うん。『虫』だよ」
「あー…なるほどな」
四人がバランさんから距離を取る私とコピーを見る。
いや、だって。
小瓶の中にいるのは、虫だ。
「私は『虫』が大嫌いだ!ふはははそこもコピーされていたようだなふははは!」
「くそ…っ、つい反射的に逃げてしまった…!…ヴォルト!!」
バッとコピーが手を翳せば、ヴォルトは雷をバリバリと発する。
コピーも剣をつくり、私達に向けてきた。
「貴様らはここで消す…!」
「望むところだドッペルゲンガー!」
アルヴィンがバランさんを端へ誘導し、全員で武器を構える。
まさかのコピーとヴォルトが相手か。
腕が鳴るというものだ!
「優姫!やるぞ!」
「おぅよ!」
向かってくるコピーにミラが術を唱える。
けど大精霊クラスの術は打ち消せるコピーは片手でそれを消すと私達に剣を振り上げてきた。
キィンッ!
「ぬぐぐ…っ!」
「私はな、オリジナル。貴様の偽善じみた行動が大嫌いなんだよ」
「奇遇だね、私もあんたの根暗なとこ大嫌いさ!うぉりゃぁっ!」
受け止めた剣を振り払い、そこをすぐにミラが入り込み突撃するも、早口で詠唱するとすぐに術を放ってきた。
「狂乱せし、地霊の宴よ。ロックブレイクッ!」
「ミラ!」
「ゆくぞ、ウンディーネ!」
「!無駄だと言って…」
コピーの放つ術を避け、私が剣でコピーを追いやるとミラが大精霊を召喚する。
ウンディーネの術をまた片手で打ち消されたが、これが狙いだったのだ。
「もう一つ、お前と優姫の違いを教えてやろう」
「しまっ…!」
「仲間を信頼する心だ!」
「ぐぁぁぁぁッ!!」
術を消すその一瞬に飛び込んだミラが、私のコピーを斬りつける。
胸元を斬られ、首にかけていたらしい何かも切れて地面に転がった。
カラン…
「!ミラからもらった、友達の証」
「生み出された際に、それもコピーされたのか」
「……っ、そんなもの、私にはいらない!!私には、私にはガイアスだけでいい!!」
「あっ待てコピー!!」
時空を何かで引き裂くと、コピーは逃げるようにそこへ飛び込み消えた。
私はコピーが落としていった友達の証のコピーを拾い上げる。
自分の首にかかっているのと全く同じものだった。
「なんだろ…コピーのやつ、これを大事にしてたみたいだった」
「そのようだな…。しかし…」
「ん?わわわ、どうしたのミラ!」
「別人だとはいえ、優姫を斬ってしまった感覚がして少し怖かったよ」
「~っ、ミラ大好きだーっ!」
「おたくら何やってんの…」
「一応、ヴォルトもいたからね…?まぁ倒したけどさ」
ミラにむぎゅうと抱きしめられてたら、ジュードくんとアルヴィンが苦笑して私達を見ていた。
私達がコピーを相手にしてる間に、二人はヴォルトを倒してくれていたようだ。
球体ではなくなり、人の姿をしたヴォルトが倒れている。
「あいつの言葉は真だったか」
時空が歪む感覚がして身構えたら、切り裂いた時空から出てきたのはガイアスとミュゼだった。
「ガイアス、ミュゼ!」
「ジュード、お前達がエレンピオスに来て源霊匣の可能性に気付くと優姫のコピーに言われたが、その通りだったようだな」
「ガイアスは、源霊匣の…ヴォルトの使役を試したんだね。でも、その様子じゃ」
「そうだ。源霊匣は人に御しきれるものではない。この世界の黒匣を一掃するほか、術はない」
「私のコピーに未来を聞いたんなら、わかってんだろ!未来をどう創っていくのが正しいか!」
「俺は、お前達の語る未来は聞かぬ」
え、と身じろいだら、腕を組みながらガイアスは私をジッと見つめた。
「誰かの決めた未来に進むことのどこに意味がある?生きるというのは、己が考え選ぶことだ」
「ガイアス、ならなんで私のコピーを傍におくのさ」
「弱き者を死なせないのは、強き者の義務だ」
「弱き者…ね。たしかにコピーの方は情緒不安定丸出しだったな。いつぞやのミュゼみたいに」
