chapter 03
DREAM
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「あった…クルスニクの槍だ!」
丘の上にあるのはクルスニクの槍。
それを下から見上げていたのは、周囲を死体で埋めるガイアスだった。
26.偽物と本物
「ガイアス!」
「そうか…ウィンガル達は敗れたか」
ジュードくんが名前を呼べば、ガイアスは振り返ることなく一人呟く。
本当ならガイアスなんて無視してクルスニクの槍のところへ行きたいが、ガイアスの周囲に入るだけで瞬殺されそうで動けなかった。
「やはりあなたも戦場に赴いていましたか」
「無論。これは俺の道だからな」
強い信念をもつガイアス。民を想い、民のために国を良くしようとするこの王が何を考えているのか、聞くためにミラは足を進める。
「答えろガイアス。なぜクルスニクの槍を手に入れようとする?」
「すべての民を守るためだ。力はすべて、俺に集約させ管理する」
「それはただの独占にすぎない。結果、お前も、守るべき民も、槍の力が災いし身を滅ぼすだろう」
「俺は滅びぬ。弱き者を導く意志がある限りな」
「…お前はひとつの重要な事実から目を背けている」
「なんだと?」
ガイアスは振り返らないまま、声色を変えるがミラは気にせず答える。
「お前がいくら力ある者であっても、いつかは必ず死ぬ。そのあとはどうなる?人の系譜の中でお前のような者がもう一度、現れるのだろうか?」
「…!」
「遺された者達は過ぎたる力をもてあまし、自らの身を過ぎ滅ぼす選択をする…それが人だ。歴史がそれを証明している」
「…ならば俺が、その歴史に新たな道を標そう」
ようやく振り向いたガイアスに迷いはなかった。
パチ、とガイアスと目が合う。
「…ガイアス、やはりお前も人間だな」
「ふ、そうだ。人間だからこそ俺にはリーゼ・マクシア平定という野望がある。…お前は、ただの欲望と捉えるのだろうがな」
「え…?」
ガイアスは私を見て、『お前』と言った。
精霊の主であるミラに向けてではなく、ガイアスは間違いなく私に向けて言ったのだ。
ミラが私に視線をずらしてから、再度ガイアスに向き直る。
「ガイアス、何を言っている?」
「わからぬならそれでいい。俺は、退かぬ!」
ガイアスは語らず、長い刀を構える。
「あなたならもしかしたらって思ってた…でも、クルスニクの槍は壊さないといけないと思う!」
「ええ。クルスニクの槍は悲しみを生み出すものです」
「悲しいのは終わらせないといけないんだから!」
「そうです!ミラはいつも正しいんです!」
「うん!ぼくたちはミラの味方だもんねー!」
「ま、そういうことらしいぜ?」
みんなが武器を構える。
私も、構えないと…!
ガイアスに聞かないといけない。私をマクスウェルだと思った理由を。
そして、クルスニクの槍を破壊しなければ!
私は剣を構えガイアスに突っ込んでいく。
「ガイアス、私達が勝ったら素直に道を開けて質問に答えてよ!!」
「フ…お前と剣を交えるのを楽しみにしていたぞッ!!」
「!!ぐぅぅっ!!」
何だこれ…なんでこんな細い刀でこんな力出るんだ?!
抑えきれない!!
ガキィンッ!!
「優姫!!はぁぁぁぁぁッ!!」
「甘い!!瞬迅剣!!」
「くっ!!」
剣を弾かれ後退すると、ミラがすかさず剣を振り下ろすがガイアスは軽く避けると技を繰り出す。
その間にエリーもローエンも術を唱えて発動させているというのに、軽く避けられている。
レイアとジュードくん、アルヴィンすら手に負えないようで苦戦中だ。
「こんの人間魚雷め!!うちの自爆兵器アルヴィンいけっ!!」
「いくかバカ!!いいからおたくは俺から離れんな!!」
ぐいっと体を捕まれて、アルヴィンの背後に隠された。
「なにこれアルヴィン私のこと好きなの?!しかし私には白衣の天使ことジュードくんがいるのでお断りします!!」
「黙ってろ!」
怒られた…!なんだってんだアルヴィンのバホーッ!
