迷子のレクイエム(狩人)
DREAM
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恥ずか死ぬ。目を覚まして発した私の第一声はそれであり、ベッド横に椅子を置いて私の目覚めを待っていたらしいクロロさんは何のことかわからないといった顔で首を傾げていた。
「盛大に大泣きした上に超絶ネガティブ発言をかました挙句寝落ちするなんて、羞恥で死ねる」
「兄というのは妹の弱音を聞けると嬉しいものだよ」
「もう妹扱いがナチュラルすぎてスルーしそうになってきた……」
「あ、目が覚めたんだ。ちょうどよかった。クロロ、お客さんだよ」
当たり前のようにヒソカが部屋に入ってくる。いや、思えばここはヒソカの隠れ家だったんだから、どの部屋に入ろうが構わないのか。降りて行ったクロロさんを見送った後、起き上がってから残されたヒソカに声をかける。
「あのさ、ヒソカ」
「うん?」
「その、兄さんへの伝言、伝えてくれてありがとね。兄さんからの返答も教えてくれてありがとう。ヒソカ、意外と良いやつなんだね」
「ふふ、あんまり信用しすぎないほうがいいと思うよ?ボク、気まぐれで嘘つきだし」
「あーうん、ピエロ感すごいもんなあ……それどこまでが役作りなの?」
「さあどこまででしょう?あと、言い忘れてたけどボクもうクロロの団やめたから団員じゃないよ」
「ええ?!そうだったの?!きゅ、給料とかの問題?それとも実はブラック企業だったりした?!」
「ふ、くくっ!給料は、むしろ羽振りがよかったけど、くくっ、待ってお腹痛い」
「毎回笑いすぎで腹痛めるのなんなの?!」
「ユウキ、オレからも忠告だがあまりヒソカとなれ合うなよ。こいつは本当に気まぐれで他人を切り捨てる男だからな」
私達の会話が聞こえていたらしい。1階に降りていたクロロさんは戻ってくるや否、そう私に言い聞かせるように言ってきて、よくわからないけどわかったと頷いておいた。
そういえばお客さんが来ていたということだけど、とクロロさんの背後を見ると、知らない男の人が立っていた。部屋に入る様子はない。
「ユウキ、少し目を閉じていてくれるか?」
「えっ?う、うん?」
さらによくわからないことを言われたけれど、とりあえず目を閉じてみる。そっと耳を塞がれたが、この手はクロロさんだろうか。いや、目を閉じて無音になったら、なんかまた眠たくなって……ぐー……。
オレの除念を終えた後、除念師の男アベンガネにユウキの除念ができるか見てほしいと交渉して部屋につれてくると、無理だと声を震わせた。
「オレの力では取り除けない。いや、そうしようとすることすら不可能だ」
「それはなぜだ」
「オレが除念しようと能力を発動させた瞬間、あれに殺される。あの念獣には高い知性があるみたいだ。見えるだろ、警戒している禍々しいオーラが。……一体、どんな恐ろしい奴に呪われたんだ、この娘は」
無理かもしれない、ということは少し予想していた。彼女の兄のことだ、除念という行為の存在だって知っていたことだろう。彼女を傷つけるイコール、ガーディアンを取り除く、もプログラムされているとこれで確信した。
それなら構わない、と彼女の除念をひとまず諦めると、アベンガネは再度すまないと謝罪した。
「報酬は口座に振り込んでおく。世話になったな」
「いや、こちらこそ彼女の件、役に立てなく悪かった。また何かあればここに連絡をくれ」
アベンガネが連絡先をテーブルに置く。ヒソカに彼を見送るように言って部屋を出て行かせてから閉じた手を離すと、ぐらぐらとユウキの頭が揺れ動いていた。おそらくうたた寝してしまっているのだろう。
「ユウキ、もういいぞ」
「むにゃむにゃ……はっ!やばい寝そうになってた!」
「ふっ、少し寝てたようだが?」
「ね、ねねね寝てないけど?!ていうか、さっきの人誰だったの?あれ、もういないし……」
「オレの待ち人だった男だ。占い通り、彼のおかげですっかり元通りになってね」
「元通り?何が?」
何でもないよ、と言って時計を見せたら、丸一日眠っていたことに飛び上がって驚くユウキが面白くて笑ってしまった。
「これからどうするんだ?」
朝昼をすっ飛ばして、時間はもう晩御飯の時間。いつものように夕飯を作って、今日はヒソカも含めた三人での食卓となり、新鮮だなあなんて思いながら食べていたらクロロさんにそう聞かれた。昨日の今日でまだしっかりとは頭の整理はついていないけど考えていることがある。
