chapter 03
DREAM
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「空中に停泊している艦へはどのように攻め入るつもりなのですか?」
「アグリアさんパンツ!パンツ見えてる!こっちには万年発情期の26歳がいるんだからちゃんと隠して!」
「俺に精霊術が使えたら迷わずぶっ放すんだがな」
「…ユウキさん、アルヴィンさん…痴話喧嘩はあちらでお願いします」
ローエンに怒られました。
28.私のなすべきこと
朝。
すでに外で待機していたガイアス達のところへ行くと、これからどうするかよりも先に地べたに胡座をかいて座るアグリアに目がいき厳重注意。
しかしアルヴィンに頭をわしづかみされぴーぴー言っていたらローエンに叱られ、少し離れてグスグスすることにした。
ウィンガルはそんな私達を一瞥し、昨日私を巻き込み話し合っていた作戦をローエン達に教える。
「城に繋いであるワイバーンを使う」
「だが城まではどうする?」
「俺の城に向かうのに策を弄するつもりはない」
ガイアス節キターッ!
とはいえこれでは伝わらないのでウィンガルが補足する。
「大通りから突破する」
「そんな!無茶だよ!」
「そうです、せめて二手に分かれて…」
「てめぇらの意見なんて求めてねーんだよ」
ジュードくんとローエンを一蹴するアグリアさん。
昨日散々私に意見求めてたじゃないスか…とは怖いので言わないでおく。
「ジュード、お前のなすべきこと、わかっているか?」
「うん。ミラを勝たせる…それが今の僕のなすべきことの一つ」
「……」
「?ガイアス?」
「……行くぞ」
ガイアスは答えたジュードくんに何か言いたそうにジッと見つめたが、私をチラ見して何も言わず先を歩いていった。
というか、昨日のガイジュミラジュイベント見逃した!!
「教会の脇から市街に続いている道があるわ」
悔しがっている間も、ウィンガルはジュードくんを睨んでから進み、アグリアはそれについていき、プレザは私達に一言だけ告げるとガイアス達の後を追った。
「もー!なんで仲良くしてくんないのー!」
「うふふ、どうしましょうか?」
ティポが騒ぐと、隣でミュゼがおっとりと話す。
思わずミュゼを見つめていたら、目が合った。
「教会の脇を抜けて、裏道から市街へ入り、そこからは屋根伝いで城を目指しましょう。そして、空中戦艦奪取と共に城と兵達を奪い返すのです」
ローエンの話に集中しようと目を逸らしたら、妖しく笑われた気がした。
「彼らは陽動を買って出てくれたんですよ」
「素直じゃないなぁ」
「あ、そういえばユウキにミュゼの紹介をしてなかったよね」
急に話を振られて慌ててジュードくんの方を向いたら、いつの間にかミュゼは私の前に来ていた。
「ミュゼはミラのお姉さんで、大精霊なんだ」
「初めまして、会いたかったわユウキ」
そう言って微笑まれ、私は思わず一歩後退してしまった。
(怖い)
妖しい笑顔に、一瞬心臓を掴まれたような錯覚がした。
「ジュードがユウキのことを探していた時から、どんな方なのか気になっていました」
「あ…よろしく」
「ところでミュゼ、お前はどこまでついてくる気だ?」
「どこまでも。マクスウェル様の手足となって、黒匣を使うアルクノアをせん滅するのが私の役目ですから」
「そんなことを命じた覚えはないが…」
「あなたが覚えていないのは勝手ですが、事実です」
覚えているわけがない。
そもそもミュゼにはそんな役目などない。
ミュゼの使命はシェルの存在を知る者の抹消なのだから。
「けど、大精霊が仲間になってくれるなんて心強いよ。ねぇユウキ」
「……」
「ユウキ…?」
「あ、いや何でもない!ミュゼ、よろしくね!」
「はい。よろしくお願いします」
ジュードくんが心配そうな顔をしたから慌ててミュゼに挨拶すれば、また人の良さそうな、けれど寒気のする笑顔を浮かべられた。
「では行くぞ」
ミラが先陣をきり、みんながそのあとを追う。
私も行こうと進もうとした時、ミュゼが私の耳元で囁いた。
「あなたの使命、ようやく理解したようね」
「!!ミュゼ、じゃあやっぱり私は…!」
「うふふ、早く行きましょうユウキ?」
それ以上は何も言う気のないミュゼはフワフワとジュードくんの後ろへ飛んでいく。
(ああそっか…やっぱりそうだったんだ)
「ユウキ?」
「あ、待ってレイアー!今行くー!」
「ぎゃあ高いふがふが」
「静かにしろっての!」
裏道から市街に、ということで屋根に飛び乗ったのだが、カン・バルクは雪の降る街だ。
もちろん屋根には雪が積もっていて、場所が悪ければ滑って落ちるのは確実。
つい高さと恐怖で奇声をあげかけたらアルヴィンに口を塞がれて叩かれた。
叩かなくてもいいと思います!
