chapter 01
DREAM
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「さぁまだまだだよ!行けーっ!」
ル・ロンド海停に着くと、なんかすごい車輪の音と明るい声が聞こえた。
12.困惑し始めた篭の鳥
「キャーっ!どいてどいてーっ!」
「あ」
遅かったというか何というか。
全力で車椅子を押していた男の子は海に落ちる前に手を離してしまった。
「うそーっ?!」
車椅子に乗ってた女の子の声はそのまま海に落ちてしまう。
うん、レイア元気だね。
ちなみに私を背負うジュードくんの顔を見ると、物凄く呆れた表情をしていて新鮮だった。
「ごめんなさい…だ、大丈夫でした……か?」
「レイア……ただいま」
海からはい上がってきたレイアは息も絶え絶えに、私達に謝罪をしていたが顔を上げて固まった。
「ジュード?!え、ええ!何してるの?!」
「いや、レイアこそ」
「あ、あれはこの子達がかけっこで競争したいっていうから、私を押してハンデつけないと勝負にならないと思って…」
「レイアが一番楽しんでみえたけど…」
あああ幼なじみ可愛いよぉぉぉ!!
なによりジュードくんがレイアにだけ気を許してる感があるのがたまらなく萌えるんだよね!
ジュレイでレイジュだよ可愛いよ幼なじみ!!
レイアは視線を泳がせながら私とミラを見て聞きづらそうに、でも聞いてきた。
「そ、それでさ…ジュードは何してるの?」
ミラは腕を組んだままレイアとジュードを見て首を傾げる。
「知り合いか、ジュード?」
「その、幼なじみなんだ」
「そうか。私はミラ=マクスウェル、ジュードの友達だ」
「よろしく、ミラ」
レイアはミラと握手をしている。
ああ私も握手レイアと握手したい!
「私は優姫!ジュードくんとは深く熱い関係で」
「関係を捏造しないで?!」
「…と照れるジュードくんを見るのが大好きな友達です♪よろしくぅ!」
「あ、はは…うんよろしく…ってちょっと、その足…!」
レイアは私の包帯ぐるぐる巻きの足に気付き目を大きく開く。
それから側にいた男の子と女の子から車椅子を受け取ると、指示を飛ばした。
「大至急、大先生に連絡お願い!患者さんが来るって!」
「ら、らじゃー!」
なんていい子なんだ子供達よ…!あとで頭撫でさせなさいよ!
「家に帰るんでしょっ?わたしも行く。これ使って!」
「あ、うん。それじゃユウキ、降ろすよ」
「おぅ!」
とはいえ足は動かないのでジュードくんに支えられてようやく座れた。
なんか腰も感覚がない気がするな…下半身が使い物にならなくなってる…ちくしょうイバルの言葉が胸に刺さるぜ…。
「大丈夫ユウキ?痛くない?」
「うん全然平気。さて、ジュードくんのご両親にご挨拶だ!えーと練習練習…『息子さんを嫁にください!』」
「まだ挨拶する気だったの?!」
ちなみにレイアに物凄く訝しげな顔をされた…。
すみません恋する乙女の前ではしゃいですみません。
しかしジュードくんはとても良いツッコミをくれるからやめられない止まらない。
ジュードくんの故郷を堪能する暇もなく、治療院まで一直線に来てしまった。
おぉう…ジュードくんの故郷…足治ったら絶対ウロウロしよう…。
「おおジュード!首都はどうだった?楽しくやってたのか?」
「ん、この子は?」
ぐぁっ!ミラ様みたいな美人じゃないから私は子供扱いかよ町の人ぉぉぉ!!
地味にショックを受けていたら、奥から女の人が出てきた。
(おおジュードくんのお母様!!わぁわぁ似てる生で見るとわかるよ似てるぅぅぅ!!)
「先生、診察はまだかい?」
「ごめんなさい、みなさん、急患がいらしたので続きは午後の診察に」
「ごめんね、みんな!またあとでねー!」
「ははっ。レイアちゃんもすっかりここの仕事が板についたな」
「もう立派な看護師でしょ」
ジュードくんのお母さんに言われ、嫌な顔もしないで私に「お大事に」と優しく声をかけていってくれた町の人達。
うぅすみません私なんぞが…。
「ジュード、彼女はこちらへ」
「あ、えと、よろしくお願いします!」
ジュードくんのお母さんは微笑み、私を診察室へ誘導してくれた。
「ディラックだ。動かないで、そのまま」
診察室の寝台に横たわる私の側に、ジュードくんのお父さんとお母さんが立っている。
ジュードくんとレイアは外に出させられてしまった。
ひぃぃご挨拶とか言ったけど緊張してそんなの出来ませんがな!
