snobbism(龍如)
DREAM
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四代目と狂犬と。
(2006年優姫20歳)
「海にでも落ちたのか?この時期だったからよかったものの、低体温症一歩手前だったぞ」
暖かくしろ、と毛布をかけられると、優姫は目を輝かせたままお礼を言った。どうやら(さっきの拷問してきた連中は除き)裏社会の人間との関わりに興奮しているようだ。賽の河原に連れて行ったら失神するんじゃないか?
そんなことを考えていたら、優姫がこちらを見てゆっくり立ち上がった。
「桐生さんもありがとう」
「いいから座ってろ。それに、少し話も聞きてぇしな」
「話?」
「お前に酷いことをした奴ら、錦山組って言うんだが、知ってるか?」
「そういう人達が私を狙ってるってことくらいは……あとは水浸しにされてた時に、錦山さんって人が私を知ってるっぽいことと、私のお金はどこから入ってくるんだってことをたくさん聞かれた気がする」
「錦……錦山に覚えはねえのか?」
「うーーーーん。写真とか見ないことにはなんとも」
写真か。100億円事件の記事とかあれば載っているかもしれないな。もしくは東城会本部の飾ってある写真とか。いやいや、カタギの俺がカタギの女を本部に連れていくのはあまり良くない、よな。他にアテがあるといえば、柏木さんか真島の兄さんに聞いてみるくらいか。
「お嬢ちゃん、そんなに狙われるくらいお金持ってるのか?」
「持ってるというか、振り込まれてると言いますか……。これ、通帳なんですけど」
「どれどれ……?!えっ、おおっ?!桁がおかしくないか?!」
柄本先生から聞いたことのない驚きの声が上がっていて、俺も好奇心で通帳を覗かせてもらったが同じような声で驚いてしまった。桁が狂った額が、定期的に振り込まれてる。
「やっぱりおかしいですよね……うーん、本当どうなっちゃってるんだろ……」
「家族からの仕送り、にしちゃ滅茶苦茶な数字だな」
「兄貴かなーって勝手に思ってたんだけど、色んな銀行から入ってるからやっぱり違うのかな?」
「兄貴?」
「あ、えっと、私行方不明の兄を探してまして……そしたら大阪で私を探してる人がいたって聞いて、その人を追ってここまで来たんです。まあ、多分探されてたのって今回みたいなお金目当てだったんでしょうけど……」
昔を思い出す。カタギになっていた頃、兄妹を再会させようと奔走したがそれは叶わず、事切れた兄を失明している妹に会わせることしか出来なかった、あの苦い思い出。胸が熱くなる。今度こそ、今度こそあんな悲劇は繰り返したくはない。それに。
「……錦は、俺の兄弟分だったんだ」
呟くように口から出た言葉に、優姫が顔をこちらに向けた。こいつにとっては拷問される原因になった相手で、もし麗奈やシンジにしたように残酷な面を持って接していたなら、兄弟分として俺がケジメをつけなければいけない。そのためには、真相を知る必要がある。だから俺は、今度こそ。
「お前を、兄貴に会わせる手助けをさせてくれ。それが、俺のケジメだ」
過去はやり直せないけど、今やれることをしたい。そう思い、優姫に決意表明をしてみせると、惚けた顔のまま首を傾げている。
「……えっと、桐生さんって、もしかしてヤクザさん……?」
「そこに疑問を持たれたのは初めてだな……」
今はカタギだが少し前まで東城会に所属していたというのを伝えたら、飛び跳ねて驚いていたのは少し面白かった。
「少し待っててくれ。錦の写真がないか知り合いに聞いてみる」
はーい、と返事をした優姫は、柄本先生と雑談を始めた。俺は少し離れた場所で最近ようやく慣れてきた携帯を開き、西田に連絡を取ることにした。真島の兄さんに連絡しようかとも思ったのだが、たかが写真で兄さんを頼るのも申し訳なく思い、唯一連絡先の入っていた西田に決めたのだ。思えば、去年は西田からよく連絡をもらっていた気がする。どこでも真島と称して兄さんには何度も襲われたっけな。
