★番外編
DREAM
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※誰も死んでないハッピー時空
※兄探し中のどこか
「ヒソカごめんね……」
「いつまで謝るの。もういいってば」
めそお、と凹みつつ、よくわからない部屋のベッドに腰かけて巻き込んでしまったヒソカに謝ると、しつこいと言われてしまった。さらにめそおと凹んでしまう。
「やっぱり駄目だね。びくともしないよ」
開かない扉と格闘していたヒソカも、やれやれと肩をすくめながら戻ってきてベッドに寝転んでしまった。どうしてこうなったのか。
それは何でもないある日のこと。私はいつものように兄を探して色んなところを巡っていたのだけど、とある島の洞窟に不審な人物が住んでいるという情報をキャッチした。その不審人物は、その洞窟内にお宝を隠し持っていると言われていて、ハンターや盗賊が尋ねたが帰ってきたものはいないという。
めちゃくちゃ怪しい!兄っぽい!!と思った私は意気揚々とその洞窟へ向かった。その道中、イルミさんに呼ばれて一仕事終えたばかりだというヒソカと偶然出会い、よかったら一緒に洞窟行く?と声をかけたら「めんどうだからイヤ」と語尾にハートをつけて断られてしまった。この野郎。
結局一人でその洞窟を尋ねると、その奥には不釣り合いな扉があり、私は何も考えずにその扉を開いたのだった。
するとどうだ、扉が閉まると同時に突然目の前に現れた謎のウィンドウ。パソコンで見るそれが、宙に浮かび私の目の前でチカチカと光っている。文字が浮かび上がると、選択画面が表示された。
『警告、この先一人では攻略不可。同行者を一人選択してください』
ゲームっぽい!ますます兄っぽい!!ゲーム好きかどうか知らんけど!!とさらに思った私は、さっき断られたヒソカを選んでやろ、なんて安易な考えでヒソカ・モロウと入力してやった。すると、画面いっぱいに『登録完了』と表示されるや否、私の真横に現れるヒソカ。
え、と珍しくきょとんとした顔のヒソカが、隣の私を見る。そして真っ白なだけだった部屋の中に、突然ベッドとサイドテーブルが増えたではないか。
『難易度イージー、ノーマル、ハードから選択後、課せられた課題を攻略してください。なお、景品はイージー≪商品券500ジェニー分≫、ノーマル≪商品券5000ジェニー分≫、ハード≪ハンターライセンス(正規)1枚≫となります』
え、マジでゲームさせられそうになってる。というか、ハードの景品やばくない?みんなこれ選ぶでしょ。いやでも、たしか帰ってきた人は誰もいないって話だから、もしかしてみんなこれを選択して攻略できない課題を出されてずっとここに閉じ込められたってことだったりする?どうしようどうしよう。
あたふたしていると、ヒソカがねえと声をかけてくる。
『状況がわからないんだけど、キミ何やってるの?ここどこだい?』
『いやあの、ここさっき誘った洞窟……』
『ふうん、その画面を見るに、同行者にボクの名前を入れたから強制転送させられたってわけね。ボク、今ごはん食べてたんだけどなあ』
『うわあああほんとごめんねえええ!!』
申し訳なさ過ぎて横を向いてごめんと謝った時、手が、選択画面に触れてしまった。
『選択完了。ハードモードです』
『え』
『課題、≪切り離した腕を一本秤に乗せてください≫』