「優姫、です!よろしく、です!」
エリーみたいな挨拶になってしまいました。
「足に力は入るか?」
「あ、えっと、腰から下はあんまり感覚がないです」
「うーむ…」
ジュードくんのお父さんは包帯を取った私の足を見て唸ると、側で道具等を準備していたお母さんに声をかけた。
「エリン、こちらはもう大丈夫だ。あの子の傍にいてやれ」
「え、はい…」
あ、少しだけお母さんの表情が和らいだ。
やっぱり二人とも、ジュードくんを大切に思ってるんだ。
「あといくつか検査をする。もうしばらくそのままでいてくれ」
「ラジャーです!」
ジュードくんのお父さん、ディラックさんは色々装置とか触ったり私の足を触ったりと検査をしている。
不意に、表情が変わった。
「キミ、どうして霊力野がない…?」
バ レ た !
いきなりバレた?!あっそっかお医者さんだもんね!なんか診察の時ってゲートとか調べるもんね!
「ああああのですね、説明すると長くなります!でもゲートなんてなくても剣があるので全然平気です?あれ何言ってんだ私?!」
「…キミは、息子とはどういう関係だ?」
「友達です!!ゆくゆくは息子さんを嫁にもらいたいです!あっ言っちゃった!」
テンパる私を見ながら、ディラックさんは私の傍に立つ。
目が、真剣だった。
「キミはもしかして、別の世界から来たんじゃないか?20年前に豪華客船に乗って」
そうだ、ディラックさんはエレンピオス人だった。
アルヴィンと同じように、私を疑っているんだ。アルヴィンとは違うのは、彼はジュードくんを心配して私を疑っているところか。
「残念ながら私の今の年齢は16歳です」
「……」
「けど、私はエレンピオスとは別の世界から来ました。嘘はつきません」
「!!」
ディラックさんは驚愕するも、後ずさることなく私を見据えた。
嘘は、つかないようにしよう。
いつかジュードくんに、みんなにもちゃんと言えるように。
なにより、この人は誰にも言わないだろう。
何となくそう思った。
「帰りたいと、思うかね」
目をそらさないまま問うディラックさんに、私はブイサイン付きで断言してやった。
「ここでやるべきことがあるので、全然思いません!!」
ディラックさんが呆気に取られた顔をしていたのはちょっと面白かった。
「具合はどう?」
翌朝、結局そのまま診察室で夜を過ごし、目が覚め起き上がろうとしていたらジュードくんのお母さん、エリンさんが入ってきた。
「大丈夫です!あ、検査の結果でました?」
「それは主人の…先生の方から話があると思うわ」
「う~ん…早く治したいな~…」
治したらまず何をしようか悶々と考えていたら、エリンさんは意を決したように私に声をかけてきた。
「聞いていいかしら?あなたは、息子のジュードとは、どういった関係なの?」
「…えへへ」
「?どうして笑うの?」
「あ、いえ。先生も同じこと聞いてきたな~って」
やっぱり親なんだなぁ。
息子が女の子二人も連れて帰ってきたらびっくりだよね。
もしかしたらミラも聞かれてるのかも。後で聞いてみよ!
「イル・ファンで、ジュードくんと一緒にミラを助けたらちょっと問題があって、ジュードくん街にいられなくなっちゃったんです」
「…」
「でもジュードくん、ミラのお手伝いと私が心配だからって一緒にきてくれて、今に至ります」
「やっぱり…そうだったのね…」
え?とエリンさんを見ると、悲しげな目をして俯いていた。
やっぱり、ってなんだろう。
「あの子ったら、小さい頃からお人好し過ぎるところがあったの」
「でも、そこがジュードくんのいいとこで…」
「そのせいで友達にからかわれたり、いじめられたりしたこともあったわ」
「…え?」
知らなかった。
ジュードくんがいじめられていたなんて、私は知らなかった。
「顔に酷い傷をつけられても、あの子が笑っていた時はもうどうしたらいいかって」
「………」
「だが私達には仕事がある。この街の病院はここだけだ」
いつの間にか来たディラックさんが、話に入ってきた。
私は顔を上げられなかった。
「ジュードは男だ。甘やかせばさらにふぬけになる」
「ジュードくんは、ふぬけなんかじゃない…!」
「!…キミ」
「ジュードくんは優しくて、いつもみんなのこと思って行動してて、最後はちゃんと自分で決めて、自分の責任だって理解して背負ってる!!二人が忙しいのもわかってるから我が儘を言わない、いや言えなくさせられたんだ!!」
泣いてしまった。
ジュードくんは、きっと泣かないから。
なんかそんなことを言って泣いていた漫画のヒロインを思い出した。
私はヒロインにはなれないけど、何か出来るはずだ。
今は分からず屋の親父に物申すのだ!