「兄さんが理由があって会えないっていうなら、私はその理由が知りたい。けどグリードアイランドには行けないし、もういないかもしれないから、とりあえず原点回帰ってことで生まれ故郷に行ってみようかと思うんだ」
「たしか、流行り病で全員死んだという話だったが、忍者の隠れ里では神隠しにあったと伝わっていたんだったか」
「そう。前回ジャポンに行った時は村までの道がわからなくて行けなかったんだけど、今回は意地でも見つけてやろうって思ってさ!だから、私明日この家を出るよ」
楽しかったけど、ずっとこのまま過ごしていたいと思うほど、幸福だったけど。
内容はわからないがクロロさんが元通りと言っていたということは、きっと劇団を再開させるんだろうと思った。それなら、いつまでもここにいさせるわけにはいかない。それぞれのやりたいことをやらないと。いやまあ、ここヒソカの隠れ家なんだけどね。なんだか半年もいたからか、すっかり我が家みたいな気持ちになってしまっている。
「ここでヒソカを待ってる間、すごく楽しかった。寂しくない時間がこんなに続いたの、クロロさんのおかげだよ。本当にありがとう」
しかしクロロさんからも話を聞いているヒソカからも何も返答がないので、そろそろと顔を上げると、クロロさんがいなかった。
「いやおらんのかい!」
「さっき二階に上がっていったよ」
「会話の最中ぞ?!フリーダムすぎるんだが?!」
「ところでこのパスタにかかってるクリーム、美味しいね。隠し味とかあるの?」
「この家フリーダム男しかいないの?!でも褒めてくれてありがとね!!隠し味は秘密だよ!!」
突っ込み疲れて思わず立ち上がった身体を椅子に戻して、はあとため息を吐いた。自称兄もショタコンの変態も、どうしてこう自由人なのか。仕方ないと食事を再開させると、とんとんと階段を降りる音が聞こえてきた。
「ユウキ」
「はいはい、なんですかねー」
話をぶった切られたことについ拗ねた返事をしてしまったのだが、なぜかクロロさんは怒ることもなくむしろおかしそうに笑って、私の前に手を出してくる。ついその手を見つめると、手の中には新品の携帯があった。
「新しい携帯だ。もちろん、オレの番号しか登録されていない」
「すでに登録済!!いやまって、これ最新機種?!た、高いやつだ!!ええええちょっとこういうサプライズ弱いんだからやめてよおおお」
「お前を驚かせるのが趣味になったからな、今後もやっていくから覚悟しておけ」
「やな宣言聞いちゃったなあもう!!」
「あと、オレも一緒に行くからお別れの挨拶は不要だぞ」
「サプライズ二段構えやめてええええ」
さっきまで私、めちゃくちゃ緊張しながら話してたんだけどなあ!どうしてこうギャグ落ちみたいになっちゃうんだろうなあ!
叫び続ける私を見ながら、ヒソカは「これおかわりある?」と自由なコメントをよこしてくるし、この男どもほんとフリーダムすぎるんだが!!
ーーー…
「ユウキ、飛行船に乗るから起きてくれ」
「うーん……むにゃむにゃ……まだ朝早いよ……飛行船って何の話だ?!」
聞こえてきたとんでもない単語に飛び起きると、空港にいました。待て待て待て。私、昨日普通に寝たよね?!ヒソカズハウス最後の夜だーってお酒飲んでそのまま寝たよね?!
なんで私空港の待合の椅子に座ってるんですかね?!
「ああ、オレが連れてきたからだな。いつまでもヒソカと一緒にいることもないだろう」
「まさかヒソカに黙って出てきてます?!今頃ヒソカびっくりしてるんじゃない?!」
「ははは。まあ気にするな。さ、時間だからそろそろ行こう」
「いやちょっ、このフリーダム!!」
連絡先を知らないので仕方なく心の中でヒソカにごめんねと謝って、荷物を持ってくれているクロロさんの後ろを追いかける。クロロさんの隣まで来ると、なんだか機嫌が良さそうだった。
「あのさ、クロロさんほんとによかったの?そろそろ劇団再開したいんじゃない?」
道中、ついそんなことを訪ねてしまう。いや、ここでやっぱりお別れとなったら寂しすぎるんだけど、別にやりたいことがあるのに無理に付き合わせるのもこちらとしては気が引けてしまうのだ。そう思って聞いたのだけど、問題ないよと笑われてしまった。
「ジャポン観光の後、再開予定だ。他のメンバーもその段取りで動いているからな」
「あっそうなんだ!」
思えば、ヒソカを待っていた半年間で団員のみんなと連絡を取っている様子はなかった。長期的なオフシーズンと言っていたけど、もしかしたらある程度の期限は決まっていたのかもしれない。
「そもそも、妹が兄に遠慮することはないんだぞ」
「ほんと息を吸うように言うようになったなあ……」