そう表示されると、ウィンドウは消えてしまった。
『ひ、ヒソカ、今の見た?』
『見たよ。まさかそういう課題とはね。ハンター試験を思い出すなあ』
『そんな過酷な試験だったの?!いやていうか、待って待って!!普通選択後に本当にこれにしますかってワンクッションあるもんでしょ?!ううーっ!!ぜんぜん開かない!!びくともしない!!』
閉じられてしまった扉の取っ手を回すも、押しても引いてもびくともしない。手が擦り切れるくらい力を入れたけれど、無駄に終わってしまった。ドアノブを握っていた赤くなってしまった手を、ヒソカにそっと外される。
『無駄に怪我をする必要はないよ。ちょっとボクもやってみるから、向こう行って目瞑ってて』
奇術師はタネを見せないものだから、と言われて素直に頷いた私は、ベッドに座ってぎゅっと目を瞑った。
そして、冒頭に戻るわけである。
「どうしよう。これ課題達成しないと絶対開かないってことだよね」
大きな秤を見ながら、うう、と呻いてしまう。腕を一本切り離す。とんでもない課題だ。腕を切り落とすことももちろんだが、そもそも大量の血を流れて脱出より先に死ぬんじゃないだろうか。そんなことを考えていたら、ヒソカは寝ころんだまま「死ぬに決まってるでしょ」とおかしそうに笑った。
「腕を切り離した後、ここから脱出できたとしてもここは人里から遠く離れた深い洞窟の中。切り離した腕を繋げることも、流れ出る血を止めることも無理となったら、まあ死ぬよね」
「ひえ……それじゃあほぼ無理ゲーじゃん……」
詰んだ、と頭を抱える。兄を探し出す前に終わってしまうことも、それにヒソカを巻き込んでしまったことも後悔だ。そもそも兄探しにヒソカは関係ないのに、本当に私の勝手で巻き込んでしまった。
もう一度ごめん、と、謝るしかできなくて謝ったら、ヒソカにふうとため息を吐かれてしまった。
「次謝ったらキスするからね」
「なんかイケメンにしか言えないセリフ言い始めた……」
「それにしても、イージーとノーマルだったらどんな課題だったんだろうね?商品券の金額的に、すごく軽いものだったんだろうけど……ちょっと、何してるの」
ヒソカは起き上がるとバシッと私の手からナイフを取り上げた。今ものすごく勇気を振り絞っていたのに、とヒソカを見つめると、大きなため息を吐かれてしまった。
「キミの命と引き換えにここから出ても全然楽しくないからやめてくれる?」
「でも、私にできるのはヒソカだけでもここから出してあげることだけだし」
「ボク、他人に借り作るの嫌いなんだよね。時間はたっぷりあるんだから、とりあえず今は少し冷静になった方がいいよ」
「冷静に……」
「というわけで、添い寝してあげるから寝ようね」
「なんでそうなるの?!ほぎゃあああ!!」
おとなしくしてねーとヒソカに抱きかかえられ、そのままベッドに倒される。ヒソカもリラックスモードに入ったのか、整えていた髪はぐしゃぐしゃになっており、服もきっちり着ていたシャツはボタンがいくつも外れていて素肌が見えてセクシーだ。目のやり場に困ってしまう。
「寝れないって!!こんなセクシーな成人男性に抱きかかえられたまま寝るの難しすぎるって!!くそうこの歩く発禁男め!!」
「褒めるか貶すかどっちかにしてくれる?なに、手を出してほしいの?ならご希望に応えて……」
「わきゃああああ!!希望してないですううう!!わかった寝ます健全に寝ます!!」