「ジュードくんが笑ってたのは、二人に迷惑がかかるって小さいながらに思ったからだ!ちゃんと向き合いもしないで、ジュードくんを馬鹿にするなッ!!」
「…なら、あの子が変わったのは、キミの影響だろうな」
憤怒する私にディラックさんは目を細める。
なんだよこんにゃろと思っていたら、彼は背を向けてしまった。
「初めて、あの子が私に意見してきたよ。君に医療ジンテクスを施すようにとな」
「あ…」
「もしかしたら、キミのためにあの子は変わろうとしているのかもしれない。だが…私はそんな息子の頼みさえ、医者としてはねつけなければならない」
「大丈夫です。私は、どんな激痛でも堪えてみせます。精霊の化石も、必ず手に入れます」
「!!医療ジンテクスを、知っているのか?!」
振り返ったディラックさんに、私は涙を拭いてにんまり笑う。
「私の痛みなんて、今までジュードくんが受けた痛み、これから受ける痛みに比べたら軽いもんです。私は、早くジュードくんを守りたいんだ。だから、これくらいで止まるわけにはいかない」
私は何も知らなかった。
ジュードくんが過去に傷を残していたことを、何一つ。
全部を知った気でいただけだった。
守りたいと、今まで以上に思う。
ジュードくんが心から笑える世界にしたいと思うんだ。
「…別の方法がないか、調べてみる。だからキミはしばらく入院していなさい」
ディラックさんはそう言って部屋を出ていってしまった。
エリンさんも私に軽く頭を下げ、後を追った。
「寝れない」
と呟くも、返事は返ってけないわけで。
あれからしばらく診察室でぼんやりしていた私だが、暇で暇で死にそうだ。
ジュードくんの天使の微笑みに早く会いたい…癒されたい…ミラに頭撫でてもらいたい…。
うふふ~と妄想していたら、診察室の扉が控えめに開けられ、ジュードくんとレイアとミラが入ってきた。
あ、ジュードくんが持ってるのが医療ジンテクスか。
「ジュードく」
「「「しっ!」」」
ミラジュレイの「しっ」は可愛かった。
三人して人差し指口元にあてて、「しっ」て…天使か!
「父さんに見つかりたくないんだ」
「そーなの?」
「今から、ユウキに医療ジンテクスの施術をするから」
「了解~。あ、誰か倒して…力ない」
「レイア、お願い」
ジュードくんに言われレイアが私の身体を支えながら横に倒してくれる。
さすが看護師見習い…なんかすごく楽に倒してもらった…。
「じゃあ、いくよ」
ジュードくんが私の太股に医療ジンテクスなるものを装着した。
まだ何も起きないのはわかっているが、何だか緊張してしまう。
「どう?ユウキ、痛くない?」
「うん。てか何も感じない。足もぴくりともしない」
「…どうして機能しないんだろう」
「ジュード、この石からはマナを感じないぞ」
ミラは医療ジンテクスから石を外すとそう言った。
たしかすぐに使わないとダメなんだよね。
「ジュードくん、先生が医療ジンテクスには精霊の化石がいるって言ってたよ」
「精霊の化石って?!本当に存在してるの?!」
「そっか。カルテにあった特殊な石って、精霊の化石だったんだ…」
「えっとね、採掘してすぐに使わないとマナを失うってのも言ってた」
そう伝えたら、ジュードくんが肩を落とした。
「それじゃなおさら、治療するなんて…」
「あれ…でも、フェルガナ鉱山で昔、採れたって聞いたことがあるような…」
「「本当(か)、レイア?!」」
「ちょっもうー!静かに二人とも!お父さんから聞いたことあるだけ」
ジュードくんとミラが思わず大きな声で反応してしまっていた。レイアも慌てて手を振っている。
みんな可愛いなぁもう!
