chapter 02
DREAM
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どれだけ頑張っても、努力しても。
報われないことだらけだ。
だからって、諦められるわけないじゃないか。
24.同じことの繰り返し
「あれ?なんだか警備が手薄じゃない?」
クルスニクの槍がありナハティガルがいるであろうオルダ宮前。
レイア同様みんなが城に対して警備兵が少なすぎると気付いた。
「できればこのまま突破したいところだけど…」
「敵の本拠だからな。慎重に行くべきだろう」
「…いえミラさん。ジュードさんの言うようにやってみませんか?」
「おお!ローエンが珍しく大胆だ!んじゃ行こう!」
「っておいバカ優姫!……あー、じいさん、策はあるんだろうな?」
「策というほどではありませんがね。今は優姫さんの後に続きましょう」
「ああ、では行くぞ」
オルダ宮を守るように立つ警備兵数人を全員で素早く倒して、増援に備えて身構える。
しかし、誰もくる様子はなく、無防備に開け放たれた扉を不審に見つめた。
「増援がこないね…」
「王様のいる場所なのに…不思議です」
「罠かもしれないぜ」
アルヴィンが言うと胡散臭いなぁとじと目で見たら、こちらを見ずにアルヴィンに頭を叩かれた。
なぜバレたし。
「いえ、すでにラ・シュガル軍はア・ジュールとの戦いに向けて動いているのかもしれません」
「え?でも戦いが迫ったら王宮の守りは厚くなるんじゃないの?」
「もともとイル・ファンは南北を要害によって守られていますが、決戦都市としてはつくられていません。街の内部にまで突破されれば敗戦は濃厚です」
ローエンの話では兵士は王宮を守るのではなく、海上の防衛とガンダラ要塞に配置されるのだという。
「なるほどな。開戦が迫っている。時間を無駄にはできないぞ」
「んじゃ突撃だーっ!いざオルダ宮へ!」
「うん。みんな、行こう!」
私が駆け出したら、すぐにジュードくんが追いかけてくる。
あれ、なんか微妙に顔が怒ってないかジュードくん。
「優姫」
「はい?!」
「一人では行かないでね」
「…はい」
ジュードくんの笑顔が、すごく輝いていた…黒い感じに…。
走るスピードが落ち、グスグスと涙ぐんでたらエリーに心配されました。
オルダ宮を駆け回り、内部を警備する兵達を倒しながら王がいる間を目指す私達。
「でも王宮に入れるなんて、なんか感激!」
「入れたんじゃなくて侵入な。これでレイアも指名手配犯の仲間入りだ」
「ワォ!みんな指名手配犯か!なんかお宝探しに行きたくなるね!」
「なんで?!…はぁっ!」
ドスン、とジュードくんがツッコミと共に最後の兵士を倒し、ようやく一段落ついた。
敵の数は少なくなっているとはいえ、やはり連戦は少しきつい。
その上、一階ごとにガーディアン的なのがいるとは…なかなかに疲れた。
「皆さん、この先が謁見の間です」
「ローエン」
「大丈夫ですよ、優姫さん。…行きましょう」
ローエンが先陣をきり、扉を開けた。
「ネズミが侵入したようです。間もなく、ここへ」
「そのようだな」
謁見の間の中央、玉座に座るのはナハティガル。
その前にひざまづいていたのはジランドだ。
「来たか、マクスウェル。それから…小娘」
「ジランドッ!!」
「優姫ッ?!」
ジュードくんやみんなが呼ぶ声も聞かず私は走る。
まるで以前ナハティガルに突撃していくミラのように、私はジランド目掛けて走り剣を振りかぶった。
キィンッ!
