snobbism(龍如)
DREAM
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四代目と。
(2006年優姫20歳)
久しぶりに神室町へやってきた。遥が欲しそうにしていた雑誌があり、それが一日前に発売する本屋があったからだ。日頃我儘も言わず、懸命に家事をしてくれる遥に何か贈り物がしたかった俺は、少し出かけてくると告げて馴染みの町へと戻ってきた。
いつものように絡んでくるチンピラ達を殴りながら、その本屋へと向かう。それにしても、今日はやけに街がピリピリしているように感じる。気のせいだろうか。
「さっきの子、あれ誘拐、よね?」
「ボロボロだったのって警察の人だよな?救急車で運ばれてたけど、何があったんだろ」
何か騒動があったらしい。この町では喧嘩など日常茶飯事だが、誘拐に加えて警察への暴行は少し珍しい。好奇心で近くにいた男女に何があったんだ、と聞いてみれば女の子が誘拐され、警察の男がリンチにあって病院送りされたとのことだ。
その女の子を乗せた黒いバンは千両通りの方へ向かっていったという。もう好奇心ではなかった。今から向かえば助けられるかもしれないと思い、俺は千両通りへと急いだ。
千両通り外れにある、古びたビル。黒いバンも止まっている。ここで間違いなさそうだ。
車の乗り捨ても考えられたが、警察に暴行をした辺り無計画な犯行だろう。この短時間で別の手段を用意できるとは思えない。おそらく、ここで一度待機してから次への行動を起こすはず。なら、ここで捕まえればいい。
「オラァッ!!」
鍵のかかった扉を力任せにぶん殴り、強引にこじ開けると、そこには見張りらしき男達が数人驚いた顔でこちらを見ていた。見たところカタギではないのは確かだ。なら容赦することはないな。
そう思い、粗方ぶん殴った後、一人を捕まえて女の子の居場所を吐かせる。俺が東城会の四代目だった男とわかるや否、男達は震えながら3階にいますと教えてくれた。足早に階段を駆け上がる。
パシャンと、勢いよく水が落ちる音がした。
「!……てめぇら、何してやがる」
音が聞こえた部屋に飛び込むと、椅子に縛られた女の子が頭から水をかけられたらしく、全身ずぶ濡れで俯いていた。けほっと声がしたから生きてはいるが、こいつらカタギの女を拷問をしていたのかと拳に力が入った。
「なっ、あんた、まさか四代目……っ?!」
「桐生だ!こいつのせいで、親父が……っ!」
「やれッ!!この女の金と四代目のタマで、錦山組が東城会を牛耳るんだッ!!」
ああ、そうか。こいつらは錦の……。
未だに俺を憎んでいる奴らがいることは知っている。錦のやったことで、東城会の中でも邪険にされて肩身の狭い思いもしたのだろう。だが、俺に向かってくるのならそれでも良い。俺の命をとって成り上がろうとするのも理解できるが、今水浸しで苦しそうにしている女はなんだ。抵抗できない女を拷問して、金を奪って、それで東城会を牛耳ろうだと?こんなのは極道ではない、ただのチンピラだ。はらわたが煮えくり変える。
「死にてぇ奴からかかってこいッ!!」
最後に残った男を気絶しない程度に殴り倒した後、胸ぐらを掴んで持ち上げる。男は他の奴らと同じように震えながら助けてと懇願している。
「言え。どうしてこの女を拷問していた」
「ご、拷問ってほど、するつもりじゃなくて、ただ俺らは、こいつの資金源が知りたくてっ」
「金持ちさらって金奪おうってのか?」
「ち、ちが……っ、こいつ、別に金持ちってわけじゃねぇんです。俺らの組の間じゃ有名な、金の成り続ける木なんです。澤村さんが、そう言ってて」
金の成り続ける木?金の成る木ならわかるが、成り続けるとはどういうことだろう。それに、澤村、か。無関係だろうが、由美と遥と同じ苗字のやつが、こんなことを指示したのか。ますます怒りが湧いてくる。
「ひっ、そ、それに、錦山の親父が、昔目をかけてたって話もあって、俺ら、本当に拷問なんてするつもりなかったんですっ!」
「……もう黙ってろ」
