snobbism(龍如)
DREAM
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夢を追う人たちの話。③
(2012年なずな25歳)
さて、今回のダイナチェアでの騒動について、我々は蚊帳の外になってしまったわけだけど。
「ううー!ううー!!」
「うるせえ喚くな」
「だってー!これで遥ちゃんがデビューできるかどうかが決まっちゃうんだよ?!ああ緊張するううう!!」
「二人とも、なんか食べます?俺用意しますけど」
「ああ、いや、それは俺がやる。それよりこのうるさい奴を黙らせてくれ」
今まで住んでたマンションより、やや小さいがそれでも三人が伸び伸びと出来るくらいには広いリビング。そこに置かれたソファの上で決勝戦直前のプリンセスリーグのダイジェスト放送を見ながら唸っていると、よし兄と入れ代わりに谷村さんが隣に座ってきた。ちなみに谷村さんは明日神室町に帰ることになっている。毎回有給使わせてごめんねと謝れば、こういう時に使うもんでしょと笑われた。
隣に来た谷村さんは、私の頭をポンポンとあやすように撫でてくる。
「遥ちゃんなら大丈夫だろ。信じてやりなって」
「いや信じてるよ!!信じてるけど、なんか緊張するんだよおおお!!……あれ、谷村さん、遥ちゃんと知り合いなの?」
「二年前の事件のすぐ後かな、桐生さんが神室町に連れてきて俺達に紹介してくれたんだよ。なんか、桐生さんがめちゃくちゃなおねだりされてて面白かった」
「めちゃくちゃなおねだりとは」
「バッセンのエクストラハードコースで4000点以上取ってとか言ってたな」
「遥ちゃんのおねだりエグくない??」
その姿見たかったー!もっと早くに勇気出して神室町行けばよかったー!
頭を抱えてぶんぶんと縦に振って喚いていたら、谷村さんが「ふーん」とどこか拗ねた声を出した。
「そうだよなー、二年前だって元々俺じゃなくて桐生さんに会いに来たんだもんなー」
「た、谷村さん?」
「別に気にしてないけどー。秋山さんが『偶々困ってる女の子助けたらそれがなずなちゃんだったんだよね。運命みたいだよね』なんてにやにやしながら言ってきた事なんて全く気にしてないけどー」
「そんなの秋山さんの冗談じゃん!えー?!谷村さんかわいいんだが?!はっ、これが秋山さんが言ってた『私しか知らない谷村さん』ってこと?!」
「俺も知っちまったがな」
拗ねている谷村さんの頭を胸に抱えて高速なでなでして満悦していると、よし兄がおつまみを三人分用意してくれた。飲み物も酒でいいだろと並べられて、テレビを見る準備は万全だ。
いつまでいちゃついてんだ、とよし兄に睨まれたのでしぶしぶ離れる。谷村さんは顔を覆ってため息を吐いていたけど、一体どうしたのか。どこか耳も赤い気がする。
「童貞みたいな反応してんな谷村。明日何時に帰るんだ?」
「どっ……明日は朝一で帰りますよ。ここ来る時に世話になった伊達さんにも説明しないといけませんし」
「伊達さん!私も久々に会いたいなー!……あ!プリンセスリーグ始まった!」
ドルチェ神谷の定番のMCで始まるプリンセスリーグ。今日はいよいよ決勝戦。
プリンセスリーグは同時にライブパフォーマンスを行い、観客の投票により勝敗が決まる。一回戦は遥ちゃん、二回戦はT-SETの勝ちだった。なので、今回の勝敗が優勝者を決めるといっても過言ではない。
ファイナルラウンドの曲が発表される。キミハイルカラ。神曲きたー!歌詞も少し切なくて良い曲なんだよなー!
