snobbism(龍如)
DREAM
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進む私とお巡りさんの話。
(2010年なずな24歳)
「明日、休み取ったからデートしようか」
がっつり食べたい!と言ったらおススメされた九州一番星の店内。ラーメンをうまうまと啜っていたら、谷村さんにそう言われた。
「へっ?!あ、えっ?!」
「だから、デート。ちゃんとそういうのしてないなあって思って」
「す、するする!ていうか、今も気持ちデートだった……」
「!!……それは、まあ、俺もそうだけど」
やだ、谷村さんが照れてる……可愛い……。
ふへへー、と笑ったらデコピンされてしまった。照れ隠しすら可愛くてにやける口元が戻らない。
「じゃあさ、カラオケいって、ゲーセン行って、プリクラ撮りたい!あっ、でもその前に行きたいところあるから、待ち合わせしようよ!」
「うん?別にいいけど、どこ行くの?」
「内緒!ヒヒ、驚かせるぞお!」
「笑い方真島さんになってない?」
翌日。
お昼にかかる前には用事は終わり、谷村さんとの待ち合わせ場所へ向かった。劇場前広場に着いたと連絡すると、谷村さんからももう着いてると返事がくる。人混みをかき分けて探すと、谷村さん見つけました。女の子に逆ナンされてます。
よし兄も頻繁にされてたなぁ、と思い返しながら、兄さんお待たせー!と声をかけて連れ出そうと思い、近くまで駆け寄ると、谷村さんが女の子に断りを入れているのが聞こえた。
「彼女と待ち合わせだから、ごめんね」
彼女!!あ、そう、そうだよね?!妹じゃないよね?!
意識してしまって顔が熱くなる。女の子が恥ずかしそうに去っていくのを見送ってから、控えめに谷村さんに声をかけた。
「!お前、その髪……」
「えへへ。切ってきた!」
肩甲骨辺りまであった髪を、肩に乗るか乗らないかくらいまでばっさり切ってきた。谷村さんが驚いているので、サプライズは成功だ。
実は、先に谷村さんの家を出た私は昨日の内に予約を取っておいた美容院へ向かったのだ。髪を、切ろうと思った。
四年前の優姫はポニーテールをしていて、なずなになってからは同じ髪型なのはダメかなぁと思ってあまり変わり映えしないがポニーテールをくるっと回してお団子にしていた。本当はなずなとして生きていく時に切るべきだったと思うけど、躊躇してしまって出来ないでいた。
だって。
「髪切ったら、いつか会えた時に谷村さんに気付いてもらえないかなぁ、って思ったりして……」
「なずな」
「でもほら、もう気付いてもらえるし!これでようやく、斎藤なずなになれた気がするんだ。どう?似合う?髪短くすることなかったからどうかなあ」
「似合ってる。というか、どんな髪型してたって分かるから変な心配しなくていいよ」
「!!うへへ!」
やっぱりイケメンにしか言えないセリフを谷村さんから聞くのは嬉しい。
まずはお昼を食べようとお店へ向かって歩きながら、見て見てと谷村さんに今日の服装をアピールする。
「今日はねー、デートするって言ったら真島さんがおススメコーデの写メ送ってくれたんだよ!それを参考にしてみたんだけど、どう??」
「なんで真島さんに話してるんだ……ん?コーデの写メって?」
「真島さんがおススメコーデを着た写メをもらって……」
「真島さんが着た??そのスカートを??」
後に桐生さんから「それは……多分ゴロ美だな」と言われて谷村さんが宇宙猫顔になっていたのはとても面白かったです。
カラオケ行って、ゲーセンに行って、プリクラを撮って。
四年前の誕生日と同じことをした。途中食い逃げ犯が現れて谷村さんと追いかけたり、立てこもり犯を退治したりもしたけど、やっぱりこの街治安悪いな?!
