迷子のレクイエム(狩人)
DREAM
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相変わらず大きな家だなあとすでに馬鹿でかい門を見上げる。守衛を務めているゼブロさんが「ああ、いらっしゃい」と笑顔で出迎えてくれた。
結局、ハンター協会に到着したものの外部の人間にモニター視聴の許可はできないと言われてしまい、ネテロ会長にもごめんねと軽い調子で謝られた。わかってはいたが、仕方ないと諦めて協会を後にする。すると、携帯にメッセージが来ており、あっと目を輝かせた。友達こと、ミルキくんから「兄探し進んだ?」と連絡があったのだ。遊びに行くと連絡したらわかった、と簡素な返事であったが返ってきたので、お土産が必要だなとパドキア共和国へ向かう前に準備をしてくことにして、今日ようやく到着したのである。
「お久しぶりですー!ミルキくんいますか?」
「いつも遊びにきてくれてありがとね。今執事室に問い合わせるからちょっと待ってて」
「はーい!」
さすがに勝手に中に入るわけにはいかないので、ククルーマウンテンにそびえ立つゾルディック家を見上げながら愛しい生足ショタを思い返す。ハンター試験真っ最中だろうゴンくん。どんな試験をしているのかはわからないが、きっと受かるに決まっている。それよりもあの生足が変態に狙われないかが心配だ。会場に変態が紛れ込んでいませんように!なんて思いをはせていたら、電話を終えたゼブロさんが出てきてぐっと親指を立ててくれた。入ってオッケーということだ。
「ありがとうございます!」
「いやいや、いいんだよ。ところで、今日もそこから入るのかい?」
「いやだって、その扉重すぎてピクリともしないんだもん!私は無難にこっちから入ります」
自身の非力さにめそおと凹みつつ、守衛室の横にある通用口の扉を開ける。ゼブロさんはいつもその様子を見ては感嘆していた。
「いやあ、本当信じられないよ。そこから入る人は誰もいないのに」
「いやみんな力強すぎじゃないです?!それじゃまた帰るとき声かけますねー!」
中に入ると、ひとまず執事室を目指して人が歩ける程度に舗装された道を進む。これはおうち訪問というよりは山登りだ。持久力なら自身がある!と豪語して歩いていると、大きな何かが木々をかきわけてこちらへ走ってくる音が聞こえた。あ、これはもしや!
「ギャオンッ!!」
「ミケだー!元気してたー?!」
自分の体の何倍も大きい猫、いや猫かなこの子。犬かもしれない。とにかくじゃれついてくる大きな獣に顔をうずめてよすよすと撫でまわす。
ゾルディック家いいなあ!こんなかわいいペット飼ってるんだもんなあ!
「相変わらず異常ですねあなたは」
「あ!やっほー!カナリアさん!元気してた?!あ、私ミルキくんに会いに来たんだけど」
「知っています。まずは執事室にどうぞ」
おう、今日もクールだぜ。そこがいい。迎えに来てくれたらしいカナリアさんはなぜか呆れた顔をして、こちらですと案内してくれる。連れたって屋敷ほどある執事室へ入ると、中にいたゴトーさんが少し嫌そうな顔をしたがすぐに作り笑いでこちらへ頭を下げてくる。
「よくぞいらっしゃいました。ミルキ様よりご伝言です。『今カルトが迎えに行ったから待ってて。ところで土産は?』とのことです」
「わーカルトくん来てくれるんだー!うれしー!そして金持ちのくせにちゃっかり土産を要求してくるミルキくんェ……まあ買ってきてるけど」
「それはよかったです。持ってきていなかったら叩き出してました」
「相変わらずゴトーさんの鞭はきついなあ!」
ゾルディック家に心身ともに仕えている執事のゴトーさんは、ひょこっと現れた私が気に入らないらしくいつも舌打ちをしてくるのだ。いや、私だけのせいじゃないよね?
