snobbism(龍如)
DREAM
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お巡りさんと。
(2006年優姫19歳)
「ただいま。いやー、また杉内さんに見つかって絞られちゃったよ」
おかえりマーちゃん!と元気よくメイファが迎えてくれるこの中華店故郷には、昨日から客人が居座っている。その客人こと優姫は趙さんの作った中華料理を頬張って幸せそうだ。
「おいしー!!趙さんの作るご飯おいしーです!ハオチー!」
俺が教えた中国語で『美味しい』を連呼しては箸をすすめてニコニコと笑っている。純粋な笑顔と言葉に、メイファも趙さんもすっかり気を許しているらしく、おかわりはどうだ?とか言って二人もニコニコ笑顔だ。俺のいない間にすっかり仲良くなっていることに、少しもやりとしたりもしたが、ひとまず席に座ることにした。
正面でご飯を頬張る優姫は俺を見てようやく箸を止めた。お皿の量すごいことになってるな。
「谷村さん!お仕事お疲れ様です!今大丈夫なの?」
「ああ、今はパトロール中だから。ところで、少し調べてきたんだけど」
「!何かわかった?!」
「……君のお兄さん、死亡届が出てたよ。交通事故だったって」
「……え?」
言われた言葉を飲み込めない顔で、優姫は聞き返すが、俺も得た情報はこれくらいだ。だが、この推測は立てられる。絶望に染まりそうな彼女に、「待って」と声をかける。
「俺の推測だけど、お兄さん死んで無いと思う」
「は、へ……?」
「そもそもさ、身元がはっきりしてるのに家族の君に連絡がないのはおかしいんだよ。それに資料によれば、ダンプカーとの接触で一時身元不明の扱いから君のお兄さんだと断定されたわけだけど、君に一切の連絡はなかった。お兄さんの個人情報と君から聞いた自宅の住所と電話番号は一致してた。……明らかに、誰かが偽装した死亡届だ」
「……じゃ、じゃあ、兄貴、生きてる……?」
「うん。少なくとも俺は死んだっていうのは信じられない」
「……うん、うん!そうだよ!うん、私信じる!兄貴も、谷村さんも!……たくさん調べてくれてありがとう、谷村さん」
にへらっと、笑顔を見せる。この子は本当に、我慢をする子だ。本当は怖いだろう、泣きたいだろう。信じると言ったそれだって本当で、感情はぐちゃぐちゃになっているはずだ。それでも、彼女は笑うのだ。自分のためではなく、他の誰かのために。
むず痒い思いを払拭するために頭を無造作にかく。さて、これからどうしようか。
「そういえば聞きそびれてたんだけど、昨日はどうして襲われそうになってたの?」
「あ、昨日の?えっと、私にもよくわかんなくて。なんだっけ、親父が目をつけてたとか、金の成り続ける木、とか……よくわからないけど私のことを殺すつもりじゃなくて、どこかに連れて行きたかったみたい。怖かったし怪しかったから抵抗してたんだけど」
『親父が目をつけてた』『金の成り続ける木』?
