snobbism(龍如)
DREAM
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続続四代目と狂犬と。
(2006年優姫20歳)
『……挨拶がないと言うことは、これを持っているのは四代目でしょうか』
「ちゃうなぁ。真島や、真島吾朗。分かるか?」
『!嶋野の狂犬?!っ、くそ、まさかあんたまで関わってくるなんて』
のびた錦山組組員はどうやら下っ端のまとめ役だったようだ。今回の騒動の黒幕であろう幹部の澤村から電話がかかってきて、躊躇なく通話ボタンを押した。
澤村は最初桐生ちゃんが出ると思ったようだ。おそらく妹の方を助けたのがもう伝わっているのだろう。違うと答えてやれば、電話の向こうで狼狽える声が聞こえる。
「単刀直入に聞くで。なんで水瓶兄妹をそない必死に探しとるんや」
『……もちろん、金の為ですよ。東城会をあっさり抜けたあんたには分からないでしょうが、俺達錦山組は東城会のトップに立つためにどれだけのことをして、どれだけ犠牲にしてきたか。けど、ようやく見えてきたんですよ。金の成り続ける木さえ手にすれば、もう金に関して誰も俺達には敵わなくなる。錦山の親父が夢見た東城会のトップが、目の前にあるんですよ……!』
アホくさ、と思わず言ってしまった。電話の向こうで澤村が怒り狂っているのが分かるが、嘘が嫌いな性分ゆえに取り繕う気もない。
「その金はお前のちゃうやろ。お前がシノギで稼いだもんでもなけりゃ、自分の財産でもない。言うなればただの強盗した金や。綺麗な金やなんや言うつもりはないがな、トップなりたかったら筋は通せやボケ」
実力で成り上がるのと、痛手も負わず第三者の力だけで成り上がるのではトップに立ったところで先が見えている。ハリボテの城などあっという間に崩れ去るものだ。それがわからない時点で今の錦山組にトップの器ではない。これならまだ錦山の方が見所があったかもしれないと残った組員達を見ているとしみじみ思う。
澤村は電話の向こうで暴れているのだろう、荒々しい物音が聞こえる。しばらくして、興奮したままの澤村が電話口に高笑いを返してきた。
『何も見えてない、あんたも四代目も。その女は生きている限り金を産み続けるんだ。錦山の親父がなんでこの女を組に繋いでおかなかったのか不思議でたまらないほどにね。あんた達も、その女の通帳の中身はもう知っているんでしょう?』
「けどお前らは金の出所知らんのやろ。なんでそないに確信を持って嬢ちゃんの金を当てにしとるんや」
『一件だけですが、金の出所を見つけたんですよ。そいつは大層な資産家でね。定期的に女の口座に大金を振り込んでましたよ。知り合いのフリして理由を尋ねたら、何て言ったと思います?《彼女に親切にしてもらったから、恩を返しているんだ》ですって!親切の返礼が何千万の大金ですよ?!その額が半永久的に送られるなんて、冗談か何かかと思いましたよ俺は』
はははっ!と堪えきれない笑いが電話口から聞こえてくる。その話をされたこちらも、冗談にしか聞こえない。話を要約すると、とある資産家が優姫ちゃんに親切にされて、その恩を返したくてずっとお金を送り続けているということになる。そんなこと、本当にあるのだろうか。彼女にそんな人間を狂わす魔性があるようには思えない。
『けどね、その話聞いて思ったんです。もしかしたら他の金も、同じなんじゃないかって。ねえ真島さん。その女、俺らにくださいよ。もう東城会に関係ないんだから、良いでしょう?』
「アホか。関係あるなしちゃうわ。結局はお前らの金やない、嬢ちゃんの金やないか。お前らこそ嬢ちゃんと関係ないんやから手ぇ引けや」
『はは、無理ですよ。無理無理。こっちもね、必死なんですよ。真島さんじゃ話にならないんで、女に代わってもらえます?』
「断る言うたら?」
『女を殺します。安心してくださいよ、少しお話しするだけなんですから。内容は電話終わった後にでも女から聞けばいいだけなんですから』
たしかに、電話自体はここでするのなら彼女に被害はない。内容も、なるべく耳を澄ませて聞いておくし、聞き漏らしたら彼女から教えて貰えばいい。
向こうも情緒が危うい様子だから、これ以上引き伸ばすのは良くないだろう。今は仕方ないか。
「優姫ちゃん、電話出られそうか?」
「えっ、はい、えっ?」
「怖かったら出んでもええで」
