chapter 04
DREAM
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…て…起き……!
(あ、ジュードくんの声だ)
…優姫…目を…て…!
(やっぱりジュードくんの声、好きだなぁ)
36.天使の微笑み
(ジュードくんが起こしてくれてるんだ。早く起きなきゃ)
ぼんやりした頭でそう決めて、私は目を開ける。
広がる視界に最初に飛び込んできたのは泣きそうに瞳をユラユラさせているジュードくんの顔だった。
「ジュードくん…なんちゅー可愛い顔してんの…涙目マジ天使」
「…もう、優姫のバカ」
やっぱりジュードくんは可愛いなぁ。
そういえばここは何処だろう、と上半身を起こし周りを見渡せばミラ達もベッドの周りにいてくれていた。
「優姫っ!」
「会いたかったよーっ!」
「もがっ…てぃほ…前見えんがな」
エリーが私に抱き着いてきたと同時にティポが頭にかぶりついてきて引っ張るも離れない。
久しぶりの感触だけど、前が見えませんティポさん!
「もーっティポ離れて!優姫、ホントに優姫なんだよね!」
「うん。年がら年中ジュードくんの卑猥な妄想をしてるのが私です」
「ああ、たしかに本物だな。こんな変態一人しか知らねぇわ」
「な、なんだとアルヴィンコノヤロー!」
レイアにティポを剥がしてもらって、本当だよと笑う。
そしたらアルヴィンに呆れられてムキーッと威嚇していたら、今度はローエンがクスリと笑った。
「こんな奇跡のようなことがあるとは思いませんでした、優姫さん…」
「ローエン、あのさ…もしかして、私のこと全部……聞いた?」
「はい、あなたのコピーさんから」
おそるおそる尋ねたが、やはり返ってきた返事に身体が固まる。
知られてしまった。
私のコピーからということは、きっと全部だ。
手が震えてしまう。
唇も震えて上手く話せない。
「あ、の…私…みんなのこと…騙してて…」
さっきまでの威勢は何処へ行ってしまったんだろう。
抱き着いてくれたエリーが離れてしまったことにも気付かず、私は泣かないように目をギュッとつむった。
「ごめん…っ、私みんなに怖がられたくなくて…みんなと、一緒にいたくて…っ」
「優姫」
「っ、ミ、ミラ……ごめむぎゅっ」
ミラの声が頭上から聞こえて、思わず身体を強張らせたら抱きしめられた。
何がなんだかわからなくて顔を上げたら、ミラは微笑んでいた。
けど、少し痛そうな笑顔。
「優姫、すまなかった。その足も、ジルニトラでも…私の代わりにつらい思いをさせてしまった」
「!ち、違う!私はミラにそんな顔してほしかったんじゃない!みんなには、ミラが必要で、私はいらなくて…ジュードくんやミラが傷つくのが嫌で…でも、そのせいでミラが受けなきゃいけない好意とか私が取っちゃって…だから…ごめむぎゅっ」
「優姫はバカです…!なんでいらないとか言うんですかっ!」
「エリー…」
謝ろうとしたらまたミラにギュッとされ、エリーには泣きながら怒られてしまった。
「あのなぁ…なら聞くけど、俺はミラ様の頭わしづかみしたり関節技決めたりしてたか?」
「……してない」
「だろーよ。おたくだからしてたんだ」
今度はポフッとアルヴィンに頭を撫でられた。
なんで…みんな、私のこと気持ち悪くないのか?怒ってないの?
どうしていいかわからず困惑していたら、レイアが私の手を握った。
「わたしが言ったことは、優姫の世界でのわたしがミラに言ったことと同じだったかもしれない。でも、わたしは優姫に言ったんだよ」
「レイア…」
「ミラとは違う形で優姫はジュードを変えたんだよ。ね、ジュード」
「うん」
傍で泣きそうな顔をしていたジュードくんが頷く。
それでも、私は何も出来なくて、クレインさんもナハティガルもジャオもアルヴィンのお母さんも…助けられなくて。
「だって私はこの世界に存在しない人間なんだよ…ミラの代わりに居場所に居座って、未来を知ってて結局誰も助けられなくて…っ!プレザやアグリアだって、本当は助けたかった…っ」
「プレザさんとアグリアさんなら生きてますよ」
「………え?」
ローエン、今なんて言った?
プレザとアグリアが生きてる?