するつもりもなくて、誘拐した挙句に水責めするのかともう我慢ができなくなって渾身の一発を顔面に決めて、昏倒させる。見れば、周りには空になったバケツがいくつも転がっていた。よくもこれで拷問する気はなかったなどと言えたものだ。
未だぐったりとしている女の背後に周り、紐を解いてやる。それから上着を女の肩にかけ、大丈夫かと声をかけた。
「う、うぅ……私、本当に、何も知らなくて……」
「俺はあいつらの仲間じゃない。助けに来たんだ」
「……え?助け、に……?」
「ああ。早くここを出よう。身の安全のためにも、警察に行った方が良い」
「けい、さつ……」
警察、と聞いて、女は顔を上げた。
「ダメ、ですっ!警察はダメです!もう、巻き込まないって、決めたんだ!私のせいで、谷村さんが酷い目にあって、だからっ!」
「……そういえば、警察の奴が救急車で運ばれてたな。知り合いだったのか」
「!救急車、きてくれたんだ……よかった……ほんとに、よかった……っ」
そう言って、女は泣き始めた。自分が助かったことではなく、知り合いが助かったことに泣いている。
「お前は、優しいんだな」
「……そんなことないです。私はいつもダメで……人を巻き込んで、それでも諦められなくて……助けてくれて、ありがとうございました。私、行かないと」
女はふらふらと立ち上がり、部屋を出ようとする。慌ててその腕を掴み、落ち着けと言い聞かせた。
「体が冷え切ってるじゃねぇか。警察や病院に行きたくねぇなら、一つ当てがある。所謂闇医者ってやつなんだが、そこに行くぞ」
「……闇医者?」
「ああ。腕は確かだ。不安に思うかもしれないが……」
「……めっちゃ気になる!!えっ、ほんとにいるんだ闇医者?!行く行く!絶対行く!」
「急に元気になったなお前……」
ひとまず自暴自棄にならずにすんでよかったと思っておくか。闇医者と聞いてテンションが上がってしまった女と自己紹介を済ませて、俺達は身を潜ませながらビルを抜け出して柄本医院へ向かうことにしたのだった。
また遥に怒られてしまうな、なんてぼんやりと思いつつ。
(2006年優姫20歳)
久しぶりに神室町へやってきた。遥が欲しそうにしていた雑誌があり、それが一日前に発売する本屋があったからだ。日頃我儘も言わず、懸命に家事をしてくれる遥に何か贈り物がしたかった俺は、少し出かけてくると告げて馴染みの町へと戻ってきた。
いつものように絡んでくるチンピラ達を殴りながら、その本屋へと向かう。それにしても、今日はやけに街がピリピリしているように感じる。気のせいだろうか。
「さっきの子、あれ誘拐、よね?」
「ボロボロだったのって警察の人だよな?救急車で運ばれてたけど、何があったんだろ」
何か騒動があったらしい。この町では喧嘩など日常茶飯事だが、誘拐に加えて警察への暴行は少し珍しい。好奇心で近くにいた男女に何があったんだ、と聞いてみれば女の子が誘拐され、警察の男がリンチにあって病院送りされたとのことだ。
その女の子を乗せた黒いバンは千両通りの方へ向かっていったという。もう好奇心ではなかった。今から向かえば助けられるかもしれないと思い、俺は千両通りへと急いだ。
千両通り外れにある、古びたビル。黒いバンも止まっている。ここで間違いなさそうだ。
車の乗り捨ても考えられたが、警察に暴行をした辺り無計画な犯行だろう。この短時間で別の手段を用意できるとは思えない。おそらく、ここで一度待機してから次への行動を起こすはず。なら、ここで捕まえればいい。
「オラァッ!!」
鍵のかかった扉を力任せにぶん殴り、強引にこじ開けると、そこには見張りらしき男達が数人驚いた顔でこちらを見ていた。見たところカタギではないのは確かだ。なら容赦することはないな。
そう思い、粗方ぶん殴った後、一人を捕まえて女の子の居場所を吐かせる。俺が東城会の四代目だった男とわかるや否、男達は震えながら3階にいますと教えてくれた。足早に階段を駆け上がる。
パシャンと、勢いよく水が落ちる音がした。
