snobbism(龍如)
DREAM
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命を詩う人の話。②
(2016年なずな29歳)
突然ですが、職を失いました。
といいつつも、もっと早い段階でこうなることは予想していたのだ。そもそもスカイファイナンス蒼天堀支店が開かれたのは秋山さんのただの気まぐれではなく、かつての知り合いに会うためだった。その目的も果たした後は、ここに支店を出しておく意味はない。
それに秋山さん自身、今スカイファイナンスを畳んでおり、閉店休業中なのだ。というのも、この間起こった亜細亜街の火事に乗じて流れ込んできたマフィア、祭王会に六代目に口利きができる関係として狙われているかららしい。花さんも実家へ返して、自分は神室町に身を潜めているとか。
私よりも秋山さんの方が大変そうだ。私なんてこれからの仕事探しをどうしようかと悩むくらいで、問題ないですよと秋山さんに言ったら、とても申し訳ない顔で謝られてしまった。せめてこれを受け取ってほしい、と渡されたのは、今日本で普及率上昇中のスマートフォンだ。淡い緑色のスマートフォン。というかスマホって高いのでは?!
「いいのいいの。退職金は別で渡すけど、これは俺からのプレゼントだから。色々巻き込んでごめんね、なずなちゃん」
「こちらこそですよ!でも、いいんですか?たしかによし兄が持ってるスマホ見ていいなあとは思ってたけど……」
「なんだ、言えば買ってやったぞ」
「うっそお?!言えばよかったー!」
「ふふ、ちなみにこれねえ、谷村さんに選んでもらったんだよ。俺がプレゼントしようと思ってる話したら、危うく殺され……怒られちゃってね。じゃあデザインは谷村さんが選んでよって言ったらこれって」
「えっ谷村さんと秋山さんのショッピングとかめちゃくちゃ見たい。興奮する」
「しないでね?!」
ということで、谷村さんセレクトスマホを秋山さんから頂いちゃいましたー!電話帳の登録とかどうすればいいんだろ。とか思っていると、秋山さんにもう終わってるよと言われた。
「ここに来るまでにね、ちゃんと起動するかもう一回確認しておこうと思って電源つけたんだけど、電話帳とか写真とか諸々すでに入っててさ……多分、その携帯から引継ぎしてあるんだと思う。……これもまた、なずなちゃんのお兄さんの仕業かな?」
「……多分そうです。うわ、ほんとに全部引継ぎされてる……度々思うんだけど、私の兄貴って忍者とかだったりするのかな……」
「ま、まあ手間が省けたって思おうか!」
「(そういう問題じゃないと思うんだが……)」
よし兄がチベットスナギツネの目になっているが、秋山さんの言う通り手間が省けたと思うことにする。どこかで見守ってくれている実の兄よ、ありがとう。しかしここまでしてくれるならいっそ会いに来てほしいんだけどね!