「え、な、ど、どういうこと…?!だってプレザとアグリアは、霊山の山頂で…」
「たしかに山崩れで二人は落ちかけたけど、アグリアは私とミラが、プレザはジュードとアルヴィン君が引っ張り上げて助けたんだよ」
「ジュードくんと、ミラが…?なんで…」
私の知る未来と違っていて抱きしめてくれてるミラと、傍にいるジュードくんを交互に見たら、二人は顔を見合わせてから、私を見つめてほほ笑んだ。
「優姫なら絶対助けると思ったんだ」
「ましてや君が守った命だ。あんなところで終わらせたくはなかったんだよ」
未来が、変わっていた。
私がいてもいなくても関係なく進むと思っていた物語が、私が入って少し変化していた。
「な、なら…アルヴィンは裏切ったり…」
「してねーよ。お前と約束しただろ」
「じゃ、じゃあ、レイア、怪我してない?ジュードくん、傷ついてない?」
「怪我?うん、してないよ!」
「さすがに優姫が死んだ時は傷ついたけど…でも、それ以上に優姫が傷ついてたでしょ?」
私の顔を覗き込むジュードくん。
その顔が優しくて、あったかくて。
「優姫、ごめん。優姫の気持ちも知らないで僕、『頑張れ』なんて酷いことを言った。ごめん」
「ちが、ちがう…アレは私が卑怯で…ジュードくんの言葉があったら…決心できると思って…ジュードくんを悩ますつもりなくて…」
「優姫…」
「ごめん…でも…みんなが少しでも傷つかなかったなら…よかった…」
ボロボロ零れる涙を止める術を知らない私は、必死に言葉を紡ぐも上手く形にならない。
私の力では誰ひとり救えなかったけど、みんなが変わっていって誰かを救えたなら、私はこの世界に来て、よかったんだ。
ジュードくんは泣きじゃくる私にハンカチを渡して、微笑んだ。
「おかえり、優姫」
「~っ、うわぁぁん天使の微笑みぃぃぃぃっ!!みんな大好きだうわぁぁんっ!!」
ガバッとミラに抱き着いて大泣きしたら、なんだかみんながクスクス笑ってジュードくんが照れた顔をしていた。
「お、目が覚めたみたいだね」
涙もおさまり、大分落ち着いた頃、飄々とした感じの声が入ってきた。
「あとは君だけ起きなかったんだけど、みんなして傍を離れたがらなくてね。えーと、優姫ちゃん?」
「は、はははいです」
「未来を知ってるってことは、俺のことも知ってたりする?」
「アルフレドくんバラしたね?!」
「何で俺って決めつけんだよ…俺だけど」
ギロリとアルヴィンを睨みつけ、先程入ってきた男、バランさんに向き直る。
未来を知ってるとはいえ、バランさんに関してはあまり情報はない。
そもそも私は一回しかクリアしてないからそんなに覚えてないのだ。
「えーと…あなたはバランさんで、アルヴィンの従兄で、ここはエレンピオスでトリグラフのバランさん宅…?」
「おお。ホントに知ってるんだ」
「あと…足を引きずってるんだけど今は黒匣で歩いてますよ…ね?」
「アルフレド、この子ホンモノ?」
「本物の変態女だよ」
「今の流れでなんで変態扱い?!言っとくけど私バラアルも好きだからな!妄想してやるからな!」
キィーッとアルヴィンに抗議すれば、また頭をわしづかみされた。
コノヤロー!アルヴィンまじ許すまじ!
………ハッ!アルヴィンが裏切らなかったってことはハ・ミルでのアルジュイベントがなかった……のか?!
