chapter 04
DREAM
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「…クルスニクの槍だ」
海から引き上げられるそれを見て、胸が痛くなった。
これさえなかったら、今が少しは変わっていたかもしれないのに、なんて。
32.募る感情の名前は
「ジュード?」
引き上げられる様子をぼんやり見ていたら、話しかけていたレイアが名前を呼んだ。
「あ…きっとこの後、研究所で組み上げ作業を行うんだと思うよ」
「なんだ、話聞いてた……」
グワンッ
船が凄い勢いで揺れ、体のバランスを崩す。正面を向けば、見たことのある術が展開されていた。
「南東の空だ!来たぞーっ!!」
兵の指差した先を見れば、また見慣れた姿がこちらへ飛んでくる。
あれは、ミュゼだ。
「一人残らずぶっ殺してあげる!!」
「ミュゼ、やめろ!」
「!ようやく見つけたわ、ジュード!みんな殺してあげるわ!」
ミュゼは術を展開しながら勢いよくこちらへ向かってきて、みんなが体勢を整えながら応戦する。
「悪いがやられる気はない!」
「ミラ…!あなたを殺すつもりはないわ…あなたにはまだエサになってもらわなきゃいけないのよ!」
「ミラをエサ呼ばわりすんなー!」
「そうです!…ネガティブゲイト!」
エリーゼが術を唱えるが、ミュゼは妖しく笑いそれを避けて髪から出てきた蔓状のものでエリーゼとティポを攻撃してきた。
けれどエリーゼ達に当たらないようにアルヴィンが剣で弾き返す。
「どーなってんだよその髪はよ!」
「あの代用品が殺してくれていたらよかったのに…!忌ま忌ましい役立たずねっ!!」
「!!…はぁぁぁぁっ!!」
「なっ?!」
「臥狼咆虎ッ!!」
バク転で飛び上がりながら蹴り上げ、下にたたき付ける。
衝撃でふらついたミュゼを、兵達が囲い、捕まえることに成功した。
「ミュゼ…君はどうして!」
「…私は…私は……私はリーゼ・マクシアを守っているだけよ!!」
「!…君の、リーゼ・マクシアを守るって何なの?」
攻撃の構えをといて、ミュゼに尋ねるも、彼女は錯乱しているようだった。
「知るわけないでしょう!」
「命じた者がいるな」
いつの間にか来たガイアスが、そう問うがミュゼは何も答えない。
けど、この反応でわかった。
本物のマクスウェルが存在する。
「ミュゼ、教えて。マクスウェルはどこにいるの?」
「!!」
ミュゼは体中を震わせ、力を放出し自分を押さえる兵達を吹き飛ばした。
「マクスウェル様をどうしようというの!!」
「本当に別のマクスウェルがいたのか」
ウィンガルの言葉に、またミュゼは体中を震わせた。
困惑と焦燥。今のミュゼは、情緒不安定だ。
「ミュゼ!マクスウェルはこんなことをホントに望んでいるの?」
「当たり前よ!!これを望んでおられたのですよね!さぁマクスウェル様!この者たちを裁く命を!!」
空を見上げ、手を広げるミュゼにみんなが構え直し、警戒する。
だが、何も起きる気配はない。
「どうなってるんですか……」
「わかりません」
エリーゼがローエンに聞くがローエンもわからない。
きっとこの場にいる全員が、今の状況を理解できていない。
ミュゼは唇をわなわなと震わせ、空へと高く飛び上がった。
「ウィンガル!出るぞ!」
「はっ!」
ガイアスも高くジャンプをすると、何処からともなく飛んできたワイバーン。
それに飛び乗り、ガイアスはミュゼを追いかけて空を駆けていく。
「陛下を追え!四象刃にも伝令しろ!」
ウィンガルが指示し、船はすぐに動き出した。
「ガイアスとミュゼはどこだ?」
イラート海停に停泊し、ウィンガルが僕達を船から下ろす。
辺りを見回しながらミラが尋ねたら、僕達に背を向けていたウィンガルがこちらを向いた。
兵を何人も引き連れて。
「どういうことだよ…」
「なんのつもりだー!黒ずくめー!」
「ちゃんと理由、聞かせてくれるんだよね?」
兵に囲まれ、武器を構えながらウィンガルに問えば、表情を変えることなく口を開いた。
「危険だからだ」
「危険……僕達が?」
「違う、ジュード。お前だ」
え、と思わず構えをといてしまった。
だがローエンは意味がわかったらしい。
「ジュードさんをマクスウェルに会わせたくない、そうなのですね?」
「……」