そもそも街に買い食いに来ていたミルキくんが私の持ってる懸賞限定のキーホルダーに気づいて声をかけてきて、そこからオタトークで盛り上がって家にお邪魔することになったんだから、私だけのせいじゃないよね?!
それにミルキくんはパソコンにめっぽう強いので、兄探しの情報収集も手伝ってもらっている。まあその代わり私からも街中で売られる限定グッズ系を収集してきて土産として持っていくという情報量をとられているのだけど。いやあ初めてゾルディック家を着た時は驚いたなあ。だって暗殺一家で有名で、地元では観光名所扱いされてツアー組まれてたもんなあ。ミルキくんに家が観光名所にされるのってどうなのと聞いたところ、あっそうって感じと言われた。つえー男だ。暗殺一家ということは人を殺すの、と聞いたら、依頼があればと答えられた。つまり、依頼さえなければ殺さない。結局のところ、依頼する奴が悪いのだと私の中では折り合いをつけている。
「ユウキ」
「ほわあああ!!」
トンと後ろから膝の裏を曲げられて崩れ落ちる。簡単に言えば膝カックンをされたのだ。この愛らしい声は、と崩れ落ちたまま見上げると、やはりカルトくんだった。今日も着物が似合っている。
「兄さんから言われてきたんだけど」
「膝カックンする必要あった?!」
「ないよ」
「だよね?!」
めそおとまた凹みながら立ち上がり、執事室の皆さんに礼を言ってカルトくんに背負われて山を駆け上がる。いや、これ前も思ったんだけど、おかしくない?!
「私を背負ってこんなに早いカルトくんすごいんだけど、そもそも私歩けるからね?!徒歩で一緒に行く発想は?!」
「ない。こっちのほうが速いし」
「わかるけども!!」
「はい着いた」
「わあはやあい!!」
あの山道を一瞬にして駆け上がったカルトくんは、息切れ一つしていない。うそでしょ。なんで背負われた私が息切れしてんの。これがゾルディック家なの。ここでようやく携帯に電話が入った。ミルキくんからだ。
『今日は何の限定品買ってきたの?』
「開口一番それ!部屋についてからのお楽しみだよ!」
『ちっ、しょうがないなあ。じゃ早く来てよね』
ぷつと電話が切れる。こいつ、会うたびおもしれー男になっていくじゃん。なんて脳内で乙女ゲーを思い返しながら、カルトくんにお礼を言ってミルキくんの部屋を目指して歩く。いつ来ても家の中は静かだし、どこかおどろおどろしいものを感じる。暗殺一家というイメージのせいかもしれない。しかしミルキくんはいい友達だし、カルトくんもいい子だし、ゼノさんとシルバさんもキキョウさんも気のいい人たちだ。キキョウさんのいつミルキに嫁ぐの?という質問に友達だから嫁ぎませんよと答えるのは大変だけど。でもいい人である。
そういえば、他にも兄弟がいるらしいのだが会ったことがない。いつか会う機会があれば挨拶くらいはしたいし、なんなら友達になってくれないかなあ。結局一人で旅をしていると知り合いなんてその場限りで終わってしまうし、忘れ去られてしまうものだ。仕方のないことだけど、ミルキくんはわざわざ連絡先を教えてくれたし、たまに連絡をくれるし、兄探しを気まぐれだったのだろうけど手伝うと言ってくれたから、本当にいい友達だ。食べ過ぎなのは健康的にどうかと思うけれども。
「おっじゃましまーす」
「遅いよ。で、今日は何?」
私は若干ドヤっと笑いながら、あまりきれいにされていないテーブルを軽く片付けて、そっとカバンの中からフィギュアを取り出して置いた。
「ふっふ、世界限定3本のドキシスフィギュア。そそるっしょ」
「マジかお前!一本は破損してもう一本は海に沈んだって話だから、めちゃくちゃ希少価値高いんだぞこれ!」
「えっそんなことになってたの?!じゃあもうこれしか新品同様の品はないってことじゃん!私のトレジャーハンターの素質やばない?」
