snobbism(龍如)
DREAM
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二人旅。〜前進〜
(2010年なずな24歳)
大阪で過ごし始めて数ヶ月。最初こそ不安でいっぱいだったのだが、わりとあっさり馴染んでしまった。というのも、この街はとにかく人が多い。だから同じ店をずっと使わず、適度に使えば顔は覚えられないから、気にすることもなくなったのだ。
帰る家があるというのは、すごく嬉しいものだ。よし兄に言われたように、派遣で初仕事を受けてお金を稼いで帰ってきた時、心から思った。ちなみによし兄はパソコンを使って株とか色々やってるらしい。情弱の私にはさっぱりわからないので、よし兄も詳しく話してはこなかった。
猫は、やっぱり飼わないと思う。
まだ少し、幸福になるのは怖いから。
「いやミレニアムタワー事故物件では?!」
テレビのニュースを見ていたら、東京の神室町で起きた事件についての特集が始まって思わず飲んでいたジュースを噴き出した。なんでも、お札が空から降ってきたらしい。ミレニアムタワーの屋上からばら撒かれたと考えられているとか。しかも警察の偉い人も亡くなったみたいだし、相変わらず神室町は事件でいっぱいだ。
「しかも脱獄囚が実は冤罪だったなんて……25年も刑務所にいたなんて可哀想だよ!」
「18人殺しは伝説の極道として有名な話だったが、まさか冤罪だったとはな」
「伝説だったの?!もうどうなってんの神室町!!」
神室町はよくニュースになっているが、今回のはとびきり派手なニュースだ。何がどうなったら屋上からお金が降ってくるのか。
このニュースはリアルタイムで報道はされていたようだが、引越しなどで忙しくしていたから、今日ようやく神室町で起きていた事件について知ることになったので驚いてしまった。
「また桐生さん巻き込まれてるのかなー」
「電話してみたらどうだ。六代目が逮捕された事についても詳しく聞いてくれ」
「それが知りたいだけだよね??って、あ、ナイスタイミング!桐生さんから電話だ!」
やった、と電話を取ると、相変わらず渋い良い声が聞こえてくる。
『よお、なずな。元気にしてたか?』
「もちのろんよ!桐生さんこそ元気?ていうか、テレビ見たけど神室町また凄いことになってたね?!桐生さんは沖縄にいるから大丈夫だと思うけど、巻き込まれたりとかしてない?」
『まあ……関係はしてるな』
「だよね?!さすが桐生チャンやでぇ……」
『それ兄さんの真似か?ところで、そのことも含めて世間話でもしたいから、神室町に来ないか?』
「へっ?」
『本音は、お前の顔が見たいってだけなんだがな』
ギュンッ!!と胸から変な音がした気がした。キュンッではなく、ギュンッ!って感じである。天然の口説き文句は破壊力が高い。よし兄にジト目で見られているが、なんとか持ち堪えた。
「神室町かー。あれから、行ってないんだよね」
『まだ怖いか?』
「怖い、のかな。うん、私のせいで巻き込んだ人に会うのが、怖いんだと思う……」
『……無理強いはしねぇが、もし一歩踏み出したくなったら連絡をくれ。あと一週間は神室町にいるつもりだからな』
「うん。ありがとう、桐生さん。あっ、そうだ。六代目さん逮捕されたって聞いたけど大丈夫?」
『ああ、まあ色々あってな。だがすぐに出てくる予定になってる。お前、最近大吾のことよく聞くよな。大吾に興味があるのか?』
「いや、まあ、その、はい。東城会のことが気になるっていうかなんというか!へへへ!」
わー!よし兄の目が怖いぞー!冗談でも大吾さん好きだなんて言おうものなら「貴様如きに大吾さんの伴侶が務まるか」ってお説教タイムになるぞー!