「お前が谷村と付き合う前によく歌ってた歌じゃねえか」
「ぎゃあああ!!!なんで言うのよし兄?!」
「なるほど。つまり俺を思って歌ってたって事ですね。よし、しっかり歌詞を見てやろう」
「ぎょえええ!!!普通に遥ちゃんの歌聴いてよおお!!私の事は一旦忘れてえええ!!」
よし兄にうるせえと一蹴され、再びテレビに視線を戻す。つまみを口に頬張り、飲み物を握って流れる映像に注目する。
今日の遥ちゃんの衣装、いつもよりキラキラしてるなあ。顔も、緊張してるみたいだ。決勝戦だもんね。
それに、色んな事件があった中での決勝戦。もしデビューが決まれば、東京でコンサートも控えている。
パフォーマンスをする遥ちゃんを見ながら、この光景を桐生さんは見てるのだろうかと思った。桐生さんの事だから遠くに居ても応援してるとは思うけど、やっぱり別々に暮らすのはおかしいと思う。それも、お互い円満に分かれたわけじゃないのなら尚更だ。
『お前は、本当に凄いな』
『こんな生活を、何年も続けて……会いたい奴にも会わないで、たった一人でずっと生きてきたのか……お前は強い奴だ』
桐生さんはそんな事を言っていた。すごくなんかないのに。
だって、この歌みたいに明るく前なんて向けなかった。笑って生きてきたけど、ずっと、一人ぼっちだと思ってた。
会わなかったわけじゃない。臆病だっただけだ。私のせいで暴力を受けた谷村さんの姿。私のせいで殺された人達。その全てを受け止めるのが怖かっただけだった。
よし兄がいなかったら、兄貴の事を恨んでしまっていたかもしれない。どうして、あの日、本当に殺してくれなかったのって。
けど、やっぱり会いに行ってよかった。あの時勇気を出さなかったら、今こうしてよし兄と谷村さんと並んでなかったかもしれない。
そのきっかけをくれた桐生さんには誰よりも感謝をしてるから、一人ぼっちになってほしくないんだ。
プリンセスリーグ、ファイナルラウンド。
今年のプリンセスとなった遥ちゃんが、「届いてるかな?」ときっと桐生さんの事を思いながらコメントしてるのを聞いて「届いてるよー!!」と泣きながら優勝を祝った。
翌日早朝。谷村さんが大阪に帰るので見送りに行くと、タイミングが良いのか悪いのか、秋山さんから電話があった。秋山さんはすでに神室町に着いており、事務所から電話をしているらしい。
『遥ちゃんのコンサート決まったよ!チケット確保してるから、明日とか神室町来れる?当日は会えないかもしれなくてさ』
「行けます行けます!やったー!」
『ただ、二枚あるんだけど、義孝さん来ないんだっけ?』
「そうなんですよー!まだ神室町には行かないって聞かなくて」
『じゃあ谷村さんは?谷村さん明後日非番だったりしない?』
「非番じゃないですよ。今の神室町の状況では警備に回されるかもしれませんけど」
『ああー、そっかー。じゃあ、花ちゃーん。なずなちゃんとコンサート行かない?』
電話の向こうで『行きます!』と元気な声が聞こえた。コンサートは花ちゃんと二人で行くことになった。やったー!楽しみー!コンサート向かう前に喫茶店で女子会しよ!
電話を切ってニッコニコで谷村さんの方を見たら、ポフッと頭を撫でられた。
「明日来るなら、俺の家に泊まるだろ?神室町着いたら連絡して」
「ふへへ。うん!夕飯一緒に食べようね!」
「ふふ、だらしない顔」
谷村さんの見送り後、家に帰るとよし兄にも「だらしねえ顔のまま帰ってくるな」と呆れられるのだった。
(2012年なずな25歳)
さて、今回のダイナチェアでの騒動について、我々は蚊帳の外になってしまったわけだけど。
「ううー!ううー!!」
「うるせえ喚くな」
「だってー!これで遥ちゃんがデビューできるかどうかが決まっちゃうんだよ?!ああ緊張するううう!!」
「二人とも、なんか食べます?俺用意しますけど」
「ああ、いや、それは俺がやる。それよりこのうるさい奴を黙らせてくれ」
今まで住んでたマンションより、やや小さいがそれでも三人が伸び伸びと出来るくらいには広いリビング。そこに置かれたソファの上で決勝戦直前のプリンセスリーグのダイジェスト放送を見ながら唸っていると、よし兄と入れ代わりに谷村さんが隣に座ってきた。ちなみに谷村さんは明日神室町に帰ることになっている。毎回有給使わせてごめんねと謝れば、こういう時に使うもんでしょと笑われた。
隣に来た谷村さんは、私の頭をポンポンとあやすように撫でてくる。
「遥ちゃんなら大丈夫だろ。信じてやりなって」
「いや信じてるよ!!信じてるけど、なんか緊張するんだよおおお!!……あれ、谷村さん、遥ちゃんと知り合いなの?」
「二年前の事件のすぐ後かな、桐生さんが神室町に連れてきて俺達に紹介してくれたんだよ。なんか、桐生さんがめちゃくちゃなおねだりされてて面白かった」
「めちゃくちゃなおねだりとは」
「バッセンのエクストラハードコースで4000点以上取ってとか言ってたな」
「遥ちゃんのおねだりエグくない??」
その姿見たかったー!もっと早くに勇気出して神室町行けばよかったー!