親父というのは、錦山組の組長のことだろう。組長は名前の通り錦山という男だったが、ミレニアムタワー爆破事件で死亡し、その後は若頭だった新藤が跡を継いだはずだ。親父、はどちらを指すのだろうか。それに、彼女が金の成る木、ならぬ成り続ける木と揶揄するのはどういう意味なのか。
とにかく、錦山組は彼女を殺さず捕まえたいのだろうということは理解した。もう少し情報を集めるまでは、接触させないよう気をつけないと。
それに、一体誰が彼女のお兄さんの死亡届を偽装したのか。警察内部の人間しかそんなことはできないはずだが、何故偽装しなければならなかったのか。
悶々とそんなことを考えていたら、いつのまにか席を立って俺の隣まで来ていた優姫にいきなり手を掴まれた。驚いて顔を上げると、また楽しそうな笑顔があった。
「谷村さん、気分転換しよ!私もこれからのこと沢山考えるけど、今は谷村さんと遊びに行きたい!谷村さんのパトロールついていっていい?」
「あー……そうだね、うん。少し頭スッキリさせるのもいいかも。ただし、騒ぐのは抑え気味でね。錦山組に見つかると面倒だから」
あと俺もまた杉内さんにちくちく苦言を呈されてしまうし。
そもそもなんで部署の違う杉内さんが俺を構いにくるのだろう。全く、面倒なことだ。
それでも彼女は嬉しそうに笑って、了解と親指を立てて笑った。
「カラオケ楽しかったー!谷村さん最初気合のない合いの手だったけど、最後ノリノリで良かった!」
「ちょっとテンション上がっちゃって……なんか恥ずかしいな」
「ふへへー!イケメンの照れ顔いただきましたー!」
「はいはい」
「あっUFOキャッチャー!あのぬいぐるみかわいいなぁ!ちょっとチャレンジしよ!」
「こういうの得意なの?」
「ふふふ、結構得意なんだー!…………ほら!」
「おお、すごいな。って、ん?なんで俺に渡すの?」
「昨日助けてもらったお礼!私とお揃いの猫ぬいぐるみ!」
「ぬいぐるみかー。俺もう良い年なんだけどなぁ」
「年齢なんて関係ないない!ちゃんと持って帰って飾ってね!」
「はいはい」
「せっかくだからプリクル撮ろ!」
「プリクル?……ああ、これか。女子高生やカップルがよく撮ってるイメージあるよ。え、俺も撮るの?」
「友達だって仲間だって一緒に撮るものだし、私達も記念に!ね?!ほらほら入って入って!」
「はいはい」
パトロール(という名のサボり)をしながら、一日中優姫と神室町を歩いて回った。同業に見つかることもあったが、非行少女を連れて他の仲間も捕まえようとしてると話せばスルーしてもらえたので、ここぞとばかりに遊び場へ向かったりして、普通に遊んで回っていたらもうこんな夕暮れだ。
気分転換といいつつ、彼女に振り回されただけだった気もするが、どこか満足感があった自分に驚く。そうか、俺、今日楽しかったのか。
「今日は本当に楽しかったなぁ」
夕暮れの空を見上げながら、満足げに彼女は微笑む。楽しかった、うん。俺も楽しかった。
普段はこんなこと思わないし言わないけど、嬉しそうな顔を見ていたらちゃんと言葉にしておこうと思って口を開こうとした時。
ガツンと、金属が硬いものに当たる音が至近距離で聞こえた。
「谷村さんッ!!」
視界がボヤけている。今、頭を殴られたのか。意識した途端、頭に激痛が走り体の自由が効かない。優姫の悲痛な声が聞こえる。
「やめてよ、谷村さんに酷いことしないでよ!!」
いいから、逃げろ。早く、亜細亜街へ行くんだ。
「行くから!ついて行くから!早く救急車呼んでッ!!」
行くな。こんなのなんでもないから。
「谷村さん!ごめんね、私のせいで、本当にごめんね……ッ!今日、私、楽しかった!兄貴がいなくなってから、一番楽しい一日だった!……ありがとう、谷村さん」
やめてくれ、謝罪も礼も、いらないから。
俺なんかのために、泣かないでくれ。
「うぉっ、なんだ、目が覚めたのか」
ぼんやりとした視界の中で、隣から聞き慣れた声がする。杉内さんだ。それに消毒液の匂いもする。そうか、病院にいるのか。
「お前、二日寝てたみてーだな。まあ寝てたって言っても、たまに目が覚めて病室飛び出しては倒れてたっつー話だから、まともな病人じゃねーか」
「……?俺、なんで病院……ッ」
記憶が、ハッキリする。そうだ、あの時俺は背後から殴られたんだ。それから蹴られて殴られて、意識が朦朧とする中で、彼女の、優姫の声が聞こえて。そうだ、彼女はどうなった?