「みんな、伏せて」
ジュードくんが何かに気付き、全員に身をひそめるように言い、街の様子を見る。
市街地に配置されているエレンピオス兵を、ガイアス一行がざっかざっかと倒していくのが見えて、一同感嘆の息を吐いてしまう。
「ガイアス、強いですね…」
「すごい人だよね」
ジュードくんがガイアスを見つめている。
ちくしょうガイジュ萌えるはぁはぁ。
「ジュード!後ろだ!」
「え?!」
と、ミラがジュードくんを背後から狙うエレンピオス兵に気付いた。
しかしいち早く下からジュードくんを狙う輩へ攻撃が繰り出され、ジュードくんが振り返る時には敵は倒れていた。
下を見ると、ガイアスがキリッとジュードくんを見つめている。
それを見つめ返すジュードくんにアルヴィンが声をかけた。
「さ、俺達もさっさと行こうぜ」
「うん」
「ねぇジュードくん。私は今ものすごくガイジュ萌えを叫びたい衝動にかられてるんだけど、叫んじゃ」
「ダメだからねっ!」
「じゃあ今のガイジュ見つめ合いにヤキモチ妬いて割り込んできたアルヴィンにアルジュ萌えを」
「叫ぶなっつってんだろ」
しばらく進み、ようやく城の側まで来た時、少し遅れ気味のガイアス一行が見えてみんなが足を止めた。
「ねぇジュード、助けた方がいいんじゃない?」
「……」
「私達が向かえば、彼らの陽動が無駄になる。任せるしかない」
「みんな、陛下を助けるんだーっ!!」
「陛下と市民を傷つけさせるなーっ!!」
唐突に聞こえた声に、みんながまた下を見たら、いつの間にか街の人達が武器を手に集まっていた。
ガイアスはみんなに慕われる王様だ。
大きな力は必要ないというのに、あの王様は全く。
「ガイアス、あんなに人望あるんだ」
「お前の役目は…ミラを勝たせることなんだろ?それと…」
「うん、わかってるよアルヴィン。ミラを勝たせて、ユウキの心配もしなきゃ」
「ちょっ…ジュードくんまだそれ引っ張ってたの?!もしかしてガイアスに聞かれた時に匂わせた別の役目ってそれ?!」
うんと笑顔で頷かれて私は肩を落とす。
お人よしすぎるよジュードくん…たしかにこの中で足を引っ張ってるの私だけど!よく怪我しますけど!
「さ、行こうユウキ」
「うぅ…はっ!ワイバーンってことはまたあの組み合わせか!俄然やる気出た!行こうジュードくん!アルジュエリーアルジュエリー!」
「いやー!よくわかんないけどアルヴィン混ざってる感じがするからその呪文みたいなのいやー!」
「焼きぬいぐるみにするぞコラ」
ティポを引っ張ってアルヴィンはエリーに睨まれていました。
ロリコンどんまい☆…あだ!口に出してないのにいきなり頭叩かれた!