「僕がガイアスの邪魔になるから?」
「…奴らを絶対に逃すな」
僕達の問い掛けにウィンガルは答えてくれず、兵に僕達を連行するよう言い渡し、何処かへと行ってしまった。
どうしていいかわからず、こちらへ向かってくる兵にすら構うことができず立ちすくんでいたら、唐突に後ろから物凄い音がした。
「はぁっ!」
「よっと!」
振り返れば、ミラとアルヴィンが兵を蹴り倒していた。
「えいっ!」
「ティポ!」
「とぅ!」
気付けばレイアもエリーゼもローエンも兵を気絶させていた。
僕を押さえようとしていた兵も倒れている。
「さぁ、ガイアスさんを追いましょう」
「でもどこに行ったのかな?」
「おそらく、ニ・アケリアの霊山だ」
「なるほどな」
「早く追いかけましょう!」
困惑する僕を置いてきぼりにして、みんなは次の目的地の算段を始める。
むぅ、と頬を膨らませてみんなを見たら、こっちを向いたから僕は言うことにした。
「みんな、やるならタイミング合わせようよ…え、何でそんな目で見るの!僕が悪いの?!」
「あの黒ずくめめー!いきなり捕まえようとするなんてー!」
イラート間道を進みハ・ミルを通り抜け、ガリー間道を歩いている僕達。
しばらくは魔物との戦い続きで落ち着くことができなかったが、ようやく一息つくことができてティポが不満を漏らした。
「ホント、油断もスキもないよね!」
「ウィンガル、ジャオさんのこと教えてくれたのに、どうして…」
「彼の判断は、すべてガイアスさんが基準となっているのです。ガイアスさんのためなら何でもするし、ためにならないものは可能性すら排除する」
「ふーん、そんなにガイアスが好きなんだ」
「それはちょっと違いますよ」
レイアの感想にローエンが否定する。
「ふたりは友達じゃないんですか?」
「友達です。同じ理想をもち、同じ道を歩む……ね。だからこそ複雑なのです。最高の仲間であると同時に、最大の敵なのですから」
「なにそれー?わけわからーん!」
「わかります、レイア?」
「うーん、男性版乙女心…みたいなもの?」
「ああ。案外それ、あってるかもしれません」
あ、あってるのかなぁ…。
よくわからないけど、僕はガイアスの邪魔になるから危険だと言われた。
けど、だからマクスウェルに会わせたくないというのはなぜだろう。
「しっかし、ミュゼの奴も前とは別人だったな」
「別人じゃなくて、別精霊ー」
「いちいちうるせぇなこのぬいぐるみ」
ぐいぐいっとアルヴィンがティポを引っ張りエリーゼに怒られていた。
「ミュゼは何か焦っているようだった。おそらく、マクスウェルからの指示で動いていたのだろう」
「けど、それが途絶えた…ということですね?」
「ミュゼは、誰かに言われたことを守ろうとしてるだけって気がするんだ…前の僕みたいに」
ミラに言われたから、なすべきことをしようと決めた。
僕はミラに言われたからと自分の意志を持っていなかった。
けど、ミラと優姫についていくと決めたのは、僕の意志だった。
「ミュゼは許せない。けど…」
「それでも相手のことを考えてしまうのが、君だったな」
「けどよ、ミュゼは…」
「うん。決着はつけるよ。…つけなきゃいけないんだ」
―――――――…
「マクスウェル様!」
ニ・アケリアに着くと、生き残っていた人達がミラを見て歓喜の声をあげた。
マクスウェルと呼ばれ、表情を強張らせるもミラはそれに応える。
今の状況から、自分がマクスウェルではないと言えば里の人達が混乱するからだ。
「みな、あれから襲撃されてはいないか?」
「はい。ですが、先程霊山へ向かう影を二つ見ました」
「そうか」
ミラが振り返る。
おそらく、ミュゼとワイバーンに乗ったガイアスだろう。
ウィンガルももう向かっているかもしれない。
僕達は頷き、霊山を目指すため、ミラの社へと向かうことにした。
そして里から離れた先にある、ミラの社。
「あー、うるさいヤツだー!」
階段を上がると、ティポが社の前で仁王立ちしているイバルを見つけた。
「イバル!」
僕が呼ぶと、イバルは振り返る。
「イバル、ガイアスとミュゼが来ただろう」
「……はい。二人だけでなく、ウィンガルも霊山へ向かいました。…ジュード」
「イバル…?」
ミラに答えたイバルの肩は震えていた。
怒り?それとも…悲しみ?