自分の携帯を眺めていた優姫ちゃんに声をかけると、俺の持っている携帯をジッと見つめてから、よしと気合を入れて頷いた。
「大丈夫です。電話、出ます」
「……相手は澤村っちゅー錦山組の幹部や。話聞くだけでええからな」
「はい」
もしもし、と電話口に声を出す。先程までの情緒の激しい澤村はなりを潜め、紳士的に努めようと声を和らげていた。
『はじめまして。これまで手荒な真似をしてすまなかったね。君に酷いことをした部下はこちらで処罰しておくから、許してはもらえないだろうか?』
「いやです。私以外の人にも酷いことをした貴方達のこと許す気もないし、これ以上話もしたくないです。もう関わらないでください」
おお、思ったよりはっきり言うやないか。
澤村も声を詰まらせている辺り、また怒り狂いそうなのを耐えているのだろうことが窺える。
『そんなこと言わないでくれよ。俺達には協力してくれたら、君の願いを叶えてやれるんだよ?』
「貴方達に叶えてもらう願いなんて」
『お兄さんに会いたいんだよね?』
優姫ちゃんの肩が震える。
『君のお兄さん、俺達が預かってるんだ。会いたいよね?俺達のところに来てくれたら、会わせてあげるよ?』
「な、なんで、いや、嘘だ!兄貴がいるなんて」
『嘘かどうか、今の君に確かめられる?無理だよね?俺達のところに来てみないと、わからないよね?』
「あ、兄貴に何したの、また酷いことしてるのっ?!」
『知りたかったら、一人で来い。今から五分後にその携帯にメールを送る。指定された場所に、一人で、来るんだ。それじゃあね』
電話はそこで終わった。通話の切れた携帯を持ったまま固まる優姫ちゃんを見て、やられたと頭を掻きむしる。
あんなのがハッタリなのは分かりきっている。けど、一パーセントでも可能性が生まれてしまった。澤村達が彼女の兄を捕まえているかもしれないという可能性を、こちらが持ってしまった。そうなると、彼女の兄に危害が加えられるかもしれないと迂闊に動けなくなる。彼女に電話を繋げたのは失敗だった。
「真島の兄さん、電話はどうなったんだ?」
組員をボコボコにして綺麗な山を積み上げていた桐生ちゃんが、ひと段落ついてこちらまで戻ってきたが、なんと答えたものか。優姫ちゃんは未だに俯いたままだし、こちらもどう動くか考えないと。しかし、優姫ちゃんが俯いたまま、ポツリと呟いた。
「真島さん、ごめんなさい」
「……あかんで、優姫ちゃん。一人で行くのは絶対にあかん」
「でも私、もう誰も傷ついてほしくないんです。ここまで付き合ってくれて、本当にありがとうございました。手伝ってくれるって言ってくれて、嬉しかったです。桐生さんもありがとう」
ピロリン、と彼女の持つ携帯にメールが届く。それを開いて確認すると、すぐに携帯を閉じてポケットに閉まってしまった。
「二人はここで連絡が来るまで待機だそうです。本当にごめんなさい」
「おい、待て優姫。一体何の話をしてるんだ。澤村って野郎に何を言われたんだ!」
「ごめんね、桐生さん。助けてくれてありがとう。……私、やっぱりダメだなぁ」
「優姫ちゃん」
「お願いだから、動かないでください。ごめんなさい、ごめんなさい……っ!!」
泣きそうに顔を歪ませて、謝罪を繰り返しながら彼女は走り去っていく。その後ろ姿に、昔守りたかった彼女を重ねて見てしまう。兄に会いたい一心で黒い世界へ足を踏み入れて、傷ついた彼女がチラついて心臓が跳ねた。最後に見た彼女が、何故優姫ちゃんを気にかけていたのか今なら分かる。自分と同じ危うさを感じたからだ。自分のように酷い目にあってほしくなくて、ずっと気にかけていたのだ。
ふう、と一呼吸おく。桐生ちゃんは状況がわからず、優姫ちゃんが去った後俺の方を見て説明を求めていた。
「兄さん、何がどうなってるんだ」
「まんまと澤村の口車に乗せられたんや。兄貴匿っとるっちゅーハッタリしかけられてな」
「なっ?!どういうことだ?!」
「ええか、桐生ちゃん。こうなったら俺らが頼れるんわ一人や。花屋と連絡取れるか?」
「ああ、多分大丈夫だ。そうか、行き先を探してもらうんだな」
「せや。ヒヒっ、俺らを馬鹿にした分、倍返しでやったらなあかんなぁ?」
ニタァと抑え切れない笑みを浮かべたら、また桐生ちゃんに顔が怖いと言われてしまった。
ちなみに花屋は今警察に戻っているのだが、地上に出たと同時にメッセージカードのついた花束を持ったホームレスが声をかけてきたから、なんやかかんや桐生ちゃんにはアマアマだとモニターの前でこちらを監視しているだろう花屋を笑った。