「次、お仕事どうするかとか考えてる?」
秋山さんが持ってきてくれた高いお肉でしゃぶしゃぶを味わっていると、一息ついたころにそう尋ねられた。正直なところ、一か所に留まるのは避けているので、また派遣の仕事しようかなあくらいしか考えていなかった。
そのことを話すと、よし兄が呆れたようにため息を吐いた。
「仕事はしばらくは休みでいいだろう。お前は働きすぎだ」
「え?なずなちゃん、もしかしてうち以外でも働いてたんですか?」
「ええ、自分の倒れない範囲で短期バイトやらなにやら入れてましたよ」
それは多分、よし兄と出会うまでの3年間の名残だった。ひとりぼっちがさみしくて、でも仲良くなるのも怖くて、それなら仕事でもいいから人と話がしたくて。
今はよし兄も谷村さんも、秋山さんやみんなと会えてさみしくないはずなのに、あの頃の癖でつい仕事を入れてしまっていたのだろう。自分でも無意識だった。
「そんなに働いてたなんて気づかなかった……。それじゃあ少しお休みしようかな」
「うん、それがいいよ。なずなちゃん、寂しいなあって思ったらちゃんと谷村さんや義孝さんに言うんだよ。もちろん俺に言ってくれてもいいし。思いっきり遊べる場所にエスコートするから」
「……はい!あ、でも今祭王会に追われてるんですっけ?じゃあその問題解決したら遊びに行きましょうね!」
「そうだね。……どうやったら解決するかなあ」
ああー、と秋山さんはうちのソファにぐったりと沈み込んでしまった。事が収まるまでこっちにいてもいいんじゃないかと聞いたが、自分は神室町が好きだから離れないと言われた。それに、悪い奴にはもう屈しないことにしたんだ、とも。
気持ちがわかるから、それ以上は何も言えなかった。私にできることは、多分今回も何もなくて、みんなが無事でいられるように祈るだけなのだろう。ひどくもどかしくて歯がゆいけども。
「そういえば、谷村さんと連絡はついた?」
「はい。この間の火事で少し火傷したけど大丈夫だったって。亜細亜街の火事やその火事が原因じゃないけど他にも事件が起きてて、めちゃくちゃ忙しいみたいです。落ち着いたら改めて連絡してこっちに来るって言ってました」
「たしかに今、神室町中警察がうろついてるもんなあ。東城会も様子がおかしいし」
「六代目に何かあったんですか」
「反応早!いやあ、詳しくはわからないけど、事態の責任を誰が取るかってもめてるみたいですよ?」
「……くそ、今の奴らは一体何をしてるんだ。資金繰りも下手で無能どもが失態ばかり犯す……六代目の負担をどこまで増やせば気が済むんだクソどもめ……」
「ねえなずなちゃん、前から思ってたけど義孝さんの六代目盲目モードって口悪いよね?」
「よし兄は元から口悪いですよ?」
後日、仕事が落ち着いたと言って谷村さんが我が家まで来てくれて、その時になんと私の実兄と会ったと話してくれた。亜細亜街の住人を助けたのは、兄だったという。きっと、また私のためを思って無茶をしたんだなあって、少し泣きそうになった。
(2016年なずな29歳)
突然ですが、職を失いました。
といいつつも、もっと早い段階でこうなることは予想していたのだ。そもそもスカイファイナンス蒼天堀支店が開かれたのは秋山さんのただの気まぐれではなく、かつての知り合いに会うためだった。その目的も果たした後は、ここに支店を出しておく意味はない。
それに秋山さん自身、今スカイファイナンスを畳んでおり、閉店休業中なのだ。というのも、この間起こった亜細亜街の火事に乗じて流れ込んできたマフィア、祭王会に六代目に口利きができる関係として狙われているかららしい。花さんも実家へ返して、自分は神室町に身を潜めているとか。
私よりも秋山さんの方が大変そうだ。私なんてこれからの仕事探しをどうしようかと悩むくらいで、問題ないですよと秋山さんに言ったら、とても申し訳ない顔で謝られてしまった。せめてこれを受け取ってほしい、と渡されたのは、今日本で普及率上昇中のスマートフォンだ。淡い緑色のスマートフォン。というかスマホって高いのでは?!
「いいのいいの。退職金は別で渡すけど、これは俺からのプレゼントだから。色々巻き込んでごめんね、なずなちゃん」
「こちらこそですよ!でも、いいんですか?たしかによし兄が持ってるスマホ見ていいなあとは思ってたけど……」
「なんだ、言えば買ってやったぞ」
「うっそお?!言えばよかったー!」
「ふふ、ちなみにこれねえ、谷村さんに選んでもらったんだよ。俺がプレゼントしようと思ってる話したら、危うく殺され……怒られちゃってね。じゃあデザインは谷村さんが選んでよって言ったらこれって」
「えっ谷村さんと秋山さんのショッピングとかめちゃくちゃ見たい。興奮する」
「しないでね?!」
ということで、谷村さんセレクトスマホを秋山さんから頂いちゃいましたー!電話帳の登録とかどうすればいいんだろ。とか思っていると、秋山さんにもう終わってるよと言われた。
「ここに来るまでにね、ちゃんと起動するかもう一回確認しておこうと思って電源つけたんだけど、電話帳とか写真とか諸々すでに入っててさ……多分、その携帯から引継ぎしてあるんだと思う。……これもまた、なずなちゃんのお兄さんの仕業かな?」
「……多分そうです。うわ、ほんとに全部引継ぎされてる……度々思うんだけど、私の兄貴って忍者とかだったりするのかな……」
「ま、まあ手間が省けたって思おうか!」
「(そういう問題じゃないと思うんだが……)」
よし兄がチベットスナギツネの目になっているが、秋山さんの言う通り手間が省けたと思うことにする。どこかで見守ってくれている実の兄よ、ありがとう。しかしここまでしてくれるならいっそ会いに来てほしいんだけどね!
