chapter 01
DREAM
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「君は…?」
幻想的な景色に溶け込む彼はすごく綺麗で、すごく儚く見えた。
01.偶然で必然で、運命で
「あっ、えと、私は」
どうしよう。目の前にいるのはジュードくん。
私が愛してやまないジュードくん!
(か、可愛いぃぃぃやっぱり可愛いぃぃぃ!!目クリクリしてる!髪サラサラしてる!)
生ジュードくんに会って私の頭は混乱しつつも最大に萌えていた。
当の本人は首を傾げて私を見ている。
「わっ」
風がぶわりと吹き、ジュードくんの手から紙切れが飛び去った。どうやら橋の下に落ちたらしく、ジュードくんは慌てて覗きに行く。
私もついていってみると、橋の下、つまりは水の上をこれまた幻想的な人が歩いていた。
ミラだ。
精霊の主、マクスウェル。
(!そっか、今はちょうどジュードくんとミラが出会う場所だ!)
「よし、拾いにいこう!」
「えっ?!あ、えっと君は…」
「私は優姫、えーと…多分旅人?」
「き、聞かれても…。あ、僕はジュード・マティス」
「んじゃジュードくん、いっくぞー!」
「ちょ、ちょっとまっ」
こうなりゃやけだ。
物語に着いていってやろうではないか。
幸いなことに大まかな流れは覚えている。
きっとこれからに役立つ知識になってるはずだ。
あわてふためくジュードくんを連れて、ミラが残した足場に飛び乗る。
う、うぉぉぉ水の上に乗ったよ私ぃぃぃ!
「あ、あった」
ジュードくんが先を進み、落とした紙切れを拾い後ろポケットにしまう。
私達の前では、ミラは鉄格子に向かって手を振りかざしていた。するとミラの周りを炎が揺らめき、大きな音を立て下水道の鉄格子を破壊したのだ。
ふ、と、ミラが振り返り、私達を見た。
「……」
声は出さなかったが、人差し指を口元に当てて「しー」と静かにするよう促される。
その姿が綺麗で、私達は声を出せなかった。
「君達が静かにしていれば、危害は加えない」
それだけ言い残し、そのまま中に入ろうとするミラに優等生なジュードくんは声をかけてしまったのだ。
「あ、あの、その先は研究所だよね…君は一体…」
「……」
「んっ?!んーっ!」
問答無用でミラはジュードくんを水球の中へ閉じ込めた。
あわわわジュードくんがあわわわ!
「おかしいな。私は静かにしてほしいと頼んだのだが…」
「ジュードくん大丈夫かーっ?!」
パァン!
ミラが前で首を傾げているのも見る余裕がなく、水球の中で息が出来ず苦しむジュードくんをどうにかしようと水球に触れたら、簡単に弾けジュードくんが膝をついた。
なんだ簡単に壊せるものなのか!それにしてもジュードくん大丈夫かぁぁぁ!
荒い呼吸を繰り返すジュードくんの背中を摩りながらあわあわしていると、前から訝しげな声が聞こえた。
「今のは一体…ウンディーネ、私は壊すよう命令したか?なぜ術を解いた?…答えられないのか。まぁいい」
ミラは私達を見据え、腕を組み話しかけてきた。
「君達は、そこで何をしていた?」
「げほっげほっ…お、落とし物があって、それを取りに」
「……」
「あっ待って!すぐ警備員がくるよ?」
「なので急いでいる。君達は誤解されない内に早く帰るといい」
そう言うと、彼女はスタスタと中へ入っていってしまった。
さすがミラ様。最初の頃は使命を果たすことしか考えてないから冷たい!いや冷たく聞こえるだけ、なのかな?
「って、うわっ」
「ぎゃっ!足場が消えてくっ」
ミラが作った足場が効力をなくし、ただの水へと変わっていく。
私達は慌ててミラが入っていった下水道の中へ避難した。
「危なかったー…てか戻れなくなったねこれ」
「うん…仕方ない、研究所の人に説明して中に入らせてもらおうか」
「了解ー!」
ほんのり薄暗い下水道の中を二人で歩いていく。
ああ、ほんとにジュードくんだー!
黒髪キレー…身体ほそっ!私負けてる!女なのに負けてる!でも悔しくない不思議!