「はい。じゃあよろしく」
「ご苦労様です!」
今は悪質な客引きをしていたキャッチを厳重注意した直後、そのキャバクラからお金を払わず逃げ出した男を捕まえて、駆けつけたお巡りさんに引き渡したところだ。
お仕事を終えた谷村さんがこちらへ戻ってきて、申し訳なさげに笑った。
「全然デートらしくなくてごめんね」
「いやいや!谷村さんの活躍が見れて私的にはめちゃくちゃ楽しい!」
「ならいいんだけど…あれ?右手、赤いけどどうした?」
「あ、これ?さっき谷村さんが無銭飲食犯追いかけてった後、チンピラに絡まれて拳で撃退したからかな。ふふん、もう四年前のへなちょこな私ではないのだよ……ってうひゃあ?!」
「はぁ?!お前、なんで言わないんだ!」
谷村さんに両肩を掴まれて、上から下までチェックされる。それから赤くなった手を持ち上げて、ポケットから取り出された傷薬を塗られてハンカチを巻かれた。
「谷村さん、傷薬持ち歩いてるの?」
「亜細亜街の子供の手当した時のが、ちょうどポケットに入ってただけだよ。ほんと、心臓に悪い……何かあったらちゃんと俺に言って。事後報告はもう懲り懲りなんだからさ」
「!……はい。でも今、谷村さんと子供達のやりとりを想像してとても萌えています」
「こら」
「ひん!すみません!反省してます!」
コツンと頭を小突かれてしまった。そんなやり取りですら嬉しくて、怒られてしまったけどニヤけてしまう。
四年前と同じだ。やっぱり、谷村さんと過ごす一日は楽しいなあ。夕暮れの空を見上げて、あの日のように笑った。
「俺も、楽しいよ。四年前も、今日も。お前と過ごす一日は、いつも楽しいんだ」
横に並んだ谷村さんの方を向く。少し照れ臭そうに、谷村さんが笑っていた。
「やっぱりこういうタイミングで言わないと意味ないね。……やっと言えた」
「……へへ、私も楽しい。それじゃ、次はどこ行こっか!あ、温泉卓球が楽しいって秋山さんと桐生さんが言ってたよ!なんだっけ、いつも対戦を申し込んでくる卓球のお姉さんがいて、ヒートアップすると更に楽しいことになるとか……」
「……いや、お前にはまだ早いだろ」
「卓球が?!」
谷村さんはそこはやめとこうと言うのでカムチカのダーツバーへ行くことになったが、一体、何があるというんだ温泉卓球……。ちなみにダーツは谷村さんも上手くて接戦になったけど、私が僅差で負けました。ゲーマーとしてはかなり悔しいので、次回までに練習を積まねば……!
デートを満喫して、もう空には星が見える。こんなに沢山の星が見えるってことは明日は晴れかなあ。
楽しい時間はあっという間だ。そろそろ、谷村さんに言わなくちゃ。
「ね、谷村さん」
「なに?」
「私、明日大阪に帰るよ」
「……そっか」
帰ることは伝えた。次はこれからどうしたいのかも、ちゃんと言わなくちゃ。繋いだ手に力が入ってしまう。
「それでね、谷村さんが良かったらなんだけど、谷村さんが私に飽きるまでは私と恋人でいて欲しいなって……遠距離になるけど、会える時は会いたいなって、思ってて……」
「……え?」
「え?」
下を向いたままボソボソ言ってたから、谷村さんの驚いた声で思わず顔を上げた。谷村さんが、キョトンとしている。その顔を見て、サーッと血の気がひいた。
「あ、その、だ、ダメだよね?!都合良いよねこんなの!!ご、ごめんなさいわがまま言って!!あの、その、私」
「待った待った!勘違いだから落ち着け!別れるつもりなんて微塵もないから!」
「へ?」
「今のは、てっきり俺がフラれるものだと思ってたから、どうやって言い包めてやろうかって待ち構えてたから反応が遅れただけで。そもそも飽きるなんてないよ。俺、これでも一途なんだけど?」
繋いだ手はそのままで、谷村さんが私の正面に立った。
「今は遠距離でも、いつかは一緒に暮らせるだろ。そのいつかが来たら、一緒に暮らして一緒に生きよう」
「でも、谷村さんは亜細亜街の人達とこれからも一緒に生きてくし、私は神室町には……東京には、住めないから……」
「亜細亜街の人達もいつか、俺がいなくても大丈夫になる日がくる。その為に俺も、みんなも頑張ってるんだ」
