迷子のレクイエム(狩人)
DREAM
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オークション開催まで残り1か月。いよいよ開催間近となると、街は賑わいを見せていた。十日間もあるらしいので、私も何か掘り出し物を見つけられたらいいななんて思っていたのだけど。
「えっうそ、うえええ?!」
兄が、ヨークシンから移動している!電脳ページを開いて思わず呻いてしまい、周囲の人たちにうるさいといった厳しい視線が集中する。失礼しましたとへこへこ頭を下げて、もう一度兄のライセンス履歴を確認した。
動いている。それも、いろんな都市に。一度にこんな移動は無理なので、大半が偽情報なんだろうけど、どれが信ぴょう性が高い情報なのか、まったくわからない!
とりあえずミルキくんに連絡したら、ほんの数分でなるほどと納得した声が返ってくる。
「何かわかった?!」
『これ、全部フェイクだよ。ヨークシンから動いた痕跡なし』
「うっそお?!」
『お前の兄さんがやったのかまではわかんないけど、情報をかく乱するために改ざんしたんだろうね。しかしかなり高度なハッキングだな。オレでも少し時間かかっちゃったよ』
「数分で終わったのに?!いやすごいなミルキくん!やっぱ持つべきものは友達だなー!」
『ただのビジネスパートナー兼暇つぶし相手でしょ』
「冷たい!!でもほんとありがとね!!」
『礼ならまたお宝見つけてきてよね』
ミルキくんとの通話を終え、もう一度電脳ページを見る。やっぱりヨークシンシティに、この街にいるんだ。居場所のかく乱のためにこんな改ざんを行うということは、もしかして本当に幻影旅団に属しているのだろうか。わからないけど、この街にいる確率は極めて高いということはわかった。
気合の入った私は電脳ページを閉じて、施設を出ると太陽の光を浴びながら大きく伸びをした。
「よっし、聞き込み頑張ろう!その前に腹ごしらえしなくちゃな!」
「じゃあオレ達もついていこうかな」
「ほぎゃひん!!」
「お、今のは結構いいビビり声じゃねえか?」
「オレらの勝ち決まったかな?」
突然真横から会話に入ってこられて、心臓が止まりそうなくらい驚いて声を上げてしまった。げほげほと咳き込んでいたら、大丈夫?と聞いてくる声は男のものだ。顔を上げてみると、ひょろりとした外見の優男風の男性と体格の良い野生児といった印象の大男という見知らぬ二人組がこちらを覗き込んでいる。いや、えっと。
「マジで誰?!」
「あ、オレら顔合わせ初だったっけ?オレはシャルナーク。団員っていえばわかる?」
「ウボォーギンだ!オレも団員だぜ」
「あー……クロロさんのとこの方ですかー……いやちょっと待って。さっき勝ちとか言ってましたね?まさか私を驚かせる選手権やってます?」
「おー!よくわかったな!団長が一位だったんだけどよ、今回オレら越したよな?」
「結構驚いてくれたもんねー」
「やっぱり開催しちゃってるよおおおお!!私の心臓がもたないからマジでやめてよおおお!!」
私が嘆いているというのに、クロロさんのところの団員二人はあははーと楽しそうに笑っている。いやもう、ほんとどうしてこうなったの。あなたの芸人仲間あと何人いるんですかクロロ=ルシルフル!!
「まあまあそんな怒らないで。ご飯食べに行くんでしょ?オレらが奢るからさ、好きなの言ってよ」
「中華とかどうだ?この間騒ぎすぎてあんま食えなかったしよ」
「いやなんでウボォーが決めるのさ。オレは団長妹に聞いてるんだよ」
「そうだったな!なあ団長妹、何食いてえ?」
「うそでしょ、私が妹っていうのが当然の認識になってるの?」
ひとまず自己紹介をしたら、名前も兄探ししてることも知っていると言われたので「プライバシー!!」と思わず叫んでしまった。結局ご飯は中華にしました。エビチリさいこー!