「くそ、こんなやべーの持ってこられたらこっちも返すしかないじゃんか。ユウキの兄さん、サトルの情報についてだけど」
うん、と前のめりになってモニターを見る。いつ見ても私にはできないブラインドタッチでキーボードを叩いて、マウスを動かして、一枚の地図を開いてみせてくれた。ところどころピンがさしてある。
「このマークは今までライセンス情報があった場所で、矢印は次に渡航歴が判明した場所を時系列に追っていってる。見事に世界一周してるね」
「これを追いかけて、私も少し世界回ったもんなあ」
「で、最後の渡航歴はここ、ヨークシンシティ。このサトルってやつは次の渡航歴が出るまでに大体2か月くらい間があくんだけど、ここだけは半年前から止まってるんだ」
「え?!でも半年っていっても、これまでもほかの場所にも渡航歴があって、私行ったよ?」
「それは偽のライセンス情報だよ。足取りを簡単にたどらせないためのカモフラージュ用なんだろうね」
ということは半年とは限らず、私は偽情報も含めて世界中を飛び回っていたのか。そりゃいくら経っても追いつかないわけだ。めそおと凹んでしまう。ミルキくんはいいから続き聞けと小突いてくる。はい、聞きます。
「俺の推測だけどさ、何かを探して世界中を回ってるんじゃないか?」
「何か、探す……私の兄さんがハンターになったのも、もしかして何かを見つけるためとか?」
「そこまでは知らないよ。ただ、これからは闇雲に探すんじゃなくて、カテゴリ分けも必要じゃないかってこと。レアな宝とか、盗賊とかも探す目印にしてもいいかもね。今いるだろうヨークシンは9月には世界最大のオークションもあって、レアものが流れてきてるみたいだし」
なるほど。たしかに、今のままでは一生探せない気はしていた。実際、偽情報で踊らされてもいたわけだし。それに、わざわざカモフラージュを入れるということは、追われる可能性を考えているからだ。それはつまり、ミルキくんのいうように盗賊団とか結成していたりするのかもしれない。
ふへへと笑ったら、その笑い方きもいと返される。でも、うれしくてたまらないんだ。兄を探す手がかりが増えたからだけじゃない。
「ミルキくんがこんなに手伝ってくれて、私本当にうれしいんだ。ずっと一人だったから、へへ、ありがとね」
「べ、別にこれくらい楽勝だから。それに、一応等価交換だし。ほら、今日はゆっくりしてくだろ。この間見たアニメの感想話そうぜ」
「うん!あのね、私この間のバトルシーンはさー……」
夜も更けると、帰る支度をする。ミルキくんに次はもっとレアなの探してくるよというと、お前のレアはガチもんだから期待してると笑われた。玄関まで送ると珍しく言われて、一緒に部屋を出ると、キキョウさんがものすごい勢いで走ってこちらへやってきた。なんだなんだ。
「ユウキ!もう帰ってしまうの?ミルキの部屋に泊まっていかないの?」
「ちょっとママ!」
「いえいえ!こんな夜遅くまでお世話になったのでさすがに帰ります。お邪魔しました」
「つれない子ねえ。あ、だったら今度はイルミに会ってちょうだいな。あの子も年頃でしょうし。キルでもいいのよ?」
「私ゾルディック家に嫁がれそうになってます?!」
「あいつらのことはどうでもいいって!ほら早く帰るよ!」
名残惜しそうなキキョウさんをその場に残して、珍しく先を歩くミルキくんについていく。
「今のイルミとキルって、兄弟の名前なんだよね?どんな子なの?」
「ママたちが甘やかす兄弟だよ」
「ふーん。ちなみにタイプは」
「お前キルはともかくさすがに兄貴には変態な目向けんなよ?殺されるぞ?」
「ひん!暗殺一家怖い!」
「うそつけ。全然怖がってないだろうが」
「会ってみないとわかんないし、まあミルキくんが慕ってるお兄さんなんだしいい人でしょ」