頭を抱えてぶんぶんと縦に振って喚いていたら、谷村さんが「ふーん」とどこか拗ねた声を出した。
「そうだよなー、二年前だって元々俺じゃなくて桐生さんに会いに来たんだもんなー」
「た、谷村さん?」
「別に気にしてないけどー。秋山さんが『偶々困ってる女の子助けたらそれがなずなちゃんだったんだよね。運命みたいだよね』なんてにやにやしながら言ってきた事なんて全く気にしてないけどー」
「そんなの秋山さんの冗談じゃん!えー?!谷村さんかわいいんだが?!はっ、これが秋山さんが言ってた『私しか知らない谷村さん』ってこと?!」
「俺も知っちまったがな」
拗ねている谷村さんの頭を胸に抱えて高速なでなでして満悦していると、よし兄がおつまみを三人分用意してくれた。飲み物も酒でいいだろと並べられて、テレビを見る準備は万全だ。
いつまでいちゃついてんだ、とよし兄に睨まれたのでしぶしぶ離れる。谷村さんは顔を覆ってため息を吐いていたけど、一体どうしたのか。どこか耳も赤い気がする。
「童貞みたいな反応してんな谷村。明日何時に帰るんだ?」
「どっ……明日は朝一で帰りますよ。ここ来る時に世話になった伊達さんにも説明しないといけませんし」
「伊達さん!私も久々に会いたいなー!……あ!プリンセスリーグ始まった!」
ドルチェ神谷の定番のMCで始まるプリンセスリーグ。今日はいよいよ決勝戦。
プリンセスリーグは同時にライブパフォーマンスを行い、観客の投票により勝敗が決まる。一回戦は遥ちゃん、二回戦はT-SETの勝ちだった。なので、今回の勝敗が優勝者を決めるといっても過言ではない。
ファイナルラウンドの曲が発表される。キミハイルカラ。神曲きたー!歌詞も少し切なくて良い曲なんだよなー!
「お前が谷村と付き合う前によく歌ってた歌じゃねえか」
「ぎゃあああ!!!なんで言うのよし兄?!」
「なるほど。つまり俺を思って歌ってたって事ですね。よし、しっかり歌詞を見てやろう」
「ぎょえええ!!!普通に遥ちゃんの歌聴いてよおお!!私の事は一旦忘れてえええ!!」
よし兄にうるせえと一蹴され、再びテレビに視線を戻す。つまみを口に頬張り、飲み物を握って流れる映像に注目する。
今日の遥ちゃんの衣装、いつもよりキラキラしてるなあ。顔も、緊張してるみたいだ。決勝戦だもんね。
それに、色んな事件があった中での決勝戦。もしデビューが決まれば、東京でコンサートも控えている。
パフォーマンスをする遥ちゃんを見ながら、この光景を桐生さんは見てるのだろうかと思った。桐生さんの事だから遠くに居ても応援してるとは思うけど、やっぱり別々に暮らすのはおかしいと思う。それも、お互い円満に分かれたわけじゃないのなら尚更だ。
『お前は、本当に凄いな』
『こんな生活を、何年も続けて……会いたい奴にも会わないで、たった一人でずっと生きてきたのか……お前は強い奴だ』
桐生さんはそんな事を言っていた。すごくなんかないのに。
だって、この歌みたいに明るく前なんて向けなかった。笑って生きてきたけど、ずっと、一人ぼっちだと思ってた。
会わなかったわけじゃない。臆病だっただけだ。私のせいで暴力を受けた谷村さんの姿。私のせいで殺された人達。その全てを受け止めるのが怖かっただけだった。
よし兄がいなかったら、兄貴の事を恨んでしまっていたかもしれない。どうして、あの日、本当に殺してくれなかったのって。
けど、やっぱり会いに行ってよかった。あの時勇気を出さなかったら、今こうしてよし兄と谷村さんと並んでなかったかもしれない。
そのきっかけをくれた桐生さんには誰よりも感謝をしてるから、一人ぼっちになってほしくないんだ。
プリンセスリーグ、ファイナルラウンド。
今年のプリンセスとなった遥ちゃんが、「届いてるかな?」ときっと桐生さんの事を思いながらコメントしてるのを聞いて「届いてるよー!!」と泣きながら優勝を祝った。
翌日早朝。谷村さんが大阪に帰るので見送りに行くと、タイミングが良いのか悪いのか、秋山さんから電話があった。秋山さんはすでに神室町に着いており、事務所から電話をしているらしい。
『遥ちゃんのコンサート決まったよ!チケット確保してるから、明日とか神室町来れる?当日は会えないかもしれなくてさ』
「行けます行けます!やったー!」
『ただ、二枚あるんだけど、義孝さん来ないんだっけ?』
「そうなんですよー!まだ神室町には行かないって聞かなくて」
『じゃあ谷村さんは?谷村さん明後日非番だったりしない?』
「非番じゃないですよ。今の神室町の状況では警備に回されるかもしれませんけど」
『ああー、そっかー。じゃあ、花ちゃーん。なずなちゃんとコンサート行かない?』
電話の向こうで『行きます!』と元気な声が聞こえた。コンサートは花ちゃんと二人で行くことになった。やったー!楽しみー!コンサート向かう前に喫茶店で女子会しよ!
電話を切ってニッコニコで谷村さんの方を見たら、ポフッと頭を撫でられた。
「明日来るなら、俺の家に泊まるだろ?神室町着いたら連絡して」
「ふへへ。うん!夕飯一緒に食べようね!」
「ふふ、だらしない顔」
谷村さんの見送り後、家に帰るとよし兄にも「だらしねえ顔のまま帰ってくるな」と呆れられるのだった。