snobbism(龍如)
DREAM
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兄妹生活。〜沖縄旅行編〜
(2011年なずな25歳)
「桐生さーん!!」
「よく来たな、なずな。長旅で疲れただろ」
「よゆーよゆー!いやあ、ここがアサガオかー!海も近くて良いね!」
琉球街から駅を使い、ようやく来る事ができた養護施設、アサガオ。大きな施設で、庭も広くて道を挟んだ先は綺麗な沖縄の海が広がっていた。水着を持ってくればよかったかと少し思う。
事前に連絡をしていたので、桐生さんも驚く事なく歓迎してくれた。しかし。
「あの、子供達が家からこちらを覗いてて出てきてくれないんですが」
「ああ……まあ、人見知りだろうな。お前が可愛いから照れてるのかもな」
「なんやの桐生ちゃん!照れるわー!」
「最近物真似がゴロ美寄りなんだよな……まあとりあえず入ってくれ。冷たい飲み物を用意してあるんだ」
「やったー!お邪魔しまーす!」
アサガオの子供達は今もなお警戒してるのか、距離を取りつつこちらを伺っているが、建物の中へ入らせてもらった。子供達の部屋と桐生さんの部屋が見えて、桐生さんは本当に子供達に囲まれて生活してるんだなぁと思うと少しほっこりした。
みんなで食卓を囲むであろう広間へ案内されて座って待っていると、どうぞ、と可愛らしい声と共に冷たいジュースが目の前に置かれた。ここまで暑かったから冷たい飲み物助かるー!とそれを手に取りつつ、お礼を言おうと顔を向けると、美少女がいました。
「おじさんのお友達、なんですよね?私、澤村遥って言います」
「あっ!あなたが遥ちゃん!桐生さんから話聞いてるよ!!私の命の恩人!!」
「えっ?」
「何年も前の話なんだけどね。桐生さんに助けてもらったんだけど、その日桐生さんが来てくれたのは本当に偶然で、遥ちゃんのためにプレゼントしたくて神室町に来てたから、助けてもらえたっていう経緯があってね。それに、桐生さんが大切にしてる娘さん、会いたかったんだー!私、斎藤なずなです!よろしくね、遥ちゃん!」
「そうだったんですか?ふふ、おじさん、また人助けしてたんですね。こちらこそ、よろしくお願いします、なずなさん」
ふへへー!遥ちゃんとよろしくしちゃったー!
メアドも交換しよーっと携帯を取り出して連絡先を聞いていたら、お菓子を持ってきた桐生さんが奥から出てきた。
「仲良くなるのが早いな。これ、サーターアンダギーだが食べるか?」
「食べる!!沖縄といったらこれ!!ありがとー!!」
「ふふ、なずなさんはおじさんが怖くないんですね」
「そういえばこいつは初対面の時から怖がってはいなかったな。なんだったら『もしかしてヤクザ?』と初めて疑問にもたれて俺が驚いたくらいだ」
「えっ、それはすごい。だって、おじさんこんなにヤクザっぽい顔してるのに!」
「は、遥……!」
「遥ちゃんにたじたじな桐生さん面白すぎる。これは写メ撮って真島さんに送らなきゃ」
「撮るな撮るな!兄さんにも送るな!」
焦る桐生さんを見て遥ちゃんと二人で笑っていたら、ずっと様子を伺っていた子供達が急になだれ込んできた。なんだなんだ?と子供達を見ると、興味津々な表情で私の周りへ集まってきたではないか。
「お姉さん!芸能事務所の人なんじゃないの?!」
「遥お姉ちゃんとおじさんの説得に来た人じゃなくて?!」
「おじさんの友達ってほんとか?!」
次々とそんなことを言われて、何の話だろうと首を傾げる。すると遥ちゃんが「こら!お客様に失礼でしょ!」とお姉さんらしく叱って、みんなを大人しくさせていた。桐生さんを見ると少し困った顔をしてるので、今このアサガオで起きている問題のようだ。ひとまず、誤解は解いておかなくては。
「えっとね、私は普通のフリーターで、桐生さんの友達でね。みんなが不安がってるような話をするために来たわけじゃないから安心して?」
相変わらず子供達は驚いた顔をしている。その中のとくに大人っぽい女の子が、恥ずかしそうにごめんなさいと謝ってきた。