「慕ってない!!」
へっへっへと笑ったら、やっぱり笑い方はきもいと言われてしまった。めそお。
結局、ハンター協会に到着したものの外部の人間にモニター視聴の許可はできないと言われてしまい、ネテロ会長にもごめんねと軽い調子で謝られた。わかってはいたが、仕方ないと諦めて協会を後にする。すると、携帯にメッセージが来ており、あっと目を輝かせた。友達こと、ミルキくんから「兄探し進んだ?」と連絡があったのだ。遊びに行くと連絡したらわかった、と簡素な返事であったが返ってきたので、お土産が必要だなとパドキア共和国へ向かう前に準備をしてくことにして、今日ようやく到着したのである。
「お久しぶりですー!ミルキくんいますか?」
「いつも遊びにきてくれてありがとね。今執事室に問い合わせるからちょっと待ってて」
「はーい!」
さすがに勝手に中に入るわけにはいかないので、ククルーマウンテンにそびえ立つゾルディック家を見上げながら愛しい生足ショタを思い返す。ハンター試験真っ最中だろうゴンくん。どんな試験をしているのかはわからないが、きっと受かるに決まっている。それよりもあの生足が変態に狙われないかが心配だ。会場に変態が紛れ込んでいませんように!なんて思いをはせていたら、電話を終えたゼブロさんが出てきてぐっと親指を立ててくれた。入ってオッケーということだ。
「ありがとうございます!」
「いやいや、いいんだよ。ところで、今日もそこから入るのかい?」
「いやだって、その扉重すぎてピクリともしないんだもん!私は無難にこっちから入ります」
自身の非力さにめそおと凹みつつ、守衛室の横にある通用口の扉を開ける。ゼブロさんはいつもその様子を見ては感嘆していた。
「いやあ、本当信じられないよ。そこから入る人は誰もいないのに」
「いやみんな力強すぎじゃないです?!それじゃまた帰るとき声かけますねー!」
中に入ると、ひとまず執事室を目指して人が歩ける程度に舗装された道を進む。これはおうち訪問というよりは山登りだ。持久力なら自身がある!と豪語して歩いていると、大きな何かが木々をかきわけてこちらへ走ってくる音が聞こえた。あ、これはもしや!
「ギャオンッ!!」
「ミケだー!元気してたー?!」
自分の体の何倍も大きい猫、いや猫かなこの子。犬かもしれない。とにかくじゃれついてくる大きな獣に顔をうずめてよすよすと撫でまわす。
ゾルディック家いいなあ!こんなかわいいペット飼ってるんだもんなあ!
「相変わらず異常ですねあなたは」
「あ!やっほー!カナリアさん!元気してた?!あ、私ミルキくんに会いに来たんだけど」
「知っています。まずは執事室にどうぞ」
おう、今日もクールだぜ。そこがいい。迎えに来てくれたらしいカナリアさんはなぜか呆れた顔をして、こちらですと案内してくれる。連れたって屋敷ほどある執事室へ入ると、中にいたゴトーさんが少し嫌そうな顔をしたがすぐに作り笑いでこちらへ頭を下げてくる。
「よくぞいらっしゃいました。ミルキ様よりご伝言です。『今カルトが迎えに行ったから待ってて。ところで土産は?』とのことです」
「わーカルトくん来てくれるんだー!うれしー!そして金持ちのくせにちゃっかり土産を要求してくるミルキくんェ……まあ買ってきてるけど」
「それはよかったです。持ってきていなかったら叩き出してました」
「相変わらずゴトーさんの鞭はきついなあ!」
ゾルディック家に心身ともに仕えている執事のゴトーさんは、ひょこっと現れた私が気に入らないらしくいつも舌打ちをしてくるのだ。いや、私だけのせいじゃないよね?
そもそも街に買い食いに来ていたミルキくんが私の持ってる懸賞限定のキーホルダーに気づいて声をかけてきて、そこからオタトークで盛り上がって家にお邪魔することになったんだから、私だけのせいじゃないよね?!