「なっ!」
「貴様は槍のもとで待っておれ。マクスウェル狩りのあとは北の部族狩りといくぞ」
「か、かしこまりました」
ナハティガルに剣を受け止められ、動けずにいる私をジランドは横目で見てから陣に乗りクルスニクの槍のある部屋へと消えた。
「ぐぅっ!」
片手で剣を振られ、弾き返された。
ジュードくん達のところまで吹き飛ばされて少し咳込む。
そんな私の前に、ローエンが立った。
「ナハティガル」
「イルベルト。主である儂に、本気で逆らうのか?」
「私の主はクレイン様、ただお一人だけです」
「ふん。今なら許してやる。儂のもとに戻ってこい!」
けれどローエンは揺らがない。
「あの頃、あなたの内に見た王の器はすっかりかげりをみせてしまった」
「儂以外に、王に相応しい者など存在はせぬ」
「まだわかっていないようだな。人を統べる資質とは何かを」
「マクスウェル、資質など王には無縁だ。王は生まれ出ずる時より王よ」
「だから、民を犠牲にしてもいいと?」
ミラの問い掛けにナハティガルは答えた。
「そうだ。それが儂の権利だ」
王とは思えない、非道な答えだった。
(けど、ナハティガルは変われる。変われたはずだったんだ)
ジランドのせいで、ローエンと和解することもできなかったが。
「精霊も、今に支配してみせよう」
「人も精霊も、あなたなんかに支配されたりしないっ!」
「小僧が…マクスウェルとつるんですっかりつけあがりおって」
「僕のことはなんとでも言っていい。でも、ローエンがどれだけあなたのことで悩んだのかも理解してあげられないの?!」
「ジュードさん…」
ジュードくんはローエンが悩む様をずっと見てきたのだ。多分みんなも。
仕方ない、まずはナハティガルの性根を正さないといけないね。
(だって、ナハティガルは今、私の怒りに触れたのだ…!)
「民が悩むなど、当然!貴様らに安穏と生きる権利などない!儂のために命を費やせ!それが儂の民たる者の使命だ!」
「救いようがないな」
「時間のムダだったようだ。今、すべてを終わらせてやる」
使命という言葉を軽々しく使われ、ミラの目に怒りが篭るがナハティガルは槍を高らかに上げ、陣が展開された。
私にはわからないけど、何か大きな力が槍に込められていくのはわかった。
「クルスニクの槍が吸収したマナの部分転用だ」
つまり、今ナハティガルは民のマナを使っているのだ。
「私は、あなたを同じ道を歩む友だと思っていましたが…どうやらもう、引き返す道はないのですね」
ローエンが剣を抜き、ナハティガルを見据える。
「お前みたいに考えられたら、どんだけ楽なんだろうな。だけどよ、正直つきあってらんねーわ。裸の王様さんよ」
「こんな人が自分達の王様なんて信じらんない!ぜったい、変わってもらうから!」
「ジュードやミラ…みんな…友達を…守ります!」
「やるぞー!敵討ちだー!」
「あなたの野望も終わりだ!ううん、ここで終わりにしなきゃ!」
「覚悟しろ、ナハティガル!」
アルヴィンが、レイアが、エリーが、そしてジュードとミラが武器を構えた。
私も武器を再度構え直す。
「ローエンの気持ちも理解しないであげくの果てにはジュードくんをけなしたな?ナハティガル、ジランドの前にいっぺん殴るッ!」
ナハティガルはフッと笑い槍を振りかぶった。
「見せてやる!リーゼ・マクシアを統一する力を!」
「イルベルト!せめて儂の手で引導を渡してやろう!」
「できますか?あなたの歪んだ槍で!」
ナハティガルの槍とローエンの剣が重なり金属音が響く。
その隙にエリーと詠唱し、ミラが間髪入れずに火の塊を放つが、ナハティガルはそれを避けながらローエンと対峙していた。
(あの状態からどうしてあんなに動けるんだ?!)
