タヒ別パロ小説まとめ
国葬が終わって。
こっそりとそのからだを持ち出す。
姫さんには申し訳ないが。
変身呪文で替えたものを棺に入れた。
そのからだを持って。
はじまりの海に行く。
静かに砂浜に寝かせ。
いつも着ていた服を着せた。
大層な服なんて。
お前には似合わないから。
いつもの。
俺と過ごした服を着せて。
ただ暫く。
その横に座った。
静かに顔を覗かせ始めた太陽。
うっすらと。
その顔を照らしていく。
登り切る前に。
太陽にすら。
その最期を見てほしくなくて。
俺だけで。
それくらいのわがまま。
聞いてもらっちゃくれねえだろうか。
飛翔呪文をかければもっと簡単に運べるが。
そんな野暮なことはしくない。
脇に手を通し。
浜辺から海へ引きずっていく。
ふっ。
ははっ。
なんでえ。
お前。
こんなに軽くなっちまったのか。
あんなに重たかったじゃねえか。
じゃれあって。
俺に乗って。
俺を愛撫するときは。
もっと。
引きずりながら。
静かに。
後ろ向きに海に入っていく。
太陽を背にして。
決して。
その顔を誰にも見られないように。
俺が。
俺だけがただ。
見えるように。
腰まで海に浸かる。
もうその頃には海水の浮力で随分とお前は浮いてるもんだ。
そっと沖へ押し出してやる。
勇者は静かに。
揺蕩いながら。
沖へと流れ始めた。
オレも魔法でからだを浮かせ。
真上から。
まるで。
硝子の上から。
下の階にいる恋人を眺めるように。
その寝顔を眺めた。
静かに沖に進むからだ。
本当はきっと長い時間揺蕩った。
でも一緒にいる時間が長すぎて。
そんなのはあっという間だった。
浮力を失い。
そのからだは静かに海に沈んでいく。
胸の前に手を組み。
足先を少し広げ。
その顔は。
瞳は。
もう空を眺めることはない。
顔が完全に沈み切るまで。
その傷を撫でてやる。
海に溶け込んでいく男を。
ただ真上から眺め続けた。
少しずつ。
暗い海の中へ消えていく愛しい人を。
ただ真上から眺め続けた。
意外だ。
こんなにもあいしているのに。
涙は。
ひとつもでなかった。
完全に消えてしまった。
アイツの姿を。
さっき見えていた形のまま。
記憶だけで眺め続ける。
太陽はもう上がりきっていた。
水面の少し上を浮いていただけだが。
思わずその場で立ち上がり。
服の砂を払うような動き。
今になって。
動揺してんのかな。
なあ。
ここにいるのは。
お前がここで眠ってるのは。
俺しか知らないんだぜ。
誰も。
先生も。
じーさんも。
いいよな?
それくらいの。
こんな。
こんな小さなわがままくらい。
最期の最期まで。
お前を俺のものにし続けたって。
水平線を眺めた。
まだ涙は流れない。
強くなりすぎちまったのかねえ。
瞼を閉じて。
静かにお前を想う。
そこで見える顔は。
相変わらずの。
溢れんばかりの笑顔だけだ。
それでいい。
それが糧になる。
目を開けて空を仰ぐ。
腰に手を据えてそれを眺めた。
今度は俺が。
見上げて護る空だ。
さあ。
護ろう。
いきることをしよう。
お前が愛する。
この地上で。
こっそりとそのからだを持ち出す。
姫さんには申し訳ないが。
変身呪文で替えたものを棺に入れた。
そのからだを持って。
はじまりの海に行く。
静かに砂浜に寝かせ。
いつも着ていた服を着せた。
大層な服なんて。
お前には似合わないから。
いつもの。
俺と過ごした服を着せて。
ただ暫く。
その横に座った。
静かに顔を覗かせ始めた太陽。
うっすらと。
その顔を照らしていく。
登り切る前に。
太陽にすら。
その最期を見てほしくなくて。
俺だけで。
それくらいのわがまま。
聞いてもらっちゃくれねえだろうか。
飛翔呪文をかければもっと簡単に運べるが。
そんな野暮なことはしくない。
脇に手を通し。
浜辺から海へ引きずっていく。
ふっ。
ははっ。
なんでえ。
お前。
こんなに軽くなっちまったのか。
あんなに重たかったじゃねえか。
じゃれあって。
俺に乗って。
俺を愛撫するときは。
もっと。
引きずりながら。
静かに。
後ろ向きに海に入っていく。
太陽を背にして。
決して。
その顔を誰にも見られないように。
俺が。
俺だけがただ。
見えるように。
腰まで海に浸かる。
もうその頃には海水の浮力で随分とお前は浮いてるもんだ。
そっと沖へ押し出してやる。
勇者は静かに。
揺蕩いながら。
沖へと流れ始めた。
オレも魔法でからだを浮かせ。
真上から。
まるで。
硝子の上から。
下の階にいる恋人を眺めるように。
その寝顔を眺めた。
静かに沖に進むからだ。
本当はきっと長い時間揺蕩った。
でも一緒にいる時間が長すぎて。
そんなのはあっという間だった。
浮力を失い。
そのからだは静かに海に沈んでいく。
胸の前に手を組み。
足先を少し広げ。
その顔は。
瞳は。
もう空を眺めることはない。
顔が完全に沈み切るまで。
その傷を撫でてやる。
海に溶け込んでいく男を。
ただ真上から眺め続けた。
少しずつ。
暗い海の中へ消えていく愛しい人を。
ただ真上から眺め続けた。
意外だ。
こんなにもあいしているのに。
涙は。
ひとつもでなかった。
完全に消えてしまった。
アイツの姿を。
さっき見えていた形のまま。
記憶だけで眺め続ける。
太陽はもう上がりきっていた。
水面の少し上を浮いていただけだが。
思わずその場で立ち上がり。
服の砂を払うような動き。
今になって。
動揺してんのかな。
なあ。
ここにいるのは。
お前がここで眠ってるのは。
俺しか知らないんだぜ。
誰も。
先生も。
じーさんも。
いいよな?
それくらいの。
こんな。
こんな小さなわがままくらい。
最期の最期まで。
お前を俺のものにし続けたって。
水平線を眺めた。
まだ涙は流れない。
強くなりすぎちまったのかねえ。
瞼を閉じて。
静かにお前を想う。
そこで見える顔は。
相変わらずの。
溢れんばかりの笑顔だけだ。
それでいい。
それが糧になる。
目を開けて空を仰ぐ。
腰に手を据えてそれを眺めた。
今度は俺が。
見上げて護る空だ。
さあ。
護ろう。
いきることをしよう。
お前が愛する。
この地上で。
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