「あの、さ。ユウキ、さんは、あそこで何してたの?」
「さんはいりません!」
「う…ユウキ…」
「よろしい!とくに何もしてなかったよ。ぼんやり歩いてただけで」
ほんとに何もしてなかった。
ぼんやり歩いてたのも事実。
ただ、トリップしたことに混乱してただけで。
ジュードくんは足を止めないまま私を見ると、少しだけ困った顔で頷いた。
「そっか。何か、泣きそうな顔してるように見えたから気になったんだ」
「へ?そんな顔してた?!」
「うん、してた」
「えー!」
私が抗議の声を上げると、ジュードくんはクスクス笑う。
ちくしょう可愛いな!
「おい!そこで何をしてる!」
「ひぇっ!」
唐突に怒鳴りつけられ思わず身構えた。
前を向くと、兵士らしき人物が私達の前に立ち塞がっている。
「子供?」
「えっと…勝手に入ってすみませんっ!」
「まぁ、本来なら警備行きだけど素直に謝ったからね。黙っててあげるよ。出口に案内してあげるから、おいで」
謝るジュードくんに警備員の兵士は仕方ないといった雰囲気になり、私達を手招きする。
ジュードくんはホッと胸を撫で下ろし、兵士のところへ向かおうとするから私は慌てて腕を掴んで止めた。
「わっ、優姫?」
「行っちゃダメだ。あの人は敵。研究所の秘密を隠すために私達を殺す気だよ」
「えっ?!」
「…ほぅ?勘のいい子供がいたもんだ」
おそらく仮面の下で笑っているんだろう。
兵士は笑い声を響かせると槍を構えた。
「大人しくしてれば、痛い目にはあわないよ」
「そんなっ」
「ジュードくん!」
困惑するジュードくんに兵士が槍を振り上げるのを見て、私は背中にかけた剣を抜き、槍を受け止めた。
(…そうだ、これは、戦うことは…これからしなければいけないこと…!大丈夫、私だって戦える!)
「たぁぁぁっ!!」
「ぐっ!この小娘がっ!」
「なっ?!うぁっ!」
剣で槍を弾いて、向かっていこうとしたら横から何かが私に突進してきて私は吹き飛ばされ地に倒れ伏せた。
体勢を整える間もなく、兵士が槍を私に向かって突き出してくる。
(やばっ!)
「はぁっ!」
「ぐぁぁっ!!」
思わずギュッと目をつむると、兵士の声が悲鳴を最後に聞こえなくなった。
「大丈夫?!ユウキ!」
「!ジュードくん!」
「はぁぁっ!」
ジュードくんは私が無事か確認すると、すぐに後ろを向き私に突進してきた魔物に拳を振るった。
ギャンッ!なんて犬みたいな声をあげ気絶したらしい魔物。…あれ、どちらかと言えば猫系?
どうやら兵士を殴って気絶させたのもジュードくん。
「なんとか倒したけど…こんなのまずいよ…」
肩で息をしながらジュードくんがそう零す。
私はすぐに立ち上がり、ジュードくんの前へ小走りで向かった。
「ジュードくんありがとう!めちゃくちゃ助かった!」
「えっ、あ、ううん。僕こそ、さっきは庇ってくれてありがとう」
私がお礼を言うと、少し頬を赤らめお礼を言われ返された。
こんの萌えキャラめぇぇぇ!!可愛すぎだぁぁぁ!
(けど…)
私は倒れる兵士と魔物を見ると、小さくため息を吐く。
これから私は、戦わなければいけない。
物語に着いて行くなら、その覚悟を持たないと。
…私だって、気を抜けば敵にやられて死ぬかもしれないんだ。
こんな雑魚敵に怯えてちゃだめだ。
頑張れ私!負けるな私!
「行こうジュードくん!」
「うん。教授を探さなきゃ…」
「へ?」
「あ、僕はね…」
下水道を抜ける梯子が見つかるまでの間に、ジュードくんが研究所にきた理由を聞いた。
そういえば、ジュードくんはハオ賞を取ったハウス教授を探してるんだっけ。
でも…ハウス教授は…。
(!もしかしたら、急げば間に合うかもしれない?アグリアが入る前に部屋にたどり着いて、あの装置を壊せば…!)