「この槍で全て斬り捨てる。今までも、これからもだッ!もはや戦場に言葉はいらぬ!剣で語れ!」
「ローエン・J・イルベルト、参る!」
ナハティガルの槍は大きさに合わず俊敏な動きで私達に向かってくる。
正直避けるのが手一杯だが、戦わないといけないし言わなきゃいけないことがある。
私には剣だけでは語れない。
「ナハティガルッ!!」
「小娘、よくあの怪我でここまで来れたな?」
「あなたは騙されてるって言ったのに、なんで聞いてくれないんだよ!」
「…ふんッ!猛覇槍!!」
「え、うぉわっ!!」
槍に闘気が込められ、勢いよく振り下ろされるが間一髪のところでアルヴィンに放り投げられて助かった。
「一人で突っ走んなバカッ!」
「サンクスアルヴィン!!ついでにカモン!!」
「行ってこいッ!!」
アルヴィンの剣に飛び乗り、勢いよく振り上げてもらい重力に従って剣を構えてナハティガルに向かって落ちれば、ニヤリと笑われる。
「甘いぞ小娘!!時練爆鐘!!」
「なッ!!……なんちゃって!今だよジュードくん!!」
「!!」
「掌底破ッ!!」
私が剣を構え直しナハティガルの槍を受け止めると同時に、アルヴィンの背後からジュードくんが飛び出しナハティガルの腹部目掛けて技を繰り出した。
一瞬だがナハティガルが怯む。
「ぐぅっ!小癪なッ!!」
「巻空旋ッ!!」
「行きます!ブラックガイド!!」
そこをレイアが棍術で足止めし、エリーゼの術が発動する。
上手く当たったが、やはり王と言うだけありナハティガルはまだ槍を振りかぶった。
「破邪地竜陣!!」
「させるか!!ディストールノヴァッ!!」
「くっ!マクスウェル貴様ぁッ!!」
「今だローエン!!決めろ!!」
ミラが避ける姿にナハティガルがハッと振り返るが、ローエンの詠唱は終わった。
「ナハティガルこれで終わりです、エアプレッシャーッ!!」
「ぐ、ぐぉぉぉぉぉぉっ!!!」
圧力がナハティガルを押し潰し、手にしていた大きな槍は地面に転がった。
ナハティガルは玉座に倒れるように座り込む。
「ナハティガル、あなたが望んだ決着です。従ってもらいますよ」
「バカ者どもが…儂を殺せば、ラ・シュガルはガイアスに飲み込まれるぞ…」
「ですが、王とて罪は償わねばなりません」
ローエンの言葉に、ナハティガルは声を荒げる。
「関係あるか!…クルスニクの槍があれば…儂は絶対の力を…」
「ナハティガル!」
ミラは再度剣を構え直し、ナハティガルに向けた。
「人の分を超えた力は世界そのものを滅ぼす。お前も同様だ」
「ミラ、待って!」
「エリーゼ?」
「この人はローエンの友達だから…ローエンが言わなくちゃダメなんです…」
エリーがそう訴えればローエンは微笑み、そして真摯にナハティガルを見つめ歩みを進めた。
「ナハティガル、この国には民を導く王が必要です」
ナハティガルは俯いたまま荒い息を繰り返す。
「私もあなたと同じなのです。背負うべき責任から目を背けた……ナハティガル」
「…まさかイルベルト、貴様…」
「私とあなたとで、もう一度ラ・シュガルの未来を…」
「貴様は儂の生み出した業まで背負って…」
「構いません」
止めを刺さず、共に歩もうというローエンの真っ直ぐな言葉にナハティガルは穏やかに笑った。
今なら治癒術をかければ間に合う。
そして、ローエンと共に国をまとめられる。
(だから、私は…ッ!!)
「今度こそ守るんだああああッ!!」
「!小娘ッ?!」
剣を構えてナハティガルの前に立ち、上から降り注いでくる氷の槍を防ごうとした。
私の足を何度も突き刺した氷の槍だ。この大きさが刺されば一たまりもない。
けど、ナハティガルを救うにはこの攻撃を何とかしないと…!
「…ローエンっ!!」
ドンッ
呼んだのはナハティガルで、私の背中を突き飛ばしたのもナハティガル。
ローエンの胸に倒れ込む前に見たのは、ナハティガルの穏やかな顔で。
ザクッ!!
ザクザクザクッ!!