(2006年優姫20歳)
『……挨拶がないと言うことは、これを持っているのは四代目でしょうか』
「ちゃうなぁ。真島や、真島吾朗。分かるか?」
『!嶋野の狂犬?!っ、くそ、まさかあんたまで関わってくるなんて』
のびた錦山組組員はどうやら下っ端のまとめ役だったようだ。今回の騒動の黒幕であろう幹部の澤村から電話がかかってきて、躊躇なく通話ボタンを押した。
澤村は最初桐生ちゃんが出ると思ったようだ。おそらく妹の方を助けたのがもう伝わっているのだろう。違うと答えてやれば、電話の向こうで狼狽える声が聞こえる。
「単刀直入に聞くで。なんで水瓶兄妹をそない必死に探しとるんや」
『……もちろん、金の為ですよ。東城会をあっさり抜けたあんたには分からないでしょうが、俺達錦山組は東城会のトップに立つためにどれだけのことをして、どれだけ犠牲にしてきたか。けど、ようやく見えてきたんですよ。金の成り続ける木さえ手にすれば、もう金に関して誰も俺達には敵わなくなる。錦山の親父が夢見た東城会のトップが、目の前にあるんですよ……!』
アホくさ、と思わず言ってしまった。電話の向こうで澤村が怒り狂っているのが分かるが、嘘が嫌いな性分ゆえに取り繕う気もない。
「その金はお前のちゃうやろ。お前がシノギで稼いだもんでもなけりゃ、自分の財産でもない。言うなればただの強盗した金や。綺麗な金やなんや言うつもりはないがな、トップなりたかったら筋は通せやボケ」
実力で成り上がるのと、痛手も負わず第三者の力だけで成り上がるのではトップに立ったところで先が見えている。ハリボテの城などあっという間に崩れ去るものだ。それがわからない時点で今の錦山組にトップの器ではない。これならまだ錦山の方が見所があったかもしれないと残った組員達を見ているとしみじみ思う。
澤村は電話の向こうで暴れているのだろう、荒々しい物音が聞こえる。しばらくして、興奮したままの澤村が電話口に高笑いを返してきた。
『何も見えてない、あんたも四代目も。その女は生きている限り金を産み続けるんだ。錦山の親父がなんでこの女を組に繋いでおかなかったのか不思議でたまらないほどにね。あんた達も、その女の通帳の中身はもう知っているんでしょう?』
「けどお前らは金の出所知らんのやろ。なんでそないに確信を持って嬢ちゃんの金を当てにしとるんや」
『一件だけですが、金の出所を見つけたんですよ。そいつは大層な資産家でね。定期的に女の口座に大金を振り込んでましたよ。知り合いのフリして理由を尋ねたら、何て言ったと思います?《彼女に親切にしてもらったから、恩を返しているんだ》ですって!親切の返礼が何千万の大金ですよ?!その額が半永久的に送られるなんて、冗談か何かかと思いましたよ俺は』
はははっ!と堪えきれない笑いが電話口から聞こえてくる。その話をされたこちらも、冗談にしか聞こえない。話を要約すると、とある資産家が優姫ちゃんに親切にされて、その恩を返したくてずっとお金を送り続けているということになる。そんなこと、本当にあるのだろうか。彼女にそんな人間を狂わす魔性があるようには思えない。
『けどね、その話聞いて思ったんです。もしかしたら他の金も、同じなんじゃないかって。ねえ真島さん。その女、俺らにくださいよ。もう東城会に関係ないんだから、良いでしょう?』
「アホか。関係あるなしちゃうわ。結局はお前らの金やない、嬢ちゃんの金やないか。お前らこそ嬢ちゃんと関係ないんやから手ぇ引けや」
『はは、無理ですよ。無理無理。こっちもね、必死なんですよ。真島さんじゃ話にならないんで、女に代わってもらえます?』
「断る言うたら?」
『女を殺します。安心してくださいよ、少しお話しするだけなんですから。内容は電話終わった後にでも女から聞けばいいだけなんですから』
たしかに、電話自体はここでするのなら彼女に被害はない。内容も、なるべく耳を澄ませて聞いておくし、聞き漏らしたら彼女から教えて貰えばいい。
向こうも情緒が危うい様子だから、これ以上引き伸ばすのは良くないだろう。今は仕方ないか。
「優姫ちゃん、電話出られそうか?」
「えっ、はい、えっ?」
「怖かったら出んでもええで」
自分の携帯を眺めていた優姫ちゃんに声をかけると、俺の持っている携帯をジッと見つめてから、よしと気合を入れて頷いた。