「起き上がれねーだろ。無理すんな」
「いや、でも、俺、彼女を助けに行かないと……ッ」
「……死んだぞ」
ポツリと、一言呟くように告げられる。その言葉を理解したくなくて、杉内さんを見ることができなかった。立ち上がろうとした体勢のまま、固まる俺に杉内さんは続ける。
「昨日錦山組の暴動があってな。本当に小さいもんだったが、死人が出た。首謀者だろう錦山組の幹部とその舎弟が数人と、水瓶優姫って二十歳の女だ。女を殺した後、他の奴らは自殺したんだとよ。滅茶苦茶な話だよな」
「…………」
「動機もありきたりな話で、彼女の財産が欲しかったんだと。両親の遺産や兄の死亡保険やらでかなり持ってたらしい」
馬鹿な、話だ。それが本当なら。ただ、少し心当たりがある。金の成り続ける木、という錦山組の奴らが言った言葉。世間に出る動機はそうだろうが、本当はそれだけではなかったはずだ。それに、どうして彼女を殺す必要があったのか。どうしてその後全員が自殺するのか。訳がわからない。
俺が、探りを入れたからだろうか。彼女のお兄さんを調べた事で、奴らが動きを早めたのだとしたら。彼女が殺されたのは、それは俺の……。
「この後、最後に会っただろうお前にも事情聴取がある。担当は俺じゃないが、形式的なもんだからって適当にすんなよ」
「…………」
「……谷村。真実なんて追う必要ねぇんだよ。今表に出てるものだけが真実だ。お前は、それを噛み締めて生きていきゃいいんだ」
じゃあな、と杉内さんが病室を出て行く。
力が抜けた俺はベッドにもう一度横たわり、白い天井を見上げた。
《今日は本当に楽しかったなぁ》
《ありがとう、谷村さん》
「それでも俺は、真実を、追い続ける」
あの笑顔を悲しいままにしないためにも、俺はどんな事件も真実を追い続ける。俺の父親のことも、彼女のことも。どちらも必ず、真実に辿り着いてみせる。
そういえば、杉内さんは彼女を二十歳と言っていたが何故だろう。
そう思って退院後、事件の資料を見ると、彼女と神室町を歩き回ったあの日は彼女の誕生日だったらしい。ああ、俺、何もしてやれなかったな。そう思ったら、俺はしばらく涙が止まらなかった。
(2006年優姫19歳)
「ただいま。いやー、また杉内さんに見つかって絞られちゃったよ」
おかえりマーちゃん!と元気よくメイファが迎えてくれるこの中華店故郷には、昨日から客人が居座っている。その客人こと優姫は趙さんの作った中華料理を頬張って幸せそうだ。
「おいしー!!趙さんの作るご飯おいしーです!ハオチー!」
俺が教えた中国語で『美味しい』を連呼しては箸をすすめてニコニコと笑っている。純粋な笑顔と言葉に、メイファも趙さんもすっかり気を許しているらしく、おかわりはどうだ?とか言って二人もニコニコ笑顔だ。俺のいない間にすっかり仲良くなっていることに、少しもやりとしたりもしたが、ひとまず席に座ることにした。
正面でご飯を頬張る優姫は俺を見てようやく箸を止めた。お皿の量すごいことになってるな。
「谷村さん!お仕事お疲れ様です!今大丈夫なの?」
「ああ、今はパトロール中だから。ところで、少し調べてきたんだけど」
「!何かわかった?!」
「……君のお兄さん、死亡届が出てたよ。交通事故だったって」
「……え?」
言われた言葉を飲み込めない顔で、優姫は聞き返すが、俺も得た情報はこれくらいだ。だが、この推測は立てられる。絶望に染まりそうな彼女に、「待って」と声をかける。
「俺の推測だけど、お兄さん死んで無いと思う」
「は、へ……?」
「そもそもさ、身元がはっきりしてるのに家族の君に連絡がないのはおかしいんだよ。それに資料によれば、ダンプカーとの接触で一時身元不明の扱いから君のお兄さんだと断定されたわけだけど、君に一切の連絡はなかった。お兄さんの個人情報と君から聞いた自宅の住所と電話番号は一致してた。……明らかに、誰かが偽装した死亡届だ」
「……じゃ、じゃあ、兄貴、生きてる……?」
「うん。少なくとも俺は死んだっていうのは信じられない」
「……うん、うん!そうだよ!うん、私信じる!兄貴も、谷村さんも!……たくさん調べてくれてありがとう、谷村さん」
にへらっと、笑顔を見せる。この子は本当に、我慢をする子だ。本当は怖いだろう、泣きたいだろう。信じると言ったそれだって本当で、感情はぐちゃぐちゃになっているはずだ。それでも、彼女は笑うのだ。自分のためではなく、他の誰かのために。
むず痒い思いを払拭するために頭を無造作にかく。さて、これからどうしようか。
「そういえば聞きそびれてたんだけど、昨日はどうして襲われそうになってたの?」
「あ、昨日の?えっと、私にもよくわかんなくて。なんだっけ、親父が目をつけてたとか、金の成り続ける木、とか……よくわからないけど私のことを殺すつもりじゃなくて、どこかに連れて行きたかったみたい。怖かったし怪しかったから抵抗してたんだけど」
『親父が目をつけてた』『金の成り続ける木』?