「そうして」
なんだこの状況は、と無駄にドキドキしながらヒソカの腕の中で目を瞑る。ああでも、ヒソカも人間なんだなあ。暖かいし、心臓は動いてるし、呼吸音も聞こえる。
なんだろうな、人肌に焦がれることなんてなかったはずだけど、こうしているとどこか落ち着く気がした。
すうすう、と目を閉じて数秒で寝息を立て始めた少女を見て、今日何度したかわからない溜息を吐き出した。
(こんなほいほいと男とベッドに寝るなんて、警戒心も何もないなあ)
自称兄である団長の気苦労を理解しつつ、寝顔を見ながらサイドテーブルに無造作に放ったナイフを見る。自分の見ていない間に、腕にナイフの刃を当てているのを見た時は多少なりとも肝が冷えた。自分を犠牲にすることに、躊躇いがなさすぎる。
(こんなどうでもいい場所で死ぬなんてやめてよね。キミは本気の団長と勝負するために必要なトッピングなんだから)
理由なんて本当にそれだけだ。
彼女が一人選択することができた同行者に、自分が選ばれたことに少し優越感を覚えた、なんてこときっと気のせいだろう。
赤く擦り切れた彼女の手にハンカチを巻いて、柔らかい頬を少しつついてから立ち上がる。
この部屋は念能力者が作った部屋に間違いない。だがその能力者がここを見ているのか、はたまたすでに死んでいるのかはわからない。現時点で解除方法はない。であれば、課題を達成するしか手段はないだろう。
携帯の電波は入るため、電話では聞かれる可能性もあるため、メールでマチに仕事として依頼を飛ばす。現在地とユウキも一緒にいると書けば、団長妹としてかわいがっていることもあってかいつもより早い返事が返ってきた。ちょうど近くの島にいるみたいで助かった、と携帯を閉じると、トランプを取り出して念を込めた。
「ユウキ、起きて」
ぽふぽふ、と頭を撫でられる。起きてと優しい声がする。誰だろう、と言われるがままに起きると、そこにはクロロさんの劇団に所属する団員であるマチさんがいた。
「えっ、あれ?!マチさんどうしてここに?!……いや待ってここどこ?!」
「ここは君の滞在してるホテルだよ。あ、ルームサービスで三人分の食事を頼んだから食べようよ」
「ヒソカ?!え、私どうやってここに戻ってきて……まさかヒソカ、腕を?!」
ベッドから飛び起きて、部屋へ入ってきたヒソカに駆け寄って腕を見る。
「……ある」
「もちろんあるよ。あの後、扉をこじ開けて出てきたんだ。マチはちょうど近くにいたみたいでね、せっかくだから食事に誘ったんだよ」
「そ、そうだったんだ……はあああああ……よかったあああ……」
「おっと」
思わずヒソカに胸にしがみついて、もう一度心臓の音を聞く。眠る前に聞いた音が、ちゃんと聞こえている。
私の軽率な判断で巻き込んでしまって、危うく死なせてしまうところだった。よかった、本当によかった。やばい、少し泣きそうだ。涙ぐむ私の頭を、ヒソカがポンポンと優しく撫でてくるからますます涙腺が緩んでいく。
「ふふ、心配性だねユウキは。いいから顔でも洗っておいで?いや、お風呂のほうがいいかな?泥まみれだし」
「はっ、ほんとだ!!ごめんちょっとお風呂入ってくる!!」
目元にたまった涙を強引に拭って、着替えの準備をすぐにすませるとお風呂場へ駆け込んだ。たしかに泥まみれだ。ベッド汚してごめんねホテルの人!