「大丈夫です。電話、出ます」
「……相手は澤村っちゅー錦山組の幹部や。話聞くだけでええからな」
「はい」
もしもし、と電話口に声を出す。先程までの情緒の激しい澤村はなりを潜め、紳士的に努めようと声を和らげていた。
『はじめまして。これまで手荒な真似をしてすまなかったね。君に酷いことをした部下はこちらで処罰しておくから、許してはもらえないだろうか?』
「いやです。私以外の人にも酷いことをした貴方達のこと許す気もないし、これ以上話もしたくないです。もう関わらないでください」
おお、思ったよりはっきり言うやないか。
澤村も声を詰まらせている辺り、また怒り狂いそうなのを耐えているのだろうことが窺える。
『そんなこと言わないでくれよ。俺達には協力してくれたら、君の願いを叶えてやれるんだよ?』
「貴方達に叶えてもらう願いなんて」
『お兄さんに会いたいんだよね?』
優姫ちゃんの肩が震える。
『君のお兄さん、俺達が預かってるんだ。会いたいよね?俺達のところに来てくれたら、会わせてあげるよ?』
「な、なんで、いや、嘘だ!兄貴がいるなんて」
『嘘かどうか、今の君に確かめられる?無理だよね?俺達のところに来てみないと、わからないよね?』
「あ、兄貴に何したの、また酷いことしてるのっ?!」
『知りたかったら、一人で来い。今から五分後にその携帯にメールを送る。指定された場所に、一人で、来るんだ。それじゃあね』
電話はそこで終わった。通話の切れた携帯を持ったまま固まる優姫ちゃんを見て、やられたと頭を掻きむしる。
あんなのがハッタリなのは分かりきっている。けど、一パーセントでも可能性が生まれてしまった。澤村達が彼女の兄を捕まえているかもしれないという可能性を、こちらが持ってしまった。そうなると、彼女の兄に危害が加えられるかもしれないと迂闊に動けなくなる。彼女に電話を繋げたのは失敗だった。
「真島の兄さん、電話はどうなったんだ?」
組員をボコボコにして綺麗な山を積み上げていた桐生ちゃんが、ひと段落ついてこちらまで戻ってきたが、なんと答えたものか。優姫ちゃんは未だに俯いたままだし、こちらもどう動くか考えないと。しかし、優姫ちゃんが俯いたまま、ポツリと呟いた。
「真島さん、ごめんなさい」
「……あかんで、優姫ちゃん。一人で行くのは絶対にあかん」
「でも私、もう誰も傷ついてほしくないんです。ここまで付き合ってくれて、本当にありがとうございました。手伝ってくれるって言ってくれて、嬉しかったです。桐生さんもありがとう」
ピロリン、と彼女の持つ携帯にメールが届く。それを開いて確認すると、すぐに携帯を閉じてポケットに閉まってしまった。
「二人はここで連絡が来るまで待機だそうです。本当にごめんなさい」
「おい、待て優姫。一体何の話をしてるんだ。澤村って野郎に何を言われたんだ!」
「ごめんね、桐生さん。助けてくれてありがとう。……私、やっぱりダメだなぁ」
「優姫ちゃん」
「お願いだから、動かないでください。ごめんなさい、ごめんなさい……っ!!」
泣きそうに顔を歪ませて、謝罪を繰り返しながら彼女は走り去っていく。その後ろ姿に、昔守りたかった彼女を重ねて見てしまう。兄に会いたい一心で黒い世界へ足を踏み入れて、傷ついた彼女がチラついて心臓が跳ねた。最後に見た彼女が、何故優姫ちゃんを気にかけていたのか今なら分かる。自分と同じ危うさを感じたからだ。自分のように酷い目にあってほしくなくて、ずっと気にかけていたのだ。
ふう、と一呼吸おく。桐生ちゃんは状況がわからず、優姫ちゃんが去った後俺の方を見て説明を求めていた。
「兄さん、何がどうなってるんだ」
「まんまと澤村の口車に乗せられたんや。兄貴匿っとるっちゅーハッタリしかけられてな」
「なっ?!どういうことだ?!」
「ええか、桐生ちゃん。こうなったら俺らが頼れるんわ一人や。花屋と連絡取れるか?」
「ああ、多分大丈夫だ。そうか、行き先を探してもらうんだな」
「せや。ヒヒっ、俺らを馬鹿にした分、倍返しでやったらなあかんなぁ?」
ニタァと抑え切れない笑みを浮かべたら、また桐生ちゃんに顔が怖いと言われてしまった。
ちなみに花屋は今警察に戻っているのだが、地上に出たと同時にメッセージカードのついた花束を持ったホームレスが声をかけてきたから、なんやかかんや桐生ちゃんにはアマアマだとモニターの前でこちらを監視しているだろう花屋を笑った。