「!……てめぇら、何してやがる」
音が聞こえた部屋に飛び込むと、椅子に縛られた女の子が頭から水をかけられたらしく、全身ずぶ濡れで俯いていた。けほっと声がしたから生きてはいるが、こいつらカタギの女を拷問をしていたのかと拳に力が入った。
「なっ、あんた、まさか四代目……っ?!」
「桐生だ!こいつのせいで、親父が……っ!」
「やれッ!!この女の金と四代目のタマで、錦山組が東城会を牛耳るんだッ!!」
ああ、そうか。こいつらは錦の……。
未だに俺を憎んでいる奴らがいることは知っている。錦のやったことで、東城会の中でも邪険にされて肩身の狭い思いもしたのだろう。だが、俺に向かってくるのならそれでも良い。俺の命をとって成り上がろうとするのも理解できるが、今水浸しで苦しそうにしている女はなんだ。抵抗できない女を拷問して、金を奪って、それで東城会を牛耳ろうだと?こんなのは極道ではない、ただのチンピラだ。はらわたが煮えくり変える。
「死にてぇ奴からかかってこいッ!!」
最後に残った男を気絶しない程度に殴り倒した後、胸ぐらを掴んで持ち上げる。男は他の奴らと同じように震えながら助けてと懇願している。
「言え。どうしてこの女を拷問していた」
「ご、拷問ってほど、するつもりじゃなくて、ただ俺らは、こいつの資金源が知りたくてっ」
「金持ちさらって金奪おうってのか?」
「ち、ちが……っ、こいつ、別に金持ちってわけじゃねぇんです。俺らの組の間じゃ有名な、金の成り続ける木なんです。澤村さんが、そう言ってて」
金の成り続ける木?金の成る木ならわかるが、成り続けるとはどういうことだろう。それに、澤村、か。無関係だろうが、由美と遥と同じ苗字のやつが、こんなことを指示したのか。ますます怒りが湧いてくる。
「ひっ、そ、それに、錦山の親父が、昔目をかけてたって話もあって、俺ら、本当に拷問なんてするつもりなかったんですっ!」
「……もう黙ってろ」
するつもりもなくて、誘拐した挙句に水責めするのかともう我慢ができなくなって渾身の一発を顔面に決めて、昏倒させる。見れば、周りには空になったバケツがいくつも転がっていた。よくもこれで拷問する気はなかったなどと言えたものだ。
未だぐったりとしている女の背後に周り、紐を解いてやる。それから上着を女の肩にかけ、大丈夫かと声をかけた。
「う、うぅ……私、本当に、何も知らなくて……」
「俺はあいつらの仲間じゃない。助けに来たんだ」
「……え?助け、に……?」
「ああ。早くここを出よう。身の安全のためにも、警察に行った方が良い」
「けい、さつ……」
警察、と聞いて、女は顔を上げた。
「ダメ、ですっ!警察はダメです!もう、巻き込まないって、決めたんだ!私のせいで、谷村さんが酷い目にあって、だからっ!」
「……そういえば、警察の奴が救急車で運ばれてたな。知り合いだったのか」
「!救急車、きてくれたんだ……よかった……ほんとに、よかった……っ」
そう言って、女は泣き始めた。自分が助かったことではなく、知り合いが助かったことに泣いている。
「お前は、優しいんだな」
「……そんなことないです。私はいつもダメで……人を巻き込んで、それでも諦められなくて……助けてくれて、ありがとうございました。私、行かないと」
女はふらふらと立ち上がり、部屋を出ようとする。慌ててその腕を掴み、落ち着けと言い聞かせた。
「体が冷え切ってるじゃねぇか。警察や病院に行きたくねぇなら、一つ当てがある。所謂闇医者ってやつなんだが、そこに行くぞ」
「……闇医者?」
「ああ。腕は確かだ。不安に思うかもしれないが……」
「……めっちゃ気になる!!えっ、ほんとにいるんだ闇医者?!行く行く!絶対行く!」
「急に元気になったなお前……」
ひとまず自暴自棄にならずにすんでよかったと思っておくか。闇医者と聞いてテンションが上がってしまった女と自己紹介を済ませて、俺達は身を潜ませながらビルを抜け出して柄本医院へ向かうことにしたのだった。
また遥に怒られてしまうな、なんてぼんやりと思いつつ。