あわあわしながらも曖昧に説明しておき、神室町へ行くかどうかはまた連絡すると返して桐生さんとの電話を終える。
「行けばいいだろう」
電話を切ったのを確認してから、よし兄はなんでもないことのようにそう言った。けど、でも、とまたうじうじモードに入ると、呆れたようにため息を吐かれて胸が痛い。
「俺の時間が一年前の屋上で止まってるように、お前も四年前から神室町で止まってんだ。いい加減、はっきりさせてこい」
「ううー!はっきりさせるって言っても……」
「だから、その谷村との関係を、だ。さっさと告白してフラれてくればさっぱりするだろ」
「フラれる前提?!いやまってそうじゃない!私はべ、別にたたた谷村さんのことそういう意味で好きなわけじゃないですしおすし!」
「往生際が悪い。その谷村に女が出来てたら、お前素直に祝福できんのか」
「女……」
できる、と思う。できるけど、胸がズキズキと痛む気がする。そうか。私、谷村さんに彼女や恋人ができる想像するだけで嫉妬するくらい、好きなのか。意識すると、途端に顔が熱くなって仕方なくなる。
「ゔあー!!一日しか一緒にいなかったのに、まさか好きになってたなんて!!しかも、迷惑たくさんかけた相手に!!ゔあー!!」
「しばらく仕事もないから旅行するかって話、丁度いいじゃねえか。俺は忙しいから、お前は神室町で遊んでこい」
「ううー!!」
蹲って頭を抱える。会いたいけど、私のこと忘れてたらどうしよう。覚えてても、嫌な感情で私を見てきたらどうしよう。怪我、後遺症とかあったらどうしよう。隣に、素敵な恋人がいたらどうしよう。頭の中がぐるぐるする。
四年、四年かぁ。私、四年も拗らせてるんだ。いい加減前へ踏み出す時かもしれない。それに、あの日あの人の知る女の子は死んだんだ。……もし私の事覚えててくれても、忘れてもらわないといけない。優姫は死んだ。私はなずなだから、初めましてって、言おう。
「いやそもそもイケメンだし優しい人だし公務員だし!今頃恋人の一人や二人いるに決まってるって!もしかしたら結婚だってしてるかもだし?!うわーん!!よし兄ー!!」
「妄想で泣くな鬱陶しい」
ソファに座ってパッドを触ってるよし兄の背後から抱きついて騒いだら、ポンポンと頭を撫でられる。後押しは貰った。もう、行くしかない。
すぐに桐生さんに電話をかけると、待っててくれたらしくワンコールで出てくれた。息を吸い込み、決心を口に出す。
「桐生さん。私、神室町行く!明日、行くから!」
『おう、待ってる』
斎藤なずな、一歩踏み出そうと思います。
いざゆかん、因縁の神室町!
(2010年なずな24歳)
大阪で過ごし始めて数ヶ月。最初こそ不安でいっぱいだったのだが、わりとあっさり馴染んでしまった。というのも、この街はとにかく人が多い。だから同じ店をずっと使わず、適度に使えば顔は覚えられないから、気にすることもなくなったのだ。
帰る家があるというのは、すごく嬉しいものだ。よし兄に言われたように、派遣で初仕事を受けてお金を稼いで帰ってきた時、心から思った。ちなみによし兄はパソコンを使って株とか色々やってるらしい。情弱の私にはさっぱりわからないので、よし兄も詳しく話してはこなかった。
猫は、やっぱり飼わないと思う。
まだ少し、幸福になるのは怖いから。
「いやミレニアムタワー事故物件では?!」
テレビのニュースを見ていたら、東京の神室町で起きた事件についての特集が始まって思わず飲んでいたジュースを噴き出した。なんでも、お札が空から降ってきたらしい。ミレニアムタワーの屋上からばら撒かれたと考えられているとか。しかも警察の偉い人も亡くなったみたいだし、相変わらず神室町は事件でいっぱいだ。
「しかも脱獄囚が実は冤罪だったなんて……25年も刑務所にいたなんて可哀想だよ!」
「18人殺しは伝説の極道として有名な話だったが、まさか冤罪だったとはな」
「伝説だったの?!もうどうなってんの神室町!!」
神室町はよくニュースになっているが、今回のはとびきり派手なニュースだ。何がどうなったら屋上からお金が降ってくるのか。
このニュースはリアルタイムで報道はされていたようだが、引越しなどで忙しくしていたから、今日ようやく神室町で起きていた事件について知ることになったので驚いてしまった。
「また桐生さん巻き込まれてるのかなー」