―――――――…
「艦橋を掌握しましょう」
「船尾のあれじゃないか?」
城の入り口付近の檻に入っていたワイバーンに乗り、空中戦艦へ飛び降りた私達。
アルヴィンが指差す先を眺めていたら、中から黒匣を装備した兵がわらわらと出てきた。
「ここからは力押しだ!行くぞ!」
「ラジャー!」
剣を構え、向かってくる兵を斬り上げていく。
各々もどんどん増える敵を倒していくが、数が本当に多い。
「ちょっとちょっと!さすがに多くない?!」
「二手に分かれよう。一方が艦橋までたどり着いて、この船を地上に降ろすんだ」
「たしかに。そうすりゃガイアス達の支援もある。ここの敵もどうにかなるな」
「問題は誰が行くかですね」
みんなが話しては離れていくのが見える。
私も剣を振りかぶり、ジュードくん達のところへ詳しく聞こうと思ったが、見てしまった。
レイアに近付く敵の姿を。
「僕はここに残るから、ミラとユウキが」
「レイアッ!!」
ジュードくんとミラの横を走り抜け、レイアの背後を狙う敵に剣を振り上げる。
気付かれた敵に黒匣で攻撃をされるも何とかかわし、斬りつけたあと一息つく。
「ユウキ!ありがとう!怪我は」
「ないないだいじょぶ!さぁて、お次は」
「はーっはっはっは!!俺の地獄耳で話は聞かせてもらったぞ!!」
ヒュルル…ドゴッ、ダンッ、バタン!
レイアと共闘しようとしていたら、空からアホの声がして落ちてきたが、場所が悪かったようで二回ほど物にぶつかり倒れる音がした。
頭痛くなってきたな…。
「な、なんだ貴様…」
ごもっともです敵さん。
しかしアホとはいえ一応ミラの巫子。
自分を囲ってきた敵を薙ぎ払うと、ドヤ顔で私達の前へやってきた。
「イバル?」
「あいつ、生きてやがったか」
ハハ、とアルヴィンが笑う。
だがイバルは私とジュードくんを見てドヤ顔継続。
「おい、偽物一号二号!貴様らの出番などない、ここからは俺の独壇場だ!」
「イバル!うん、お願い!」
「!くぬぬ…なぜ貴様は俺の活躍に嫉妬しないっ!」
「はいはーい!ジュードくんは常に可愛いけどイバルてめぇマジ許さん!!私はあれほど使うなって言っただろ!バカ!アホ!略してバホーッ!!」
「なぁ?!ぐぬぬ…っ!」
「もうイバルに任せてはおけませんな!てわけでちょっくら艦橋をショーアクしてきます!!」
「待て貴様!!俺の活躍の場だぁぁぁ!!」
うぉりゃぁぁぁぁとイバルが虫みたいにカサカサ登っていくのを見ながら私は階段を駆け上がる。
イバルは余計なことをするからな、私がしっかりしないとな!
