snobbism(龍如)
DREAM
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兄妹生活。〜新生活編〜
(2012年なずな25歳)
「なずなちゃんさ、うちに就職しない?」
「へっ?!」
あれからスカイファイナンス蒼天堀支店は、秋山さんの気まぐれで続いていた。今日は蒼天堀に来ていると連絡を受けたので、片付けを手伝うと言って事務所までお邪魔して、のんびりお茶を飲んでいた時に突然そう言われて変な声が出てしまった。
「しゅ、就職?」
「そう。今やってる派遣の仕事って、一箇所に留まらないようにするための働き方でしょ?それなら、うちで働かない?俺なら事情を知ってるし、巻き込まれても何とかできるし」
「で、でも……」
「俺もさ、信頼できる人しか雇いたくないんだよ。ほら、お金って怖いじゃない?」
「……はい」
「神室町は花ちゃんがいるけど、蒼天堀支店は空だからなー。なずなちゃんがいてくれるとすっごく助かるんだけどなー」
うぐぅ。そう言われると、とても迷ってしまう。
たしかに誰かと距離を置きながら働くのは、正直つらい。けど、私が生きていられるのは、唯一の肉親である兄貴の犠牲があってこそだ。私にはこんなにも沢山の理解者がいて、ここまで沢山自由に生きてきた。なのにいよいよ仕事まで自由にさせてもらうなんて。兄貴は、今も一人でいるかもしれないのに。
ごめんなさい、と断ろうと思って口を開きかけた時、事務所の扉がノックされて遮られてしまった。秋山さんが「はーい」と間伸びした返事をしながら扉へ向かっていく。
「あれ?誰もいないな……ん?」
「どうしました?」
「なんか、花束がある。……ああ、なるほど。これ、なずなちゃん宛てだね」
「え?!私?!」
どうやら事務所の前に花束が置いてあったらしく、一通り確認した後、秋山さんからそれを手渡された。
いきなり私宛の花束なんて怖すぎるんだが、とビクビクしながら受け取る。あ、良い匂いだ。
カサ、と紙の擦れる音がした。付箋だ。
《就職おめでとう。初任給は多めにもらっておけ》
いつか見た綺麗な字で、そんなことが書いてあった。
あの時とは違って、私はおかしくて笑ってしまった。
「ほんっとどこから見てんのかな!直接言いにこいよバカ兄貴!」
「あ、でもこれってつまり、俺は信用されてるってことでいいのかな?ダメだったらダメって付箋貼られてそうだもんね」
「いや秋山さんは信用に値する人ですよ!兄貴がダメって言ってたら怒ってますから!」
「じゃ、就職する意思もあるわけだし、斎藤なずなちゃん、スカイファイナンスに入社ってことで!おめでとう!あ、花ちゃんに人件費とかのやりくり相談しなきゃ」
「えっ?あっ?ええっ?!」
もしもし花ちゃん?と早速電話をかけ始めてしまった秋山さんに、私はワタワタと身振り手振りで抗議するが、ウインクで返されてしまった。イケメンの成せる技である。
力が抜けてしまって、ソファに座り直して机に置いた花束を眺める。わざわざ買ってきて、付箋にメッセージを書いて持ってきてくれたのかな。それなら直接言ってくれればいいのに。兄貴はやっぱり馬鹿だ。
もうこうなったら、思わず兄貴が「それはやりすぎだバカ」と出てきて言ってくるくらい、のびのびと生きてやろうかな。なんてことを、考えてたらまたおかしくって笑ってしまった。慌てる兄貴、見てみたいかもなあ。
「お、良い顔じゃない、なずなちゃん」
電話を終えた秋山さんがそう言って笑うので、泣き虫は卒業したんです!と私も笑った。
「というわけで、スカイファイナンスに入社しましたー!そして就職祝いをするので、秋山さんにも来てもらいましたー!イェーイ!あいたぁッ!!」
「早速報連相が出来てねえじゃねえか」
夕方、秋山さんを連れて家へ帰ると、よし兄にきつめのデコピンを食らいその場で悶える羽目になった。その後ろで秋山さんが心配そうに見ていたが、よし兄の姿を見ていつぞやの谷村さんと同じように驚いた顔をした。
「たしか、白峯会の峯会長?ですよね?え、なずなちゃんの、えーと、今のお兄さんなんですか?」
「思ったより知られてるな……ええ、そうです。貴方は神室町の駆け込み寺の社長さんですね。お噂はかねがね」
「あ、俺の方も知られてるんですね」
「当時は東城会の金庫番を任されてましたから、金の匂いのする関係はおおよそ把握してましてね。ただ、スカイファイナンスは金の出どころがわからない上に交渉は面倒そうなので、触れずにいました」
「ああー……なるほどー……すごい人がお兄さんなんだね、なずなちゃん」
秋山さんは感心したように頷いている。よし兄はデコピンしてスッキリしたのか、私が買ってきた買い物袋の中身を見て、鍋か?と呑気な事を言っていた。そうだよ!鍋だよ!