ジュードくんは私の傍に来ると、上半身を起こす私と視線を合わせるように屈んだ。
「ユウキ、鉱山へ一緒に行く必要があるけど…」
「もちのろんよ!よかったら、連れて行ってください!」
「うん…必ず治してみせるから」
ズギュゥゥゥン!!
ジュードくんの瞳にカンパイ!!
全国のジュードファンすみません私達結婚します!あ、いや嘘ですすみませんなんか空気が怖くなってる!
「悪いけどジュードが乗せてあげて。わたしは準備があるから。じゃ、街の入口で!」
車椅子を用意してくれ、レイアは行ってしまった。
ああそっか。採掘道具か。
あれは指が痛かったな…。ボタン連打はきつかったな…。
「じゃ、乗せるね」
「はーい」
「ジュード、私が車椅子を押そう」
「?うん、いいけど」
ジュードくんに渡されミラは嬉々として車椅子の持ち手を握ると、治療院をゆっくり出る。
それから周囲を確認すると、もうすでに街の入口にいるレイアを見つけ、「よし」と気合いを入れた。
ちょ、ま、嫌な予感…!
「行くぞユウキ!!本当の車椅子とは、こうするのだろう!!」
「違いますからぁぁぁぎにゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「ミラーっ?!それはレイアの遊びであって本当のやり方じゃないよーっ!!」
超高速で街の外まで飛び出しました。
うん、まぁディラックさん達にバレただろうけど追いつけないだろうからいっか…。
ミラと交代し、ただいまジュードくんに車椅子を押してもらっています。
ちなみにミラは「人間とは難しい」と呟いてた。
今から向かうフェルガナ鉱山は閉山した山だ。
もちろん近づくほど魔物がたくさんなわけで。
私は変わらず役立たずなわけで…!!
「意外~!ジュード、すっごい腕あげたねー」
「レイアの棍術こそ、相変わらず容赦ないね…」
レイアとジュードくんが可愛らしい会話をしていようとも入れない…!
てか入るのが申し訳ない!役立たずでごめんなさい!屑でごめんなさい!
「ユウキ、また変なことを考えているな」
「ミラぁぁ…私もせめて精霊術が使えたら~…」
「そういえばユウキは霊力野がないのだったな。ふむ、そういった人間を見るのは初めてだな…」
「ひぎゃ!ミラ顔が近いひぃぃ羞恥死するぅぅぅ!」
ミラにじっくり見られテンパっていたら私達に気付いたジュードくん達が助けてくれました。
はふぅ、恥ずかしかった。
「あったあった!ここが採掘場だよ」
フェルガナ鉱山に着き、警戒しながらも中に入るとレイアが見渡しながら走っていく。
「えっとねー、確か精霊の化石って色が付いてて音がするんだって」
「へぇ、そうなんだ」
「しかし妙だな。作業途中で打ち捨てられているように見える」
「レイア、何か知ってる?」
「ううん。もしかしたら事故とかで危険だからって閉山したのかな」
大丈夫かな、とジュードくんが頭を悩ますも、レイアは気合いの入った眼差しでいる。
「でもね、やるしかないんだよ、うん!」
「気合い入ってるね…」
「だって、こう燃えてくるものがあるじゃない!誰が早く見つけられるか勝負だよね、もちろん!」
勝負…だと…!
私も参加したいぞちくしょぉぉぉ!
「でも注意してね。レイアに何かあったら…」
「ジュードは昔からすぐにそうやって言うんだから!わたしの心配よりも、今はユウキの心配でしょ」
そう言ってレイアはつるはしをジュードくんとミラに渡す。
あ、意外と重そうだ。
私はこれを何度もジュードくんに使わせて掘っていたのか…なんか申し訳なくなってきた…。
「ジュードくん…ごめんよ…」
ダンジョン内の採掘ポイント全部制覇するために掘らせ続けてすみませんでした。
しかしジュードくんは私の謝罪を違う意味に捉えてしまい、また私に視線を合わせるように屈んだ。
「だから気にしないで。早く足を治して、また元気に走り回ってよ」
「…ん?ジュードくん私を犬か何かと間違えてはいないかい?!あっミラまでなぜ笑う?!」
「…ふふふっ、わたしも早くユウキが走り回るの見たいな!」
「レイアまでぇぇぇ?!」
ひとしきりみんなが笑うと、レイアはつるはしを肩に背負いまたもや周囲を見渡した。
「さて、と。やっぱ見えるとこに都合よくなんてないね」
「ユウキは待ってて」
「ああ~…みんな、無理はしないでね~…」
三人は手分けをし、色んな場所を堀りに行った。
おい…もしかして私またぼっちじゃないのか…!
