迷子のレクイエム(狩人)
DREAM
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「いやもうほんと、一体なんなのこの状況?!私さっきまでヨークシンにいたよね?!ヒソカとタクシー乗ってたよね?!えええ何でこんな助けの来なさそうな断崖絶壁にクロロさんと二人取り残されてるのおおおおお?!」
「オレの妹は元気だなあ」
「言ってる場合か?!うわああ携帯も繋がらないよおお!!」
電波の入らない携帯を握りしめて、一通り叫んだものの、やはり混乱は解けず何度見回しても変化のない荒れ地を見ては項垂れていた。クロロさんに状況を聞いても『カツアゲされて殴られた後ここに捨てられた』なんてシンプルに恐ろしい話を聞かせてくるし。いやほんと被害届出そうね?!
「ていうか、なんで私もここにいんの?!」
「ヒソカが連れてきたからだな」
「あの野郎!!」
手品すごいなんて褒めるんじゃなかった!!次会ったらマジで覚えてろよ変態め!!
ぐおおおと喚いている間もクロロさんだけは楽しそうだし、なんでそんなに余裕なのか。頭を抱えて地面に蹲っている私の頭を、クロロさんがポンポンと撫でるように叩いてくる。
「まあ落ち着け。せっかく時間もあることだし、兄妹団欒でもしていようじゃないか」
「してる場合じゃないんだけど?!このままだと干乾びるんだけど?!」
「大丈夫だ。数時間前に迎えを頼んだから、もうしばらくしたら来てくれるだろう」
「ほへえ?」
思わずすっとぼけた声が出てしまったが、もう一度クロロさんの言葉を読み込み直す。えっと、迎えを頼んだ。数時間前。もうすぐ来る。いやあのね。
「そういう大事なことは私が携帯取り出して電波ないって嘆いた辺りで教えてよおおお!!」
「わかった、次からはそうしよう」
「いやこんな状況に次があったら困るんだけどね!!」
はあ、と今度こそ地面に倒れこんだ。仰向けになって空を見上げて、都会と違って空が広いなあなんて場違いな感想を口にする。そうか、と隣に座るクロロさんも、同じように空を見上げていた。
「なんか一気に疲れた……もう夜も明けちゃってるし、お腹すいたし。ていうか、どうやって救助要請したの?」
「オレの携帯、衛星電話だから電波のしがらみがないんだ」
「めちゃくちゃ高いやつじゃん……携帯とられなくてよかったね」
「本当にな」
ちらりとクロロさんの方を見ると、痛そうな頬が見えた。殴られたと言っていたが、無抵抗だったのだろうか。なんか、クロロさんってスマートに流しそうなイメージがあったのだけど、実は喧嘩しないタイプなのかな。
私の視線に気がついたらしく、こちらを振り返って優しい笑みを浮かべるが、怪我のせいで痛々しく見えてしまう。
「どうした?」
「いや、クロロさんを殴った奴、どんな奴だったのかなって。もし見かけたら行ってね。私大声で叫んで絶対慰謝料請求するから」
「ふ、いいなそれ。楽しみだ」
「いや楽しくはないよ?」
よっと体を起こして、何度吐いたかわからないため息をもう一度吐いた。
「まあでも、ほんと無事でよかった。もしかして幻影旅団にやられたんじゃないかって、もう気が気じゃなかったよ。私の友達に幻影旅団を追ってる人がいてさ、その人の話によるとヨークシンにいるみたいだったから、ますます焦った」
「危ないと聞いていながら、どうして街を出なかったんだ?」
「それはほら、やっぱり兄情報があった街だし、オークションも見たかったし。グリードアイランドってゲーム知ってる?なんか貴重なものらしくて、なんとなくだけど私の兄はそれ欲しいんじゃないかなって思ってさ。狙ってたんだけど、まあ今からじゃ無理かもなあ」
結局カタログを買うどころかヨークシンに戻るのもいつになるやらで、兄探しは遠のいてしまったけれど。膝を抱えて、もう一度夜明けの空を仰ぐ。
「……それに、クロロさんと夕食の約束もしたからね。約束を反故する人じゃないと思ってたから、会って事情を聞きたかったんだ」
いざ会ってみれば、仕事が長引いていたとかカツアゲされてボコられていたとか、挙句にはこんな絶壁に放られただとかで散々な一日だったようだけど。
「ま、ここから無事脱出したら、美味しいご飯食べに連れてってよね!何食べよっかなー、パスタ系最近食べてないんだよなあ」
「可愛い妹の機嫌が直るならいくらでも奢るさ」
「すごい頻度で妹呼びしてくるから突っ込みが追いつかないよ……」
ふと、クロロさんがポケットに手を入れた。
「電話だ」
「わっほんとに繋がってる!」
ピロリロ、とクロロさんのポケットに入っていた携帯が音を鳴らすのを見て、高い携帯すごいと感心した。私もこういうことに備えて手を出してみるか……いや待てさすがにこんなこと特殊すぎてもうないだろ。ないよね?!