「ほんと息を吐くように嘘がつけるね」
「けど、今の彼女には必要だろう?あ、さっき報酬は振り込んでおいたから確認してね」
「あんた、あの子に変なことしてないだろうね」
「ふふふ」
「ちょっと。何かしたの?」
「マチには見せちゃおうかな。これ、添い寝してるボクと無防備に眠るユウキの写真。よく撮れてるでしょ」
「……腕治すんじゃなかった」
「ふふ、待って待って。糸で攻撃するのやめて?何もしてないよ?添い寝はしたけど」
「それが変なことだって言ってるんだよ!!」
一方お風呂場のユウキ。
「結局あの部屋なんだったんだろうなあ」
ちなみに後日、洞窟の様子を見てみようと向かってみたところ、土砂崩れでも起きたのかと疑うくらいに綺麗に埋まっており、あの部屋についてもはたまた景品についても何もわからないままこの事件は幕を閉じるのだった。(ユウキは知らないが景品は存在しており、ヒソカはちゃっかりハンターライセンスを入手しお金に換金していたりする。)
※兄探し中のどこか
「ヒソカごめんね……」
「いつまで謝るの。もういいってば」
めそお、と凹みつつ、よくわからない部屋のベッドに腰かけて巻き込んでしまったヒソカに謝ると、しつこいと言われてしまった。さらにめそおと凹んでしまう。
「やっぱり駄目だね。びくともしないよ」
開かない扉と格闘していたヒソカも、やれやれと肩をすくめながら戻ってきてベッドに寝転んでしまった。どうしてこうなったのか。
それは何でもないある日のこと。私はいつものように兄を探して色んなところを巡っていたのだけど、とある島の洞窟に不審な人物が住んでいるという情報をキャッチした。その不審人物は、その洞窟内にお宝を隠し持っていると言われていて、ハンターや盗賊が尋ねたが帰ってきたものはいないという。
めちゃくちゃ怪しい!兄っぽい!!と思った私は意気揚々とその洞窟へ向かった。その道中、イルミさんに呼ばれて一仕事終えたばかりだというヒソカと偶然出会い、よかったら一緒に洞窟行く?と声をかけたら「めんどうだからイヤ」と語尾にハートをつけて断られてしまった。この野郎。
結局一人でその洞窟を尋ねると、その奥には不釣り合いな扉があり、私は何も考えずにその扉を開いたのだった。
するとどうだ、扉が閉まると同時に突然目の前に現れた謎のウィンドウ。パソコンで見るそれが、宙に浮かび私の目の前でチカチカと光っている。文字が浮かび上がると、選択画面が表示された。
『警告、この先一人では攻略不可。同行者を一人選択してください』
ゲームっぽい!ますます兄っぽい!!ゲーム好きかどうか知らんけど!!とさらに思った私は、さっき断られたヒソカを選んでやろ、なんて安易な考えでヒソカ・モロウと入力してやった。すると、画面いっぱいに『登録完了』と表示されるや否、私の真横に現れるヒソカ。
え、と珍しくきょとんとした顔のヒソカが、隣の私を見る。そして真っ白なだけだった部屋の中に、突然ベッドとサイドテーブルが増えたではないか。
『難易度イージー、ノーマル、ハードから選択後、課せられた課題を攻略してください。なお、景品はイージー≪商品券500ジェニー分≫、ノーマル≪商品券5000ジェニー分≫、ハード≪ハンターライセンス(正規)1枚≫となります』
え、マジでゲームさせられそうになってる。というか、ハードの景品やばくない?みんなこれ選ぶでしょ。いやでも、たしか帰ってきた人は誰もいないって話だから、もしかしてみんなこれを選択して攻略できない課題を出されてずっとここに閉じ込められたってことだったりする?どうしようどうしよう。
あたふたしていると、ヒソカがねえと声をかけてくる。
『状況がわからないんだけど、キミ何やってるの?ここどこだい?』
『いやあの、ここさっき誘った洞窟……』
『ふうん、その画面を見るに、同行者にボクの名前を入れたから強制転送させられたってわけね。ボク、今ごはん食べてたんだけどなあ』
『うわあああほんとごめんねえええ!!』