「ここから先は、俺とミラ様だけでいく!貴様らは帰れ!」
「な、何言ってんのよ!ジュードがどんな想いでここまで来たか…っ」
「イバル、今はふざけている場合ではない。道を開けろ」
「!……どうして……俺はミラ様を守る使命をもった巫子!俺は特別だ!特別なんだ!」
悔しげに吐き出すそれは、今までの不満だったんだろう。
ミラはイバルを連れることなく、僕達を連れて旅をした。
それが、イバルにとってどれほど屈辱だったか僕には想像もつかない。
だけど。
「…イバルも僕も、まだ特別な存在じゃない」
「なに!」
「僕はどうやったら、ミラやガイアスのように特別になれるのか知りたい」
「貴様などになれるか!ミラ様を勝たせることもできず、あいつを見殺しにしたお前が!!」
そう叫ぶイバルに、みんなが目を見開いた。
イバルは、きっと優姫が好きだったんだろう。
ミラへの憧れとは違う好意で、優姫のことを…。
だからこそいつも優姫に突っ掛かり、口喧嘩をしていたんだ。
何でも言い合える存在だったんだ。
「あの時、僕が特別な人間だったら…助けられたかもしれない。ごめん、イバル」
「!……くそ、なんで俺は、こんなに悔しいんだ…っ!」
「…イバル。お前にはすまないと思っている。私は、結果的にお前を騙していた」
ミラがイバルの前に立ち、そう告げればイバルは首を横に振った。
「いえ…俺にとってミラ様はずっとマクスウェル様です。他にはいりません」
「イバル…ありがとう」
「……俺は、里を守ります。行ってください」
イバルはそう言って、階段を駆け降りて行った。
その背中は、何だか泣いているように見えた。
「次会う時はあの巫子と決闘だな、優等生」
「うん。それも良いかもしれない」
「わ、戦うのとか嫌いなジュードとは思えない台詞!」
「何か、イバルとはそうやらないと分かり合えない気がするんだよね」
「ふふ…その時は私が立会人をしてやるぞ」
ミラはクスクスと笑い、それから社を見据える。
「霊山へ続く道はこの奥にある。行くぞ」
頷いて、僕達は社の中へ入っていった。
「雨が降ってきたよ。このまま登るの?」
「…うん。危険だけど進もう」
雨でぬかるむ道を登ることにして、先陣をきる。
どんな道だろうと進まないといけない。
そのために、ここまで来たんだ。
「ジュード、焦るな」
「!ミラ」
「本物のマクスウェルに会う前に動けなくなっては聞くこともできない」
「そうですよ、ジュードさん」
ローエンにも言われてしまった。
そんなに焦っているように見えただろうか。
いや、きっと焦っているんだ。
早く行かなきゃいけない気がして、胸がざわつく。
キィンッ!!
まだ半分も進んでいない辺りで、何かのぶつかりあう音と共に地面が揺れた。
先を見ると、誰かの背中が見える。
おそらく、ガイアスだ。
「隠れてみんな!」
僕達は身をひそめ、様子を伺うことにした。
「私がこんなに苦しんでいるのに……どうして応えてくれないのよ!ずっと!ずっと!ずっと!!マクスウェル様ぁ…っ」
「精霊でありながら、なすべきことを自ら見いだせんのか」
「マクスウェル様のところには行かせない!それが今の私のすべて!」
「愚か……いや、哀れだな」
向かいにいたミュゼは自棄になり、ガイアスに術を放って逃げていく。
それをやすやすと避けたガイアスはミュゼを追いかけていった。
「さっきの、あの二人が戦う音だったのかよ…」
「かつて見たガイアスさんの力はごくわずかだったようですね」
地面を揺らすほどの攻撃を繰り出し、あのミュゼを圧倒するなんて…やっぱりガイアスは強い。
それに、ミュゼがだんだんおかしくなっていっている。
きっと、道を指し示してくれた人を失い、苦しんでいるんだ。
何をしたらいいか不安で、今の自分にも自信がもてなくて…。
僕も、もしかしたらそうなっていたかもしれない。
けど、優姫を失って苦しんでいた僕を、みんなが支えてくれたから、こうして前を向くことができた。
優姫の想いを、無駄にしないですんだんだ。
「ミュゼも、やっぱりどこか変でした…」
「ああ。だがここで考えていても仕方ない。今は先を急ごう」
「あの様子だったら、マクスウェルもこの山にいるっぽいし」
「うん、間違いなさそうだね」
行くしかないんだ。
早く行かないと、いけない。
何だろう、胸がずっとざわついている。
この先に、マクスウェルがいるから?