(せめて、どこにあるかを知らせるために奥へ進む道を…)
……どこだっけ?
周りを見渡すも、採掘ポイントがわからない。ゲームとは違い、わかりやすくはなっていなかった。
これじゃどこを掘ればいいのかわからないではないか。
(…役立たずだ…私は屑だ…劣化野郎だ…レプリカではないけど…)
ズゥンと肩を落とすが私を罵ってくれる人などいるはずもない。
三人は色んな場所を採掘している。
(…よし、一か八かだ!唸れ私の記憶力!)
入口から移動し、奥へと続く道を当てた場所を記憶から引っ張り出すように思い出す。
たしか、ここを右に進んで、左に行ったりして…それから…。
この世界の車椅子は手でこげるようにはなっていないので、身体をかなり曲げて車輪を回す。
ちょっとつらいけど、大丈夫だ。
くじけない女優姫、よろしくぅ!
ガッ
「のぁっ!!」
ガシャン、と。
私が車椅子を倒しひっくり返る音が鉱山内に反響した。
案の定みんなが気付き慌てて私の元へ駆け寄る。
「ユウキ!待っててって言ったでしょっ!怪我は?!」
「だいじょぶです…ちょっと泣きたい」
「あっ擦りむいてる!待って、今癒すから」
ジュードくんが私を車椅子に座らせてくれ、擦りむいた足をレイアが癒してくれた。
なにこれほんと泣きたい。
いっそ私が飛び込むようの穴を掘ってくれ。
「む、ここは…」
「ミラ?どうしたの?」
「ジュード、ユウキを連れて離れてくれ。レイア、ここを掘るぞ」
「あ、うん!」
ミラはレイアと一緒に私が転んだ先の壁を掘りはじめた。
ジュードくんに車椅子を押され、少し離れて二人を見守る。
ガッガッという音がやがて崩れる音に変わった。
「!やはり、奥があったか」
「わぁ!道出てきた!」
「それにこの石、精霊の化石に間違いない」
ミラとレイアが掘ると、壁が崩れ奥へ続く道が出てきた。
周辺に落ちた石のカケラは精霊の化石のようだ。
「奥から風が吹いてる…行き止まりじゃないみたいだね。三人はここで待ってて、一旦僕が」
「むふふ、ジュードには負けないよ!」
「ちょ、レイア!危ないんだって!」
「だからみなで行くのだろう?ほら、ユウキを連れて行くぞジュード」
「行こうジュードくん!私の名誉挽回のために!」
行く気満々の女子三人に、ジュードくんは「もう」とため息を吐きつつも気をつけるよう念押ししてみんなで行くことにしたのだった。
「ユウキ、足大丈夫?痛かったら言ってね」
「うん大丈夫!あっねぇレイア、レイアとジュードくん幼なじみなんだよね?」
「え?うん、そうだよ」
「じゃあじゃあ!二人の思い出が聞きたいです!初めて手を繋ぎ初めて愛を語り合い」
「してないから!レイアは幼なじみだから!」
ジュードくんが否定するとレイアは心なしかムスっとして先に行ってしまった。
ああ幼なじみ可愛い!レイアムスっとしても可愛い!