「……うん」
「だから、いつかが来るまで約束。浮気もダメだし、自己犠牲もダメ。変な奴に絡まれたらすぐに相談すること」
「うん?」
「なずなは全く気付いてないからあえて言うけど、俺、かなり嫉妬深いんだよね。今日まで秋山さんや桐生さん達に嫉妬したし、とくにキャバクラ!客にすっげえ嫉妬したから、もう二度とキャバ嬢しないでほしい」
「……うへへ」
「こら、笑ってもダメだからな」
「実は私もね、キャバクラでモテてる谷村さんの話聞いて、めちゃくちゃ嫉妬した!」
「!ふふ……」
「へへ……」
顔を見合わせて笑った。お互い、わりと独占欲が強いらしい。新しい発見だ。
ニヤニヤが止まらない私の手を、不意に谷村さんが持ち上げた。それから、スッと薬指にシルバーリングが嵌められる。
「え?」
「はい。これで、お前は俺のもの」
結婚はできない。子供だって産まない。私の今の人生は色んな人の犠牲の上に成り立っていて、本当はもっと制限がかかる生活をしないといけないのだ。それがある程度許されてるのは、私の人生を守ろうとしてくれた兄貴のおかげだとわかっている。だから、自由に生きようと思うけど、この血筋だけは残さず、私の代で綺麗に終わらせる。これだけは譲る気はなかった。
本当は一人きりで生きていくつもりだったけど、よし兄が帰る場所になってくれて、谷村さんが一緒に生きてくれると言ってくれたから、それだけで十分だった。
きっと、谷村さんもそれはわかってくれていた。だから結婚しようとは言わなかった。言わないでいてくれた。
指輪を撫でて、優しい束縛に涙腺が緩む。
形式的な結婚は出来ないけど、こうやって繋ぎ止めてくれようとしてくれるのが、すごく、すごく嬉しくて涙が止まらなかった。私、この街に来てからずっと泣いてるなあ。本当に四年分涙を流している気がする。
「ありがとう、谷村さん。嬉しいな、嬉しい……ほんとに、嬉しい……」
「言っただろ、俺は一途だって。ほら、俺もつけるからお揃い。いやあ、久しぶりに自分用に大金使った気がするよ」
「……え、まさかこれ、お高いんです……?」
「まあね。こういうの妥協しないタイプだから」
「……この指輪つけた状態では拳で応戦しないように気をつけなきゃ!!」
「いやそもそも応戦しないでね?ほら、東京最後の夜なんだから、さっさと俺の家帰ろうよ」
「うん!えへへ!」
「はは、だらしない顔になったな」
もう一度手を繋ぎ直して、私達は歩き出す。
幸せに、と言ってくれた兄貴に、今すごく幸せなんだって、いつか伝えられたらいいのに。
いつか、伝えられますように。
(2010年なずな24歳)
「明日、休み取ったからデートしようか」
がっつり食べたい!と言ったらおススメされた九州一番星の店内。ラーメンをうまうまと啜っていたら、谷村さんにそう言われた。
「へっ?!あ、えっ?!」
「だから、デート。ちゃんとそういうのしてないなあって思って」
「す、するする!ていうか、今も気持ちデートだった……」
「!!……それは、まあ、俺もそうだけど」
やだ、谷村さんが照れてる……可愛い……。
ふへへー、と笑ったらデコピンされてしまった。照れ隠しすら可愛くてにやける口元が戻らない。
「じゃあさ、カラオケいって、ゲーセン行って、プリクラ撮りたい!あっ、でもその前に行きたいところあるから、待ち合わせしようよ!」
「うん?別にいいけど、どこ行くの?」
「内緒!ヒヒ、驚かせるぞお!」
「笑い方真島さんになってない?」
翌日。
お昼にかかる前には用事は終わり、谷村さんとの待ち合わせ場所へ向かった。劇場前広場に着いたと連絡すると、谷村さんからももう着いてると返事がくる。人混みをかき分けて探すと、谷村さん見つけました。女の子に逆ナンされてます。
よし兄も頻繁にされてたなぁ、と思い返しながら、兄さんお待たせー!と声をかけて連れ出そうと思い、近くまで駆け寄ると、谷村さんが女の子に断りを入れているのが聞こえた。
「彼女と待ち合わせだから、ごめんね」
彼女!!あ、そう、そうだよね?!妹じゃないよね?!
