snobbism(龍如)
DREAM
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命を詩う人の話。
(2015年なずな29歳)
≪今日未明、東京都の神室町で大規模な火災が発生しました。今も火は消えず、懸命な消火活動が行われています。現場は神室町にある、亜細亜街と呼ばれる区間です。近辺にお住みの皆様はただちに離れてください≫
雪もぱらぱら降り始めた12月。買い出しを終えて、風呂場の乾燥機能を使って干していた洗濯物を取り込み、リビングのテレビを見ながら畳んでいると、突然番組が切り替わった。緊急速報、と言っている。神室町の亜細亜街で、大規模な火災。亜細亜街は、谷村さんの居場所だ。私も世話になった場所で、あそこには、故郷が、趙さんやメイファちゃんが。
「おいどうした。……火事?」
寝室から出てきたよし兄がテレビを見た後、急いでどこかに電話をかけ始めた。私は、どうすればいいかわからず、画面を見たまま動けなかった。どうしよう、谷村さんはどうしてるの。亜細亜街のみんなはどうなったの。どうして、火事が。
「落ち着け!今谷村と連絡が取れた!」
「……ぇ?」
耳に無理やり押し付けられた電話口から、焦るような声が聞こえる。
『なずな!俺は無事だ!亜細亜街の連中も怪我した奴はいるけどみんな生きてる!聞こえてるか?!』
「ぁ……た、谷村さん!!ほんとに?!みんな、谷村さんも大丈夫なの?!」
『ああ!ただ、これから少し忙しくなりそうだから、また連絡する!心配しないで待ってろ!』
「わかった!わかったよ谷村さんっ!」
慌ただしい通話が終わり、私も力が抜けてその場にへたりこんでしまう。大丈夫だって言っていた。谷村さんの背後で人の声がたくさん聞こえたから、言った通り本当に大丈夫なのだろう。はあー、と大きなため息を吐いたら、よし兄に携帯を奪われる。そういえば、よし兄の携帯だった。
「よし兄、ごめんね。連絡とってくれてありがとう」
「まったくだ。……無事でよかったな」
「うん!それにしても、なんで亜細亜街で火事が……ネットに何か書いてあるかな」
自分の携帯を取り出して調べてみるも、まだ原因もわかっておらず、得られる情報は何もなかった。テレビではずっと火事の映像を見せている。本当に大規模な火災だ。これでは、火が消える頃には亜細亜街がなくなってしまう。
「みんなの居場所だったのに、なんでこんなことになっちゃったんだろ……」
「けど、そこの連中も谷村も頑張ってきたんだろ。今回のことで居場所はなくなったかもしれねえが、どうにか生きていくだろうよ」
「どうにかっていっても」
「お前だってどうにか生きてきたんだから、何とかなるさ」
どうにか生きていく。そうか、私もそうだった。
苦しいこともあったけど、どうにか生きて、生き続けて、今こうやって生きている。亜細亜街の住人達も、同じように生きていくのだろう。私が心配しすぎたって仕方ない、とおそらくよし兄は言ってくれている。わかりづらいけども。
「よし、心配だけど、連絡を待つことにする!」
「それでいい。お前は厄介事を持ち込む天才だからな。おとなしく晩飯でも作ってろ」
「なにその天才?!もー!今日はラーメンにする!」
(2015年なずな29歳)
≪今日未明、東京都の神室町で大規模な火災が発生しました。今も火は消えず、懸命な消火活動が行われています。現場は神室町にある、亜細亜街と呼ばれる区間です。近辺にお住みの皆様はただちに離れてください≫
雪もぱらぱら降り始めた12月。買い出しを終えて、風呂場の乾燥機能を使って干していた洗濯物を取り込み、リビングのテレビを見ながら畳んでいると、突然番組が切り替わった。緊急速報、と言っている。神室町の亜細亜街で、大規模な火災。亜細亜街は、谷村さんの居場所だ。私も世話になった場所で、あそこには、故郷が、趙さんやメイファちゃんが。
「おいどうした。……火事?」
寝室から出てきたよし兄がテレビを見た後、急いでどこかに電話をかけ始めた。私は、どうすればいいかわからず、画面を見たまま動けなかった。どうしよう、谷村さんはどうしてるの。亜細亜街のみんなはどうなったの。どうして、火事が。
「落ち着け!今谷村と連絡が取れた!」
「……ぇ?」
耳に無理やり押し付けられた電話口から、焦るような声が聞こえる。
『なずな!俺は無事だ!亜細亜街の連中も怪我した奴はいるけどみんな生きてる!聞こえてるか?!』
「ぁ……た、谷村さん!!ほんとに?!みんな、谷村さんも大丈夫なの?!」
『ああ!ただ、これから少し忙しくなりそうだから、また連絡する!心配しないで待ってろ!』
「わかった!わかったよ谷村さんっ!」
慌ただしい通話が終わり、私も力が抜けてその場にへたりこんでしまう。大丈夫だって言っていた。谷村さんの背後で人の声がたくさん聞こえたから、言った通り本当に大丈夫なのだろう。はあー、と大きなため息を吐いたら、よし兄に携帯を奪われる。そういえば、よし兄の携帯だった。
「よし兄、ごめんね。連絡とってくれてありがとう」
「まったくだ。……無事でよかったな」
「うん!それにしても、なんで亜細亜街で火事が……ネットに何か書いてあるかな」
自分の携帯を取り出して調べてみるも、まだ原因もわかっておらず、得られる情報は何もなかった。テレビではずっと火事の映像を見せている。本当に大規模な火災だ。これでは、火が消える頃には亜細亜街がなくなってしまう。
「みんなの居場所だったのに、なんでこんなことになっちゃったんだろ……」
「けど、そこの連中も谷村も頑張ってきたんだろ。今回のことで居場所はなくなったかもしれねえが、どうにか生きていくだろうよ」
「どうにかっていっても」
「お前だってどうにか生きてきたんだから、何とかなるさ」
どうにか生きていく。そうか、私もそうだった。
苦しいこともあったけど、どうにか生きて、生き続けて、今こうやって生きている。亜細亜街の住人達も、同じように生きていくのだろう。私が心配しすぎたって仕方ない、とおそらくよし兄は言ってくれている。わかりづらいけども。
「よし、心配だけど、連絡を待つことにする!」
「それでいい。お前は厄介事を持ち込む天才だからな。おとなしく晩飯でも作ってろ」
「なにその天才?!もー!今日はラーメンにする!」