「じゅ、ジュードくん!アルヴィンフルボッコして馬乗りとかはしなかったの?!アルヴィンの上で泣いたりしなかったの?!」
「なんだ、優姫の知る未来ではジュードはそんな卑猥なことをしていたのか?」
「変なこと言わないでミラ!優姫もっ!な、なななんで僕がアルヴィンに馬乗りして泣くのさっ!」
「何か面白そうな話だね。俺にも詳しく」
「あーみんな。まだ街を見てないだろ。飯はバランに用意させるから行こうぜ」
「あだだだそういやまだ頭掴まれてたあだだだ!」
「鉄や石で出来た街…」
「これがエレンピオスの街、トリグラフだ。ようこそ、リーゼ・マクシアのみなさん」
外に出て、みんなが街を見上げて感嘆する。
知っているとはいえ、私も生で見るのは初めてだから思わず口が開いてしまった。
レイアとローエンは街灯を見ている。
「この街灯、精霊術を使わずに光ってる!」
「ふむ…空中を走るケーブルが発光エネルギーを伝えているようですね」
「こんな大きな街を精霊術なしにつくったなんて…」
「なんだか…少し恐ろしくもあるな…」
「だけど…みんな、私達とおんなじ人なんですよね」
「誰一人、精霊術なんて使えないけどな」
エリーの言葉にアルヴィンが皮肉るが、ジュードくんは小さく首を振った。
「異世界の街だけど、光の中に人間の生活があるのは同じだよね」
「ああ、そうだな」
「私の世界もこんな感じだなー」
そう言ったら、みんなが興味津々と言った顔でこちらを振り向いたから少し身構えてしまった。
先に質問してきたのはレイアだ。
「優姫の世界って、どんなの?」
「えーと、私の世界でもみんな精霊術は使えなくて、むしろ精霊はいないし魔物もいないんだ」
「町並みもこんな感じなんですか?」
「うん。けど、みんなそれなりに生きてる。私は学校に通っててね、帰ったら兄貴がいる。私がこの世界に来た日も、そんな普通の日だったっけ」
「優姫…」
「ミラ?むぎゅ」
またミラに抱きしめられてしまった。
ミラはいつから抱きしめ魔になったのか。
「私も…!」
「わたしもー!」
「ぼくもー!」
「ぐほぅっ!幸せだけどどういうこと?!」
エリーとレイア、そしてティポにも抱き着かれ困惑するも、男性陣は微笑ましく見てるだけだ。
「やっぱり…変な感じがします」
街をぶらぶら歩き、しばらくするとエリーが足を止めた。
「うん…なんだか落ち着かないところだよね」
「自然がないんだ」
レイアにジュードくんがそう言えば、ローエンは納得したように街を見渡した。
「確かに、木どころか草一本生えていませんね」
「黒匣使ってるからー?」
「というより、精霊がいないせいだろうな」
「その通り。精霊が減っていったせいで、自然がどんどんなくなってんだ。…エレンピオスの死は遠くない」
ふ、とアルヴィンが私を見る。
未来を知ってるなら、エレンピオスはどうなるか聞きたいのだろうか。
「聞きたいの、アルヴィン?」
「…正直言うなら、半々だな」
「そっか。でも言わないよ」
「え?」
「みんなが協力して未来を創っていくのに、私がネタバレしたら意味がないじゃん。私は、みんなが創っていく未来が見たい」
ジュードくんが、ミラが、そしてみんなが進む未来を見るためには、私は話してはいけない。
きっと話したら全てが変わってしまう。
今の私に出来ることは、みんなの手伝いと………あ。
「……しまった……!」
「優姫、どうした?」
「ミラ…大変だ。ガイアス側に私のコピーがついたけど、あっちも未来を知ってる!しかもなんか怒ってたし、ガイアスに未来喋って私達の行動阻止する気かも…!」
「大丈夫だよ優姫」
テンパってしまった私に、ジュードくんが微笑む。
「優姫の知る未来がどうとか関係ない。みんながいるんだから大丈夫だよ」
「そうだよ!あ、でもさ、これから先のことを聞かないでおく代わりに、アルヴィン君が裏切ったくだりの話聞かせてよ」
「私も聞きたいです!」
「おや、それは私も気になりますね」
「おたくら…」
ふふ、とミラが笑う。ジュードくんも、みんなも。
うん。やっぱり仲間って最高だ。
私は一人じゃないって思える。
みんな一緒なら、私のコピーが邪魔しにきても何とかなる気がする。
「よし、じゃあバランさんの用意してくれたご飯食べながらアルヴィンの屑っぷりを話すよ!」
「おいそれ俺の評価を確実に下げる上信頼なくさねぇか?!おいこら逃げんな!」
―――――――…
「はっはっは!アルフレド、それは酷いよ。屑だよはっはっは!」
「屑です…レイアとジュードに謝ってください」
「なんでやってないことで謝らないといけないんだよ…ていうか、俺マジでそんなことしたのかよ」
バランさんのところへ戻るとちょうど食事が用意されていてみんなで頂くことにした。
食べながら、私の知る出来事をかいつまんで話したら思いのほかバランさんが爆笑していた。
さすがアルヴィンの悪友。
ノリが良すぎる。
「まぁまぁ…僕はむしろアルヴィンにはたくさん助けてもらったよ」
「ああ。優姫が死んで自暴自棄になっていたジュードの世話をしていたのはレイアではなくアルヴィンだったしな」
「ガタッ、なにそのアルジュ。ちょっと詳しく」
「アルフレド…まさか二十年も会わない内にそんな性癖を」
「そんなってどんな?!優姫も変な妄想すんな!」
だって萌えんなってのは無理な話だよ!
