snobbism(龍如)
DREAM
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家族生活。~おじさん加入~
(2016年なずな30歳)
「そうか、お前がずっとこいつの傍にいてやってくれたのか」
我が家に着くまで話を聞くのを待ってくれた桐生さんこと、かずま叔父さんはとにかくよし兄の話が知りたかったようで、私との出会いから今に至るまでを少し長くなったが全部話した。
大の男二人が座っても多少余裕のあるソファによし兄と並ぶかずま叔父さんは、嬉しそうに笑っていた。反対にその反応に居心地の悪さを感じているよし兄は、視線をそらしたままだ。
「……別に、お互い身寄りもなく死亡届も出された身でしたし、一緒にいるにはちょうど良かったってだけです」
「フ、お前みたいな人間がそれだけの理由で他人と何年も暮らせるわけねえよ。それに谷村に会わせる後押しもしてくれたんだろ?ありがとな、峯」
「貴方にお礼を言われるようなことじゃありませんよ。それに、峯は死んだんです。今は、まあ、義孝とでも呼んでもらえれば」
「わかった、義孝。俺は一馬でいいぞ」
「……一馬さん」
「ふーーーー!イケメンの照れ顔は最高だぜ!!あたたたたアイアンクローはやめて」
「お前の話は終わったんだから酒とつまみ用意してこい」
「横暴!!」
「だが、生きてたならせめて大吾に会ってやればよかっただろ。もう六年も前になるか、お前が飛び降りた後、大吾はお前を見てやれなかったって悔やんでたんだぜ」
なずなが台所で忙しなくしているのを背景に、桐生さん、もとい一馬さんが六年前の話をしてくれた。大吾さん、気に病んでくれていたのか。俺なんかのために。
俺は首を横に振ると、無理ですよと自嘲気味に笑った。
「あの人を裏切ったんです。会う資格なんてありゃしませんよ」
「なずなと似たようなこと言うんだな」
「……けど、本当は会いたかった。一馬さん、本当はね、あんたがアサガオ戻ったら会いに行く予定だったんですよ」
「なんだと?」
この人が救われたなら、俺も一歩踏み出してみようかと思っていた。だが、この人はもう二度とアサガオに戻ることはない。アサガオを、大切なものを守るために死んだのだから。
俺を救おうとしてくれたこの人がそう生きるのなら、俺だけが会いに行くなんてできやしない。けれど、それでよかったのだ。やはり俺は、あの人に会っていいわけがないのだから。そんな俺を見て一馬さんは複雑そうな顔をしていた。
「……お前もなずなも不器用だな。だが、俺も同じ道を選んじまった身だ。もう気軽に会いたいなら会いに行けとは言いずらくなっちまったなあ」
「はは、でしょうね」
「けど、いつか……いつか、会えたらいいな」
「……そうですね」
そのいつかが来ないことはわかっている。それでも、夢を見るくらいなら……。
「おっまたせー!!なずなスペシャル生ハムメロンと高いお酒だよ!!」
相変わらず空気を読まない妹は、いつもより満面の笑みを浮かべて皿を並べ始めた。グラスも三つ用意して、見たことのない銘柄の酒を注ぎ始める。真面目な話は一旦終わりだな、と一馬さんは笑ってグラスを手に取った。
「ん?この酒、どこかで見覚えがあるような……」
「これはねえ、真島さんからええ酒やでえ!って前にもらったマ・ズィーマだよ!高いお酒って聞いたけど、どれくらいするんだろうね」
「……なずな、これ兄さんが適当に買ってきた安酒だぞ」
「うそお?!」
「そもそも生ハムメロンに作るもくそもねえだろ。手抜きすんな」
「辛辣う!!」
んもーっとぶつくさ言いながら他のつまみも並べるなずなを見つめる。こいつは、俺達よりも長く一人で生きてきたのだ。会いたい奴に会うこともせず。親しい人間を作ることもせず、たった一人であてのないの旅を続けていた。
こいつは一人じゃなくなったことを俺達に感謝するが、本当に感謝しなければならないのは、俺達の方なのだ。こいつがいなかったら、俺達は今も一人だったかもしれないのだから。
だから、こいつが会いたい奴に会えて、共に過ごせる日々があることを嬉しく思っている。わざわざ言ってやりはしないけれど。
「それじゃ、改めてかずま叔父さん、よろしくね!!」
「ああ、よろしくな、二人とも。よかったら、これまでどう過ごしてたかとか、教えてくれるか?」
「いいよー!私もよし兄が昔やらかしたこととか教えてほしいし!あの花屋さんもびっくりしてかずま叔父さんの弟分さんが吐いちゃった事件、結局よし兄は何やったの?!」
「ああ……あれか。さすがの兄さんも驚いてたな。俺も色々経験があるが、あのアタッシュケースのことは衝撃だったぜ。よくあれに入れてきたな?」