「…断界殻は消させない。黒匣がある限り、エレンピオスにリーゼ・マクシアが蹂躙される可能性は消えないもの」
今のミュゼは、ガイアスに依存しガイアスに従っている。
私のコピーもそうなんだろう。コピーにとっては、もうなくすことはできない居場所がガイアスのところなんだ。
「間違ってるよガイアス!断界殻は壊さないといけない!黒匣もなくなったら困る人がたくさんいるんだよ!」
「何が間違ってるというのだ!断界殻を維持し、黒匣をすべて破壊した後に世界を一つに戻せばいい」
「苦しむ弱い人間は、ガイアスが守ってくれるわ」
「ジュード、ミラ!俺の理想がわからぬお前達ではないだろう?」
けど、ジュードくんもミラも首を振った。
「どんな理想も、人の気持ちを無視して押し付けたら意味ないよ。人が自由に生きるために黒匣は必要なんだ!」
「お前の言葉は可能性だけを語る恣意的なものに過ぎんぞ」
「そうかもしれない。でも、やめるわけにはいかない」
「ガイアス、これ以上ここにいるのは無意味です。行きましょう」
「待ってガイアス!街は…」
「手を出していない。だが、お前のコピーは独断で動き続けているようだな」
ガイアスはそう言うと、時空の切れ目にミュゼ共々入って私達の前から姿を消した。
「結局僕は……ううん、まだやれることはあるよ、あるはずだよ」
ガイアスも、ジュードくんも…私達の知る未来は関係ないと言った。
自分で考え、自分で選び、生きている。
(私とは大違いだな…)
筋書き通りにいかない未来に、怯えている。
「怖い会話終わったみたいだから、そろそろいいかな」
ヒョロッとバランさんが出てきて、私達は武器を直す。
「優姫ちゃんのコピーに動力切られちゃったみたいだからさ、なんとかしないとかなり困るんだよね」
「そういや予備も潰されてたっぽいな」
「なら、ヴォルトを使ったらどうかな」
ジュードくんが倒れてるヴォルトを指すと、ミラが驚いた顔をしている。
「あのガイアスが使役を諦めたのだぞ?」
「でも、やってみなきゃわかんないよ」
「……あーもう!ここは私に任せなさい!」
「えっ優姫?」
みんながいないとなると、動力を回復させるほどの力は出ない。
ただ三人が苦しむだけだ。
けど、なんかよくわからないが私にはセルシウスを蘇らせた力があるっぽい。
だから私にできることをやるのだ。
「ヴォルト」
ジジ……ガガ……
私はヴォルトの傍へ屈み、源霊匣に触れる。
消えていくそれとは反して、ヴォルトはゆっくりと顔を上げた。
どうやら、大精霊として蘇ったようだ。
「ヴォルト、ちょっと力を貸してよ。みんなが困ってるんだ」
コクリ
「んじゃ、この基地の動力を復帰させてくれる?」
コクリ
どうやら無口なタイプのようで、ヴォルトは頷き、また球体をつくるとビリビリからバリバリへと盛大に変化した音とともに雷を落とす。
しばらくすると、部屋から明かりがつきはじめた。
動力が回復したのだ。
「やったー!すごいよヴォルトー!」
スリスリ
「あっちょ、なんかビリビリするよ髪の毛逆立ってる気がするよ」
擦り寄ってきたヴォルトとはしゃいでたら、四人もクスクス笑っていた。
「助かったよ、ありがとう」
「バランさん、この人達は?」
基地にいた人達を助けて、入口付近で一段落ついていたら、ジュードくんが座り込む人達に気付いて尋ねた。
「ああ。みんな黒匣があっても、普通の生活を送るのが難しい人達なんだ」
「これって、ひょっとして」
「気付いた?アルフレド。ここのみんな源霊匣を使ってるんだ。新型黒匣の研究結果を出たからって来たんだけど、まさかあんな騒動に巻き込まれるとは」
「だが、微精霊ほどの力しか感じないぞ」
「そりゃそうだ。微精霊の源霊匣だからね」
バランさんがそう言えば、みんなが驚いた顔をする。
その様子にバランさんも首を傾げた。