それにミルキくんはパソコンにめっぽう強いので、兄探しの情報収集も手伝ってもらっている。まあその代わり私からも街中で売られる限定グッズ系を収集してきて土産として持っていくという情報量をとられているのだけど。いやあ初めてゾルディック家を着た時は驚いたなあ。だって暗殺一家で有名で、地元では観光名所扱いされてツアー組まれてたもんなあ。ミルキくんに家が観光名所にされるのってどうなのと聞いたところ、あっそうって感じと言われた。つえー男だ。暗殺一家ということは人を殺すの、と聞いたら、依頼があればと答えられた。つまり、依頼さえなければ殺さない。結局のところ、依頼する奴が悪いのだと私の中では折り合いをつけている。
「ユウキ」
「ほわあああ!!」
トンと後ろから膝の裏を曲げられて崩れ落ちる。簡単に言えば膝カックンをされたのだ。この愛らしい声は、と崩れ落ちたまま見上げると、やはりカルトくんだった。今日も着物が似合っている。
「兄さんから言われてきたんだけど」
「膝カックンする必要あった?!」
「ないよ」
「だよね?!」
めそおとまた凹みながら立ち上がり、執事室の皆さんに礼を言ってカルトくんに背負われて山を駆け上がる。いや、これ前も思ったんだけど、おかしくない?!
「私を背負ってこんなに早いカルトくんすごいんだけど、そもそも私歩けるからね?!徒歩で一緒に行く発想は?!」
「ない。こっちのほうが速いし」
「わかるけども!!」
「はい着いた」
「わあはやあい!!」
あの山道を一瞬にして駆け上がったカルトくんは、息切れ一つしていない。うそでしょ。なんで背負われた私が息切れしてんの。これがゾルディック家なの。ここでようやく携帯に電話が入った。ミルキくんからだ。
『今日は何の限定品買ってきたの?』
「開口一番それ!部屋についてからのお楽しみだよ!」
『ちっ、しょうがないなあ。じゃ早く来てよね』
ぷつと電話が切れる。こいつ、会うたびおもしれー男になっていくじゃん。なんて脳内で乙女ゲーを思い返しながら、カルトくんにお礼を言ってミルキくんの部屋を目指して歩く。いつ来ても家の中は静かだし、どこかおどろおどろしいものを感じる。暗殺一家というイメージのせいかもしれない。しかしミルキくんはいい友達だし、カルトくんもいい子だし、ゼノさんとシルバさんもキキョウさんも気のいい人たちだ。キキョウさんのいつミルキに嫁ぐの?という質問に友達だから嫁ぎませんよと答えるのは大変だけど。でもいい人である。
そういえば、他にも兄弟がいるらしいのだが会ったことがない。いつか会う機会があれば挨拶くらいはしたいし、なんなら友達になってくれないかなあ。結局一人で旅をしていると知り合いなんてその場限りで終わってしまうし、忘れ去られてしまうものだ。仕方のないことだけど、ミルキくんはわざわざ連絡先を教えてくれたし、たまに連絡をくれるし、兄探しを気まぐれだったのだろうけど手伝うと言ってくれたから、本当にいい友達だ。食べ過ぎなのは健康的にどうかと思うけれども。
「おっじゃましまーす」
「遅いよ。で、今日は何?」
私は若干ドヤっと笑いながら、あまりきれいにされていないテーブルを軽く片付けて、そっとカバンの中からフィギュアを取り出して置いた。
「ふっふ、世界限定3本のドキシスフィギュア。そそるっしょ」
「マジかお前!一本は破損してもう一本は海に沈んだって話だから、めちゃくちゃ希少価値高いんだぞこれ!」
「えっそんなことになってたの?!じゃあもうこれしか新品同様の品はないってことじゃん!私のトレジャーハンターの素質やばない?」
「くそ、こんなやべーの持ってこられたらこっちも返すしかないじゃんか。ユウキの兄さん、サトルの情報についてだけど」