意識してしまって顔が熱くなる。女の子が恥ずかしそうに去っていくのを見送ってから、控えめに谷村さんに声をかけた。
「!お前、その髪……」
「えへへ。切ってきた!」
肩甲骨辺りまであった髪を、肩に乗るか乗らないかくらいまでばっさり切ってきた。谷村さんが驚いているので、サプライズは成功だ。
実は、先に谷村さんの家を出た私は昨日の内に予約を取っておいた美容院へ向かったのだ。髪を、切ろうと思った。
四年前の優姫はポニーテールをしていて、なずなになってからは同じ髪型なのはダメかなぁと思ってあまり変わり映えしないがポニーテールをくるっと回してお団子にしていた。本当はなずなとして生きていく時に切るべきだったと思うけど、躊躇してしまって出来ないでいた。
だって。
「髪切ったら、いつか会えた時に谷村さんに気付いてもらえないかなぁ、って思ったりして……」
「なずな」
「でもほら、もう気付いてもらえるし!これでようやく、斎藤なずなになれた気がするんだ。どう?似合う?髪短くすることなかったからどうかなあ」
「似合ってる。というか、どんな髪型してたって分かるから変な心配しなくていいよ」
「!!うへへ!」
やっぱりイケメンにしか言えないセリフを谷村さんから聞くのは嬉しい。
まずはお昼を食べようとお店へ向かって歩きながら、見て見てと谷村さんに今日の服装をアピールする。
「今日はねー、デートするって言ったら真島さんがおススメコーデの写メ送ってくれたんだよ!それを参考にしてみたんだけど、どう??」
「なんで真島さんに話してるんだ……ん?コーデの写メって?」
「真島さんがおススメコーデを着た写メをもらって……」
「真島さんが着た??そのスカートを??」
後に桐生さんから「それは……多分ゴロ美だな」と言われて谷村さんが宇宙猫顔になっていたのはとても面白かったです。
カラオケ行って、ゲーセンに行って、プリクラを撮って。
四年前の誕生日と同じことをした。途中食い逃げ犯が現れて谷村さんと追いかけたり、立てこもり犯を退治したりもしたけど、やっぱりこの街治安悪いな?!
「はい。じゃあよろしく」
「ご苦労様です!」
今は悪質な客引きをしていたキャッチを厳重注意した直後、そのキャバクラからお金を払わず逃げ出した男を捕まえて、駆けつけたお巡りさんに引き渡したところだ。
お仕事を終えた谷村さんがこちらへ戻ってきて、申し訳なさげに笑った。
「全然デートらしくなくてごめんね」
「いやいや!谷村さんの活躍が見れて私的にはめちゃくちゃ楽しい!」
「ならいいんだけど…あれ?右手、赤いけどどうした?」
「あ、これ?さっき谷村さんが無銭飲食犯追いかけてった後、チンピラに絡まれて拳で撃退したからかな。ふふん、もう四年前のへなちょこな私ではないのだよ……ってうひゃあ?!」
「はぁ?!お前、なんで言わないんだ!」
谷村さんに両肩を掴まれて、上から下までチェックされる。それから赤くなった手を持ち上げて、ポケットから取り出された傷薬を塗られてハンカチを巻かれた。
「谷村さん、傷薬持ち歩いてるの?」
「亜細亜街の子供の手当した時のが、ちょうどポケットに入ってただけだよ。ほんと、心臓に悪い……何かあったらちゃんと俺に言って。事後報告はもう懲り懲りなんだからさ」
「!……はい。でも今、谷村さんと子供達のやりとりを想像してとても萌えています」
「こら」
「ひん!すみません!反省してます!」
コツンと頭を小突かれてしまった。そんなやり取りですら嬉しくて、怒られてしまったけどニヤけてしまう。
四年前と同じだ。やっぱり、谷村さんと過ごす一日は楽しいなあ。夕暮れの空を見上げて、あの日のように笑った。
「俺も、楽しいよ。四年前も、今日も。お前と過ごす一日は、いつも楽しいんだ」
横に並んだ谷村さんの方を向く。少し照れ臭そうに、谷村さんが笑っていた。
「やっぱりこういうタイミングで言わないと意味ないね。……やっと言えた」
「……へへ、私も楽しい。それじゃ、次はどこ行こっか!あ、温泉卓球が楽しいって秋山さんと桐生さんが言ってたよ!なんだっけ、いつも対戦を申し込んでくる卓球のお姉さんがいて、ヒートアップすると更に楽しいことになるとか……」
「……いや、お前にはまだ早いだろ」
「卓球が?!」
谷村さんはそこはやめとこうと言うのでカムチカのダーツバーへ行くことになったが、一体、何があるというんだ温泉卓球……。ちなみにダーツは谷村さんも上手くて接戦になったけど、私が僅差で負けました。ゲーマーとしてはかなり悔しいので、次回までに練習を積まねば……!