「意外だな。源霊匣がどうやって生まれてるか知らないの?」
「そういや、誰も知らないな」
「細かい話は面倒だから、誰か他の技術者に聞いてもらうとして。簡単に言うと、精霊の化石あるだろ?あれに君達リーゼ・マクシアの人がマナを注ぐと、源霊匣が生まれるんだ。ただし、増霊極が必要になる」
「増霊極、だと?」
「増霊極を使ってマナを注ぎ込むと、精霊の化石に宿っている術自体が実体化する。それが源霊匣だ」
「黒匣とどこが違うんだよ?」
「術の精度が雲泥の差。昔あった医療算譜法ぐらいの精度が出るんだ。あれじゃ精霊を消費しちゃうけどね」
医療ジンテクス。今私が足につけているものだ。
私の場合すでに化石となった精霊を使っているが、昔は違ったのだろうか。
ジュードくんはいつの間にか集中モードに入っていて、ようやく顔を上げた。
「それってつまり、源霊匣は精霊を殺さないってことですか?」
「まぁね。精霊の化石に溜めたマナを使っているから」
「しかし妙だ。あのガイアスがヴォルトの使役を放棄したのだぞ。なのに、ここにいる者達は源霊匣を使うことができているようだが」
「ヴォルトのような大精霊クラスは別物だよ。どうやら精霊の力が大きくなれば、成功率は下がっていくみたいでね。ここの成功率はまだ五分五分かな」
それを聞いて、みんなの表情が明るくなっていく。
「それだけあれば、微精霊の源霊匣が黒匣の代わりになる日も来る!」
「そうすりゃ、黒匣を失うこともなく、精霊も死なないわけだ。ってことは…エレンピオスにも自然が戻るかもしれないのか」
「ティポが役に立ったんだな…」
…あ、てことはあの時ティポを取り返してたらこの未来はなかったってことか?!
…いや、多分大丈夫かな。
だって、みんな筋書き通りに進むわけじゃない。色んな思いを交差させながら、前に進んできたんだ。
きっと、これからも。
「ありがとうバランさん!この研究のおかげで、僕達…!」
「ハハ、なんでそこまで喜んでるかは知らないけどさ。俺達だけじゃないよ。君達がこの研究を守ってくれたんだ」
「え、僕達が?」
「そう。助けてくれなかったら、源霊匣の研究はきっと潰えていた。みんなもいつの日か、社会に戻っていける。優姫ちゃんも、ありがとう」
「えっあっえとあのその」
急に話を振られてテンパってしまう。
今回のことは、私のコピーのせいだというのに。
なんでお礼を…、そんな目で返してしまったら、バランさんはニコリと笑った。
「優姫ちゃんからコピーの話を聞いてたから、僕も着いてから研究データをコピーして厳重に保管したんだ。開いてない部屋があったろ?」
「あ…たしかアルヴィンが誰かから強奪したキーで開けた部屋が…」
「他は潰されてたけど、あの部屋に全部コピーしてたから無事だったんだよ。だから、ありがとう優姫ちゃん」
私がいたせいで悪くなっている未来なのに、バランさんは私のおかげと言って笑ってくれる。
それがすごく嬉しくて、ホッとして、アルヴィンの無駄に長いスカーフで目を擦ったら殴られた。
「源霊匣の研究…もっと必要になるね」
「目指すべき将来が見つかったようだな、ジュード」
「うん…僕にやれること…」
ジュードくんが、なすべきことを見つけた。
やりたいと思うこと、創りたい未来。
私も、見てみたいな。ジュードくんの、みんなの創っていく未来を。
「とりあえず街に戻ろうぜ。襲撃はされてないみたいだから、大丈夫だとは思うけど」
「ああ、そうだな」
「みんなにもこのことを教えてあげないと……優姫?」
「えへへー、ジュードくん逞しくなったなーって見とれてただけだよ。撲殺天使ジュードくん!」
「なんか不穏な単語が混ざってるんだけど?!」
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