「もうまた一人で…ユウキは後でお説教だね」
「まぁ今回はイバルもいるのだし、大丈夫だろう」
「本当……勝手なことをして」
「?ミュゼ?」
「何でもないわ、ジュード」
階段を登りきると、先に着いていたらしいイバルがドヤ顔で部屋の中にいてイラッとした。
「この船は、たった今俺が掌握し……来たか偽物二号!どうだ偽物二号!俺の方が早かっただろう!」
「二号二号うっさいわ!いいから早く船を地上に降ろせっての!」
「言われなくてもわかっている!…これ…じゃない…あった、コレだな」
「あーっ違うバカ絶対違うやめろバホーッ!!」
「ぬっ、ならどれだ?!言ってみろ偽物二号!」
「私だってわからないけど、イバルが、間違って…る、のは…」
「!おい、どうした偽物二号!!」
連戦した後に階段を駆け上がりながらも敵と戦い、思った以上に疲労したらしい。
足の痛みに耐え切れず、壁にもたれかかりズルズルと座り込む。
こんな場所じゃ医療ジンテクスも外せやしない。
「私はいいから、イバルが絶対に違うと思うのを押して…」
「ぐぬぬ……じゃ、じゃあこれだ!」
イバルが勢いよく押せば、空中戦艦がゆっくり下降を始めた。
やはり当たりだったようだ。
「!ほ、本当にこれだったのか…!」
「ほら、後は、みんなに音声が…聞こえるように」
「何を言っている。そんなのはすでに操作済みだ!俺達の声はすべてミラ様達に届いているのだ!」
「………………ん?」
あのドヤ顔今何て言った?
そういえばイバルは私が中に入った時に、何か喋ってたような……。
んで、私が見る限り今イバルが触ったのは下降するための操作盤のみ。
つまり、私が部屋に来てからの会話はすべて筒抜け…………。
「それより起き上がれないのか偽物二号!足が痛むのか!む、腕も怪我しているな!」
「いやぁぁぁぁ違うんです痛くないです超元気めちゃ元気だよ!!やだなぁもうイバルってば妄想癖強すぎだよアハハハハッ!!」
アハハハハ……ハハ…ハ…
「あの……ごめんなさいジュードくん……」
「うん。今すごく怒ってるよ」
「「ギャァァァァァァッ!!」」
下にいるはずのジュードくんはいつの間にか部屋の前まで来ていて、イバルと二人して悲鳴をあげたのすらみんなに筒抜けなのだった。
医療ジンテクスを外され、ジュードくんに背負われながらみんなのところへ戻れば、さらにいつの間にかガイアス達が船に来ていて高らかに作戦成功宣言をしていた。
―――――――…
カン・バルク城、謁見の間にて。
「ウィンガル、出発までは?」
「船の機能掌握のために兵達が動いていますので、数刻はかかるかと」
などチラチラとガイアス一行のやり取りを聞き、まだ時間がかかることがわかった。
ちなみに城に着いたら車椅子を用意され、今ミラが後ろに立っています。
ミラにも怒られたのは言うまでもない。
「まだ少しかかるみたいだね」
「では、それまで休むとしよう」
「あっじゃあ私は街を駆け回り…すみませんミラ様に行き先はお願いします」
ミラの無言の圧力に負け、ダラリと車椅子に体を投げ出しみんなと一時解散した。
ローエンはウィンガルと話しているようだし、レイアはアグリアとまた口喧嘩してる。
アルヴィンは一人になりたいようで壁にもたれて目を閉じているが、プレザがそれをチラチラと気にして見ていた。
エリーはジュードくんと何か話している。
「少し外に出たい。いいか、ユウキ?」
「あ、うん!」
珍しくミラが弱々しい声だったからびっくりした。
そういえばこの辺りのミラは何か悩んでいるようだったっけ。
どうしたんだろう…ミラ編をしていたらわかったんだろうか。
外は相も変わらず雪景色だ。
ミラは私を連れて階段横の飛び出た道に移動し、塀にもたれかかる。
「……ユウキ」
「うん、何?」
「…変なことを、聞いても構わないか?」
「?うん?」
変なことってなんだろう。
ミラらしくない言い方だな。
少し表情を曇らせたミラは、口を開き私に尋ねようとしたが。
「ユウキ、ミラ。こんなとこにいたんだね」
「ジュード、か」
城からジュードくんが出てきた。
どうやらジュードくんには聞かれたくない話のようなので、私は先程の話題に触れないでジュードくんに手を振ることにした。
「よっすジュードくん!」
「足は大丈夫?腕も…治療はしたけどレイアがすごく心配してたよ」
「あ、あちゃー…レイアのせいじゃないのにぃー…」
空中戦艦の上でレイアを助けた時についた傷だったのだが、正直私の力量不足のせいだ。
それでレイアに心配かけてちゃダメじゃないか私!