「あの、お姉さん、すごく可愛いから、芸能人だと思ったんです……」
「えっ?!それほんとに言ってる?!桐生さん?!」
「だから出迎えた時に言っただろ。可愛いって。そういえば前にあった時より可愛くなったな」
「ぎょわああ?!ほ、ほんとに?!冗談ではなく?!その、私、可愛く見える?!」
「お、おお。なんだ、可愛らしさを意識してるのか?」
「そ、そりゃあね?!服とか化粧とか、髪型はあんま弄ってないけど、最近とくに気にしてて……ほら、た、谷村さんが、イケメンだから、隣にいても恥ずかしくないように、とか……」
そう、おしゃれを意識し始めたのは、何を隠そう谷村さんの為だ。いや、どちらかというと自分の為かもしれないが、谷村さんを思っていることには違いない。
谷村さんと旅行をすることが増えて、痛感した事がある。やはりというか、谷村さんはモテる。何故ならイケメンだから。私が少しトイレに行っただけで、戻ると逆ナンされていたりする。この間は社会人の合コンのメンバーに誘われていた。なぜだ。
そこで思ったのだ。私、こんなカッコいい人の隣にいて恥ずかしくないだろうか、と。つり合っているだろうか、と。
今回の沖縄旅行、本当は谷村さんも来る予定だったが、仕事が立て込んでいて休みが取れなかったので、よし兄と二人でやってきた。
ちなみによし兄が谷村さんとの電話で「なずなのやつ、せっかく水着用意してたんだがなぁ」と言った瞬間電話が切られて、私の方に着信が入って全力の謝罪をされたのは少し笑ってしまった。ほんと、仕事お疲れ様です谷村さん。
しかし、谷村さんと来られなくて残念だった気持ちも、桐生さんやみんなが私の努力を褒めてくれたので、少し浮上した。
「へへ、良かった。少しは可愛く見えてるなら、胸張ってもいっかなって……へへ」
「お前……今の谷村に聞かせてやりてえな」
「いや恥ずかしいから言わないけど?!あっこれ谷村さんには内緒だからね?!」
「なずなさんはとても可愛いですよ!本当です!」
「ええー?!遥ちゃんに言われるとめっちゃ嬉しいー!!もうお姉さんがなんでも奢ってあげる!!」
「「えっマジで?!」」
「こら!太一!宏次!」
それから警戒心もなくなった子供達から都会の話や色んな事を聞かれて答えていたらいつの間にか打ち解けて、仲良くなる事ができた。最後はみんなで琉球街へ行きご飯を食べてからまたアサガオへ戻ったが、遥ちゃんがちょいちょいと手招きをして夕暮れの砂浜へ二人で向かった。
おそらく、昼間の芸能事務所とかの話なのだろうな、と思いつつ。
「遥ちゃん、どうしたの?」
「あの、なずなさんは、夢ってありますか?」
海を眺めるように砂浜に座ると、遥ちゃんはそう聞いてくる。
夢、夢かあ。将来の夢、というものならあったかもしれない。けど、あったかもしれなかったそれを追うことはなく、私はたった一人の家族を探す旅に出た。そして、いろんな事があり、神室町で人生が終わり、今は第二の人生を歩んでいるところだ。将来なりたいもの、というのはもうないけれど。
「あるよ。……昼間に話した谷村さん、私の恋人なんだけどね。今は訳あって遠距離恋愛してるんだ」
「そうなんですかっ?」
「うん。けど、いつか一緒に暮らそうって。一緒に生きようって、言ってくれてね。……だから、私の今の夢は、大切な人と一緒に生きること、かな。へへ、夢というかこれは惚気だよね」
恥ずかしいなあ、と頭をかく。けど遥ちゃんには何か思うきっかけになったのか、少し考え込んだ後、うん、と頷いていた。
「なずなさんの気持ち、わかります。大切な人と、一緒に生きたい……私も、同じです」
「うん、そっか」
「ありがとうございます、なずなさん」
少し沈黙があって、私の方から聞いてみることにした。
「遥ちゃん。私がアドバイスできることなんてないけど、あのね、芸能事務所のこと……なんとなくだけど、多分スカウトされてるんだよね?」
「は、はい。……私、悩んでるんです。アイドルになりたいかどうかよりも、私がアイドルになればアサガオに援助が入って生活が苦しくなくなる……けど、アイドルは私がしたいこと、夢なのかなあって」