アルヴィンに塞がれてなかなか前に行けないまま、ミラ達もガイアスに押され一歩後退した。
「たいした強さだ」
「お前達も、さすがと言っておこう。だが!」
ガイアスが刀を構え直し、闘気を込める。
「クルスニクの槍は必ず手に入れる!」
「ちょっ、アレやばそうだよ!」
さすがのガイアスにレイアが冷や汗をかく。
私の前に立つアルヴィンは舌打ちをした。
「ち……まだかよ…」
「!しまった!」
時間をかけすぎた。
このままでは、あのバカがくる!!
キィンッキィンッ!
「!何者だ!」
ガイアスが構えた刀が上から投げられたナイフのような武器を斬り落とす。
空を見上げたら、ワイバーンが飛んでいた。
「そこまでだ!」
「イバル?何故ここに…」
アホ巫子ことイバルがワイバーンから飛び降りてきた。
ミラはここで見るはずのないイバルに驚きを隠せないでいるが、あのアホはわかっていない。
「ミラ様!本来のお力を取り戻し、その者を打ち倒して下さい!」
「やめろ!!イバル!!私は言っただろ!!『カギ』は絶対に使うなって!!」
「黙れ偽物二号!!貴様らとは…貴様とは違うんだ!!」
イバルは『カギ』を取り出し、クルスニクの槍に差し込む。
クルスニクの槍が、起動を始めた。
「どうだジュード、優姫!この俺が本物の巫子だッ!!四大様のお力が、今よみがえる!」
途端にみんなが苦しみだした。
マナが吸われているんだ。
「バカイバル!!ダメだ、このままじゃシェルがッ!!」
「!…ちぃっ!」
ドンッ
「ぐは…っ!」
「悪い、な…邪魔されちゃ、困る…んだ…」
たとえ間に合わなくても、走るしかなくて飛び出そうとしたら、自分もマナを吸われ苦しいはずのアルヴィンに腹を殴られた。
アルヴィンが私を後ろに隠したのは、妨害を防ぐためだったのだ。
「アホ…っ、こんなこと…ジランドの思うつぼだ…げほッ、げほッ」
思うつぼと言ったのが気になったらしくアルヴィンが私に何か聞こうとした瞬間、クルスニクの槍は空目掛けて光を放った。
雲を裂いて、光の球は飛んでいく。
「どう、なったの?」
クルスニクの槍が停止し、マナ吸収から解放されたジュードくんは何も起こらない状態に疑問符を浮かべる。
だが、ミラと私とアルヴィンは何が起きたかを理解していた。
「そんな……破られてしまった…そうか…そういうことだったのか!槍は、兵器などではなかった」
「ミラ…?」
止められなかった。
エレンピオスから、軍隊が来てしまった。
空を裂いて来たのは、大きな空中戦艦だった。
備わる大砲から戦場に火の玉が落とされ、大惨事が起きていく。
たくさんの悲鳴が聞こえる。
「なっ……!どういうことだ…!」
「ジランドは…最初からエレンピオスの軍隊をこっちに送り込むのが目的だったんだよ…っ」
「?!」
信じられない、とアルヴィンは膝をついて悔しがる私を見る。
みんなも空を飛ぶたくさんの空中戦艦に怯えていた。
「空を駆ける船だと…」
「ついにやった。くくくく…くはははは!!」
ガイアス、そして私達はクルスニクの槍の近くから聞こえた声に振り返る。
そこにいたのは、ジランドだ。
以前のようなか弱い表情はなく、傲慢そうな表情をしていた。
「ジランド!どうなってる!!」