二人で使うには大きめのテーブルだが、鍋パをするにはちょうどいい大きさだ。具材を並べて、必要分をぐつぐつ煮込めば良い香りが漂う。
「あ、義孝さんって俺の2個上なんですね。結構年齢近いんだ」
「秋山さんも苦労されてたんですね。元手100万から億に膨らませてそれを維持してるんですから、相当な手腕をお持ちで。ちなみに今も株は扱ってますか?」
「ええ、手慰み程度ですが。義孝さんの収入は株がメインなんですよね?いやあ、義孝さんもそれで収入を安定させてるんですから、さすがですよ。あ、株なんですが、今どこおススメです?」
なんだか難しそうな話になってきたぞお。よし兄と秋山さんは何やら話が合うらしく、和気あいあいとお仕事の話をして鍋をつついている。私はというと、鍋奉行をしつつ二人の話に耳を傾けるが、さっぱり分からず首を傾げるばかりだ。
そういえば、と思い出す。よし兄は幼少期、すごく貧乏だったと言っていた。成り上がって富を得るために、大人になってからはベンチャー企業の会社を起業した。だが順風満帆に進んでいた矢先、目先の金に目が眩んだ部下達に切り捨てられたという。よし兄も、金は嫌いだと自嘲していた。
「私達みんな、お金に苦労させられてるね」
思わずポロリとそんな事を口にしたら、よし兄と秋山さんが話を止めて私の方を向いてしまった。
「あ、えっとー。なんか、縁があるなあって。へ、へへ……な、鍋食べましょうか……」
「そうだね。苦労したし、なかなかツラい事もあったけど、それだけじゃない。良い出会いもあったじゃない」
「……お前が谷村や桐生さん達に会えたように、俺は大吾さんに会えた」
「で、俺も桐生さん達に、なずなちゃんに会えた。生きていれば、悪い事もあるけど、それ以上に良い事だってあるんだよ。だから、お互い生きててよかったね、なずなちゃん。ほら、美味しい鍋も食べれるし!」
生きてて、よかった。
「……はい!鍋美味しいし、生きててよかったです!よっしゃー!どんどん煮込んじゃうぞー!よし兄次何入れる?」
「肉」
「ちょっとお高いお肉入りまーす!」
「ふふっ、いいねえ!んじゃ俺も、ちょっと良いお酒出しちゃおう!」
その後、鍋パやりました!と谷村さんに三人で写真を撮って送ったら、すぐに電話がかかってきて「第二回をする時は俺も呼んで」と少し拗ねた声で言われてしまい、可愛くてニヤニヤした。
ちなみにそんな私達の電話の様子を秋山さんが微笑ましく見ていて、よし兄は秋山さんの持ってきたお酒を気に入り満足そうにしていたのは電話を切った後に知るのだった。
(2012年なずな25歳)
「なずなちゃんさ、うちに就職しない?」
「へっ?!」
あれからスカイファイナンス蒼天堀支店は、秋山さんの気まぐれで続いていた。今日は蒼天堀に来ていると連絡を受けたので、片付けを手伝うと言って事務所までお邪魔して、のんびりお茶を飲んでいた時に突然そう言われて変な声が出てしまった。
「しゅ、就職?」
「そう。今やってる派遣の仕事って、一箇所に留まらないようにするための働き方でしょ?それなら、うちで働かない?俺なら事情を知ってるし、巻き込まれても何とかできるし」
「で、でも……」
「俺もさ、信頼できる人しか雇いたくないんだよ。ほら、お金って怖いじゃない?」
「……はい」
「神室町は花ちゃんがいるけど、蒼天堀支店は空だからなー。なずなちゃんがいてくれるとすっごく助かるんだけどなー」
うぐぅ。そう言われると、とても迷ってしまう。