うん、と前のめりになってモニターを見る。いつ見ても私にはできないブラインドタッチでキーボードを叩いて、マウスを動かして、一枚の地図を開いてみせてくれた。ところどころピンがさしてある。
「このマークは今までライセンス情報があった場所で、矢印は次に渡航歴が判明した場所を時系列に追っていってる。見事に世界一周してるね」
「これを追いかけて、私も少し世界回ったもんなあ」
「で、最後の渡航歴はここ、ヨークシンシティ。このサトルってやつは次の渡航歴が出るまでに大体2か月くらい間があくんだけど、ここだけは半年前から止まってるんだ」
「え?!でも半年っていっても、これまでもほかの場所にも渡航歴があって、私行ったよ?」
「それは偽のライセンス情報だよ。足取りを簡単にたどらせないためのカモフラージュ用なんだろうね」
ということは半年とは限らず、私は偽情報も含めて世界中を飛び回っていたのか。そりゃいくら経っても追いつかないわけだ。めそおと凹んでしまう。ミルキくんはいいから続き聞けと小突いてくる。はい、聞きます。
「俺の推測だけどさ、何かを探して世界中を回ってるんじゃないか?」
「何か、探す……私の兄さんがハンターになったのも、もしかして何かを見つけるためとか?」
「そこまでは知らないよ。ただ、これからは闇雲に探すんじゃなくて、カテゴリ分けも必要じゃないかってこと。レアな宝とか、盗賊とかも探す目印にしてもいいかもね。今いるだろうヨークシンは9月には世界最大のオークションもあって、レアものが流れてきてるみたいだし」
なるほど。たしかに、今のままでは一生探せない気はしていた。実際、偽情報で踊らされてもいたわけだし。それに、わざわざカモフラージュを入れるということは、追われる可能性を考えているからだ。それはつまり、ミルキくんのいうように盗賊団とか結成していたりするのかもしれない。
ふへへと笑ったら、その笑い方きもいと返される。でも、うれしくてたまらないんだ。兄を探す手がかりが増えたからだけじゃない。
「ミルキくんがこんなに手伝ってくれて、私本当にうれしいんだ。ずっと一人だったから、へへ、ありがとね」
「べ、別にこれくらい楽勝だから。それに、一応等価交換だし。ほら、今日はゆっくりしてくだろ。この間見たアニメの感想話そうぜ」
「うん!あのね、私この間のバトルシーンはさー……」
夜も更けると、帰る支度をする。ミルキくんに次はもっとレアなの探してくるよというと、お前のレアはガチもんだから期待してると笑われた。玄関まで送ると珍しく言われて、一緒に部屋を出ると、キキョウさんがものすごい勢いで走ってこちらへやってきた。なんだなんだ。
「ユウキ!もう帰ってしまうの?ミルキの部屋に泊まっていかないの?」
「ちょっとママ!」
「いえいえ!こんな夜遅くまでお世話になったのでさすがに帰ります。お邪魔しました」
「つれない子ねえ。あ、だったら今度はイルミに会ってちょうだいな。あの子も年頃でしょうし。キルでもいいのよ?」
「私ゾルディック家に嫁がれそうになってます?!」
「あいつらのことはどうでもいいって!ほら早く帰るよ!」
名残惜しそうなキキョウさんをその場に残して、珍しく先を歩くミルキくんについていく。
「今のイルミとキルって、兄弟の名前なんだよね?どんな子なの?」
「ママたちが甘やかす兄弟だよ」
「ふーん。ちなみにタイプは」
「お前キルはともかくさすがに兄貴には変態な目向けんなよ?殺されるぞ?」
「ひん!暗殺一家怖い!」
「うそつけ。全然怖がってないだろうが」
「会ってみないとわかんないし、まあミルキくんが慕ってるお兄さんなんだしいい人でしょ」
「慕ってない!!」
へっへっへと笑ったら、やっぱり笑い方はきもいと言われてしまった。めそお。