アルジュ馬乗りイベントはなかったものの、ジュードくんの世話をするアルヴィンとかなんてアルジュ?!
ニヤニヤしていたら、バランさんが立ち上がった。
「もう少し話を聞きたいところだけど、そろそろヘリオボーグへ行かなきゃいけないんだ。食事が終わったらゆっくりしてくれてていいよ」
「あ、バランさん。僕達を見つけた場所を教えてくれませんか?」
「ヘリオボーグの先だよ。街の対岸にある丘の下で倒れてたんだ」
じゃ、とバランさんは部屋を出て行った。
残った私達はまた話を続け、食事を終えてゆっくりすることにした。
窓から街を見渡してみる。
(ここがエレンピオスか…ほんと、私のいた世界に似てる。電線みたいなのあるし)
「みんなは、これからどうするの?バランさんに聞いた場所へ行けば、リーゼ・マクシアに帰れるかもしれないよ」
ジュードくんがゆったりしてるみんなに問いかけるのが聞こえて、窓を背にして振り返る。
「それでさっきバランさんに聞いたんだ。ジュードはどうするの?」
「僕は、リーゼ・マクシアとエレンピオスの両方を救う方法を見つけるまでは帰らない」
そう、ハッキリと言ったジュードくん。
ジュードくんはなすべきことを自分で見つけたんだ。
本当はジュードくんには、そんな重たいものを背負ってほしくはなかった。
でも、ジュードくんはいろんなことを経験し、知ってしまった。
目をそらしたりはしないんだ。
「ジュード、私達じゃ役に立ちませんか?」
「もちろん、みんなのやりたいことが僕と一緒なら残ってほしい。役に立つとか、立たないとか、それ以前に心強いよ」
「ですが、黒匣や異界炉計画、ガイアスさん達のことを考えると危険でしょう」
「だからこそ、今一度、これからの行動を自身で決めて欲しいのだな?」
「…本気、なんだね?一緒にいたい、だけじゃダメなんだよね」
レイアがそう聞くと、ジュードくんは思いを語り出す。
「僕、エレンピオスに来て改めて思ったことがあるんだ。エレンピオスから黒匣はなくせないよ」
エレンピオスの人達は黒匣のおかげで生活をしているといっても過言じゃない。
ジュードくんは自分の目で見て、色々考えたんだろう。
きっと私なんかじゃ考えられないようなことを、たくさん。
「それでも断界殻はなくさなきゃいけない。僕は、僕なりの答えを見つけなきゃならないんだ」
「俺はエレンピオスの人間が困るような答えを出すつもりねーぜ」
「こうやって悩んでいる間にも…精霊さん死んでいってるんですよね」
「…みんな、聞いてくれ」
エリーが呟いたら、今度はミラが口を開いた。
「黒匣がなくならないのであれば、私は精霊が減らないよう新たな誕生を見守る。精霊も世界を循る一部。人間も精霊も、私が支えてみせる」
「ミラ…」
「考えていたことだ。黒匣をなくせない。ジュードがそう思ったのなら、それでいい。そうだろう、優姫」
ミラが私を見つめる。
そうだよ、と笑ったらミラとジュードくんから笑顔が返ってきた。
(そうだよ、ミラ。私は、ミラとみんなが離れ離れになる未来を、変えてみせる)
「迷っている時間が惜しい、ヘリオボーグへ向かおう」
「黒匣の研究をやってるところだから、異界炉計画についても何かわかるかもな」
「三人は着くまでに、答えを出してくれないかな」
レイア、エリー、ローエンに向けた言葉だ。
三人が向き合う問題、それからジュードくん達が向き合う問題。
今の私の役目は、見守ることだ。
それから……。
『ふざけるなよ…!こんな筋書き通りの展開、私は認めない!認めてたまるものか!!』
私の情報を元に生み出された、私のコピー。
彼女を止めないことには、筋書き通りにはいかないだろう。
「まったく…私がオリジナルであっちがコピーってどこの赤毛?!第七音素とか使えたりしないのか私!」
「ど、どうしたの優姫?」
「ジュードくん!私のコピーさん、なんか私とキャラ違くなかった?!よくよく思えばミニスカだったし!」
「!!」
「あれ、ジュードくん、ジュードくん?!顔が真っ赤になって固まっちゃったどうしようミラ!」
「思春期、というやつだな」
「生暖かく見守ろうぜ」
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