親父というのは、錦山組の組長のことだろう。組長は名前の通り錦山という男だったが、ミレニアムタワー爆破事件で死亡し、その後は若頭だった新藤が跡を継いだはずだ。親父、はどちらを指すのだろうか。それに、彼女が金の成る木、ならぬ成り続ける木と揶揄するのはどういう意味なのか。
とにかく、錦山組は彼女を殺さず捕まえたいのだろうということは理解した。もう少し情報を集めるまでは、接触させないよう気をつけないと。
それに、一体誰が彼女のお兄さんの死亡届を偽装したのか。警察内部の人間しかそんなことはできないはずだが、何故偽装しなければならなかったのか。
悶々とそんなことを考えていたら、いつのまにか席を立って俺の隣まで来ていた優姫にいきなり手を掴まれた。驚いて顔を上げると、また楽しそうな笑顔があった。
「谷村さん、気分転換しよ!私もこれからのこと沢山考えるけど、今は谷村さんと遊びに行きたい!谷村さんのパトロールついていっていい?」
「あー……そうだね、うん。少し頭スッキリさせるのもいいかも。ただし、騒ぐのは抑え気味でね。錦山組に見つかると面倒だから」
あと俺もまた杉内さんにちくちく苦言を呈されてしまうし。
そもそもなんで部署の違う杉内さんが俺を構いにくるのだろう。全く、面倒なことだ。
それでも彼女は嬉しそうに笑って、了解と親指を立てて笑った。
「カラオケ楽しかったー!谷村さん最初気合のない合いの手だったけど、最後ノリノリで良かった!」
「ちょっとテンション上がっちゃって……なんか恥ずかしいな」
「ふへへー!イケメンの照れ顔いただきましたー!」
「はいはい」
「あっUFOキャッチャー!あのぬいぐるみかわいいなぁ!ちょっとチャレンジしよ!」
「こういうの得意なの?」
「ふふふ、結構得意なんだー!…………ほら!」
「おお、すごいな。って、ん?なんで俺に渡すの?」
「昨日助けてもらったお礼!私とお揃いの猫ぬいぐるみ!」
「ぬいぐるみかー。俺もう良い年なんだけどなぁ」
「年齢なんて関係ないない!ちゃんと持って帰って飾ってね!」
「はいはい」
「せっかくだからプリクル撮ろ!」
「プリクル?……ああ、これか。女子高生やカップルがよく撮ってるイメージあるよ。え、俺も撮るの?」
「友達だって仲間だって一緒に撮るものだし、私達も記念に!ね?!ほらほら入って入って!」
「はいはい」
パトロール(という名のサボり)をしながら、一日中優姫と神室町を歩いて回った。同業に見つかることもあったが、非行少女を連れて他の仲間も捕まえようとしてると話せばスルーしてもらえたので、ここぞとばかりに遊び場へ向かったりして、普通に遊んで回っていたらもうこんな夕暮れだ。
気分転換といいつつ、彼女に振り回されただけだった気もするが、どこか満足感があった自分に驚く。そうか、俺、今日楽しかったのか。
「今日は本当に楽しかったなぁ」
夕暮れの空を見上げながら、満足げに彼女は微笑む。楽しかった、うん。俺も楽しかった。
普段はこんなこと思わないし言わないけど、嬉しそうな顔を見ていたらちゃんと言葉にしておこうと思って口を開こうとした時。
ガツンと、金属が硬いものに当たる音が至近距離で聞こえた。
「谷村さんッ!!」
視界がボヤけている。今、頭を殴られたのか。意識した途端、頭に激痛が走り体の自由が効かない。優姫の悲痛な声が聞こえる。