わからない。
だけど、急がないといけない気がした。
―――――――…
山頂まで着くと、ティポが騒ぎ出した。
「なんだろここー、すんごいー!びんびん感じるー!」
「あら…あなたたちだったのね」
僕達とは違う気配に気付き、身構える。
何かの渦が空中に浮かんでいて、その前を塞ぐように四象刃、アグリアとプレザが立っていた。
「プレザ…」
「アル…また敵同士になれるなんて、喜んでいいのかしら?」
「アハハ!またあんたたちをいたぶれるなんてサイコー!」
「悪いけど、今度こそ死んでもらうわ」
ジルニトラの時とは違い、プレザ達は臨戦体勢だ。
「そうはいきません。私は、ジュードさんをマクスウェルに会わせなければならない」
「ローエン…?」
「あなたがミラさんとガイアスさんを特別と感じたのは、二人が真に大人たる生き方をしているからです」
「アハハ!ジイさんはしてねーけどな!」
「お恥ずかしい話、そうなのでしょう。アルヴィンさんもですが」
「…ああ、俺もそう思うわ。正直、優姫がいなかったらもっと酷かっただろうな」
アルヴィンは少し悔しそうに頭をかいた。
けど、冷静な態度が気に入らないといった様子のアグリアは、冷めた表情に変わる。
「御託はもういいよ、ジジイ!あんたは先にヘブンリーしな!」
「アグリア!どうしてあなたはそうなの!」
「うるせぇブス!あたしはな、陛下を裏切るわけにはいかないんだよ!」
「そう…私達の居場所はここ。陛下は私達のようなゴミとされた人間まで傍においてくれた」
「ここで役に立てなきゃ、お払い箱なんだよ!」
構えたアグリアとプレザに、戦うしかない僕達も武器を構えるしかなかった。
「アル…私の手で殺してあげるわ!」
「ちっ、プレザっ!」
プレザが唱えてくる術をギリギリで避けながら、アルヴィンも銃で応戦する。援護するようにミラとエリーゼが向かうが、さすがは四象刃。
三人を普通に相手している。
「お前らに死ぬ以外の選択の余地はないんだよ!」
「勝手に決めつけないで!」
「はっ、相変わらずクセーなブス!」
アグリアはレイアと対峙している。
僕はローエンとアグリアを囲うように立ち、一気に畳み掛けることにした。
「掌底破ッ!!」
「あめーんだよクソガキ!!」
「くっ!…今だよローエン!」
ローエンの精霊術の詠唱が終わるのを見計らい、アグリアを逃がさないよう間合いを詰めれば、少しは当たったようだ。
「フリーズランサーッ!!」
「くそっ!ジジイは下がってろぉっ!!」
ブォンッと振り回す武器に、後退する。
アグリアは焦っている。これなら隙が生まれやすいはずだ。
「レイア!行くよ!」
「わかった!」
「「巻空鏡舞ッ!!」」
「ぐあっ!!てめぇら、丸焼きだッ!!」
「させません、クラッグワルツ!!」
「うわぁぁぁっ!!」
僕とレイアで怯ませ、再度ローエンの精霊術を当てれば、アグリアは膝をつく。
倒れないのは執念だろうか。
「きゃぁぁっ!!」
「プレザ…悪いが俺達の勝ちだ」
隣ではアルヴィンが膝をついたプレザに銃を向けていた。
アグリアをレイア達に任せ、慌てて止めに向かうがプレザは穏やかに笑った。
「アル…よかった。あの子の言う通り…そこがあなたの居場所なのね…」
「…ああ。あの馬鹿が残してくれた、俺の居場所だよ」
優姫のことだ。
そういえば、優姫はカン・バルクを脱出するとき対峙したプレザにアルヴィンの居場所はここだと言っていた。
優姫が言ってくれた、アルヴィンは僕達が好きだって言葉は本当だったんだ。
ゴゴゴッ
「!ぁ…」
「プレザっ!!」
おそらく雨でぬかるむ地面の上で派手に戦ったせいだろう。
地面が揺れ、アグリアとプレザのいた位置が崩れていく。
アルヴィンが手を伸ばすが間に合わない。
けど……優姫なら、きっとこうするはずだから――――!!