そんなことを思い返しながら電話をかけると、2度目のコールの後、礼儀正しい声が返ってくる。
「西田。今大丈夫か?」
『はい!どうしましたか、桐生の叔父貴』
「大したことじゃねえんだが、錦……錦山の写真とか調達できるか?」
『錦山組長のですか?用意できますよ。携帯で画像を送りましょうか?それとも写真をお渡ししましょうか?』
「携帯に送ってくれ。すまねえな西田。助かる」
『いえ!いつも親父が迷惑かけてるんで、これくらいお安い御用ですよ!それではすぐに送りますね!』
電話を切って、連絡を待つ。西田、気配りもできて要領もいい男なのにどうして真島組にいるのだろうか。いや、兄さんくらい奔放な相手には西田のようなしっかりした奴がいないとダメなのかもしれない。西田、兄さんのこと頼んだぞ。
しかし、なかなか連絡はこなかった。アドレスは知っているはずだが、どうしたのだろうか。
「邪魔するでぇ」
……なるほど。西田、俺と連絡を取っていたことが兄さんにバレたんだな。殴られていないといいのだが。
ノックもなく、ガチャリと扉を開けて真島の兄さんが入ってきたが、よくここがわかったなとぼんやり思う。兄さんは俺を見て、ニヤリと笑った。
「桐生ちゃーん!なんや、戻ってきてるならゆうてやー!それに錦山の写真が欲しいなんて、どないしたん?」
「俺が欲しいんじゃなくて、見せたい相手がいてな。兄さん、写真と引き換えに喧嘩とか言わねえよな?」
「言うに決まっとるやろがい!ほな、喧嘩しよーや桐生ちゃーん!」
「くっ、こうなっちまうのか……!」
「じゃねえよ!ここで喧嘩なんてするんじゃねえ!病人がいるんだぞ、外出ろお前ら!」
至極真っ当に怒られた。病人?と兄さんが柄本先生の方を見て、珍しく驚いた顔をしていた。つられて見ると、優姫も同じような顔をして兄さんを見ていた。
「新幹線の眼帯のお兄さん!」
「あの時の嬢ちゃんやないか!」
……なんと、知り合いだったらしい。
世の中っていうのは、なかなか狭いものらしい。
(2006年優姫20歳)
「海にでも落ちたのか?この時期だったからよかったものの、低体温症一歩手前だったぞ」
暖かくしろ、と毛布をかけられると、優姫は目を輝かせたままお礼を言った。どうやら(さっきの拷問してきた連中は除き)裏社会の人間との関わりに興奮しているようだ。賽の河原に連れて行ったら失神するんじゃないか?
そんなことを考えていたら、優姫がこちらを見てゆっくり立ち上がった。
「桐生さんもありがとう」
「いいから座ってろ。それに、少し話も聞きてぇしな」
「話?」
「お前に酷いことをした奴ら、錦山組って言うんだが、知ってるか?」
「そういう人達が私を狙ってるってことくらいは……あとは水浸しにされてた時に、錦山さんって人が私を知ってるっぽいことと、私のお金はどこから入ってくるんだってことをたくさん聞かれた気がする」
「錦……錦山に覚えはねえのか?」
「うーーーーん。写真とか見ないことにはなんとも」
写真か。100億円事件の記事とかあれば載っているかもしれないな。もしくは東城会本部の飾ってある写真とか。いやいや、カタギの俺がカタギの女を本部に連れていくのはあまり良くない、よな。他にアテがあるといえば、柏木さんか真島の兄さんに聞いてみるくらいか。
「お嬢ちゃん、そんなに狙われるくらいお金持ってるのか?」
「持ってるというか、振り込まれてると言いますか……。これ、通帳なんですけど」
「どれどれ……?!えっ、おおっ?!桁がおかしくないか?!」
柄本先生から聞いたことのない驚きの声が上がっていて、俺も好奇心で通帳を覗かせてもらったが同じような声で驚いてしまった。桁が狂った額が、定期的に振り込まれてる。
「やっぱりおかしいですよね……うーん、本当どうなっちゃってるんだろ……」
「家族からの仕送り、にしちゃ滅茶苦茶な数字だな」
