迷子のレクイエム(狩人)
DREAM
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とある都市に兄探しをしていた時、聞いたのだ。なにやら顔の良い男が歩いていて美女を引き連れて歩いていた、と。
その噂を聞いて、なぜだか兄のような気がしてしまった。名前以外の情報はないのに、私のイメージする兄は私と違って容姿端麗で、美女を侍らせていてもおかしくない、なんて。なんで自分でもそう思ったのかは本当にわからないが、自分の直感を信じることにして、その噂の人物を探し回った。
そしてたどり着いたのが、ここだ。街のはずれにある廃墟である。廃墟となったビルがいくつもそびえたっており、いかにも何かでます(幽霊及び暴漢が)という雰囲気にのまれそうになるが、ここで怖気づくわけにはいかない。もしかしたら、名前しか知らない兄はハンターライセンスを使って盗賊団とかやっているかもしれない!もしそうだったら即刻やめさせるけどね!
意を決して廃墟へ足を踏み入れる。じゃりじゃりと崩れたコンクリートを踏んで音を立てるも、どこからも反応はない。
あれ、もしかしたら誰もいないのでは?ここまで来て収穫なしとか、凹むんだけど。いつものことだけどね!泣いてないよ!
めそう、と結局凹んだ私は、とりあえず陽が明るいうちに探索を終えて帰ろうと思い、建物の中に入ってみた。怖い人がいたらどうすんだ、なんて警戒心の強い脳内の私が怒っているようだが、現実の私には届かずのんきな声で廃ビルの中へ向かって「誰かいませんかー!」なんて叫んだ。叫んでしまった。
ぱちりと、目が合ってしまったのだ。空は明るいとはいえ、建物でできた影は大きく瓦礫の上に座る男を覆っている。薄暗いそこから見えたそれと、目が合った。もしかして、と慌てて駆け寄る。男は座ったままこちらをじっと見ていた。男の正面に立つと、男は私を見上げるような形になる。静かな表情だ。しかし、噂通り顔が整っているようだ。黒を基調とした衣服を身にまとい、静かにこちらを見上げていた。
心臓が高鳴る。この人が、私の兄かもしれない。
ようやく兄と、再会することができたのかもしれない!
「あなたが……」
「……」
「私の兄のサトルですね?!」
「……え?」
「え?」
ようやく男が発した声は、突拍子もないことを言われたと物語っている。陽が動き、陰から男の姿が露わになる。黒髪、額に十字の刺青、そして白いファーのついた黒のロングコートを羽織る男は、まったく私と似た要素はなかった。そして男のきょとんとした表情。
これはあれだ、人違いだ!!
すうと流れるように土下座の体勢に移行する。意味深なムードを作ってきたこの人も悪いと思うが、一番はシンプルに人違いで声をかけた私も悪い。
「間違えましたすみません!!美女二人侍らせてるイケメンがいると聞いて、私の探している兄だと思ったんです!!」
「いや、別に構わないが。それだけのためにここまで来たのか?」
「はい……ここにイケメンと美女が入っていったと聞きまして……」
いや本当にイケメンはいたけど!美女はいないしそもそも人違いだったし!また人探し再開かあ、と床に膝をつけたままめそおと凹んでしまう。すると、イケメンの人はよしと何かつぶやき、私の手を引いて立ち上がった。
「君のお兄さん探し、手伝ってやろう」
「えっ?!い、いや大丈夫です!いきなりそこまでお世話になるわけにはいかないです!」
「じゃあ、オレがお兄さんになってあげる」
「なんで?!いや私兄になってくれる人を探してるんじゃなく、実の兄を探してるわけでしてね?!」
「で、君の名前は?どのくらい親しげに呼んだらいいかな?」
「あっれー?!私の話聞こえてないやつー?!いやあのですね。人違いした私が言うのもなんですが、私あなたの名前も知らないですからね?!」
そいうえばそうだったな、と男は軽々と私を横抱き、いわゆるお姫様抱っこをしてみせると、私の顔を覗き込んでにこりと微笑む。
「クロロ=ルシルフル。クロロ兄さんと呼んでくれ」
「あ、私はユウキっていいます……いや呼ばないよ?!」
はははーっと今度はくるくる回されて、いや何この状況と困惑していたら、どこに潜んでいたのか噂の美女が二人出てきて「なんでこんなにテンション高いの団長」と訝しんでいた。それよりも私を抱えたまま回転するのやめさせてもらえる?!
兄探しを手伝うという言葉は本当だったらしい。
今、あの廃墟で出会った男とともに街に繰り出している。オープンテラスのお店でパフェとプリンアラモードを注文して、なぜかお菓子タイムに入っている。うん、パフェめっちゃ美味い。
「このプリンいいな。お気に入りリストに入れておこう」
やめて!突然そんなギャップ萌えみたいなの見せてくるのやめて!えっかわいいなおい!私の視線に気づいた男はにこりと笑って「絶対にやらんぞ」と言ってきた。ほしいなんて言ってませんが?!