なんか私ダメなとこしか見当たらなくなってきた!
「……」
「ミラ?どうしたの?」
「いや…」
「もしかして具合が悪いんじゃないの?」
「たしかに…その可能性はあるな。ジュード、何か話してくれ。きっとそうしていたら治るだろう」
ミラの様子が変なことに、ジュードくんは気付き声をかける。
ジュードくんは「話かぁ…」と少し考えた。
「じゃあさ、外の世界ってどんな感じなの?」
「エレンピオスか?前に話した通りだが…」
「んっと…暑いとか寒いとか、街とか人とかってこと」
「よく知らないな…何か変だろうか?」
「ううん。ちょっとぐらい何かあるかなって思っただけ。昔だから忘れちゃったのかな」
「ふむ、確かに覚えていてもいい気もするが、私は知らないと口にしたな…」
「あ、そんなに考え込まないで。軽い興味だったから。ユウキは何か知ってる?」
いきなり話を振られてアワアワしてしまう。
説明してもいいが、してしまったら私は何者だよ的な話になってしまう。しかしジュードくんに嘘はつけない…!
「私がわかるのは黒匣が蔓延っている世界だということだ」
「そうなの?…どうして霊力野を使わないで、黒匣なんて使うんだろうね」
「きっと彼らは黒匣に魅せられてしまったんだろう」
それは違う。
エレンピオスはゲートの発達した人間をマクスウェルに取られたから、ゲートのない人間しかいない世界になってしまったんだ。
「私も君に、いや君達に聞きたいことがある」
「うん?何?」
「私にも?」
ミラが姿勢を正してそう言うものだから身構えたら、困った顔をされてしまった。
「何を聞けばいいのだろう…うむ」
「皆さん、船の準備が整いました。城へお戻りください」
「じゃあ、行こうか…ってうわぁ!!」
城から出てきたア・ジュール兵に呼ばれ、城へ戻ろうかとジュードくんは振り返り驚いた声をあげた。
ミュゼがいたのだ。
「ミュゼ、ジュードを驚かすな」
「うふふ。ねぇユウキ。少し二人でお話したいの。いいかしら?」
「!」
ミュゼはミラではなく、私を指名してきた。
これにはミラもジュードくんも驚いているが、私はヘラリと笑うことにした。
「ってわけだから、先に行っててよ二人とも。戻るときはジンテクス付けて戻るから」
「ああ…わかった」
「先に戻ってるね」
二人が城へ向かい、足音が遠ざかるのを見計らいミュゼは私の隣に座るような体勢で近付いてきた。
「さっきのような真似はやめてほしいわ」
「さっきのって」
「関係ない人間を助けようなんて、馬鹿な行為のことよ?」
「!関係なくはないよ…、みんな仲間だ」
「うふふ。あなたが何を思おうがどうでもいいのだけど、与えられた使命だけは忘れないでね?」
何も言い返せない。
何て返せばいいのかわからなかった。
「さぁ、早く城へ行きましょうか。『仲間』が、あなたを待っているんでしょう?」
本当に、返す言葉が見つからない。
城へ戻りみんなと合流し、また謁見の間へと向かうとウィンガルが兵達に指揮を取っているのが見えた。
「各突撃部隊に通達。敵拠点は巨大な建造物と推測される。室内戦用の戦闘連携を再確認せよ」
「はっ!」
「命令伝達の困難が予想される。伝令部隊に予備人員の確保を徹底させろ」
「了解しました!」
う~ん、よくわからんが何かウィンガルがすごく頭良さそうに見える。
なんて言ったら睨まれるから言わないけど。
そんなウィンガルの様子にミラが感心したように声をかけた。
「忙しそうだな」
「当然だ。勝敗の九割九分は戦う前に決するものだ」
「勝つべくして勝つ、ということか」
「安心しろ。お前達の戦力は計算に入れていない。敵を撹乱してくれればよし。それ以外は戦死しても、私の策に支障はない」
それ!この男私を顎で指して『それ』なんて言ってきやがりましたよ!
