chapter 04
DREAM
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ふわり、ふわり。
身体が浮いているようだ。
あれ、私何してたんだっけ?
34.大切な居場所
「おい、優姫。起きろ」
「……んー」
「朝だ。学校休む気かお前」
ああそうだ。学校行かなきゃ。
兄貴に起こされて、ベッドから起き上がる。
私の寝ぼけた様子に兄貴は「やれやれ」と肩を竦めて部屋から出ていくのはいつものこと。
髪をくしでとかして整えて。
指定の制服に着替えて、鞄を持つ。
それから一階のリビングに降りれば、今日は兄貴が食事当番だからすでに朝食が並んでいる。
「昨日また遅くまでゲームしてたなお前。夜中に騒ぐな」
「えへへー。だってテンション上がっちゃってさー!」
いつもの風景。
いつもの会話。
いつもの一日の始まり。
いつもの……?
「どうした、優姫」
「あー…うぅん、何でもないや。早く学校行こー!」
……いつものように、学校に行かなきゃ。
「おはよう優姫!」
「おはよ~」
「昨日のドラマ見た?」
「すんませんゲームしてました」
もう、と呆れたように友達が私の頭を小突く。
いつものやり取り。
いつもの話題で、いつもの笑い声。
「優姫、優姫のお兄さんって大学行くんだよね?」
「うーん、どうだろ?てかなんで気になるの?」
「そりゃ、私も同じ大学行きたいもん!」
「へ、へー…」
いつもの会話で、いつもの返事。
モテる兄貴の将来をみんなが想像して、同じ道に行きたいと羨望する。
いつものように、友達が私に尋ねた。
「優姫は、やりたいこととかないの?」
「どうした優姫、今朝からボーッとして」
「あ、何でもないよ!いやぁ兄貴の作るご飯は美味しいなぁ!」
夕食も兄貴が作った料理が食卓に並び、向かい合って食べる。いつものこと。
今日はカレーだ。でも、違う。
このカレーは美味しいんだけど……何か違う。
『美味しい~♪これカレー?マーボーカレー?』
『うん。簡単だから医学校でもよく作ってたんだ』
「!」
「優姫」
「あ……なんだろ、私、何か、大事なこと…忘れてる気がして……」
頭がクラクラする。
身体がフワフワしている。
私は何かを忘れている。
何を?私は、何をしてたんだっけ?
『コホン…ユウキ、私も心配していたのだが?』
『!ありがとうミラ!むぎゅーっ!』
ミラ。
『なーに物思いに耽ってんの?』
『ほぎゃぁっ!あ、アルヴィンか…ビックリした…』
アルヴィン。
『ユウキ、海ってすごい…です…!』
『そうだよ!海は綺麗なだけじゃないんだよ!あははっ』
エリー。
『おや、ユウキさん、人生まだまだ先は長いのです。今は理解できなくて当然ですよ』
『ローエン…ありがと』
ローエン。
『…ふふふっ、わたしも早くユウキが走り回るの見たいな!』
『レイアまでぇぇぇ?!』
レイア。
「優姫」
「兄貴……私……」
いつの間にかテーブルからは料理は消え、向かいにいる兄貴はいつもの無表情で私を呼ぶ。
けど上手く返事ができなかった。
頭に響いてくるのは、私の大好きな人達の声。
「…行かなきゃ」
「会うのが、怖いんじゃなかったのか」
兄貴の言う通り、怖かった。
私の正体を知られて、気持ち悪がられて、拒絶されるのが怖くて仕方なかった。
ミラの代わりの私に、みんなが笑ってくれるのが嬉しかった。
いなくてもいい存在の私を、心配してくれるのが嬉しかった。
だからこそ、怖い。
みんなが笑いかけてくれなくなるのが怖い。
「怖い、よ。まだ怖い」
「…なら」
「でも、それ以上に、会いたい」
ミラに、アルヴィンに、エリーに、ローエンに、レイアに。
「ジュードくんに、会いたい……!」
世界に一人ぼっちになっていた私を見つけてくれた。
それがたとえ、誰かに仕組まれた偶然だったとしても構わない。
心配をすると言ってくれた。
信じると言ってくれた。
一緒にいたいと言ってくれた。
だから私は、ジュードくんを守ると決めたのだから。
「…しばらく見ないうちに変わったな、優姫」
「そうかな」
「ああ。…だが、お前にとって大切な居場所なら、簡単に手放したりするんじゃないぞ」
そう言って席を立った兄貴は、傍まで来て私の頭をくしゃりと撫でた。
本当はこのまま、この温かさに浸っていた方がいいのかもしれない。
苦しむことも怖がることもないのかもしれない。
でもそんな風に逃げるなんて、私らしくないよね。
「ありがと、兄貴」
「ああ。いってこい、バカ妹」
「えへへ、いってきます!」
兄貴は消え、周囲を包むのは暗闇だけとなった。
真っ暗闇の中を、私は走る。
怖いけど、行かなきゃ。
待っててくれなくてもいい。
真実がバレて私を拒絶してもいい。
それでも、もう一度だけでいい。
私は、みんなに会いたい。
「覚悟しろ、マクスウェルぅぅぅぅッ!!」
握った拳を、躊躇なく真正面に振り切る。
どこにいるかなんてわからなかったけど、どうやら当たったらしい。
「うぉりゃぁぁぁぁぁっ!!」
クリーンヒットだ、コノヤロー!!
パリンッ
「ぐぁっ!!」
「マクスウェル!どういうことだ…?!」
マクスウェルを殴り飛ばしたら、結界らしきものが割れ吹き飛んだ。
誰かの焦る声が聞こえ下を見たら、ジュードくんが苦戦しているのが見えた。
行かなきゃ…私の天使が戦ってるんだ、守らなきゃ!!
パリンッ
「ジュードくん、避けて!!」
私が叫んだら、ジュードくんはハッとして後ろへ下がる。
そこへ飛び降り、ジュードくんの前にいた誰かを蹴り飛ばせば容易くマクスウェルの方へ吹っ飛んだ。
私の後ろにいたジュードくんが息を呑む音がした。
「…ユウキ…?」
「や、ジュードくん!相変わらず天使だね!」
私の名前をまだ呼んでくれるのが嬉しくて振り返ったら、ジュードくんは瞳を震わせて笑ってくれた。
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