「次、お仕事どうするかとか考えてる?」
秋山さんが持ってきてくれた高いお肉でしゃぶしゃぶを味わっていると、一息ついたころにそう尋ねられた。正直なところ、一か所に留まるのは避けているので、また派遣の仕事しようかなあくらいしか考えていなかった。
そのことを話すと、よし兄が呆れたようにため息を吐いた。
「仕事はしばらくは休みでいいだろう。お前は働きすぎだ」
「え?なずなちゃん、もしかしてうち以外でも働いてたんですか?」
「ええ、自分の倒れない範囲で短期バイトやらなにやら入れてましたよ」
それは多分、よし兄と出会うまでの3年間の名残だった。ひとりぼっちがさみしくて、でも仲良くなるのも怖くて、それなら仕事でもいいから人と話がしたくて。
今はよし兄も谷村さんも、秋山さんやみんなと会えてさみしくないはずなのに、あの頃の癖でつい仕事を入れてしまっていたのだろう。自分でも無意識だった。
「そんなに働いてたなんて気づかなかった……。それじゃあ少しお休みしようかな」
「うん、それがいいよ。なずなちゃん、寂しいなあって思ったらちゃんと谷村さんや義孝さんに言うんだよ。もちろん俺に言ってくれてもいいし。思いっきり遊べる場所にエスコートするから」
「……はい!あ、でも今祭王会に追われてるんですっけ?じゃあその問題解決したら遊びに行きましょうね!」
「そうだね。……どうやったら解決するかなあ」
ああー、と秋山さんはうちのソファにぐったりと沈み込んでしまった。事が収まるまでこっちにいてもいいんじゃないかと聞いたが、自分は神室町が好きだから離れないと言われた。それに、悪い奴にはもう屈しないことにしたんだ、とも。
気持ちがわかるから、それ以上は何も言えなかった。私にできることは、多分今回も何もなくて、みんなが無事でいられるように祈るだけなのだろう。ひどくもどかしくて歯がゆいけども。
「そういえば、谷村さんと連絡はついた?」
「はい。この間の火事で少し火傷したけど大丈夫だったって。亜細亜街の火事やその火事が原因じゃないけど他にも事件が起きてて、めちゃくちゃ忙しいみたいです。落ち着いたら改めて連絡してこっちに来るって言ってました」
「たしかに今、神室町中警察がうろついてるもんなあ。東城会も様子がおかしいし」
「六代目に何かあったんですか」
「反応早!いやあ、詳しくはわからないけど、事態の責任を誰が取るかってもめてるみたいですよ?」
「……くそ、今の奴らは一体何をしてるんだ。資金繰りも下手で無能どもが失態ばかり犯す……六代目の負担をどこまで増やせば気が済むんだクソどもめ……」
「ねえなずなちゃん、前から思ってたけど義孝さんの六代目盲目モードって口悪いよね?」
「よし兄は元から口悪いですよ?」
後日、仕事が落ち着いたと言って谷村さんが我が家まで来てくれて、その時になんと私の実兄と会ったと話してくれた。亜細亜街の住人を助けたのは、兄だったという。きっと、また私のためを思って無茶をしたんだなあって、少し泣きそうになった。