「あれが、ジランド?!」
アルヴィンが怒鳴るが、みんなはジランドの豹変ぶりに驚いている。
「ジランド…お前!」
何も言わないジランドにアルヴィンが銃を構えたら、氷の刃が周囲を貫き怯んでしまう。
だがガイアスは動じず問い質す。
「ハ・ミルをやったのは貴様らか?」
「そう、俺の精霊、このセルシウスがな」
ジランドが手に持つ何かを翳すと、陣が展開され光と共にセルシウスが姿を現す。
ミラはセルシウスという名前を聞いて怒りをあらわにした。
「セルシウス…優姫の足をやったのはそいつか!!」
「!!あの精霊が…優姫を!!」
ジュードくん達も武器を構える。
ガイアスもハ・ミルの人達を襲われたことに怒っていた。
「我が民を手に掛けたこと……許しはせん」
だが、ジランドに向かおうとした瞬間、空から襲撃に遭った。
闘技場でミラと戦った、黒匣を使う兵士達が降りて来る。
「なんなの…この人達……」
呟いたレイア同様、全員がわけのわからない展開に困惑していた。
ジランドの近くに兵士が降り立つ。
「アルクノアのジランドさんですね?」
「ああ、そうだ。最初に言っていた女は偽物だった。本物はあれだ」
首だけを動かし、兵士に指示するジランド。
「アルクノアだと…貴様がナハティガルに黒匣を伝えたのか?!」
「くくくく…おい、本物以外は殺せ」
「装甲機動兵、前へ!」
崖を滑り降りてくる兵士達は詠唱もなく間髪入れずに攻撃を放ってくる。
かろうじて避けていたが、ジュードくん達が吹き飛ばされるのが見えた。
(ジュードくん…!!)
「ジランドぉぉぉッ!!」
「よくあの状態から回復したな。さすがはマクスウェルか」
「だぁから、みんなして勝手な解釈すんなって……言ってんだろーがっ!!」
ジランドに飛び掛かろうと走ると、行く手を拒むようにセルシウスが氷を私の前に突き刺していく。
けれど、セルシウスはまた私を見て悲しそうだ。
「セルシウス!!」
「!」
「そんな顔するくらいなら、私のところに来い!!そんな奴に仕えるな!!」
「…っ」
「ああもう!!ジランドだけは許さんッ!!今ここで……はっ?!」
ドスッ
信じられないことだが、本日二度目の腹部に打撃をくらいました。
くらわせてきたのはガイアスだ。
「やつらの狙いは貴様だろう。ここは退け!」
「げほ…じ、ぶんだって…狙ってた、くせに……」
私はほんの一瞬、意識を飛ばした。
私が意識を飛ばしたのはほんの少しの時間だった。
目をうっすら開くと、見えたのは頭から血を流すジャオの姿。
「エリーゼ、お前の両親を殺した野盗というのは…わしだ」
「え…?」
「これ以上お前を見守ることはできないだろう…だから、生きてくれ」
「ジャオ…さん…っ」
違う、違うだろ。
ジャオは殺してない。
ただ巻き込んでしまっただけだ。
「ジャオ……違う……」
思いのほか本気でガイアスに殴られたようで、目がちゃんと開かないし声も出ない。
どうやら今私はアルヴィンに背負われているらしい。
ジャオは意識を取り戻した私に気付いて、私を見て笑った。
「優姫、わしの罪は許されないが…お前の言葉に救われた気がした」
なに、聞こえない。
意識が朦朧としてきた、ジャオ、何て言ってるんだ?