「ああ、来てくれたか。報酬はいつもの口座に入れておく。……ユウキ、向こうに見える飛行船が迎えだ」
「えっうそ!あっほんとだ!おーい!」
クロロさんが指さした先に、飛行船が見えて思わず立ち上がって手を振った。飛行船が安定した地面へ着地すると、中からスピーカーで『すぐ出るから早く入って』と声がした。先にどうぞと言われて意気揚々と飛行船の中に入ったのだが、救助隊の人とかいるのかと思っていたら一人しか人がいなくて拍子抜けしてしまう。
後から乗ってきたクロロさんが、「助かったよ」と船に乗っていた黒髪ロングの男の人に声をかけた。男は無表情のまま呆れたように肩をすくめてみせる。
「言っておくけど、こういうのは今回限りにしてよね。ヒソカといいクロロといい、君達オレのこと便利屋だと思ってない?」
「ちゃんと相場の倍は払うんだからいいだろ、イルミ」
「イルミ?」
クロロさんが迎えに来てくれた彼をそう呼んだが、どこかで聞き覚えがある気がしてついオウム返しをしてしまった。案の定二人に見られているが、私の方もこう、もうすぐ思い出せそうなところまで来ているのだ。ちょっと待ってね。
「イルミ……イル兄……兄さん?!」
「オレ、君の兄さんじゃないんだけど」
「いやそうじゃなくって!もしかしてミルキくんのお兄さんのイルミさん?!」
「なんでオレの弟の名前……あ、わかった。君あれだ。母さん達が言ってた、ミルキのお嫁さんだ。ユウキって言ったっけ」
「ゾルディック家で嫁認識されてるの私?!」
違います友達なんです、とイルミさんに説明するも、またまたーと棒読みで言われてしまった。どうして誰も話を聞いてくれないのゾルディック家の大人たち……。
「オレの家に友達はいらないけど、嫁は別だよ。やっぱり子孫は残さないといけないしね」
「ううん話聞いてくれないタイプだあ!あのですね、ミルキくんにも選ぶ権利があるのですよ……ほわっ」
突然目の前が暗くなった?!いやこれクロロさんのコートだ!!コートを頭に被せられたんだ!なになに何なの?!
「イルミ。迎えに来てくれたことには感謝するが」
「うん」
「オレより先にイル兄だの兄さんだのと呼ばれたのは許すわけにはいかないし、オレの妹は嫁には出さない。覚えておけ」
「ちょっと聞こえづらいけどとてつもなくいらないこと言ってるのはわかる!!」
「それは困るなあ。せっかく弟にできた嫁なんだから、オレとしても大事にしたいからね。そもそも君、この子の兄じゃないでしょ」
「いや、兄だが」
「ねえユウキ、クロロどうしちゃったの?」
「わかんないです!!これ最近デフォだと思ってたけどやっぱおかしいな?!」
うがーっとコートを剥がして、クロロさんの腹筋めがけて頭突きをして膝を折らせ、イルミさんに向き直る。
「挨拶が遅れました!私ユウキっていいます。助けに来てくれてありがとうございます!」
「うん、別にいいよ。クロロからお金もらってるし、ミルキの嫁だし」
「誤解が全く解けてない!!」
「う、いい頭突きだったぞユウキ……さすがオレの妹。絶対嫁には出さないからな」
「この人まだ何か言ってる!!」
「クロロはもう放っておこう。とりあえずクロロの指示通り東に舵は切るよ。ところでユウキ、うちのミケとよく遊んでるって聞いたけどほんと?」
「はい!めちゃかわいいですよねミケ!私もおっきなペット飼ってみたいなあ」
(ミケってあのゾルディック家の狩猟犬のことか?……ああ、動物なんてとくに縦社会だろうから、ユウキのオーラに負けて服従したんだな)
ーーー…
完全に気が抜けてしまったのだろう。イルミと話している途中からうとうとしていたが、いつの間にかユウキがイルミの肩に頭を乗せて眠っていたので即座に引きはがして仮眠スペースに寝かせる。気持ちよさそうに眠るユウキの頭を撫でてから操縦席に戻ると、イルミが感情のない声で「何今の顔」と指摘してきた。
「どんな顔だ?」
「だらしない顔。君、そんな顔するんだね。どうでもよかったけど、少しあの子に興味が沸いたよ。で、ナンバーはあげてるの?」
「いや?そもそも彼女はオレが幻影旅団のリーダーだってこと知らないからな」
はあ?という珍しい顔に、オレ達のことをただの劇団だと思っていると付け加えたらますます訝しむ目を送られる。