申し訳なさ過ぎて横を向いてごめんと謝った時、手が、選択画面に触れてしまった。
『選択完了。ハードモードです』
『え』
『課題、≪切り離した腕を一本秤に乗せてください≫』
そう表示されると、ウィンドウは消えてしまった。
『ひ、ヒソカ、今の見た?』
『見たよ。まさかそういう課題とはね。ハンター試験を思い出すなあ』
『そんな過酷な試験だったの?!いやていうか、待って待って!!普通選択後に本当にこれにしますかってワンクッションあるもんでしょ?!ううーっ!!ぜんぜん開かない!!びくともしない!!』
閉じられてしまった扉の取っ手を回すも、押しても引いてもびくともしない。手が擦り切れるくらい力を入れたけれど、無駄に終わってしまった。ドアノブを握っていた赤くなってしまった手を、ヒソカにそっと外される。
『無駄に怪我をする必要はないよ。ちょっとボクもやってみるから、向こう行って目瞑ってて』
奇術師はタネを見せないものだから、と言われて素直に頷いた私は、ベッドに座ってぎゅっと目を瞑った。
そして、冒頭に戻るわけである。
「どうしよう。これ課題達成しないと絶対開かないってことだよね」
大きな秤を見ながら、うう、と呻いてしまう。腕を一本切り離す。とんでもない課題だ。腕を切り落とすことももちろんだが、そもそも大量の血を流れて脱出より先に死ぬんじゃないだろうか。そんなことを考えていたら、ヒソカは寝ころんだまま「死ぬに決まってるでしょ」とおかしそうに笑った。
「腕を切り離した後、ここから脱出できたとしてもここは人里から遠く離れた深い洞窟の中。切り離した腕を繋げることも、流れ出る血を止めることも無理となったら、まあ死ぬよね」
「ひえ……それじゃあほぼ無理ゲーじゃん……」
詰んだ、と頭を抱える。兄を探し出す前に終わってしまうことも、それにヒソカを巻き込んでしまったことも後悔だ。そもそも兄探しにヒソカは関係ないのに、本当に私の勝手で巻き込んでしまった。
もう一度ごめん、と、謝るしかできなくて謝ったら、ヒソカにふうとため息を吐かれてしまった。
「次謝ったらキスするからね」
「なんかイケメンにしか言えないセリフ言い始めた……」
「それにしても、イージーとノーマルだったらどんな課題だったんだろうね?商品券の金額的に、すごく軽いものだったんだろうけど……ちょっと、何してるの」
ヒソカは起き上がるとバシッと私の手からナイフを取り上げた。今ものすごく勇気を振り絞っていたのに、とヒソカを見つめると、大きなため息を吐かれてしまった。
「キミの命と引き換えにここから出ても全然楽しくないからやめてくれる?」
「でも、私にできるのはヒソカだけでもここから出してあげることだけだし」
「ボク、他人に借り作るの嫌いなんだよね。時間はたっぷりあるんだから、とりあえず今は少し冷静になった方がいいよ」
「冷静に……」
「というわけで、添い寝してあげるから寝ようね」
「なんでそうなるの?!ほぎゃあああ!!」
おとなしくしてねーとヒソカに抱きかかえられ、そのままベッドに倒される。ヒソカもリラックスモードに入ったのか、整えていた髪はぐしゃぐしゃになっており、服もきっちり着ていたシャツはボタンがいくつも外れていて素肌が見えてセクシーだ。目のやり場に困ってしまう。
「寝れないって!!こんなセクシーな成人男性に抱きかかえられたまま寝るの難しすぎるって!!くそうこの歩く発禁男め!!」
「褒めるか貶すかどっちかにしてくれる?なに、手を出してほしいの?ならご希望に応えて……」
「わきゃああああ!!希望してないですううう!!わかった寝ます健全に寝ます!!」
「そうして」
なんだこの状況は、と無駄にドキドキしながらヒソカの腕の中で目を瞑る。ああでも、ヒソカも人間なんだなあ。暖かいし、心臓は動いてるし、呼吸音も聞こえる。
なんだろうな、人肌に焦がれることなんてなかったはずだけど、こうしているとどこか落ち着く気がした。