「ご飯ごちそうさまでした!おいしかったー!」
「そういえば、さっき機嫌よかったけど何かあったの?」
お店を出るともう夕方で、ホテルまで送ってくれるというので素直にお願いをした。ウボォーギンさんの劇での役回りを聞きながら歩いていたら、シャルナークさんがふとそう尋ねてきた。ああ、そのことか、と私は少しドヤっと笑う。
「実は、兄の渡航歴調べたら四方八方移動してて混乱したんだけど、友達に調べてもらったら全部フェイクだから、まだ動いてないって教えてもらったんだ!私こういうの疎いから、強い友達がいてマジで助かったー!」
「……なるほど。それは本当によかったね」
「うん!あ、ここまでで大丈夫!二人とも、今日はありがとう!またご飯食べに行こうね!これ私の連絡先で」
「あ、団長から聞いてるから知ってる」
「オレも」
「私の個人情報!!」
今度会ったら本当に怒ったほうがいいかもしれない!
ピッピッピ。電話をかけると、思ったよりも早くつながったので、成果を待っていたのだろうと推測できた。しかし、明るいニュースを届けられないので申し訳ない気持ちになる。
「ごめん団長。失敗した。凄腕のハッカー使って改ざんさせたんだけど、もっと上のスキル持った友達がいたみたい。彼女、ここ動く気ないよ」
『……そうか。ふう、困ったなあ』
「巻き込みたくねえならさっさと正体明かせばいいんじゃねえのか?そうしたらビビッて逃げるだろ」
「馬鹿だなあウボォーは。団長の乙女心わかってあげなよ」
「なんだそりゃ」
「嫌われたくないってこと!穏便に離れてくれれば、気兼ねなくまた会えるじゃん」
「ふーん。まあどうでもいいんだけどよ」
『全部聞こえてるからな?』
ーーー…
翌日、また兄の渡航歴がめちゃくちゃになっていました。頭を抱えつつ、とりあえずミルキくんに連絡すると。
『今ちょっと手が離せなくて!わーっやめてくれ兄貴!デリケートな機械なんだから針を刺すのはやめて……』
プツンと切れてしまった。その後電源が落ちているのか繋がらず、途方に暮れてしまう。ミルキくん、針ってなんの話なの。お兄さん一体何でパソコンに針刺そうとしてるの。
しかし、お手上げだ。私では兄の本当のライセンス情報がわからない。前回はすべてカモフラージュだったが、逆のパターンで今回はヨークシンを出て行ったのかもしれない。
くそう、こんな時ほかに相談できる友達いたっけなあ!……いないかもなあ!
「困ってんのか?」
「ほげえええ!!」
「今のけこういい悲鳴だたね」
「こりゃ一位に躍り出たな」
「もう今のでわかったよクロロさんとこの方ですね?!」
驚きすぎてベンチからひっくり帰る私に、背後から声をかけてきた二人組はあっけらかんとした顔をしている。なぜかファラオのような被り物……いやこれ帽子?を被った男性と背が低くとても目つきの悪い黒髪の男性の彼らはよくわかったな、なんてとくに悪びれもしないでいる。もうなんなのこの謎の選手権……。
「で、団長妹。何か困ってんのか?」
「妹じゃないんだけどね……あ、私の名前はユウキって言います」
「オレはフィンクスだ。んでこっちはフェイタン。あ、お前の情報は全部団長達から聞いてるから気にすんな」
「兄探ししてるんだたな」
「なんで団内で私の情報共有してるの?」
もう一度ベンチに座り直すと、両サイドにどかりと二人が座ってきた。居座るつもりらしい。いや別にいいんだけども。そういえばクロロさん、しばらく仕事ないと言っていたし、団員のみんなも同じ状況なのかもしれないと思って、あのねーと携帯を開く。
「兄の渡航歴が昨日からめちゃくちゃになっててさ。まあ昨日のは機械に強い友達に調べてもらったら全部フェイクで、本物は動いてないって教えてもらったんだけど」
「おう、それで?」
「で!今日も見たらめちゃくちゃで!友達は電話繋がらないし、今回は本当に移動してるかもって思ったら、どうしていいかわかんなくて……はあー、困ったなあ」
ちょっと見せてみ、とフィンクスさんが言うので携帯を渡すと、じっと見た後でうん、と頷いた。
「え、もしかしてなんかわかるの?!」
「全然わかんねえ!」
「この人なんなの?!」
「ただのあほね。それよりも、あやしいなら行けばいい。こうしてる間にも相手は動いてるはず」
「うぐ……や、やっぱり?」
ん、とフェイタンさんは頷く。反対隣に座るフィンクスさんもオレもそう言おうと思ってたんだと言っているし、やはり、動くべきだろうか。