「クロロ兄さんと呼んだら考えてやらんでもないが」
「めちゃくちゃ兄さんって呼ばせようとしてくるじゃん」
思わず突っ込むと、くっくと笑われてしまった。イケメンに翻弄されている。なんだこの状況は。パフェ美味い。
「さて、君のお兄さんの情報だが、顔立ちの良い長身の、君と髪色が似ている男が数日前骨董商を訪ねてきたらしい」
「ファッ?!え、いつの間にそんな情報を?!」
「さっき店内で聞いたよ。で、その男は結局骨董商から何も買わなかったらしいから、まだ近くにいるかもしれないね」
やっぱり、ミルキくんの言った通りだったのか。何かを探している。これは盗賊団の件も情報収集したほうがよさそうだ。
「ありがとうクロロさん!!」
「お礼は兄さん呼びでいいよ」
「ブレないなほんと!うう、でもめちゃくちゃいい情報もらっちゃったし……ちなみにその兄さん呼びっていつまで続ければいいやつ?」
「一生」
「重い!!」
上機嫌でプリンを頬張っているが、なんでこの人こんな楽しそうなの。
「いいじゃねえか、呼んでやれば」
「ほぎゃあ!!」
「こらノブナガ。オレの妹を脅かすな」
「わりいわりい」
いつの間に背後に立っていたのか、突如聞こえた声に驚いて大きな声が出てしまった。初めて会う人だが、名前を呼んでいるということはクロロさんの仲間なのだろう。
しかし騒いでしまったときょろきょろと周りを見回すも、周囲は私たちに関心がないらしく見向きもしていなかった。ラッキーだったけどそれはそれで悲しい。というか。
「いやさらっと妹って呼ぶのやめて?!えっと、ノブナガさん驚いてごめんなさい。あ、私ユウキっていいます」
「おう知ってる。昨日団長に兄さんって呼んだ変な子だろ」
「語弊がある!兄ですかって確認はしたけど呼んではいなかったよ!!」
「だがオレは否定していなかったよな」
「……たしかに!!」
「そこは流されんのかよ」
ぐむむ。たしかに、あの時「え?」と言われただけで違うとは言っていなかった。しかし、私の直感がこの人は血のつながった兄ではないと言っているのだ。というかそもそも私と全然似てないし。
「で、呼んでやんないの?」
「ごげほっ!!」
「こらマチ。オレの妹が咽せてしまっただろう」
「ごめん」
今度は昨日クロロさんと一緒に歩いていた美女が左側から出てきて咽せてしまった。彼女は昨日挨拶をしたから知っている。マチさんだ。
ちなみに昨日はもう一人の美女ことパクノダさんと二人でクロロさんから回収してもらい、ホテルまで送ってもらった。明日迎えに来るからおとなしく待ってなよと言われて、いや来ないだろと翌朝身支度していたら、普通にクロロさんが部屋に入ってきて美女二人が止めていたのは少しおかしかった。しかし鍵はどうやって開けたのだろうか。怖い話だ。いやそもそも。
「皆さんもっと疑問持ちましょうよ!この人皆さんの所属する劇団の団長さんなんでしょ?!この奇行は止めるべきだよ?!」
そう訴えると、昨日同様マチさんはあきれた顔をしてみせ、ノブナガさんはげらげらと笑い、クロロさんは優雅にプリンを食べていた。完全に遊ばれている。旅団っていうから旅芸人の団だろうに、全然コミュニケーションが取れていない気がする。
もうクロロさんは放っておいて電脳ページを開いて名のある盗賊団の検索をかけることにした。
というのも、兄が裏稼業をしていた場合を想定して、盗賊団関係も調べておかないとと思っているからだ。ミルキくんから提案されたときはレアな宝を探すほうを優先したけど、骨董商を見に行くくらいだからおそらく宝が目当てなのは間違いない。まっとうに探しているか、盗賊稼業として探しているのか判断がつかない今は、どちらの可能性も探るしかない。
そうして調べてみると、聞き覚えのある盗賊団の名前を見つけた。幻影旅団。たしか、クラピカが捕えようとしている盗賊グループの名前だ。旅団、だなんて、旅芸人をしているまっとうな旅団の人達に風評被害のありそうな名前をしている。
むむむと画面を見ていたら、正面に座るクロロさんが百面相をしているなと笑った。
「何か面白い記事でもあったか?」
「えーとねえ、幻影旅団っていう有名な盗賊グループの情報。酷い人たちらしいから、面白くはないんだけど」
「ふーん、でもなんでそんなの調べてんだ?」
「友達がさ、私の兄さんはトレジャーハンターか盗賊の可能性もあるからそっちも調べてみたらどうだって言ってて……はっ!もしかして!」
気づいてしまったかもしれない、と思わずスプーンを握りしめる。三人が続きを促すように私のほうを見るので、なるべく小さな声で三人に顔を寄せて今閃いた内容を話した。
「私の兄さん、その幻影旅団のリーダーかもしんない!!」
「ブフォッ!!」
「ちょ、ノブナガ汚いッ!!」
「なんで笑うのさ?!だってね、私の兄なんだし、多分ヒラじゃないと思うんだよ。どっちかっていうとリーダータイプだと思うんだよね。会ったことないけど」
それに、クロロさんが得た情報も骨董商に来たというもので、盗む品の下調べに来ているのだと思えば辻褄があう気がするのだ。もしそうだとしたら、幻影旅団を追っていけば会えるかもしれない。
私の兄、どんな人なんだろう!わくわくしてきたぞ!早速その盗賊団が現れるかもしれない場所を調べないと!と意気込んでいたら、クロロさんはふふっと噴き出してからこちらを見つめてきた。
「やっぱりオレが兄さんでいいんじゃないか?」
「いやだからなんでそうなるの?!」
ふふ、ふふ、と笑いをこらえ切れないクロロさんは、そんな状態でもプリンをもう一つおかわりするのだった。