4043パロ小説まとめ

日記へ。

ここ最近サボってたもんで何から書くか思いついてないが、とりあえず訓練のためにペンだけは走らせようと思う。次の街で新しい冊子を手に入れなきゃ、また適当な洋紙に書いてくしゃくしゃにしているのを番に見られて怒られちまう。

今は相変わらず野宿だ。
番が運ぶブランケットや簡易マットレスがそろそろヘタってきた。こちらについても早急に新しい物を調達するべきだが、次の街で手に入るだろうか。

つい一昨日まで、小さな村にいた。
またひと悶着あったが、何、いつものことだ。
そこは野菜が豊富な村で、食い物に困っている様子が見受けられないのは良かった。だだ、瘴気を吐く魔物を観測してしまったのは良くなかった。
一個体が村の娘を攫って食う気だったのだろう。阻止できて良かったが、魔物の食糧事情が乏しくなってきているのは報告を受けた通りのようだ。
申し訳ないが人間も生きるのに必死だ。個体数を減らす手を止めるわけにも行かない。甘んじて受け入れてもらうしかない。

もう少し、やりようはあるかもしれないが。
今は俺達二人で手一杯だ。



番の頭の上で書いてたから文字がよれた。
木陰が気持ちいい場所だが、せめて少しでも平らな形の石でもあれば良かったのに。

次に行く街は、どうやら魚が旨い、と聞きつけた。
俺じゃない、番がだ。
いや、正確に言えば、魚が旨いかどうかまでは分からんが、魔物の群れが闊歩する海岸沿いの集落に向かっている。仕事だよ。まあ海岸沿いだ。それなりに魚も旨いだろう。
また瘴気を吐く魔物じゃなけりゃいいが。



大事な冊子の紙がくしゃくしゃだ。番が寝てるのによく動く。頭の上で書きたくはないが、膝を枕替わりにされてちゃ他に選択しがない。

今こうやって顔を眺めながら書いているが、まあ随分と小皺が増えた顔になった。蓄えた顎のヒゲが接吻の時にくすぐったいのには慣れたが、あれで背中に口を這わされた時が一番くすぐったい。気に入ってるようで剃れとも言いづらい。どうしたもんか。

皺といえば最近眉間の皺が増えた、なんて愚痴っていたが、それはきっと、俺がいつものように無茶をして心配をかけさせているからだ。すまない。

だが俺としても何もしないで担いでもらうだけ、補助魔法をかけるだけで済ますつもりはない。なんのために対として一緒にいるんだって話だ。自分の尻くらい自分で拭える。

…と言い切れたらカッコ良かったんだが。
現実は非情だ。手足の生成は難なくこなせるようになった。日常生活であれば何ら問題はない。だが戦闘面では違う。
相変わらず魔法力の出力の調整にしくじってオーバーフローに耐えられないでいる。情けないことに、こんなご老体のような身体に熱が篭って火照りを訴える。その都度、番と床を共にしなければならないのが、昔と違ってもどかしい。

若い頃であればそれはそれは、お互いの身体で語らい合う程度には激しく愛し合っていただろう。恋人同士であれば普通のことだ。したいときにすればよかった。

この歳、この身体になってからは違う。
まともに動き回れないことを補助するのに始めたことだが、まさかこんな副作用に苦しめられるとは思わなかった。日記には何度綴ったか分からないほどだ。
番に抱かれることは嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。
ただ自分で自分のことができないこの情けない上腕や太ももを、片方しかない足を見ると、愛しあうこと以外での身体の繫ぎ方に、申し訳無さと不甲斐なさがついて出てくる。

たまに番は泣いてくれるが。
この手足と引き換えに大きな危機を救った。
それに後悔はない。
脚がなくなったことも、番が俺を抱えて運ぶことに喜びを見出してくれているなら、正直それで構わない。
ただ。
情事の時、俺の腕で二度と番の身体を、頭を、かき抱いてやれなくなった事で寂しい思いをさせてしまっていることは、少しだけ、番に申し訳なく思う。

今は日常生活を過ごす程度の出力で正直手一杯だ。
もう少しだけ、あの時お前に触れていたような肌触りや、力加減にならないだろうか。
そんなことをいつもぼんやり考えながら、今も訓練のためにこの羽根ペンを紙の上で走らせている。

番を愛している。
だからこそ、もっと、もっとこの気持ちを身体で送り届けてやりたいんだ。


そろそろ紙が切れそうだ。
次はいつ書き込めるやら。

それじゃ。
次の冊子が手に入るまで、お休み。
日記よ。
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