「ジュードくん!急ごう!」
「えっ?わ、わかった」
急いで下水道を抜け出て、広い場所へ出た私達はすぐに物陰に身を潜めた。
「警備員に見つかってちゃキリがないから、隠れつつ移動しよう。目的地はあの階段を登った先の右側の部屋」
「どうしてあの部屋に?」
「え?あ…」
(しまったー!つい目的地とか言っちゃってなんて説明するんだ私ー?!ジュードくん頭いいから嘘見破られるぞ?!)
それに、ジュードくんには嘘をつきたくない。
嘘をつくのは、きっと一番の裏切りだ。
「…ごめん。今は言えない。でも後でちゃんと説明するから、今は私を信じてほしい」
「…わかった。信じるよ」
頷くジュードくんに、私は泣きそうになった。
そうやってジュードくんは、何回人を信じて何回人に裏切られたんだろう。
私が知っている物語でも、何度も傷つき、何度も信じたジュードくん。
(絶対、ぜーったいジュードくんを守ってやる!ヒロインは守るべきだもんね!)
敵に見つからないまま部屋までたどり着いた私達。
どうやらアグリアもまだ来ていないようだ。
中に入ると真っ暗でほとんど何も見えない。
「ジュードくん、上に部屋の明かりつけるとこあるはずだから見てきて。私わからないからさ」
「わかった」
ジュードくんが暗闇の中、梯子を見つけてそちらへ駆けてくのを見送ると、私は装置のある方へ近づく。
触ってみると、何かの容器にたどり着いた。
目が慣れてきて、装置が確認できる。
…中にいて、悶えている教授の姿も。
(これを壊せば…!)
「うぉぉりゃぁぁぁっ!!」
ガキィィンッ!!
「えっ?!」
「ふぅん、侵入者ってあんたなの?」
「のぁっ!」
振り上げた剣は誰かに受け止められ、私は弾き返された。
後ろの装置まで飛ばされ背中がぶつかる。
(しまった…!追いつかれた!)
「ユウキ?!」
私の声に驚いたジュードくんが上から身を乗り出してきたが、私はそれどころじゃない。
明かりが点くと、殺傷能力の高そうな剣を持った少女が教授の装置の前に立っていた。
彼女が来たということは、教授は!
「ごば…っ…だま…し…たな…もうマナは…でな…」
彼女の背中越しに、教授が呻き、消滅する姿を私もジュードくんも呆然と見ていた。
「なに…ここ…」
ジュードくんが辺りを見回して、か細い声を上げる様をアグリアは愉しそうに見て笑った。
本当に嬉しくてたまらないといったように、彼女は剣を構えながら言う。
「絶望していく人間って、ほんと…たまんないっ!」
「うわっ!熱い熱いっ!」
アグリアの剣に炎が纏い、私に向かってきたが、あまりの熱気に集中力が乱れてしまった。
アグリアがそこを見逃すはずもなく、一直線に剣を私に振り上げる。
(さっきと同じようにはならないぞ!)
私は身体を屈め、アグリアへ突っ込む。
剣は私の頭を掠るが、怯んでるヒマはない。
「おぉりゃぁぁっ!!」
「ハハァ!あめーんだよッ!」
「んなっ?!」
うまくアグリアの懐へ入り込んだはずなのに、剣は容易くアグリアの剣で受け止められた。
(剣道部の子と遊んでたチャンバラごっこなら、ちゃんと入り込めたのに!)
「オラァッ!火旋輪!」
「危ない!ユウキ!」
上から飛び降りてきたジュードくんがアグリアを後ろから蹴り飛ばしてくれ、彼女が怯んだ隙になんとか抜け出すことに成功した。
火旋輪とか食らったら死にますがな!
「ジュードくんありがと!さてと…」
「彼女を倒すには何か…何かあるはず…」
構えつつも思考を巡らすジュードくんを庇うように前に立ちアグリアを警戒する。
大丈夫、ジュードくんには指一本触れさせないぜ!
