snobbism(龍如)
DREAM
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妹の為に生きる男の話。
(2012年……?歳)
「どうして私を助けたの」
どうして?そんなの決まってる。
「貴女が死ぬと、悲しむ奴がいる」
たった一度会釈しただけだろうと、あいつは自分のせいかもしれないと思い込む。全てを守る事はできないが、命を守る事だけなら、出来るかもしれない。いや、しなければ。もうあんな顔は、させたくない。させないと決めたんだ。
五年前、谷村正義が錦山組に殴られた時の、あいつの顔が忘れられない。
涙で溢れた目を見開き、錦山組の奴らに縋りながら懇願していた。ついて行くから谷村を助けてくれと、悲痛な声で叫んでいたあの姿が、今も脳裏に焼きついて離れない。
あんな顔、させるつもりはなかった。
警察官を側につけておけば、襲われるリスクも下がる。兄だと名乗ってあいつを引き取る事も出来る。何かあったら、谷村なら身寄りがないから、消せると、そんな打算で引き合わせただけだったのに。
だから、守らなければ。
あいつが悲しまないように。あいつが、笑っていられるように。
「貴女にはこれから沖縄へ避難してもらう。事が収束すれば、表に出ても構わないが、今は誰とも連絡を取らず黙って沖縄で過ごしていてほしい」
「助けてもらったことには礼を言うけど、どうしてそうしなければいけないのか教えてもらえるかしら」
「先程同様、元旦那の居場所を知る為にまた襲われるからだ。何度も助けられるほどこちらも手が空いていない」
「……やっぱりわからないわ。どうしてそこまでして守ってくれるの?私が死ぬと悲しむ人って誰なの?」
「……去年のクリスマス、貴女に会釈をした女だ」
「去年の……?会釈……あ、もしかして、堀江がクリスマスのデザートをもらったって浮かれてた時の……あの女の子?」
芸能界にいる事もあってか、記憶力は良いようだ。その質問には答えず黙っていると、「そう、あの子が……」と頷いている。
「私の為って理由じゃないのが、真実味があって良いわね。わかったわ、貴方の理由は理解した。襲われる覚悟はあったけど、貴方の大切な子が悲しむのなら、しばらくの間は大人しくしていてもいいわ。貸し借りはチャラにしておきたい性分なの」
「話が早くて助かる。……ここからは俺の部下が付き添うから、詳しい話はそいつから聞いてくれ。それじゃあ」
車から降りると、芸能事務所の社長は待ってと俺を引き止めた。
「なんだ」
「いつかその女の子に貴方の話をしたいのだけど、いいかしら」
「構わないが、なぜだ」
「何でかしらね。話してあげたら喜ぶんじゃないかって思って。その女の子も、貴方も」
「俺は喜ばないが」
「そう?でも、自分の話を聞いて喜ぶ女の子を見たら、貴方も嬉しいでしょう?」
「……」
「貴方はきっと、その子の笑顔を守ろうとしているんじゃないかって、そう思ったのよ」
女を乗せて、車は空港へ向かって走って行く。それを見送り、タクシーを拾った俺は駅まで行くよう運転手へ告げる。
座席に背を預けて、本当に守れているのだろうかと何故か不安に思った。
その不安は的中してしまった。
東京の神室町での一仕事を終えた後、部下からメッセージが届く。
今妹が襲われた。頭を殴られた。どうする?と。
怪我の様子を聞き、致命傷ではない事と、直前まで電話を繋げていた峯義孝、もとい兄の義孝が殴られた現場である事務所へ急ぎ向かっている事を確認して、妹の写真を一枚撮ってその場を離れるよう指示をする。
撮った写真は俺の携帯へ送られた。血が出ている。怪我を、させてしまった。
あいつは、どうしてこんな泣きそうな顔で倒れているのだろう。頭を殴られた。もしかして、五年前を思い出したのだろうか。谷村の事を思い出しているのだろうか。
……なら、俺に出来る事は。
写真を現像して、付箋にメッセージを書く。それから白い封筒へ入れて、ホームレスに扮して亜細亜街の中華料理店の店主へ谷村に渡すように告げ封筒を預ける。不審に思いながらも、谷村に渡す姿を確認。その後路地裏に潜った谷村が封筒を見て凍りつき、何処かに電話をかけた後駆け出すのを見届けて、俺はいつもの非日常へ戻っていく。