デートを満喫して、もう空には星が見える。こんなに沢山の星が見えるってことは明日は晴れかなあ。
楽しい時間はあっという間だ。そろそろ、谷村さんに言わなくちゃ。
「ね、谷村さん」
「なに?」
「私、明日大阪に帰るよ」
「……そっか」
帰ることは伝えた。次はこれからどうしたいのかも、ちゃんと言わなくちゃ。繋いだ手に力が入ってしまう。
「それでね、谷村さんが良かったらなんだけど、谷村さんが私に飽きるまでは私と恋人でいて欲しいなって……遠距離になるけど、会える時は会いたいなって、思ってて……」
「……え?」
「え?」
下を向いたままボソボソ言ってたから、谷村さんの驚いた声で思わず顔を上げた。谷村さんが、キョトンとしている。その顔を見て、サーッと血の気がひいた。
「あ、その、だ、ダメだよね?!都合良いよねこんなの!!ご、ごめんなさいわがまま言って!!あの、その、私」
「待った待った!勘違いだから落ち着け!別れるつもりなんて微塵もないから!」
「へ?」
「今のは、てっきり俺がフラれるものだと思ってたから、どうやって言い包めてやろうかって待ち構えてたから反応が遅れただけで。そもそも飽きるなんてないよ。俺、これでも一途なんだけど?」
繋いだ手はそのままで、谷村さんが私の正面に立った。
「今は遠距離でも、いつかは一緒に暮らせるだろ。そのいつかが来たら、一緒に暮らして一緒に生きよう」
「でも、谷村さんは亜細亜街の人達とこれからも一緒に生きてくし、私は神室町には……東京には、住めないから……」
「亜細亜街の人達もいつか、俺がいなくても大丈夫になる日がくる。その為に俺も、みんなも頑張ってるんだ」
「……うん」
「だから、いつかが来るまで約束。浮気もダメだし、自己犠牲もダメ。変な奴に絡まれたらすぐに相談すること」
「うん?」
「なずなは全く気付いてないからあえて言うけど、俺、かなり嫉妬深いんだよね。今日まで秋山さんや桐生さん達に嫉妬したし、とくにキャバクラ!客にすっげえ嫉妬したから、もう二度とキャバ嬢しないでほしい」
「……うへへ」
「こら、笑ってもダメだからな」
「実は私もね、キャバクラでモテてる谷村さんの話聞いて、めちゃくちゃ嫉妬した!」
「!ふふ……」
「へへ……」
顔を見合わせて笑った。お互い、わりと独占欲が強いらしい。新しい発見だ。
ニヤニヤが止まらない私の手を、不意に谷村さんが持ち上げた。それから、スッと薬指にシルバーリングが嵌められる。
「え?」
「はい。これで、お前は俺のもの」
結婚はできない。子供だって産まない。私の今の人生は色んな人の犠牲の上に成り立っていて、本当はもっと制限がかかる生活をしないといけないのだ。それがある程度許されてるのは、私の人生を守ろうとしてくれた兄貴のおかげだとわかっている。だから、自由に生きようと思うけど、この血筋だけは残さず、私の代で綺麗に終わらせる。これだけは譲る気はなかった。
本当は一人きりで生きていくつもりだったけど、よし兄が帰る場所になってくれて、谷村さんが一緒に生きてくれると言ってくれたから、それだけで十分だった。
きっと、谷村さんもそれはわかってくれていた。だから結婚しようとは言わなかった。言わないでいてくれた。
指輪を撫でて、優しい束縛に涙腺が緩む。
形式的な結婚は出来ないけど、こうやって繋ぎ止めてくれようとしてくれるのが、すごく、すごく嬉しくて涙が止まらなかった。私、この街に来てからずっと泣いてるなあ。本当に四年分涙を流している気がする。
「ありがとう、谷村さん。嬉しいな、嬉しい……ほんとに、嬉しい……」
「言っただろ、俺は一途だって。ほら、俺もつけるからお揃い。いやあ、久しぶりに自分用に大金使った気がするよ」
「……え、まさかこれ、お高いんです……?」
「まあね。こういうの妥協しないタイプだから」
「……この指輪つけた状態では拳で応戦しないように気をつけなきゃ!!」
「いやそもそも応戦しないでね?ほら、東京最後の夜なんだから、さっさと俺の家帰ろうよ」
「うん!えへへ!」
「はは、だらしない顔になったな」
もう一度手を繋ぎ直して、私達は歩き出す。
幸せに、と言ってくれた兄貴に、今すごく幸せなんだって、いつか伝えられたらいいのに。
いつか、伝えられますように。