ナハティガルに氷の槍が何本も突き刺さった。
姿の見えない敵襲にジュードくん達が周囲に警戒する中、私はローエンの腕から離れてナハティガルに駆け寄る。
「ナハティガルッ!!なんで、私をッ?!」
「小娘……お前の、言う通りだった、な…」
「ナハティガル、ナハティガルッ!!」
「ローエン、国を…たの…む…」
ナハティガルはそう告げると目を閉じた。
解り合えたはずの友の死に、小さく肩を震わせるローエン。
私はナハティガルの前に、ペたりと座り込んだ。
「まただ…これじゃ、クレインさんと、同じじゃんか…」
「優姫さん…」
「また私は、庇われて、クレインさんもナハティガルも、生きなきゃいけないのに…!」
「優姫さん、私は想いをかけて戦った事で、最後の最後にナハティガルと解り合えました」
ローエンが私の肩を抱いて立ち上がらせてくれる。
頭を撫でられ、ローエンを見上げたら優しく微笑まれた。
「友と仲直りできたのです。後悔はありません」
「ローエン…でも、私は」
「クレイン様もナハティガルも、あなたに悲しんでもらうために助けたのではありませんよ」
「……うん」
「私もまた国を任されてしまいました。優姫さん、彼らの想いと共に前に進みましょう」
ローエンは、自分だってつらいのに私を慰めてくれている。
けど、こんなのあんまりだ。
私は何のためにこの世界に来て、ここまで来たんだ。
悔しくて、でもナハティガルの亡きがらの前で涙を流さまいと堪えて私はローエンの差し出した手を取り、前に進むことにした。
ジランドが使っていた陣に乗り、オルダ宮奥殿に行くと、最上層の望見の間に移動する。
だがクルスニクの槍はすでに消え失せていた。
「遅かったか…」
ミラはクルスニクの槍があったであろう場所を見渡す。
エリーとレイアも何もない空間に本当にここにあったのかと疑うが、ジュードくんが否定した。
「さっきの戦いでナハティガルは槍の力を自分に集めて使ってたんだから、ここにあったはずだよ」
「ジランドがいない…まさかあいつが?」
「そうだよ…ジランドはクルスニクの槍を持ち出したんだ…」
「優姫…」
どうしても俯いてしまう私はジュードくんが呼んでくれても反応できなかった。
「すでに運び出されたとなると、場所の特定が難しくなりますね。ひとまず宮殿の外に出ましょう」
「優姫、あの…」
「…行こうエリー。私は大丈夫だからさ」
「はい…」
エリーが手を握ってくれて、少し落ち着く。
私はみんなに頼ってばっかりだな。
優しいみんなに、私が返せるものなんてあるんだろうか?
オルダ宮の入口に戻ってきた私達。
目的地は決まってないが、とにかく走って飛び出したら、巡回から帰ってきた兵士に見つかってしまった。
「誰だ貴様ら!」
「おい、待て…。あなたは、もしや…イルベルト殿ではありませんか?」
兵士の一人が向かおうとする兵士を止めて、ローエンに訪ねる。
「ええ。そうですが……」
「伝令だ!通してくれ!」
ローエンが答えようとした矢先、兵士達を押し退けて街の方から一人の兵士が走ってきた。
「ア・ジュール軍の進攻だ!敵兵力およそ五万!」
その伝令を聞いたみんなに衝撃が走る。
とうとう、始まってしまったのだ。
「戦争が……始まった」
ジュードくんが俯く。
ガイアスは戦争を始めてしまった。
今頃はすでに開戦し、たくさんの人が命の奪い合いを始めている。
戦争を亡くそうと平和主義を定めた国で生きてきた私には、想像もつかないほど恐ろしい戦いなんだろう。
そう考えたら身体が震えた。
「ご、五万の大軍だと?東方辺境か?」
「違うサマンガンじゃない!イル・ファン北方、ファイザバード沼野だ!」
「バカな!どのようにしてあの地を攻略するつもりなのですか?!霊勢は変化していないはず!」
「イ、イルベルト殿!ア・ジュール軍がどのように進軍しているのかは未だ不明です」
ローエンに気付いた兵士は姿勢を正してローエンに現状報告をした。
話を聞いていたジュードくんがローエンに尋ねる。
「大丈夫なの?兵力はガンダラ要塞や海上に集中してるんでしょ?」
「今から兵を移動させて間に合うかどうか…」
「イルベルト殿、ご安心ください。ジランド参謀副長が敵の攻撃を予期し、すでに新兵器を移送中です」
クルスニクの槍のことだ。
けどジランドは戦争に勝つために使うんじゃない。目的は別にあるんだ。
「あなた、この伝令は誰の命令によるものですか?」
「ジランド参謀副長ですが…それが何か?」
「いえ、ありがとう」
ローエンの感謝の言葉に兵士は敬礼し、中にいる仲間に伝えに走っていった。
私達が倒したから大半は気絶してるけど…。
「何やら裏がありそうだな」
「ですが、今はファイザバード沼野へ急ぎましょう」
「優姫、大丈夫…?」
「だいじょぶだよレイア。急ごう!戦争なんて馬鹿げたもの止めなきゃね!」
「はい…!」
「優姫の足を傷物にして、ローエンの友達に手を出した奴をダンザイするんだー!」
「ティポ…!ありがとね、エリー!」
先を走るミラとローエンの後ろをレイアとエリーと走る。
その私の後ろ姿をジュードくんが心配そうに見つめ、アルヴィンが睨みつけていたのに気付かないまま。
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