「悩んでるなら、それは遥ちゃんが少しはアイドルに興味があるからじゃないかなあ?」
「えっ?」
「お金の為にアイドルになるのを戸惑うってことは、アイドルという職業に誠意を持ってるからだと思うな。だから、やってみてもいいんじゃない?人生何があるかわかんないんだから、自分のやりたいこと、興味のあること全部やっちゃお!桐生さんもきっと、遥ちゃんが自由に生きる事を望んでくれてるよ」
「……はい!私、考えてみます。自分が納得いくまで、考えてから答えを出します」
「すまなかったな、なずな」
遥ちゃんが洗濯当番だから、と急いでアサガオへ戻っていった後、入れ違いに桐生さんも砂浜へやってきた。
困ったような顔で笑うので、へへ、と笑い返してやる。
「桐生さんが困ったら助けるって言ったじゃん?こんなの全然お返しになってないけど、どんどん頼ってくれていいからね!」
「そんなつもりで呼んだんじゃなかったんだが……最近悩んでいた遥の表情が、少し明るくなっていた。お前のおかげだ。ありがとな」
「桐生さんが私に言ってくれてことを、そのまま遥ちゃんに伝えただけだよ。桐生さんもさ、人生楽しく生きなきゃ損だよ?へへ、一回人生終わった先輩としてのアドバイスだよ」
「笑えねえよ……けど、覚えておく。良かったらまた遊びに来てくれ。子供達も喜ぶからな」
「くるくる!今度は谷村さん連れてくるね!」
「フ、新婚旅行か?」
「んもー!!桐生ちゃんたら!!」
「もうゴロ美の物真似しかしなくなったじゃねえか」
一方その頃、沖縄のホテルではよし兄が谷村さんから鬼電されていた事を後から知るのだった。
「なずなは今は桐生さんのところだ。戻ったら教えるからそっちに電話しろ。わかった、わかったから俺に愚痴るのをやめろ。水着は着ないって言ってたから安心しろっつっただろうが。お前はさっさと仕事終わらせてなずなと旅行行け。お前の背後で上司の怒鳴り声が止まねえから仕事に戻れ、谷村……」
(2011年なずな25歳)
「桐生さーん!!」
「よく来たな、なずな。長旅で疲れただろ」
「よゆーよゆー!いやあ、ここがアサガオかー!海も近くて良いね!」
琉球街から駅を使い、ようやく来る事ができた養護施設、アサガオ。大きな施設で、庭も広くて道を挟んだ先は綺麗な沖縄の海が広がっていた。水着を持ってくればよかったかと少し思う。
事前に連絡をしていたので、桐生さんも驚く事なく歓迎してくれた。しかし。
「あの、子供達が家からこちらを覗いてて出てきてくれないんですが」
「ああ……まあ、人見知りだろうな。お前が可愛いから照れてるのかもな」
「なんやの桐生ちゃん!照れるわー!」
「最近物真似がゴロ美寄りなんだよな……まあとりあえず入ってくれ。冷たい飲み物を用意してあるんだ」
「やったー!お邪魔しまーす!」
アサガオの子供達は今もなお警戒してるのか、距離を取りつつこちらを伺っているが、建物の中へ入らせてもらった。子供達の部屋と桐生さんの部屋が見えて、桐生さんは本当に子供達に囲まれて生活してるんだなぁと思うと少しほっこりした。
みんなで食卓を囲むであろう広間へ案内されて座って待っていると、どうぞ、と可愛らしい声と共に冷たいジュースが目の前に置かれた。ここまで暑かったから冷たい飲み物助かるー!とそれを手に取りつつ、お礼を言おうと顔を向けると、美少女がいました。
「おじさんのお友達、なんですよね?私、澤村遥って言います」
「あっ!あなたが遥ちゃん!桐生さんから話聞いてるよ!!私の命の恩人!!」
「えっ?」
「何年も前の話なんだけどね。桐生さんに助けてもらったんだけど、その日桐生さんが来てくれたのは本当に偶然で、遥ちゃんのためにプレゼントしたくて神室町に来てたから、助けてもらえたっていう経緯があってね。それに、桐生さんが大切にしてる娘さん、会いたかったんだー!私、斎藤なずなです!よろしくね、遥ちゃん!」
「そうだったんですか?ふふ、おじさん、また人助けしてたんですね。こちらこそ、よろしくお願いします、なずなさん」
ふへへー!遥ちゃんとよろしくしちゃったー!