「電話してみたらどうだ。六代目が逮捕された事についても詳しく聞いてくれ」
「それが知りたいだけだよね??って、あ、ナイスタイミング!桐生さんから電話だ!」
やった、と電話を取ると、相変わらず渋い良い声が聞こえてくる。
『よお、なずな。元気にしてたか?』
「もちのろんよ!桐生さんこそ元気?ていうか、テレビ見たけど神室町また凄いことになってたね?!桐生さんは沖縄にいるから大丈夫だと思うけど、巻き込まれたりとかしてない?」
『まあ……関係はしてるな』
「だよね?!さすが桐生チャンやでぇ……」
『それ兄さんの真似か?ところで、そのことも含めて世間話でもしたいから、神室町に来ないか?』
「へっ?」
『本音は、お前の顔が見たいってだけなんだがな』
ギュンッ!!と胸から変な音がした気がした。キュンッではなく、ギュンッ!って感じである。天然の口説き文句は破壊力が高い。よし兄にジト目で見られているが、なんとか持ち堪えた。
「神室町かー。あれから、行ってないんだよね」
『まだ怖いか?』
「怖い、のかな。うん、私のせいで巻き込んだ人に会うのが、怖いんだと思う……」
『……無理強いはしねぇが、もし一歩踏み出したくなったら連絡をくれ。あと一週間は神室町にいるつもりだからな』
「うん。ありがとう、桐生さん。あっ、そうだ。六代目さん逮捕されたって聞いたけど大丈夫?」
『ああ、まあ色々あってな。だがすぐに出てくる予定になってる。お前、最近大吾のことよく聞くよな。大吾に興味があるのか?』
「いや、まあ、その、はい。東城会のことが気になるっていうかなんというか!へへへ!」
わー!よし兄の目が怖いぞー!冗談でも大吾さん好きだなんて言おうものなら「貴様如きに大吾さんの伴侶が務まるか」ってお説教タイムになるぞー!
あわあわしながらも曖昧に説明しておき、神室町へ行くかどうかはまた連絡すると返して桐生さんとの電話を終える。
「行けばいいだろう」
電話を切ったのを確認してから、よし兄はなんでもないことのようにそう言った。けど、でも、とまたうじうじモードに入ると、呆れたようにため息を吐かれて胸が痛い。
「俺の時間が一年前の屋上で止まってるように、お前も四年前から神室町で止まってんだ。いい加減、はっきりさせてこい」
「ううー!はっきりさせるって言っても……」
「だから、その谷村との関係を、だ。さっさと告白してフラれてくればさっぱりするだろ」
「フラれる前提?!いやまってそうじゃない!私はべ、別にたたた谷村さんのことそういう意味で好きなわけじゃないですしおすし!」
「往生際が悪い。その谷村に女が出来てたら、お前素直に祝福できんのか」
「女……」
できる、と思う。できるけど、胸がズキズキと痛む気がする。そうか。私、谷村さんに彼女や恋人ができる想像するだけで嫉妬するくらい、好きなのか。意識すると、途端に顔が熱くなって仕方なくなる。
「ゔあー!!一日しか一緒にいなかったのに、まさか好きになってたなんて!!しかも、迷惑たくさんかけた相手に!!ゔあー!!」
「しばらく仕事もないから旅行するかって話、丁度いいじゃねえか。俺は忙しいから、お前は神室町で遊んでこい」
「ううー!!」
蹲って頭を抱える。会いたいけど、私のこと忘れてたらどうしよう。覚えてても、嫌な感情で私を見てきたらどうしよう。怪我、後遺症とかあったらどうしよう。隣に、素敵な恋人がいたらどうしよう。頭の中がぐるぐるする。
四年、四年かぁ。私、四年も拗らせてるんだ。いい加減前へ踏み出す時かもしれない。それに、あの日あの人の知る女の子は死んだんだ。……もし私の事覚えててくれても、忘れてもらわないといけない。優姫は死んだ。私はなずなだから、初めましてって、言おう。
「いやそもそもイケメンだし優しい人だし公務員だし!今頃恋人の一人や二人いるに決まってるって!もしかしたら結婚だってしてるかもだし?!うわーん!!よし兄ー!!」
「妄想で泣くな鬱陶しい」
ソファに座ってパッドを触ってるよし兄の背後から抱きついて騒いだら、ポンポンと頭を撫でられる。後押しは貰った。もう、行くしかない。
すぐに桐生さんに電話をかけると、待っててくれたらしくワンコールで出てくれた。息を吸い込み、決心を口に出す。
「桐生さん。私、神室町行く!明日、行くから!」
『おう、待ってる』
斎藤なずな、一歩踏み出そうと思います。
いざゆかん、因縁の神室町!