「つまり、総出で騙して遊んでる、ってわけなの?」
「人聞きが悪いな。あえて伏せて、妹として大切にしているだけだ」
「言い方の違いでしょ。結局は嘘ついてるわけなんだから。いつまでも続けられるものじゃないし、後々面倒じゃない?有料だけど、お得意のよしみで針刺してあげようか?」
君の望む従順な妹にしてあげるよ、と囁いてくる悪魔を鼻で笑い一蹴する。
「その程度の感情なら、兄など名乗らないさ。そもそもお前、刺せないだろ?」
イルミが針をちらつかせた時点で、すでに彼女の防衛機構は起動している。今の自分では見えないが、ゆらりと形をもたないオーラが彼女を守るように覆ってこちらを警戒しているはずだ。イルミはそれを横目で確認して、ため息を吐きながら針を服の中へしまい込んだ。
「やろうと思ったらやれるけど、割に合わないからしないだけ。まあ弟の嫁だし、さっき言ったように大事にしたいと思ってるしね」
「嫁には出さないが、普通に仲良くしてくれる分にはオレとしても助かるよ。嫁には出さないが」
「しつこいなこの自称兄」
絶対に嫁には出さない。少なくともオレに勝てない輩に嫁に出す気はない。
「さて、言われた通り真東に向かってるんだけど、どこまで行くの?」
「東に待ち人がいると予言を受けているから、進行方向にもし島があったらそこで降りてくれないか。ひとまず除念師を見つけるまでは、ユウキと兄妹団欒をしながら街を散策するつもりだ」
「兄妹団欒……ふーん……」
何かを含んだような頷きとともに、ユウキへと送られる視線。何か嫌な予感がするな、と思いながら飛行船に揺られていたのだが。
真東に存在した島へ上陸した直後の「今暇だからオレもついていく。義兄だし、オレのことは兄さんって呼んでいいよ、ユウキ。兄妹団欒しようね」というイルミの言葉に、厄介な奴を呼んでしまったと少し後悔するのだった。ちなみにユウキは「自称兄が増えた!」と頭を抱えていて面白かった。
「わー!綺麗な海だー!」
飛行船を着陸させて、降り立った場所は海辺だった。白い砂浜、透き通った海。すっかりバカンス気分になった私ははしゃぎながら砂浜を駆け回った。水着があったら泳いでるなこれ!
「イルミさん、ここなんて名前の島なんですか?」
「知らない。クロロに言われて真東にあった島に降りただけだし」
「知らない?!いやちょっ、どういうことクロロさん?!」
「占いの結果に東に待ち人がいるって出たから、とりあえず来てもらったんだよ。島があったということは、ここにその待ち人がいるのかもしれないな」
「行き当たりばったりすぎない?!私有地だったら不法侵入になるよ?!」
「わかってるじゃないか。そう、君達は不法侵入者だよ」
森の方から声が聞こえて、驚いて振り返ると、ぴっちりしたスポーツウェアを来たガタイのいい男の人が、人の良さそうな笑顔でこちらへ歩いてきた。ここの土地の人かもしれない。
慌てて頭を下げて、悪気はなかったのだと弁明をしようとしたのだけど。
「問答無用。正規の方法以外での入島は違法、君達には強制退場してもらう」
「へっ?!」
ペラ、と男が私達に見せたのは、一枚のカードだった。離れている為、なんて書いてあるか見えないが何か、やばそうな気配くらいは流石にわかった。
なんか、こわ、い。
「ユウキ!」
「ほぎゃああ?!」
クロロさんに名前を呼ばれると同時に私の顔にコートを被せてきて、そのまま包むようにして抱えられた。何も見えず、外の音も聞き取りづらくなり、わあわあと騒ぐも、離されることはなく。一体何が起きてるんだと、ぎゅっと目を閉じていたら、一瞬身体がふわっと浮かんだような気がした。
「……瞬間移動か。あの強制力と速さでは反撃の隙もないが、さすがの防衛機構。一撃は掠めていたな」
「あの男からこちらへの殺意はなかったけど、恐怖心がトリガーになったのかな?なかなかコントロールの難しいボディガードだね」
二人が何か言っているが、全く形になって聞こえてこない。もがもがと体を捩ると、やっと離してもらえてコートも剥がしてもらえた。
「ぷっはぁ!あーびっくりした!……いやここどこおおおお?!」
先程までいた海岸はどこにもなく、気がつけば私達は木々生い茂る森の中に立っていた。え、もしかしてあのふわっとした感覚、ほんとに身体が浮いてたって事?!