メアドも交換しよーっと携帯を取り出して連絡先を聞いていたら、お菓子を持ってきた桐生さんが奥から出てきた。
「仲良くなるのが早いな。これ、サーターアンダギーだが食べるか?」
「食べる!!沖縄といったらこれ!!ありがとー!!」
「ふふ、なずなさんはおじさんが怖くないんですね」
「そういえばこいつは初対面の時から怖がってはいなかったな。なんだったら『もしかしてヤクザ?』と初めて疑問にもたれて俺が驚いたくらいだ」
「えっ、それはすごい。だって、おじさんこんなにヤクザっぽい顔してるのに!」
「は、遥……!」
「遥ちゃんにたじたじな桐生さん面白すぎる。これは写メ撮って真島さんに送らなきゃ」
「撮るな撮るな!兄さんにも送るな!」
焦る桐生さんを見て遥ちゃんと二人で笑っていたら、ずっと様子を伺っていた子供達が急になだれ込んできた。なんだなんだ?と子供達を見ると、興味津々な表情で私の周りへ集まってきたではないか。
「お姉さん!芸能事務所の人なんじゃないの?!」
「遥お姉ちゃんとおじさんの説得に来た人じゃなくて?!」
「おじさんの友達ってほんとか?!」
次々とそんなことを言われて、何の話だろうと首を傾げる。すると遥ちゃんが「こら!お客様に失礼でしょ!」とお姉さんらしく叱って、みんなを大人しくさせていた。桐生さんを見ると少し困った顔をしてるので、今このアサガオで起きている問題のようだ。ひとまず、誤解は解いておかなくては。
「えっとね、私は普通のフリーターで、桐生さんの友達でね。みんなが不安がってるような話をするために来たわけじゃないから安心して?」
相変わらず子供達は驚いた顔をしている。その中のとくに大人っぽい女の子が、恥ずかしそうにごめんなさいと謝ってきた。
「あの、お姉さん、すごく可愛いから、芸能人だと思ったんです……」
「えっ?!それほんとに言ってる?!桐生さん?!」
「だから出迎えた時に言っただろ。可愛いって。そういえば前にあった時より可愛くなったな」
「ぎょわああ?!ほ、ほんとに?!冗談ではなく?!その、私、可愛く見える?!」
「お、おお。なんだ、可愛らしさを意識してるのか?」
「そ、そりゃあね?!服とか化粧とか、髪型はあんま弄ってないけど、最近とくに気にしてて……ほら、た、谷村さんが、イケメンだから、隣にいても恥ずかしくないように、とか……」
そう、おしゃれを意識し始めたのは、何を隠そう谷村さんの為だ。いや、どちらかというと自分の為かもしれないが、谷村さんを思っていることには違いない。
谷村さんと旅行をすることが増えて、痛感した事がある。やはりというか、谷村さんはモテる。何故ならイケメンだから。私が少しトイレに行っただけで、戻ると逆ナンされていたりする。この間は社会人の合コンのメンバーに誘われていた。なぜだ。
そこで思ったのだ。私、こんなカッコいい人の隣にいて恥ずかしくないだろうか、と。つり合っているだろうか、と。
今回の沖縄旅行、本当は谷村さんも来る予定だったが、仕事が立て込んでいて休みが取れなかったので、よし兄と二人でやってきた。
ちなみによし兄が谷村さんとの電話で「なずなのやつ、せっかく水着用意してたんだがなぁ」と言った瞬間電話が切られて、私の方に着信が入って全力の謝罪をされたのは少し笑ってしまった。ほんと、仕事お疲れ様です谷村さん。
しかし、谷村さんと来られなくて残念だった気持ちも、桐生さんやみんなが私の努力を褒めてくれたので、少し浮上した。
「へへ、良かった。少しは可愛く見えてるなら、胸張ってもいっかなって……へへ」
「お前……今の谷村に聞かせてやりてえな」
「いや恥ずかしいから言わないけど?!あっこれ谷村さんには内緒だからね?!」
「なずなさんはとても可愛いですよ!本当です!」
「ええー?!遥ちゃんに言われるとめっちゃ嬉しいー!!もうお姉さんがなんでも奢ってあげる!!」
「「えっマジで?!」」
「こら!太一!宏次!」