「これからも、エリーゼの友達でいてやってくれ」
聞こえない聞こえない。
ジャオ、聞こえないよ。
―――――――…
「……ん」
「陛下、目を覚ましたようです」
今度はちゃんと目が開いて視界がはっきりとしてきた。
今回見えたのは、ウィンガルの顔のドアップ。
「ほぎゃぁぁぁっ?!うぃっうぃっうぃぃぃぃ?!」
「…うるさいぞ」
怒られた。ものすごく睨まれて怒られました。
アルヴィンははぐれたのかいなくて、今度はウィンガルにまさかの姫抱きされていた。
どうやら、ファイザバード沼野の中を歩くガイアス一行に連行されているようだ。
「うぃ、ウィンガルルートキタコレ…!」
「陛下、この女は本当にマクスウェルなのですか?」
あれ、何か馬鹿にされてる。
と、同時にうっすらと残ったジャオの姿を思い出した。
「ウィンガル!ジャオは?!」
「戦死した」
「…っ、そっか…」
「ウィンガル、それを下ろせ」
「はっ」
「ぎゃふっ!!」
前を歩いていたガイアスはいきなりそんなことを言い、ウィンガルは忠実に従い私をパッと落とした。
腰を打ち付け涙目になれば、私の喉元に鋭い刀の先端が突き付けられる。
「あ、あああの、ガイアス様?」
「答えろ、貴様はマクスウェルか」
「ち、ちちち違いますです」
「ならばどこで生まれどう生活し、なぜここまできた。説明できるか」
「そ、それは……」
できないことはないだろうけど、信じては貰えないだろう。
そう思い何を言おうか困惑していたら、アグリアとプレザが私をジッと見つめてきた。
「ほんとにこいつがマクスウェルかぁ?精霊術も使ったとこ見たことねーんだけど」
「けど、知り得ないことを知っているわ。私のこともジャオのことも…もしかしたら、ウィンガルとアグリア、陛下のことも色々知っているのかも」
しまった、疑われた原因はそれだったのか。
あげくの果てにはジランドの思惑からシェルのことまで喋っちゃってた気がする。
(これがいわゆる…自業自得!!)
「ならば質問を変えよう。お前の知る情報はどうやって手に入れたものだ?」
「えっとですね…夢で見ましあだだだだ嘘ですすみません!!」
ガイアスに冗談は通用しません。学習しました!
ガイアスに無表情で少し刺されて慌てて否定したらスッとまた喉元ギリギリにずらされた。
ちょっと痛かった…!
「言っても信じないと思うし、私そんなに知らないし…」
「では俺に弟がいることも知らないか」
「え?!妹じゃないの?!カーラさんて実は男だったの?!」
「ほう…これは俺と『妹』しか知らない情報なはずだがな?」
ぎゃぁぁぁぁ…もう私バカなの死ぬの?!
余程社外秘されている情報らしく、四象刃は驚愕した表情で私とガイアスを交互に見ている。
「陛下…やはり…」
「マクスウェルが世界を見守る神たる存在ならば、この娘がマクスウェルとなる」
「だ、だぁから私じゃな」
「ではあの女はマクスウェルか?」
「え……」
「表情が変わったな。その顔は肯定しているようには見えんぞ」
たしかに今のミラはマクスウェルじゃない。
けど、私だって違う。私はただの女子高生で、一般人で。
……この世界の人間じゃない。
「!陛下、敵がきました!」
「面倒だ。先を急ぐぞ」
「ぐほぅ?!」
俯いてたらプレザが敵の気配に気づき、ガイアスは私を肩に担いだ。
え、ちょ、ガイアスに担がれるのは怖い!!チェンジチェンジ!!
「あ、あの…せめてもっかいウィンガルに抱き抱えてもらうか、私も自分の足で歩きたい、な…」
とは言えないので、後ろにいるウィンガル達に懇願するように助けを求めてみるも。
「お前はうるさいから嫌だ」
「それに陛下が自ら運ぶことを選ばれたなら異論はないわね」
「つーか下ろしたら逃げるだろ」
早く……ジュードくん達に会いたいです……。
グスグス涙ぐんでいたらアグリアに「泣くんじゃねーようるせーな!」と怒られまたグスグス泣いたのだった。
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