「……ちなみに、フェイタンさんはどこがあやしいと思う?」
「……ここ」
フィンクスさんから返された携帯の画面を開いて見せると、フェイタンさんは少し悩んで、ここと指をさした。場所は、ジャポンだ。実は私の生まれた国でもあるここを選ばれて、なんだか運命的なものを感じて思わず息をつめた。
「どうした?」
「あ、ううん。私、この国の出身だからちょっと驚いて」
「そうだったのか?団長情報にはなかったな」
「後で団長に自慢するね」
「いや何の自慢になるの?でも、ちょっと行ってみようかな。まあ私の生まれた村はもうないんだけどね!」
「いや笑って言う話じゃねえだろ」
突っ込みを受けつつ、もう一度画面を見る。思えば、あれから一度もあの国に行っていない。兄の渡航歴に一度も入らなかったというのもあるけれど、自分から行こうという気にもならなかった。
私が生まれ、旅だった国。あの村は、今もあるのだろうか。もう廃墟になっているかもしれないけれど、行ってみよう。ここからでは到着まで日にちはかかるし、しっかり準備をしていかないといけない。
「よし、方針立った!ありがとうフェイタンさん!フィンクスさん!」
「おう、まあオレらも助かったっつうか、いてえ!!」
「お喋り男め」
「何も言ってねえだろ!」
「?よくわかんないけど、二人はこれから時間ってある?」
え、と二人がこちらを見るので、へへっと笑ってカバンからチケットを二枚取り出す。
「これ、この間困ってたお婆さんのお手伝いしたら貰ったチケットなんだけど、今日しか使えない演劇のチケットなんだ。一枚で二人見に行けるから、よかったら付き合ってくれたりしない?」
四人見れるなら、とフィンクスさんがどこかに電話をかけると、しばらくして長い髪の毛で顔を隠した小さな男の子がやってきた。名前はコルトピさんというらしい。その日は四人で有名な劇団のショーを見て、帰り道で感想を言い合っていた。
「あそこで全員ワイヤーでつるされてたろ?あれうちの奴らもできるよな?」
「殺陣が甘かたね。ワタシならもと早く斬れるよ」
「ドッペルゲンガーなら任せてよ」
三人が自分たちの劇団と重ねているのか、わいわいしているのを見ていいなあとぼやく。
「みなさんの演劇私も見たいんだけどなー!公演日とか決まったら教えてね」
「こればっかりは団長の気分次第だからな。ま、団長が言うまでおとなしく待ってな」
「はーい。みんな今日は付き合ってくれてありがとね。あ、手出して」
素直に手のひらを見せてくれた三人に、ぽんと包みを乗せる。案の定なんだこれという顔をするので、悪戯が成功した気持ちでにんまり笑う。
「さっき劇場のショップで買ってきた限定クッキー!本当はぼっち観戦の予定だったから、付き合ってくれたお礼だよ」
「んじゃまあ、素直にもらっとくわ」
「もらとくね」
「ありがと」
へっへっへ、と笑って、もう一度ありがとうを伝えてから三人と別れて私はホテルへと戻ったのだった。明日から準備をして、今週末にはいくぞジャポン!!
「ミッションコンプリート、ってとこか」
団長妹、もとい気味の悪いオーラを漂わせる女が渡してきたクッキーの包みを手のひらで転がしながらぼやくと、造作もないと言った顔でフェイタンがドヤ顔をしていた。いやまあ、たしかにお前の手柄だけどよ、普通にむかつくぜその顔。
「大体、そんなに気に入ってんならさっさと仲間にしちまえばいいのに。いちいち遠回しにここから離れさせようなんて、面倒なこと頼んできてよお」
「でも、団長は団長じゃなくて一個人としてお願いしてきたよ。きっと、本当に妹みたいにかわいがってるんだ」
「ま、あそこまで敵意もない善人らしい善人なんて、めったにお目にかかれねえからな」
アジトへ帰りながら女の感想を述べると、フェイタンは未だクッキーを眺めながら鼻を鳴らした。
「ふん、頭の悪そうなガキだたね」
「お、ならそのクッキーいらねえよな?オレが食うからくれよ」
「は?それとこれとは別ね」
「んだと?」
「喧嘩ならアジトに戻ってからにしてよ」
ちなみに、アジトに戻り団長にミッション完了の報告をすれば、そうかと冷静な顔で頷いていたものの、オレ達が四人で観劇した後ユウキからクッキーをお礼でもらったことを知ると、地を這うような低い声で「は?」と言ってきたのは少しビビった。いつからこんなシスコンになっちまったんだ団長。