「どっどどどどういう事なのこれ?!私達一瞬で海から山へ?!」
「よしよし落ち着け。ちょっとしたアトラクションだっただけだから気にしなくていいぞ」
「アトラクションだったのお?!」
「ねえクロロ。さっきの奴が持ってたカードの文字読んだ?あれ、あそこの島の名前っぽいね」
クロロさんの説明にますます困惑する私のは逆に、イルミさんはクールを崩していない。ゾルディック家のメンタル強ぉ……。
「ああ、《グリードアイランドに不当な方法で侵入した者すべてをアイジエン大陸のどこかへ飛ばす》。グリードアイランドはたしかユウキも狙っていたゲームだったが、あの島をグリードアイランドというのなら、おそらくゲームの舞台はあそこなんだろう」
「だよね。正規とか何の話って思ったけど、つまりゲーム起動して入ってこいってことでしょ?えーと、ちょっと調べてみる」
なんか、二人がすごく真面目な話をしてますね。私、ちょっとついていけてないですね。
イルミさんが携帯で電脳ページを開いて何かを検索すると、ヒットしたようでこちらにも見えるように画面を向けてくれた。
「グリードアイランド。ジョイステーションでプレイできるハンター専用のゲームソフト。今やってるヨークシンのオークションに7本出品されるみたい」
「うわああやっぱりオークションに出てたんだああ!!ええっと価格は……ふぁっ?!ごっ、58億ジェニー?!」
「それは販売当時の定価だよ。競売では200億余裕で超えてるみたいだし、狙ってたとしても買えなかったんじゃない?」
「にっ……?!か、買えなかったですね、はい……」
「うーん、ミルキが買いに行ってるはずだけど、どうなったんだろう。多分200億くらいは持っていってると思うけど、足りてないんじゃないかな」
「ゾルディック家こわぁ……」
金銭感覚が麻痺しそうな値段に、めそおと凹んでしまう。一億だって持っていないのに、私の予算じゃ到底手に入れるなんて無理だ。兄への道が遠ざかっていく。いやまあ、私が勝手に兄が欲しがるだろうって思ってるだけなんだけど。
めそめそしながら鞄を漁り、財布を取り出して中身を見るもあまりにも貧相でそっと閉じようとしたのだが、ガリッと何かを挟んでしまった。硬貨が引っかかったのかと思ったが、よく見ればこれは、ジンさんからもらったコインロッカーの鍵ではないか。
「そういえば、この鍵結局どこのだったんだろうな」
「ん?どうしたんだそれ」
「これ、前に飛行船で一緒になった人からもらったんだ。中身は余ってたやつだからやるって言われたんだけど、どこのコインロッカーの鍵かわかんなくて、今の今まで放置してた」
「画像検索とかしてみたらどうだ?」
「画像検索?なにそれ?」
鍵を貸してくれとクロロさんに言われて素直に渡すと、携帯で写真を撮った後鍵を返してもらった。そして何かを操作すると、クロロさんが「お」と少し楽しそうに笑った。
「運がいい。その鍵、どうやら俺達がいる大陸にある国の空港のもののようだ。現在地はこの辺りだから、わりと近いぞ」
「うっそぉ……そんな簡単にわかるの……?私、もしかして機械、めちゃくちゃ弱い?!凹むわぁ……」
「それじゃあひとまずそこに行こうか。いつまでも森の中にいても仕方ないし。ほらユウキ、そこぬかるんでるから手出して」
「ちょっと待てイルミ。オレの妹の手を勝手に握るな」
「じゃあ兄として抱えていく」
「ダメだ。兄はオレだ」
「自称兄合戦やめてくれます?!今私凹んでるんで!!」
ミルキくん、キルアくん、あなた達のお兄さんすごくフリーダムな人だね!