「まあ、頑丈ですし、液も漏れない優れモノでしたから。持ち運びも楽でしたしね」
「何を?!何を入れて運んでたの?!」
(2016年なずな30歳)
「そうか、お前がずっとこいつの傍にいてやってくれたのか」
我が家に着くまで話を聞くのを待ってくれた桐生さんこと、かずま叔父さんはとにかくよし兄の話が知りたかったようで、私との出会いから今に至るまでを少し長くなったが全部話した。
大の男二人が座っても多少余裕のあるソファによし兄と並ぶかずま叔父さんは、嬉しそうに笑っていた。反対にその反応に居心地の悪さを感じているよし兄は、視線をそらしたままだ。
「……別に、お互い身寄りもなく死亡届も出された身でしたし、一緒にいるにはちょうど良かったってだけです」
「フ、お前みたいな人間がそれだけの理由で他人と何年も暮らせるわけねえよ。それに谷村に会わせる後押しもしてくれたんだろ?ありがとな、峯」
「貴方にお礼を言われるようなことじゃありませんよ。それに、峯は死んだんです。今は、まあ、義孝とでも呼んでもらえれば」
「わかった、義孝。俺は一馬でいいぞ」
「……一馬さん」
「ふーーーー!イケメンの照れ顔は最高だぜ!!あたたたたアイアンクローはやめて」
「お前の話は終わったんだから酒とつまみ用意してこい」
「横暴!!」
「だが、生きてたならせめて大吾に会ってやればよかっただろ。もう六年も前になるか、お前が飛び降りた後、大吾はお前を見てやれなかったって悔やんでたんだぜ」
なずなが台所で忙しなくしているのを背景に、桐生さん、もとい一馬さんが六年前の話をしてくれた。大吾さん、気に病んでくれていたのか。俺なんかのために。
俺は首を横に振ると、無理ですよと自嘲気味に笑った。
「あの人を裏切ったんです。会う資格なんてありゃしませんよ」
「なずなと似たようなこと言うんだな」
「……けど、本当は会いたかった。一馬さん、本当はね、あんたがアサガオ戻ったら会いに行く予定だったんですよ」
「なんだと?」
この人が救われたなら、俺も一歩踏み出してみようかと思っていた。だが、この人はもう二度とアサガオに戻ることはない。アサガオを、大切なものを守るために死んだのだから。
俺を救おうとしてくれたこの人がそう生きるのなら、俺だけが会いに行くなんてできやしない。けれど、それでよかったのだ。やはり俺は、あの人に会っていいわけがないのだから。そんな俺を見て一馬さんは複雑そうな顔をしていた。
「……お前もなずなも不器用だな。だが、俺も同じ道を選んじまった身だ。もう気軽に会いたいなら会いに行けとは言いずらくなっちまったなあ」
「はは、でしょうね」
「けど、いつか……いつか、会えたらいいな」
「……そうですね」
そのいつかが来ないことはわかっている。それでも、夢を見るくらいなら……。
「おっまたせー!!なずなスペシャル生ハムメロンと高いお酒だよ!!」
相変わらず空気を読まない妹は、いつもより満面の笑みを浮かべて皿を並べ始めた。グラスも三つ用意して、見たことのない銘柄の酒を注ぎ始める。真面目な話は一旦終わりだな、と一馬さんは笑ってグラスを手に取った。
「ん?この酒、どこかで見覚えがあるような……」
「これはねえ、真島さんからええ酒やでえ!って前にもらったマ・ズィーマだよ!高いお酒って聞いたけど、どれくらいするんだろうね」
「……なずな、これ兄さんが適当に買ってきた安酒だぞ」
「うそお?!」
「そもそも生ハムメロンに作るもくそもねえだろ。手抜きすんな」
「辛辣う!!」
んもーっとぶつくさ言いながら他のつまみも並べるなずなを見つめる。こいつは、俺達よりも長く一人で生きてきたのだ。会いたい奴に会うこともせず。親しい人間を作ることもせず、たった一人であてのないの旅を続けていた。
こいつは一人じゃなくなったことを俺達に感謝するが、本当に感謝しなければならないのは、俺達の方なのだ。こいつがいなかったら、俺達は今も一人だったかもしれないのだから。
だから、こいつが会いたい奴に会えて、共に過ごせる日々があることを嬉しく思っている。わざわざ言ってやりはしないけれど。
「それじゃ、改めてかずま叔父さん、よろしくね!!」
「ああ、よろしくな、二人とも。よかったら、これまでどう過ごしてたかとか、教えてくれるか?」
「いいよー!私もよし兄が昔やらかしたこととか教えてほしいし!あの花屋さんもびっくりしてかずま叔父さんの弟分さんが吐いちゃった事件、結局よし兄は何やったの?!」
「ああ……あれか。さすがの兄さんも驚いてたな。俺も色々経験があるが、あのアタッシュケースのことは衝撃だったぜ。よくあれに入れてきたな?」
「まあ、頑丈ですし、液も漏れない優れモノでしたから。持ち運びも楽でしたしね」
「何を?!何を入れて運んでたの?!」