スプーキーE編

 売れない新作のからあげの商品をあの奇妙な体型の中年男性が売り場にある分全部買って行った事件から数日後、あれほど売れなかった商品だったのに今では飛ぶように売れている。あまりの変わりように私も先輩も首を傾げている。
 コラボをしているからあげについて、本社からの指示で各店ポップを描いてアピールをしろとのことだが、この先輩は自分の仕事を私に放り投げて別の仕事をしている。からあげのパッケージデザインをした人がまたアイスリームでの仕事もしているらしく、アイスクリームもこれから売り出すらしい。先輩はそのアイスクリームの宣伝什器を組み立てている。本格的な機材の導入は後日らしいが、その機材の設置も我々店員のみでしろとのこと。
 組み立てられた什器は人と変わらないくらい大きい。からあげのくたびれたパッケージとは違ってこちらは丈夫に作られて、すぐにへにょりと折れることはなさそうである。
 そのくたびれたパッケージも丈夫な容器に変わったのでこちらも見た目はマシになった。
「やっぱり、パッケージがくたびれてないものからちゃんとしたものに変わったのが良かったんですかね?それともあのおじさんが買ったおかげですかね」
「いや、後から付属された"スパンキー"だとかいう香辛料でしょ」
「ええ……あの不味そうな粉ですか?新商品に訳わかんない改悪物を付けても最初のを気に入っていたお客さんはびっくりするのに。付け忘れでしたっけ?そんな重要なもの付け忘れるなんて、おっちょこちょいな」
「おっちょこちょいって……」
「不味そうな粉で引き付けられたってより、
 私達が彼の話をしていると、聞きつけたかのように奇妙な体型の中年がやってきた。
「この間の新作どうでした?」
 不機嫌そうな顔のまま、この間買ったものと同じものという。
「これはいつまで売っている?」
「これはですね……」
と期限を教えると、少し何かを呟いたが聞き取ることが出来なかった。
「あの!」
 ぎろりと睨まれてしまう
「これ、味はどうですか?」
「ああ?」
「これだけ買ってくれるから、気に入ったところを聞きたいと思いまして。ポップを作ろうとしているんですけど、実際に食べている人の意見を聞きたくて」
 あからさまに面倒と顔に書かれて苦笑いをしたくなったが、一番のリピーターはこの人に違いないのだ。
「おまけ!おまけするんで!」
 廃棄予定の個数を確認し、チラッと同僚を見ると、一本指を立ててきた。口封じ。
 お客さんは舌打ちしつつも教えてくれた。態度こそ酷いが、ノリはいい。
「ちなみにそのポップのアイスクリームって、今買われたからあげのデザイナーさんがでがけているそうですよ」
 一瞬、お客さんの目つきが鋭くなった気がしたが、丸い目が楕円形になったかどうかのレベルで自信はない。
「そのアイス」
「はい?」
「チョコレート味は入れるんだろうな?」
「もちろんです!」
 にっと笑いながら、親指を立てた。
2/2ページ
スキ