「もう、ユウキはいつも僕をからかうんだから」
「からかうだなんて心外な!私はいつだってジュードくんを崇め敬い、たまにイヤラシイことを妄想しているだけです」
「僕にどんな幻想を抱いてるのユウキ?!」
「ふふ、ユウキはどんな姿になってもユウキなのだな」
なぜだかミラに褒められました。
えへへ~と頭をかいてたら、ジュードくんが先に進んだレイアが肩で息をしているのを見て私を押して息を追いかけた。
レイア、はりきったから体力消耗したんだ。
「レイア、やっぱり…」
「ね、ねぇ、ところで精霊の化石ってなんなの?」
「マナを失った精霊がこちらの世界に定着し、石になったものだ」
レイアが誤魔化すように聞くと、ミラが答えてくれた。
ジュードくんはため息を吐いてる。
そんなとこも可愛いですじゅるり。
「マナを失うって、まあ、言ってみれば死んじゃうみたいな感じでしょ。でも死ぬなんてあんまり聞かないよ。都会じゃよくあるの?」
「さあ…ないと思うけど」
「うーん。精霊も昔はたくさん死んじゃったってことかな」
「大半は私が生まれる以前の話だ」
「え?どういうこと?」
「今度詳しく話すよ。今は先を急ごう」
ジュードくんは焦っているのか、私を押して先に進む。
ミラはジュードくんがああ言うのだから今は説明しなくていいかと同じように進んだ。
ちょっと振り返ってみたら後ろではレイアがジュードくんに舌を出していた。
「いじわる。べー!」
「……」
「わ、ちょっと…これぐらいで怒らないでよ」
「レイア、ミラ…今、何か聞こえなかった?」
「何か…?」
ジュードくんと同じように耳を澄ませてみる。
何か、鳴ってる?あ、これが精霊の化石の音?
「この音、どこから…」
「あ!あったよジュード!精霊の化石!向こう側!」
レイアが裂け目の向こう側に光る大きな石を見つけた。
おお…生で見ると綺麗だなぁ…。
「早く行こう!」
「ほぎゃ!レイア早いぃぃぃぃ!!」
ジュードくんから車椅子を引ったくるとレイアは私を押して走り出した。
レイア、あんまり無理は、しないで、ほしい…うぉぉぉ酔うぅぅぅ!
「レイア!もう!」
「私達も行くぞジュード」
「あれ…?さっきはあったよね…」
「多分、奥に、移動したのかと…うっぷ」
「でも石が動くの?」
ようやく止まってくれたレイアが首を傾げている。
説明しようにもこのでこぼこ道に酔ったせいで上手く喋れない。
「ありえないことでも、他に可能性がないなら真実になり得る」
「『ハオの卵理論』か…そういうことになるな」
ジュードくんとミラもいつの間にか追いついてきてた。
はぐれなくてほんとよかったよ…ここから先はレイア一人じゃ無理だからね…。
「ここからは本当に僕一人…」
「ジュードとミラはユウキをお願いね」
「!ちょっと待って!」
「レイア…?」
ジュードくんはまた慌てて私を押してレイアを追いかける。ミラはレイアの焦る様子を不思議がっているようだ。
レイアは、何を焦る必要があるんだろう。
私から見たらレイアは強くて明るくて、優しいムードメーカーだ。
レイアにはレイアの良いところがたくさんある。
ジュードくんもそれをわかってるのに、レイアがわかってくれなかったら意味がない。
最奥までたどり着くと、レイアが周囲を見渡しながら立ち尽くしていた。
「不思議な場所…」
ジュードくんも上を見て驚いている。
まるで夜空のように、暗い中で散りばめられた精霊の化石のカケラがキラキラ光っていた。
すごく綺麗な景色。
「音が大きくなったり、小さくなったりしてる」
「すごい、綺麗…」
「!下がれレイア!」
「え?」
レイアの立っていた地面が割れ、何かが飛び出してきた。
その衝撃に吹き飛ばされたレイア。
尻餅をついてしまったレイアの前にジュードくんが立ち、魔物に構える。
砂漠に出てきそうな魔物だ。なんか吸い込んできそうな口?が怖い。
「ジュード、やつの頭だ!」
「!あれは精霊の化石?!」
ジュードくん同様、ミラも構えると、レイアは魔物の額についた特大の精霊の化石を見て棍をギュッと握り締めた。
「わたしが…取るからね、ジュード」
レイアは、役に立とうと必死だった。
まるで…今の私だ。
「あの魔物、精霊の化石を取り込んで自分のエネルギーにしてるんだ!」
「解説してる場合じゃないでしょ!」
「ああ!やつは地面に潜る、出てきたところを素早く叩かねば倒せないぞ!」
ジュードくんが、レイアが、ミラが戦っている。
なんて歯痒いんだろう。
私は見てるだけしか出来ない。
「やった!倒した!」
レイアが倒れた魔物に駆け寄ると、額についた精霊の化石が崩れ落ちた。
ちょうど医療ジンテクスに嵌められそうなサイズだ。
でも、危ない!