ムキーッと怒りを向けようとしたら、ミラが先に口を開いた。
「お前達はなぜユウキを狙う?アルクノアもユウキを狙っていた…それに」
「?」
「いや…」
私に何かを言いかけたが、ミラは言うのをやめてしまった。
ミラ、本当にどうしたんだろう。
「お前達に言う義理はない」
ウィンガルはそれだけ言うとどこかへ行ってしまう。
とりあえずマクスウェル云々の話は黙っていてくれるみたいだから安心した。
代わりにミラが気になる。
どうしたんだ、ミラ?
―――――――…
「わ、ラ・シュガルの兵隊さん?」
空中戦艦にて。
準備万端ということでガイアスのところへ行ったら、ちょうど動こうとしていたらしい。
すぐに空中戦艦に乗せられ、たくさんの兵が並ぶ後ろ側でガイアス達の様子を見守る。
レイアが驚いたように、ア・ジュールだけでなくラ・シュガル兵も集まっていた。
「わずかですが、私が招集しました」
「さすがローエン!てかあれ、アホ巫子?」
並ぶ兵達の最後尾に見慣れた姿。
言わずもがなアホ巫子ことイバルだ。
「あいつめ…ニ・アケリアでの使命を放り出したのか」
「ジュードくん、アホ巫子がこっち見てるよどうする?」
「うん…放っておこうか」
というわけでドヤ顔してきたのをスルーしたらなんかジェスチャーで怒ってきたがさらにスルーをしておいた。
「かつて俺達はリーゼ・マクシアの覇権を争い、互いに剣を向けた」
ガイアスの演説が始まった。
シン、と静まり返るなか、ガイアスの凛とした声だけが響き渡る。
「だが、この戦いはこれまでとは一線を画するものだ。敵の本拠地、ジルニトラの場所はすでにわかっている」
私が少し教えたからね!ドヤァ!
「臆するな、我が同胞よ!信頼せよ、昨日までの敵を!我らの尊厳を再びこの手に!!」
おおおーッ!!と兵達から声が上がる。
ほんとにガイアスはすごいなぁ。敵だった兵達すら味方にしちゃえる威厳がある。
ガイアスならリーゼ・マクシアの王様としてみんなを幸せにできるだろう。
「お、お待ちください!リーゼ・マクシア全域に高出力魔法陣の展開を感知!来ます!!」
艦橋から兵がそうこちらに伝えたと同時に、みんなが苦しそうな表情で身体を沈ませていった。
これはマナの定期吸収だ。
「なに、これ……マナが抜けるみたい」
「この感覚は…まさか?!」
「クルスニクの槍のマナ吸収機能を、世界中に向けて使ったんだ!」
「燃料計画が始まったか……民を犠牲にはさせん…リーゼ・マクシアは俺が!」
ガイアスだけは苦しみながらも立っている。
ウィンガルでさえも膝をついているのにさすがだ。
人々が倒れる中、唯一話が通じそうなガイアスの前まで行き、情報を伝える。
「上にあがって!高度があがれば影響しなくなるはずだから!」
「!…早く船を出せ!高度をあげろ!」
ガイアスの指示に、マナを吸われながらも兵は空中戦艦を動かし空高くへとあがらせた。
「どうやらこの高度では、魔法陣の影響はないようですね」
空気は少し薄い気もするが、空中戦艦は魔法陣の影響しない高度に達したため全員無事ですんだからよしとする。
最年少のエリーは頭がクラクラするようでペタリと座り込んでいた。
「頭…痛いです」
「医務室で診てもらおうか。一緒に行こう」
「はい…」
レイアがエリーを連れて医務室に行き、ローエンはウィンガルのところへ行ってしまった。
「あれ…?ミラがいないね」
「本当だな」
「僕、捜してくるね」