たしかに誰かと距離を置きながら働くのは、正直つらい。けど、私が生きていられるのは、唯一の肉親である兄貴の犠牲があってこそだ。私にはこんなにも沢山の理解者がいて、ここまで沢山自由に生きてきた。なのにいよいよ仕事まで自由にさせてもらうなんて。兄貴は、今も一人でいるかもしれないのに。
ごめんなさい、と断ろうと思って口を開きかけた時、事務所の扉がノックされて遮られてしまった。秋山さんが「はーい」と間伸びした返事をしながら扉へ向かっていく。
「あれ?誰もいないな……ん?」
「どうしました?」
「なんか、花束がある。……ああ、なるほど。これ、なずなちゃん宛てだね」
「え?!私?!」
どうやら事務所の前に花束が置いてあったらしく、一通り確認した後、秋山さんからそれを手渡された。
いきなり私宛の花束なんて怖すぎるんだが、とビクビクしながら受け取る。あ、良い匂いだ。
カサ、と紙の擦れる音がした。付箋だ。
《就職おめでとう。初任給は多めにもらっておけ》
いつか見た綺麗な字で、そんなことが書いてあった。
あの時とは違って、私はおかしくて笑ってしまった。
「ほんっとどこから見てんのかな!直接言いにこいよバカ兄貴!」
「あ、でもこれってつまり、俺は信用されてるってことでいいのかな?ダメだったらダメって付箋貼られてそうだもんね」
「いや秋山さんは信用に値する人ですよ!兄貴がダメって言ってたら怒ってますから!」
「じゃ、就職する意思もあるわけだし、斎藤なずなちゃん、スカイファイナンスに入社ってことで!おめでとう!あ、花ちゃんに人件費とかのやりくり相談しなきゃ」
「えっ?あっ?ええっ?!」
もしもし花ちゃん?と早速電話をかけ始めてしまった秋山さんに、私はワタワタと身振り手振りで抗議するが、ウインクで返されてしまった。イケメンの成せる技である。
力が抜けてしまって、ソファに座り直して机に置いた花束を眺める。わざわざ買ってきて、付箋にメッセージを書いて持ってきてくれたのかな。それなら直接言ってくれればいいのに。兄貴はやっぱり馬鹿だ。
もうこうなったら、思わず兄貴が「それはやりすぎだバカ」と出てきて言ってくるくらい、のびのびと生きてやろうかな。なんてことを、考えてたらまたおかしくって笑ってしまった。慌てる兄貴、見てみたいかもなあ。
「お、良い顔じゃない、なずなちゃん」
電話を終えた秋山さんがそう言って笑うので、泣き虫は卒業したんです!と私も笑った。
「というわけで、スカイファイナンスに入社しましたー!そして就職祝いをするので、秋山さんにも来てもらいましたー!イェーイ!あいたぁッ!!」
「早速報連相が出来てねえじゃねえか」
夕方、秋山さんを連れて家へ帰ると、よし兄にきつめのデコピンを食らいその場で悶える羽目になった。その後ろで秋山さんが心配そうに見ていたが、よし兄の姿を見ていつぞやの谷村さんと同じように驚いた顔をした。
「たしか、白峯会の峯会長?ですよね?え、なずなちゃんの、えーと、今のお兄さんなんですか?」
「思ったより知られてるな……ええ、そうです。貴方は神室町の駆け込み寺の社長さんですね。お噂はかねがね」
「あ、俺の方も知られてるんですね」
「当時は東城会の金庫番を任されてましたから、金の匂いのする関係はおおよそ把握してましてね。ただ、スカイファイナンスは金の出どころがわからない上に交渉は面倒そうなので、触れずにいました」
「ああー……なるほどー……すごい人がお兄さんなんだね、なずなちゃん」
秋山さんは感心したように頷いている。よし兄はデコピンしてスッキリしたのか、私が買ってきた買い物袋の中身を見て、鍋か?と呑気な事を言っていた。そうだよ!鍋だよ!