「レイアッ!まだそいつ死んでない!逃げて!!」
「危ないレイア!!」
私が叫ぶと同時に魔物は動き出し、ジュードくん達を吹き飛ばす。
カラン、と私の近くにレイアが取ってくれた精霊の化石が落ちてきた。
(ここまで、ストーリーが同じになるなんてね…イタズラな神様マジ感謝だよ…!)
私は車椅子を倒し、地面をはいつくばる。
みんなは体勢を整えられていない、早く行かないと…!
「届けぇぇぇッ!!!」
これでもかと腕を伸ばし、掴んだ精霊の化石を躊躇なく医療ジンテクスに嵌めた。
途端に、足に激痛が走る。
「ぐぅぁぁぁぁぁッ!!この、やろぉぉぉ!!」
私は立ち上がった。立ち上がれた。
歩ける。走れる。戦える。
車椅子にかけてくれていた私の剣を握り締めて私は魔物目掛けて走る。
「こんの……」
そして近くにあった岩を蹴り、飛び上がる。
アルヴィンがいないから威力は落ちるが、今の私は怒りでいつもの倍は力が入っているだろう。
復活初の渾身の一撃、お見舞いしてやる!!
「魔物風情がうちの天使達に何してんだごるぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
構えた剣を垂直に振り下ろし、穴の中に押し返してやった。ドスンと音が聞こえたところ、死んだか気絶したのだろう。
「ざ、ざまーみろ…この…やろ…」
「ユウキ!!」
足の激痛に堪えられず、フラリと倒れるがジュードくんに支えられて地面とごっつんこは逃れられた。
「ユウキ、医療ジンテクス使えたんだね…」
「え、へへ…やれば、できる女…優姫…よろしくぅ…うぐっ」
ジュードくんは私の額を流れる汗をハンカチで拭きながら、微笑んでくれた。
ああ…天使の微笑みがやっと見れた…。
しかしレイアは泣きそうな顔で私を覗き込んできた。
「ユウキごめんっわたしがドジったから…」
「何、言ってんのさ…レイア、私のために、ありがとう…」
「ユウキ…」
レイアはようやく笑ってくれた。
ジュードくんは車椅子を取りに行き、代わりにミラが私を支えてくれる。
「レイア、今ならジュードに聞かれない。ユウキに言いたいことがあるのだろう」
「?レイアが、私に…?」
ミラに促され、レイアが私を見つめて話し出す。
「…あのね、わたし、医療ジンテクスがいくらユウキのためだっていっても、苦しむってわかってるなら…ジュードは施術しないと思ってたの」
「…そか…うん、でも、ジュードくんは、私が、やらなきゃいけないことがある、って…知ってるから…」
「それでも、昔のジュードならやらなかったよ」
「レイアは、ジュードがお節介になった理由を知っているんだな?」
レイアは黙るが、ミラは気付いていた。
「ここに来てから、お前自身、世話を焼かせないようにしていたのだろう?」
「バレて…たんだ」
少し顔を赤らめるが、レイアは話してくれた。ジュードくんの話を。
「ジュードね、小さい頃から家にずっと独りだったんだ」
「両親は忙しかったと言っていたな」
「うん。それでジュード本人も気付いてないと思うんだけど…ホントは、それがすごく寂しかったんだと思うの」
ジュードくんは、寂しくて、誰かと関わっていたくて。
人に必要とされたくて、嫌われるようなことはしない、お人よしの生き方をして。
「だけどね、帰ってきたジュード、少し違ったんだ」
レイアが、私の髪を撫でた。
「ユウキを見てたらわかったよ。ユウキが、ジュードを変えたんだって」
違う。
私じゃない。
「ジュードくんが、変わった、のは…私の、存在じゃない」
「ユウキ?」
違う違う違う。
私はただジュードくんとミラの物語についてきただけだ。
この出来事だって、本当はミラの物語だ。
私が足を怪我して、こうやって治療しているのは、きっとミラの代わりになっているだけだ。
私が未来を変えようとすると、そこを穴埋めするかのように代わりに私が引き受けているのだ。
私は、何のためにいるんだろう?
私は、何をしたらいいんだろう?
「ジュードくん、は…ミラがいないと…私は、いなくても、いい…ミラが、必要…みんなが、必要…」
「ユウキ、どうした。落ち着くんだ」
「私は、いらな……」
「ユウキ!!」
ミラの声が遠退いて、私は気を失った。
next