頼む谷村。あいつの笑顔を、俺の代わりに守ってくれ。
(2012年……?歳)
「どうして私を助けたの」
どうして?そんなの決まってる。
「貴女が死ぬと、悲しむ奴がいる」
たった一度会釈しただけだろうと、あいつは自分のせいかもしれないと思い込む。全てを守る事はできないが、命を守る事だけなら、出来るかもしれない。いや、しなければ。もうあんな顔は、させたくない。させないと決めたんだ。
五年前、谷村正義が錦山組に殴られた時の、あいつの顔が忘れられない。
涙で溢れた目を見開き、錦山組の奴らに縋りながら懇願していた。ついて行くから谷村を助けてくれと、悲痛な声で叫んでいたあの姿が、今も脳裏に焼きついて離れない。
あんな顔、させるつもりはなかった。
警察官を側につけておけば、襲われるリスクも下がる。兄だと名乗ってあいつを引き取る事も出来る。何かあったら、谷村なら身寄りがないから、消せると、そんな打算で引き合わせただけだったのに。
だから、守らなければ。
あいつが悲しまないように。あいつが、笑っていられるように。
「貴女にはこれから沖縄へ避難してもらう。事が収束すれば、表に出ても構わないが、今は誰とも連絡を取らず黙って沖縄で過ごしていてほしい」
「助けてもらったことには礼を言うけど、どうしてそうしなければいけないのか教えてもらえるかしら」
「先程同様、元旦那の居場所を知る為にまた襲われるからだ。何度も助けられるほどこちらも手が空いていない」
「……やっぱりわからないわ。どうしてそこまでして守ってくれるの?私が死ぬと悲しむ人って誰なの?」
「……去年のクリスマス、貴女に会釈をした女だ」
「去年の……?会釈……あ、もしかして、堀江がクリスマスのデザートをもらったって浮かれてた時の……あの女の子?」
芸能界にいる事もあってか、記憶力は良いようだ。その質問には答えず黙っていると、「そう、あの子が……」と頷いている。
「私の為って理由じゃないのが、真実味があって良いわね。わかったわ、貴方の理由は理解した。襲われる覚悟はあったけど、貴方の大切な子が悲しむのなら、しばらくの間は大人しくしていてもいいわ。貸し借りはチャラにしておきたい性分なの」
「話が早くて助かる。……ここからは俺の部下が付き添うから、詳しい話はそいつから聞いてくれ。それじゃあ」
車から降りると、芸能事務所の社長は待ってと俺を引き止めた。
「なんだ」
「いつかその女の子に貴方の話をしたいのだけど、いいかしら」
「構わないが、なぜだ」
「何でかしらね。話してあげたら喜ぶんじゃないかって思って。その女の子も、貴方も」
「俺は喜ばないが」
「そう?でも、自分の話を聞いて喜ぶ女の子を見たら、貴方も嬉しいでしょう?」
「……」
「貴方はきっと、その子の笑顔を守ろうとしているんじゃないかって、そう思ったのよ」
女を乗せて、車は空港へ向かって走って行く。それを見送り、タクシーを拾った俺は駅まで行くよう運転手へ告げる。
座席に背を預けて、本当に守れているのだろうかと何故か不安に思った。
その不安は的中してしまった。
東京の神室町での一仕事を終えた後、部下からメッセージが届く。
今妹が襲われた。頭を殴られた。どうする?と。
怪我の様子を聞き、致命傷ではない事と、直前まで電話を繋げていた峯義孝、もとい兄の義孝が殴られた現場である事務所へ急ぎ向かっている事を確認して、妹の写真を一枚撮ってその場を離れるよう指示をする。
撮った写真は俺の携帯へ送られた。血が出ている。怪我を、させてしまった。
あいつは、どうしてこんな泣きそうな顔で倒れているのだろう。頭を殴られた。もしかして、五年前を思い出したのだろうか。谷村の事を思い出しているのだろうか。
……なら、俺に出来る事は。
写真を現像して、付箋にメッセージを書く。それから白い封筒へ入れて、ホームレスに扮して亜細亜街の中華料理店の店主へ谷村に渡すように告げ封筒を預ける。不審に思いながらも、谷村に渡す姿を確認。その後路地裏に潜った谷村が封筒を見て凍りつき、何処かに電話をかけた後駆け出すのを見届けて、俺はいつもの非日常へ戻っていく。
頼む谷村。あいつの笑顔を、俺の代わりに守ってくれ。