私達の様子が落ち着いているように見えたのか、アグリアはイライラしたように足でダンダンと床を蹴りつけている。
「なに落ち着いてんだよ!」
その時、扉が開いた。ミラもここにたどり着いたようだ。
表情一つ変えず、私達の姿を見定めたミラはその場で立ち止まっていた。
ミラを見て、アグリアは剣をミラに向けて構える。
「アハ~、そっか、侵入者ってあんたの方か。こいつらつまんないからさ、あんたから殺したげる」
アグリアは何かを唱え始めると同時にミラは陣を始めた。
危ないと思い私は混乱しているジュードくんを連れてアグリアから離れる。
案の定、ミラは私達など気にせずアグリアに向けてイフリートを召喚した。
イフリートて…!ミラ様最強すぎです!
イフリートが放つ炎を顔にぶつけられ、痛いはずなのにアグリアはそれ以上に攻撃を受けたことに腹を立てミラに向かって行った。
「てめぇ!その顔ぐちゃぐちゃにしてやる!」
「それは困る」
ミラが剣を構える。
その様子にお人よしジュードくんは加勢に向かおうとするが、私はまたジュードくんを引き止めた。
「大丈夫だから!むしろ私達が行ったら邪魔になる!」
「でもっ」
「ほら」
このやり取りの間に、すでに決着は着いたらしい。アグリアは気絶しており、ミラは装置を見つめて思案しているようだ。
ジュードくんはポカンとしていたが、ミラは思案が終わったのか私達を見て少し呆れたような顔をした。
「帰れと言ったろう?まさか、ここが君達の家というわけか?」
「ううん。違う……ごめんなさい」
「あっ、私もごめんなさい」
「なら今度こそ早く去るといい。次も助かるという保証はないのだからな」
ミラはアグリアの懐を探り、この施設のカードキーを取ると、私達に背を向け歩き出す。
その姿に焦り、私達はミラを呼び止めた。
「ね、ねぇ、待って」
「私達あてがないの!ジュードくんの探し人も…その…いなくて。だから…」
「僕達も行っていい?」
二人して何故かオドオドしながらミラ様にお願いしてみる。
そんな私達にミラはクスリと笑い、こちらへ歩いてきてくれた。
「たしかに、それなら次も助かるだろう。君達は面白いな」
(ミラ様笑顔美しいぃぃぃぃ!!)
と私が悶えている中、ジュードくんはミラに手を差し出した。
「僕はジュード・マティス。こっちは」
「あっ!私は優姫です!」
「私はミラ。ミラ=マクスウェルだ」
ジュードくんと交代でミラの手を握り返し、ホッと安堵していたらジュードくんが「あれ…」と両手を見つめていた。
「今頃になって…震えが…」
「無理もない。殺されるところだったのだからな」
「私も…微妙に震えてる…」
こんな風に震えるなんて、初めてだ。
私は、怖かったんだ。それと同時に、助けられたはずの教授を救えなかったことを悔やんでいた。
(でも、ここで止まるわけにはいかないんだ!ジュードくんとミラに着いていくって決めたんだから!)
私は前を歩く二人にしがみつくように、背中を追いかけた。
「あれ、リリアルオーブが光ってる」
部屋を出て奥を目指して歩いていたら、ジュードくんがそう言って後ろポケットから光るオーブを取り出した。ミラも胸元から出している。
あれ、私持ってなくね?!もしかしたらそれでうまく戦てないのか?!
(あ、持ってた)
手荷物が光っていて、漁ってみたらリリアルオーブが入っていた。
この手荷物…よく見たらグミもたくさん入ってるし、なんか化粧瓶みたいなのも入ってるし、もしかして序盤のアイテム類全部用意されてない?
(でも一体誰が…)
「なるほど。潜在能力を覚醒させるものなのか。非力な人間には必要不可欠な品だな」
「人間にはって…なんかミラは人間じゃないみたいな言い方…」
「ああ、私は人間じゃない。マクスウェルだ」
「マクスウェルって…精霊の主の?!」
私が手荷物を漁っている間に話が進んでいた。
あわわ私話に置いてかれてる!
慌ててミラに話し掛け話題に滑り込む。
「どう見ても美人な人間のお姉さんにしか見えないよ!」
「当然だ。そのように身体を作ったのだからな。人類の半数、男性に有利な姿を選んだ故のこの姿だ」
「マクスウェルって、元素を司る精霊だよね…」
「信じられないか?」
「いきなり精霊だって名乗られても、さすがにね」
「では君たち人は、どのように自分の存在を証明している?」
自分の存在の証明?!