ジュードくんはミラを捜しに行ってしまい、残されたのは私とアルヴィン。
「何か、おたくとよく二人きりになるな」
「同意見なう。んじゃ新技考えよう!」
「んな元気ねーよ…。俺もマナ吸われて疲れてんだって」
「あ…そっか…えと、大丈夫?」
そう聞いたら、アルヴィンに驚いた顔をされた。
「な、なんだよこんにゃろ」
「いや…お前、本当にマクスウェルじゃないのか?正直、さっきマナを吸収されたとき、一人平気な顔で立ってて動いてたのを見たら、マクスウェルにしか見えなかったぜ」
「…私はある使命のため以外ではマナを吸収されない身体になってるんだ」
「え?」
「なんちゃってテヘペロ!てかアルヴィンとフラグ立てる気ないからジュードくん追いかけてくるね!」
何か言おうとするアルヴィンを放置して、私はジュードくんを探すために階段を登る。
ミラのところにいるはずだ。邪魔をしないように見ていよう。
そう思ってたのに。
「あれ、ユウキ?」
何故かミラと一緒におらず、雲を眺めているジュードくんを見つけました。
「えと…ミラは?」
「ああ、そういえばミラがユウキを探してたみたいだよ。話があるって」
「あ、そうなんだ…」
おかしいな。
ミラが話があるのはジュードくんで、ジュードくんはミラと一緒にいるはずなのに。
「ねぇユウキ。僕も少し話してもいい?」
「お、おう!なに?」
「あの、さ…クルスニクの槍を壊して、そのあとの話…」
…そうか、やっぱりだ。
私はジュードくんの代わりになり、ミラの代わりになっている。
割り込んでしまったんだな。
ジュードくんは言うのを止めて、首を振った。
「…やっぱり、何でもない」
「ジュードくん」
「なに?」
「私、めちゃくちゃ頑張るからさ、『頑張れ』って言ってくれないかな」
「?うん…頑張れ、ユウキ」
「………ありがとジュードくん!ジュードくん大好き愛してる!ジュードくんの笑顔にカンパイ!」
「も、もうっ!」
パチンとウインクしたら、ジュードくんは顔を真っ赤にする。
それを悦に浸りながら見つめてから、私はミラを探すことにした。
―――――――…
「ミーラー!」
「!ユウキか」
ブリッジの先で佇むミラを見つけて駆け寄ると、ホッとしたような複雑な表情をされた。
隣に立つと早々にミラに話を切り出された。
「ユウキ、私は……君達を騙していた」
「え?」
「いや、騙すつもりはなかったが、結果的にウソを……私は」
「ミラ」
ミラらしくもなく俯いてしまうから、私は手をギュッと握り締めたら顔を上げてくれた。
「ミラはミラだよ。ジュードくんだって絶対にそう言う」
「!ユウキ…知って…」
「ミラがミラだったから、ジュードくんはミラに憧れたし、みんながついて来たんだ。だから、胸を張っててよ」
「……ユウキは、何者なんだ?」
「私はただの優姫だよ。ミラ、クルスニクの槍ぶっ壊そうね!」
戸惑うミラにギュウッと抱き着いて、私はミラの温もりを確認する。
ミラは、みんなにとって必要な存在だ。
無くすわけにはいかない。
「!なんだ、揺れが…!」
「クルスニクの槍だ…ミラ、みんなのところに急ごう!」
「ああ!」
空中戦艦が揺れて空を見たら、一筋の大きな光が空へと伸びていた。
あの光の下にジルニトラがあり、ジランドがいる。
(よし、ジランドはもみあげ引っ張ってやる!決めたんだからな!)
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