すうすう、と目を閉じて数秒で寝息を立て始めた少女を見て、今日何度したかわからない溜息を吐き出した。
(こんなほいほいと男とベッドに寝るなんて、警戒心も何もないなあ)
自称兄である団長の気苦労を理解しつつ、寝顔を見ながらサイドテーブルに無造作に放ったナイフを見る。自分の見ていない間に、腕にナイフの刃を当てているのを見た時は多少なりとも肝が冷えた。自分を犠牲にすることに、躊躇いがなさすぎる。
(こんなどうでもいい場所で死ぬなんてやめてよね。キミは本気の団長と勝負するために必要なトッピングなんだから)
理由なんて本当にそれだけだ。
彼女が一人選択することができた同行者に、自分が選ばれたことに少し優越感を覚えた、なんてこときっと気のせいだろう。
赤く擦り切れた彼女の手にハンカチを巻いて、柔らかい頬を少しつついてから立ち上がる。
この部屋は念能力者が作った部屋に間違いない。だがその能力者がここを見ているのか、はたまたすでに死んでいるのかはわからない。現時点で解除方法はない。であれば、課題を達成するしか手段はないだろう。
携帯の電波は入るため、電話では聞かれる可能性もあるため、メールでマチに仕事として依頼を飛ばす。現在地とユウキも一緒にいると書けば、団長妹としてかわいがっていることもあってかいつもより早い返事が返ってきた。ちょうど近くの島にいるみたいで助かった、と携帯を閉じると、トランプを取り出して念を込めた。
「ユウキ、起きて」
ぽふぽふ、と頭を撫でられる。起きてと優しい声がする。誰だろう、と言われるがままに起きると、そこにはクロロさんの劇団に所属する団員であるマチさんがいた。
「えっ、あれ?!マチさんどうしてここに?!……いや待ってここどこ?!」
「ここは君の滞在してるホテルだよ。あ、ルームサービスで三人分の食事を頼んだから食べようよ」
「ヒソカ?!え、私どうやってここに戻ってきて……まさかヒソカ、腕を?!」
ベッドから飛び起きて、部屋へ入ってきたヒソカに駆け寄って腕を見る。
「……ある」
「もちろんあるよ。あの後、扉をこじ開けて出てきたんだ。マチはちょうど近くにいたみたいでね、せっかくだから食事に誘ったんだよ」
「そ、そうだったんだ……はあああああ……よかったあああ……」
「おっと」
思わずヒソカに胸にしがみついて、もう一度心臓の音を聞く。眠る前に聞いた音が、ちゃんと聞こえている。
私の軽率な判断で巻き込んでしまって、危うく死なせてしまうところだった。よかった、本当によかった。やばい、少し泣きそうだ。涙ぐむ私の頭を、ヒソカがポンポンと優しく撫でてくるからますます涙腺が緩んでいく。
「ふふ、心配性だねユウキは。いいから顔でも洗っておいで?いや、お風呂のほうがいいかな?泥まみれだし」
「はっ、ほんとだ!!ごめんちょっとお風呂入ってくる!!」
目元にたまった涙を強引に拭って、着替えの準備をすぐにすませるとお風呂場へ駆け込んだ。たしかに泥まみれだ。ベッド汚してごめんねホテルの人!
「ほんと息を吐くように嘘がつけるね」
「けど、今の彼女には必要だろう?あ、さっき報酬は振り込んでおいたから確認してね」
「あんた、あの子に変なことしてないだろうね」
「ふふふ」
「ちょっと。何かしたの?」
「マチには見せちゃおうかな。これ、添い寝してるボクと無防備に眠るユウキの写真。よく撮れてるでしょ」
「……腕治すんじゃなかった」
「ふふ、待って待って。糸で攻撃するのやめて?何もしてないよ?添い寝はしたけど」
「それが変なことだって言ってるんだよ!!」
一方お風呂場のユウキ。
「結局あの部屋なんだったんだろうなあ」
ちなみに後日、洞窟の様子を見てみようと向かってみたところ、土砂崩れでも起きたのかと疑うくらいに綺麗に埋まっており、あの部屋についてもはたまた景品についても何もわからないままこの事件は幕を閉じるのだった。(ユウキは知らないが景品は存在しており、ヒソカはちゃっかりハンターライセンスを入手しお金に換金していたりする。)