それから警戒心もなくなった子供達から都会の話や色んな事を聞かれて答えていたらいつの間にか打ち解けて、仲良くなる事ができた。最後はみんなで琉球街へ行きご飯を食べてからまたアサガオへ戻ったが、遥ちゃんがちょいちょいと手招きをして夕暮れの砂浜へ二人で向かった。
おそらく、昼間の芸能事務所とかの話なのだろうな、と思いつつ。
「遥ちゃん、どうしたの?」
「あの、なずなさんは、夢ってありますか?」
海を眺めるように砂浜に座ると、遥ちゃんはそう聞いてくる。
夢、夢かあ。将来の夢、というものならあったかもしれない。けど、あったかもしれなかったそれを追うことはなく、私はたった一人の家族を探す旅に出た。そして、いろんな事があり、神室町で人生が終わり、今は第二の人生を歩んでいるところだ。将来なりたいもの、というのはもうないけれど。
「あるよ。……昼間に話した谷村さん、私の恋人なんだけどね。今は訳あって遠距離恋愛してるんだ」
「そうなんですかっ?」
「うん。けど、いつか一緒に暮らそうって。一緒に生きようって、言ってくれてね。……だから、私の今の夢は、大切な人と一緒に生きること、かな。へへ、夢というかこれは惚気だよね」
恥ずかしいなあ、と頭をかく。けど遥ちゃんには何か思うきっかけになったのか、少し考え込んだ後、うん、と頷いていた。
「なずなさんの気持ち、わかります。大切な人と、一緒に生きたい……私も、同じです」
「うん、そっか」
「ありがとうございます、なずなさん」
少し沈黙があって、私の方から聞いてみることにした。
「遥ちゃん。私がアドバイスできることなんてないけど、あのね、芸能事務所のこと……なんとなくだけど、多分スカウトされてるんだよね?」
「は、はい。……私、悩んでるんです。アイドルになりたいかどうかよりも、私がアイドルになればアサガオに援助が入って生活が苦しくなくなる……けど、アイドルは私がしたいこと、夢なのかなあって」
「悩んでるなら、それは遥ちゃんが少しはアイドルに興味があるからじゃないかなあ?」
「えっ?」
「お金の為にアイドルになるのを戸惑うってことは、アイドルという職業に誠意を持ってるからだと思うな。だから、やってみてもいいんじゃない?人生何があるかわかんないんだから、自分のやりたいこと、興味のあること全部やっちゃお!桐生さんもきっと、遥ちゃんが自由に生きる事を望んでくれてるよ」
「……はい!私、考えてみます。自分が納得いくまで、考えてから答えを出します」
「すまなかったな、なずな」
遥ちゃんが洗濯当番だから、と急いでアサガオへ戻っていった後、入れ違いに桐生さんも砂浜へやってきた。
困ったような顔で笑うので、へへ、と笑い返してやる。
「桐生さんが困ったら助けるって言ったじゃん?こんなの全然お返しになってないけど、どんどん頼ってくれていいからね!」
「そんなつもりで呼んだんじゃなかったんだが……最近悩んでいた遥の表情が、少し明るくなっていた。お前のおかげだ。ありがとな」
「桐生さんが私に言ってくれてことを、そのまま遥ちゃんに伝えただけだよ。桐生さんもさ、人生楽しく生きなきゃ損だよ?へへ、一回人生終わった先輩としてのアドバイスだよ」
「笑えねえよ……けど、覚えておく。良かったらまた遊びに来てくれ。子供達も喜ぶからな」
「くるくる!今度は谷村さん連れてくるね!」
「フ、新婚旅行か?」
「んもー!!桐生ちゃんたら!!」
「もうゴロ美の物真似しかしなくなったじゃねえか」
一方その頃、沖縄のホテルではよし兄が谷村さんから鬼電されていた事を後から知るのだった。
「なずなは今は桐生さんのところだ。戻ったら教えるからそっちに電話しろ。わかった、わかったから俺に愚痴るのをやめろ。水着は着ないって言ってたから安心しろっつっただろうが。お前はさっさと仕事終わらせてなずなと旅行行け。お前の背後で上司の怒鳴り声が止まねえから仕事に戻れ、谷村……」