パシッ
「!ボーヤ…?」
「死んじゃ、いけない。アルヴィンのためにも、ガイアスのためにも」
全力で走ったおかげか、間一髪のところで手は届いた。
落ちかけたプレザの手を掴めた僕は、その手を強く握り締める。
絶対に離さない。離しちゃいけない。
だって、優姫が助けたんだ。命を引き換えに、助けてくれた命なんだ。
「優姫のためにもッ!!絶対に死なせないッ!!」
「!」
「アルヴィン手伝って!!一緒に引っ張るよ!!」
「…ああ!」
プレザを二人がかりで引き上げ、安全な場所へ移動させ一息つけば、同じくレイアとミラに助けられていたアグリアが睨みつけてきた。
「なんであたしらを助けた!!ここで役に立てなきゃ、あたしらはッ」
「あのガイアスがお前達をお払い箱だと言うと思うのか?」
「なっ!」
「私の顔をグチャグチャにしたいのだろう?何度でも相手をしてやる。だから生きろ。その命、決して無駄にはしてくれるな」
「…んだよ、それ!」
悔しげにアグリアが地面を殴ったが、レイアが傍に駆け寄り治癒術を施す。
「わたしが頑張っても、いくら努力しても報われないことがあるって、痛いくらいわかってるよ」
「ブス…てめぇ」
「でも、わたしの取り柄、それしかないんだ」
「……はっ、相変わらずクセーよ、お前」
レイアがいつも頑張ってるのを、僕は知ってる。
それに何度も助けられてきた。小さい頃からずっと。
黙ってしまったアグリアとプレザをそのままにして、僕達はあの渦へ向き直る。
「ここ…すごい精霊の力を感じます」
「マナが溢れ出ているようだな」
人一倍そういったものを感じ取れるエリーゼとミラが若干警戒する。
でもきっと、この先にマクスウェルがいると思う。
「奇跡的な霊勢ですね。わずかな変化で入り口が消えてしまいそうです。さまざまな偶然がこの場所を作り出したのでしょう」
「精霊術を使う時の魔法陣に似てるね」
「んなことより、ガイアスとミュゼの戦いで消えちまう前に行った方がいいかもな」
「僕から行くよ」
「ジュード…」
隣にいたミラに驚いたように呼ばれ、ミラだけでなくみんなを振り返る。
「よくわからないんだけど、急がなきゃいけない気がするんだ。だから、行こうみんな」
みんなが頷いたのを確認して、僕は入り口へと飛び込んだ。
中は暗闇だった。
その中でぼんやりと浮かぶ光に触れたら、辺りが明るくなる。
明るくなった視界で、ローエンは感嘆の息を吐いた。
「この世にこんな場所があるなんて…」
「あの世だったりしてー」
「こえーこと言うなよ…」
ティポの恐ろしい発言にアルヴィンが青ざめている。
四角い箱状の物が幾重にもつらなる不思議な場所。
浮いているのだろうか。下を見ても何も見えない。
ふと、下で何かが動いた気がした。
「ミラ」
「ああ、私も見えた。行こう、ジュード」
「うん」
躊躇なく下へ飛び降りれば、上からアルヴィン達が「元気だねぇ…」と苦笑しながらついてくるのが見えた。
トン
「変な場所ですね…?」
何かの力が加わり、ストンと地に足をつけることが出来た僕達は周りの景色に目を奪われる。
足元にはリーゼ・マクシアの世界が広がり、空は透き通るような青空。
幻想的な世界だ。
「ジュード!!」
「え?」
レイアが焦った声を出して、体を震わせた。
その視線を辿った先にいたのは。
「優姫……?」
もう二度と会えないはずの、優姫の後ろ姿だった。
next