「やめてよ、谷村さんに酷いことしないでよ!!」
いいから、逃げろ。早く、亜細亜街へ行くんだ。
「行くから!ついて行くから!早く救急車呼んでッ!!」
行くな。こんなのなんでもないから。
「谷村さん!ごめんね、私のせいで、本当にごめんね……ッ!今日、私、楽しかった!兄貴がいなくなってから、一番楽しい一日だった!……ありがとう、谷村さん」
やめてくれ、謝罪も礼も、いらないから。
俺なんかのために、泣かないでくれ。
「うぉっ、なんだ、目が覚めたのか」
ぼんやりとした視界の中で、隣から聞き慣れた声がする。杉内さんだ。それに消毒液の匂いもする。そうか、病院にいるのか。
「お前、二日寝てたみてーだな。まあ寝てたって言っても、たまに目が覚めて病室飛び出しては倒れてたっつー話だから、まともな病人じゃねーか」
「……?俺、なんで病院……ッ」
記憶が、ハッキリする。そうだ、あの時俺は背後から殴られたんだ。それから蹴られて殴られて、意識が朦朧とする中で、彼女の、優姫の声が聞こえて。そうだ、彼女はどうなった?
「起き上がれねーだろ。無理すんな」
「いや、でも、俺、彼女を助けに行かないと……ッ」
「……死んだぞ」
ポツリと、一言呟くように告げられる。その言葉を理解したくなくて、杉内さんを見ることができなかった。立ち上がろうとした体勢のまま、固まる俺に杉内さんは続ける。
「昨日錦山組の暴動があってな。本当に小さいもんだったが、死人が出た。首謀者だろう錦山組の幹部とその舎弟が数人と、水瓶優姫って二十歳の女だ。女を殺した後、他の奴らは自殺したんだとよ。滅茶苦茶な話だよな」
「…………」
「動機もありきたりな話で、彼女の財産が欲しかったんだと。両親の遺産や兄の死亡保険やらでかなり持ってたらしい」
馬鹿な、話だ。それが本当なら。ただ、少し心当たりがある。金の成り続ける木、という錦山組の奴らが言った言葉。世間に出る動機はそうだろうが、本当はそれだけではなかったはずだ。それに、どうして彼女を殺す必要があったのか。どうしてその後全員が自殺するのか。訳がわからない。
俺が、探りを入れたからだろうか。彼女のお兄さんを調べた事で、奴らが動きを早めたのだとしたら。彼女が殺されたのは、それは俺の……。
「この後、最後に会っただろうお前にも事情聴取がある。担当は俺じゃないが、形式的なもんだからって適当にすんなよ」
「…………」
「……谷村。真実なんて追う必要ねぇんだよ。今表に出てるものだけが真実だ。お前は、それを噛み締めて生きていきゃいいんだ」
じゃあな、と杉内さんが病室を出て行く。
力が抜けた俺はベッドにもう一度横たわり、白い天井を見上げた。
《今日は本当に楽しかったなぁ》
《ありがとう、谷村さん》
「それでも俺は、真実を、追い続ける」
あの笑顔を悲しいままにしないためにも、俺はどんな事件も真実を追い続ける。俺の父親のことも、彼女のことも。どちらも必ず、真実に辿り着いてみせる。
そういえば、杉内さんは彼女を二十歳と言っていたが何故だろう。
そう思って退院後、事件の資料を見ると、彼女と神室町を歩き回ったあの日は彼女の誕生日だったらしい。ああ、俺、何もしてやれなかったな。そう思ったら、俺はしばらく涙が止まらなかった。