あああ私も証明するものない!!ジュードくんは身分証とか?って言ってるけど私身分証なんて持ってない!!
もしかしたらと思って手荷物を漁るが、やはりそんなアイテムは入っていなかった。
(ど、どうすんだこれ…なんか今後不安になってきた…)
「着いたぞユウキ」
「ふぇっ?!」
気付けば、カードキーを使わなければいけない部屋に到着していた。
ここに、クルスニクの槍が…。
息を呑み、先陣をきり中に入ったミラの後に続く。
「何これ…」
ジュードくんがそう漏らすのも無理はない。
奥にあったモノはゲームで見るよりも、恐ろしい雰囲気をした本物の兵器だった。私がいた世界では見ることなど到底ない、近未来の技術で作られた大型の兵器。
大砲をモチーフにしているのだろうか。
「やはり…黒匣の兵器だ」
ミラが兵器を見ている間にジュードくんが手前の操作盤らしきものを弄り、情報を表示する。
「クルスニクの槍…?創世記の賢者の名前だね」
「ふん、クルスニクを冠するとは。これが人間の皮肉というものか」
「ちょっ何してるのっ?!」
ジュードくんが振り返り、陣を描き始めたミラに驚愕している。
しかしミラは四大精霊と話をしているらしく私達のことなど眼中にないようだ。
「やるぞ。人と精霊に害為すこれを破壊する!」
光がミラの周りを包み、瞬く間に四大精霊が揃う。
イフリート、ウンディーネ、シルフ、ノーム。
テイルズゲーマーには聞き馴染んだ精霊の名前だ。毎回姿形は違っていたが、名前は変わらない。
「彼らが四大精霊…ミラは本当に、精霊マクスウェル…?!」
「はぁぁぁっ!!」
ミラの声とともに、精霊達は飛び上がり、クルスニクの槍を囲い全員で大きな陣を描いた。
ミラと四大精霊に気を取られて、私達は装置に近付く人影に気付かなかったのだ。
バンッと叩くような音が聞こえ、何かが起動する音が響く。
装置の前にはアグリアがいた。
「許さない…!うっざいんだよ…!」
そう吐き捨てると、アグリアは操作盤を狂ったように弾いていく。
途端にクルスニクの槍がその場にあるマナを吸収し始めた。
「うっく…!マナが…抜け、る…っ」
「正気かっ?お前もただではすまないぞ!」
「アハ、アハハハ!苦しめ…死んじゃえーっ!!」
身体を抱えるように苦しむジュードくんとミラを見てアグリアは笑い、そして倒れた。マナが抜けすぎたせいだろう。
「霊力野に直接作用してるんだ…」
「多少予定は狂ったが…いささかも問題はないっ」
「止める気っ?!」
「ミラは動かないで!私が取ってくる!」
「え?」
ミラが珍しく衝撃を受けた顔をしていた。
とにかく私はミラとジュードくんが苦しむのを見てられなくて、ミラの代わりに『カギ』を取りに向かう。
「これだ!普通に掴めばいいんだよね?!」
操作盤に浮き出ている『カギ』を掴むと、足場が崩れ始めた。後ろではジュードくんとミラが扉側へ吹き飛ばされている。
ちょっと待って、これ固い…外れない!
「早くっ外れろぉぉぉぉっ!!!」
クルスニクの槍が吸収を止め、停止すると同時に『カギ』は取れたがその衝撃のせいか私も吹き飛ばされた。
崩れる橋にたたき付けられる。痛いけど早く『カギ』をしまわないとと思いすぐに手荷物に突っ込んだ。
「ユウキ!!」
前を向くと、半分に崩れた橋の向かいにいたジュードくんが私に手を伸ばしてくれていた。
ミラは何か陣を描いている。落ちた際に衝撃を抑えるための何かだろうか。
「ジュードく…のぁぁぁっ?!!」
「ユウキーっ!!」
伸ばした手を握り返すどころか、伸ばし返すことも出来ず私はそのまま下へと落ちてしまった。
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