075.身染めの褐葉
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この小説の夢小説設定簡易的な夢主設定
夢主は
・女子高生(深陽学園の女子生徒)
・デザイナーの卵
・特殊能力の持ち主(MPLS)
・蟬ヶ沢(スクイーズ)とは昔からの知り合い
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蟬ヶ沢達は紅葉のライトアップがされた場所まで来た。足湯もあるので、湯につかりながら観賞出来る。ただ、観るには時間としては遅い方なので人はいない。
来たついでで足湯に浸かる。温泉は流石に混浴出来ないが、足湯ならばいっしょに入ることが出来る。
「流石にここには来ないわよね」
「来ないでしょ」
「良かったわあ。もう少しで蝶を圧縮してしまうとこだったもの」
「別に、あの状況悪くなかったよ」
水鉄砲で温泉を掛けられた。掛けた張本人は悪びれもせずにタオルで雑に拭いてくる。彼らしくアフターもするのだが、そもそも濡らすようなことをしなければいいというのに。
「私は気が気でなかったわよ。まあ、ありがと」
「……なにが?」
にっこりと笑みを浮かべながら蟬ヶ沢は距離を詰める。蝶が後ろに下がろうとするが、彼はがっしりと蝶の両腕を掴み、それ以上の移動を許さない。
「セ、セミガサワサ……ン?」
「私が気付かないとでも思った?」
何度見たであろう、静かな怒り。能力で視なくても分かる。無断で能力で操作したことを怒っている。
蝶は彼が怒っていることよりも、毎度のごとく詰め寄る距離の近さに考えが持って行かれる。
頭一つ分の近さで睨む。
「本当にもう少し待ってくれるだけであの人達は宿に戻るのに。あのお店は閉店時間で、そろそろ閉まるところだったのよ」
「でも、それならこっちに来るかもしれないでしょ」
「それはないわよ」
「なんで?」
「………………」
「なんでよ」
「あのお店が閉店後に開くお店があるのよ」
「……あー……。世の中娯楽施設ってくくりが広くて困るわ」
「……そうよ」
「だからか、あの辺歩いていたとき周囲の視線が痛くなってきたの」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。それ早く教えなさいよ」
「うん、だから、引き込まれた間は見えないようにしてた」
蟬ヶ沢は項垂れて、蝶の肩にもたれる。
「とっとと逃げてしまえば良かったわね。気分とかは悪くなってない?操作したのは意識と物理の両方じゃない」
蝶の能力は視る分には問題はないが、操作する時は注意する必要がある。場合によって気分や体調が悪くなる。
「平気。操作したのは修学旅行の人たちだし、あのセミさんが見ていた人たちだと嫌だったけど」
「あの人たちについてはもう忘れなさい。というか忘れて頂戴。気まずいわ」
「でも、けしかけた修学旅行の学生には悪いことしたね」
「まあ、まだ開いてなかったし、あの子達も気づいてないでしょ」
冷えてきたからか、蝶はくしゃみをしてしまう。
「あら、もう帰りましょうか」
二人は足湯のある場所から離れる。
帰りは急がず、ゆっくりと旅館へ戻る。
何度この手を伸ばすことを迷った事だろう。
伸ばし掛けた手を蟬ヶ沢が握る。握るというよりは掴んでいるといった方が正しいだろう。
「やっぱ若い方が体温が高いのかしらね」
掴んだ手を持ち上げて、にっと笑う。
「中年だから新陳代謝が落ちてんでしょ」
蟬ヶ沢はこんと握った手で頭を叩く。
「同じ秋でも私達がいるところとは全く違うわね。寒いわ」
任務の時もだが、躊躇なく握る。
握ってくるのは常に貴方からだ。
貴方から握って欲しい。
私が望むのではなく、貴方から望んでと思うのはわがままだろうか。
*****
帰り道、蝶はくしゃみが止まらず困っていた。道すがら蟬ヶ沢も気にかけてくれてはいるが、止まる気配はない。鼻炎だろうかと考えるが、朝から幾度から起きていたことから違うと頭の中で考え、否定する。熱いと思っていたのも、違う熱さのせいも入っていたらしい。
「風邪、か」
ぼうっと思考が定まらないまま呟き、ふらりと蟬ヶ沢にもたれ掛かった。