『造られた人間』イリス 2 セブン スネーク
エルキドゥがカルデアに召喚されてひと月は経過した。最初はカルデア中を徘徊しては会った人間、サーヴァントにある人物のことを尋ねていたが、今はすることはない。その代わりに彼はある場所に頻繁に通うようになっている。
カルデアにいるサーヴァントは召喚された本来の目的に沿った行動することもあるが、特異点の修正に呼ばれなければ行動に制限はなく自由行動が認められている。
「手伝ってくれるのは嬉しいのだけど、戦闘訓練に行かなくていいの?」
職員の一人であるイリスはやや呆れた様子で椅子を渡した。エルキドゥからの申し出は実際のところ手伝える領域はないのは分かり切っているのだろうが、押し返すことはない。
「今日は誰からも誘われてないからね。暇な時間になら来てもいいんだろう?」
にこにこと椅子に座り、珈琲をイリスの机に置く。彼女はエルキドゥの手とマグカップをじっと見てため息をつく。
「ちょうど休憩しようとしてたし、ありがたく貰うわ」
イリスは一口飲んで、やや目を見開く。
「私の好み……教えた?」
「いいや、君のことに関してはどの職員も英霊も名前と職員であることしか知らなかった。たまたまさ」
「甘い」
「それが君の好みの味なんだね」
「……父親そっくりって言われたわ」
「フォー・スティックスからかい?」
「そ」
イリスはエルキドゥの手を再度見る。
「……、ねえ、その手、もう大丈夫なの?」
「ああ、僕は多少のことじゃ壊れないからね。乱暴に使ってくれても構わないさ」
イリスは席を外し、どこかに行く。しばらく待つとマグカップを持ってエルキドゥに渡した。マグカップからは湯気が立ち、香ばしい匂いを漂わせる。
「私だけ飲んでるのは悪いし」
「ありがとう、いただくよ」
エルキドゥが珈琲を飲んでいる間にイリスはカルデアのデータベースにアクセスしている。見たところ彼女の専門としている部門だが、やや違う。
「休憩の間くらい休みなよ。僕のような存在と違って人間は下手をすれば椅子に座っていたら死んでいたってことも起こりうるんだから」
「…………、大丈夫」
周囲の音が鈍く聞こえる。
「こう見えて普通の人間より丈夫に出来てんのよ」
エルキドゥは思わず席を立ち、イリスを見つめる。周囲の音はやや鈍く、視界もややピントがぼやけている。しかし気配感知はしっかり機能している。
「いくら再生できるからって、やっぱりその手を傷づけてしまったのは申し訳ないと思ってんのよ。私の落ち度なんだから」
視線のみで見渡し席に戻る。
「ねえ、この間の頼みって覚えている?」
「ああ、あの壁を壊したのが君ってことだろう。もちろん言っていないとも。仮に行ったとしても、サーヴァントの暴走による破壊に比べたらかわいいものさ」
「でもこの世界でこんなことが出来る人っていないでしょ?」
“この世界”と言う声が遠く聞こえた。
「……そうだね、サーヴァントとしての知識でもこんな力を持つ人間は見たことがない。……でも君は人間だ」
「……もう一つ頼み事してもいい?」
「また明日来てもいいなら」
おどけたような声音にイリスはくすりと笑う。
「戦闘訓練の時に付き合ってほしいの」
「君の世界に戻すじゃなくていいのかい?」
きょとんとエルキドゥを見た。視線が一瞬下を向き、苦笑いを浮かべる。
「たぶん、戻れるかは分からないから。でもこの力に関しては制御出来るようになりたいの」
「戻れるまでいくらでも付き合うよ」
手を差し出すが、イリスはやや躊躇しているらしく、手を伸ばしかける。
「私が戻る前にカルデアが消えそう」
「そうなれば僕の奥の手を使うさ」
「?」
「それまでは訓練で少しでも君の助けが出来たらいいな」
カルデアにいるサーヴァントは召喚された本来の目的に沿った行動することもあるが、特異点の修正に呼ばれなければ行動に制限はなく自由行動が認められている。
「手伝ってくれるのは嬉しいのだけど、戦闘訓練に行かなくていいの?」
職員の一人であるイリスはやや呆れた様子で椅子を渡した。エルキドゥからの申し出は実際のところ手伝える領域はないのは分かり切っているのだろうが、押し返すことはない。
「今日は誰からも誘われてないからね。暇な時間になら来てもいいんだろう?」
にこにこと椅子に座り、珈琲をイリスの机に置く。彼女はエルキドゥの手とマグカップをじっと見てため息をつく。
「ちょうど休憩しようとしてたし、ありがたく貰うわ」
イリスは一口飲んで、やや目を見開く。
「私の好み……教えた?」
「いいや、君のことに関してはどの職員も英霊も名前と職員であることしか知らなかった。たまたまさ」
「甘い」
「それが君の好みの味なんだね」
「……父親そっくりって言われたわ」
「フォー・スティックスからかい?」
「そ」
イリスはエルキドゥの手を再度見る。
「……、ねえ、その手、もう大丈夫なの?」
「ああ、僕は多少のことじゃ壊れないからね。乱暴に使ってくれても構わないさ」
イリスは席を外し、どこかに行く。しばらく待つとマグカップを持ってエルキドゥに渡した。マグカップからは湯気が立ち、香ばしい匂いを漂わせる。
「私だけ飲んでるのは悪いし」
「ありがとう、いただくよ」
エルキドゥが珈琲を飲んでいる間にイリスはカルデアのデータベースにアクセスしている。見たところ彼女の専門としている部門だが、やや違う。
「休憩の間くらい休みなよ。僕のような存在と違って人間は下手をすれば椅子に座っていたら死んでいたってことも起こりうるんだから」
「…………、大丈夫」
周囲の音が鈍く聞こえる。
「こう見えて普通の人間より丈夫に出来てんのよ」
エルキドゥは思わず席を立ち、イリスを見つめる。周囲の音はやや鈍く、視界もややピントがぼやけている。しかし気配感知はしっかり機能している。
「いくら再生できるからって、やっぱりその手を傷づけてしまったのは申し訳ないと思ってんのよ。私の落ち度なんだから」
視線のみで見渡し席に戻る。
「ねえ、この間の頼みって覚えている?」
「ああ、あの壁を壊したのが君ってことだろう。もちろん言っていないとも。仮に行ったとしても、サーヴァントの暴走による破壊に比べたらかわいいものさ」
「でもこの世界でこんなことが出来る人っていないでしょ?」
“この世界”と言う声が遠く聞こえた。
「……そうだね、サーヴァントとしての知識でもこんな力を持つ人間は見たことがない。……でも君は人間だ」
「……もう一つ頼み事してもいい?」
「また明日来てもいいなら」
おどけたような声音にイリスはくすりと笑う。
「戦闘訓練の時に付き合ってほしいの」
「君の世界に戻すじゃなくていいのかい?」
きょとんとエルキドゥを見た。視線が一瞬下を向き、苦笑いを浮かべる。
「たぶん、戻れるかは分からないから。でもこの力に関しては制御出来るようになりたいの」
「戻れるまでいくらでも付き合うよ」
手を差し出すが、イリスはやや躊躇しているらしく、手を伸ばしかける。
「私が戻る前にカルデアが消えそう」
「そうなれば僕の奥の手を使うさ」
「?」
「それまでは訓練で少しでも君の助けが出来たらいいな」