二人で使うには大きめのテーブルだが、鍋パをするにはちょうどいい大きさだ。具材を並べて、必要分をぐつぐつ煮込めば良い香りが漂う。
「あ、義孝さんって俺の2個上なんですね。結構年齢近いんだ」
「秋山さんも苦労されてたんですね。元手100万から億に膨らませてそれを維持してるんですから、相当な手腕をお持ちで。ちなみに今も株は扱ってますか?」
「ええ、手慰み程度ですが。義孝さんの収入は株がメインなんですよね?いやあ、義孝さんもそれで収入を安定させてるんですから、さすがですよ。あ、株なんですが、今どこおススメです?」
なんだか難しそうな話になってきたぞお。よし兄と秋山さんは何やら話が合うらしく、和気あいあいとお仕事の話をして鍋をつついている。私はというと、鍋奉行をしつつ二人の話に耳を傾けるが、さっぱり分からず首を傾げるばかりだ。
そういえば、と思い出す。よし兄は幼少期、すごく貧乏だったと言っていた。成り上がって富を得るために、大人になってからはベンチャー企業の会社を起業した。だが順風満帆に進んでいた矢先、目先の金に目が眩んだ部下達に切り捨てられたという。よし兄も、金は嫌いだと自嘲していた。
「私達みんな、お金に苦労させられてるね」
思わずポロリとそんな事を口にしたら、よし兄と秋山さんが話を止めて私の方を向いてしまった。
「あ、えっとー。なんか、縁があるなあって。へ、へへ……な、鍋食べましょうか……」
「そうだね。苦労したし、なかなかツラい事もあったけど、それだけじゃない。良い出会いもあったじゃない」
「……お前が谷村や桐生さん達に会えたように、俺は大吾さんに会えた」
「で、俺も桐生さん達に、なずなちゃんに会えた。生きていれば、悪い事もあるけど、それ以上に良い事だってあるんだよ。だから、お互い生きててよかったね、なずなちゃん。ほら、美味しい鍋も食べれるし!」
生きてて、よかった。
「……はい!鍋美味しいし、生きててよかったです!よっしゃー!どんどん煮込んじゃうぞー!よし兄次何入れる?」
「肉」
「ちょっとお高いお肉入りまーす!」
「ふふっ、いいねえ!んじゃ俺も、ちょっと良いお酒出しちゃおう!」
その後、鍋パやりました!と谷村さんに三人で写真を撮って送ったら、すぐに電話がかかってきて「第二回をする時は俺も呼んで」と少し拗ねた声で言われてしまい、可愛くてニヤニヤした。
ちなみにそんな私達の電話の様子を秋山さんが微笑ましく見ていて、よし兄は秋山さんの持ってきたお酒を気に入り満足そうにしていたのは電話を切った後に知るのだった。