メフィスト夢

 起きて頭を上げればゲーム画面とご対面。ゲームをやっていた途中で寝落ちしたことに寝ぼけた頭でもすぐに思い出せた。続きをやるかベッドで寝るかで迷い、雪花の様子を見に行くことを優先した。
 雪花とは別々のベッドで寝ているが、毎晩彼女のベッドで少し寝ている。契約としてでも、個人的な欲求も含めて好きで寝に行っている。
 時間を見ても今日は寝ていることは間違いない。今日は寝言で呼ぶか、それともメッフィーぬいぐるみを抱き締めて寝ているか、期待に胸を膨らませ寝室の扉の前に立つ。隙間から光が漏れている。
 小さくノックをして返事を待つ。寝ていることを確信し、静かに扉を開ける。
 絨毯の上で横になっていた。雪花も寝落ちしていたらしい。近づくに連れて違和感のある服装に目が行く。間違いない。ハニハニシスターズの衣装だ。机に置かれたミシンや裁縫道具からして、既製品を直したか、自作したものか。衣装が完成して試しに着たのだろう。力尽きて寝てしまったといったところか。乗り気ではない割にこちらの希望を叶えようとする。
 雪花を抱き抱え、ベリアルに着替えさせるか一瞬考える。見せたくないので止めた。
「淑女のあられもない姿を目にするわけにはいきませんからね」
 とんだサプライズに眠気も飛び、雪花の顔色を確認しながら感触を楽しむ。誰かに着替えさせるなら自分がした方が楽しい。仮に起こしても恥じらいがあって可愛いものだ。雪花をベッドに横たわらせ、ボタンに手をかける。
 雪兎の雪像が何体か入ってきた。兔らしく跳ねながら、雪花の元に駆け寄る。
「おや、ご主人の着替えをしてくれるのか」
 げしげしっ、下位の悪魔だという容赦なく蹴る。痛いと言っても蹴りを止めない。変態は早く出ろと言わんばかりに蹴られながら追い出された。
 しばらく待ち、ごそごそとした物音もなくなる。こっそり扉を開ければ、目の前に彼らが立ち塞がり、主人の肌を守る。ご丁寧に高さもメフィストに合わせて、何匹か肩車で高さを調整している。
「……まだ」
 当然と言わんばかりに頷く。
 体育座りで待つ姿はとてもじゃないが、虚無界の第二権力者にも理事長にも見えない。
「いやあ……何しているんでしょうね、私……」
「……わ……なんか、ごめんなさい」
 扉が開いたことにも気付かなかったのが情けなく感じ、
「………………いえ」
力なく答えた。
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