「兄貴かなーって勝手に思ってたんだけど、色んな銀行から入ってるからやっぱり違うのかな?」
「兄貴?」
「あ、えっと、私行方不明の兄を探してまして……そしたら大阪で私を探してる人がいたって聞いて、その人を追ってここまで来たんです。まあ、多分探されてたのって今回みたいなお金目当てだったんでしょうけど……」
昔を思い出す。カタギになっていた頃、兄妹を再会させようと奔走したがそれは叶わず、事切れた兄を失明している妹に会わせることしか出来なかった、あの苦い思い出。胸が熱くなる。今度こそ、今度こそあんな悲劇は繰り返したくはない。それに。
「……錦は、俺の兄弟分だったんだ」
呟くように口から出た言葉に、優姫が顔をこちらに向けた。こいつにとっては拷問される原因になった相手で、もし麗奈やシンジにしたように残酷な面を持って接していたなら、兄弟分として俺がケジメをつけなければいけない。そのためには、真相を知る必要がある。だから俺は、今度こそ。
「お前を、兄貴に会わせる手助けをさせてくれ。それが、俺のケジメだ」
過去はやり直せないけど、今やれることをしたい。そう思い、優姫に決意表明をしてみせると、惚けた顔のまま首を傾げている。
「……えっと、桐生さんって、もしかしてヤクザさん……?」
「そこに疑問を持たれたのは初めてだな……」
今はカタギだが少し前まで東城会に所属していたというのを伝えたら、飛び跳ねて驚いていたのは少し面白かった。
「少し待っててくれ。錦の写真がないか知り合いに聞いてみる」
はーい、と返事をした優姫は、柄本先生と雑談を始めた。俺は少し離れた場所で最近ようやく慣れてきた携帯を開き、西田に連絡を取ることにした。真島の兄さんに連絡しようかとも思ったのだが、たかが写真で兄さんを頼るのも申し訳なく思い、唯一連絡先の入っていた西田に決めたのだ。思えば、去年は西田からよく連絡をもらっていた気がする。どこでも真島と称して兄さんには何度も襲われたっけな。
そんなことを思い返しながら電話をかけると、2度目のコールの後、礼儀正しい声が返ってくる。
「西田。今大丈夫か?」
『はい!どうしましたか、桐生の叔父貴』
「大したことじゃねえんだが、錦……錦山の写真とか調達できるか?」
『錦山組長のですか?用意できますよ。携帯で画像を送りましょうか?それとも写真をお渡ししましょうか?』
「携帯に送ってくれ。すまねえな西田。助かる」
『いえ!いつも親父が迷惑かけてるんで、これくらいお安い御用ですよ!それではすぐに送りますね!』
電話を切って、連絡を待つ。西田、気配りもできて要領もいい男なのにどうして真島組にいるのだろうか。いや、兄さんくらい奔放な相手には西田のようなしっかりした奴がいないとダメなのかもしれない。西田、兄さんのこと頼んだぞ。
しかし、なかなか連絡はこなかった。アドレスは知っているはずだが、どうしたのだろうか。
「邪魔するでぇ」
……なるほど。西田、俺と連絡を取っていたことが兄さんにバレたんだな。殴られていないといいのだが。
ノックもなく、ガチャリと扉を開けて真島の兄さんが入ってきたが、よくここがわかったなとぼんやり思う。兄さんは俺を見て、ニヤリと笑った。
「桐生ちゃーん!なんや、戻ってきてるならゆうてやー!それに錦山の写真が欲しいなんて、どないしたん?」
「俺が欲しいんじゃなくて、見せたい相手がいてな。兄さん、写真と引き換えに喧嘩とか言わねえよな?」
「言うに決まっとるやろがい!ほな、喧嘩しよーや桐生ちゃーん!」
「くっ、こうなっちまうのか……!」
「じゃねえよ!ここで喧嘩なんてするんじゃねえ!病人がいるんだぞ、外出ろお前ら!」
至極真っ当に怒られた。病人?と兄さんが柄本先生の方を見て、珍しく驚いた顔をしていた。つられて見ると、優姫も同じような顔をして兄さんを見ていた。
「新幹線の眼帯のお兄さん!」
「あの時の嬢ちゃんやないか!」
……なんと、知り合いだったらしい。
世の中っていうのは、なかなか狭いものらしい。