110.背伸びした先
Please tell me your name
この小説の夢小説設定簡易的な夢主設定
夢主は
・女子高生(深陽学園の女子生徒)
・デザイナーの卵
・特殊能力の持ち主(MPLS)
・蟬ヶ沢(スクイーズ)とは昔からの知り合い
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深夜、起きてるのは早朝から仕事がある人間か深夜に働く人間だろう。一人リビングで珈琲を飲む蟬ヶ沢はそのどちらでもない。パソコンは一度は開いたファイルを閉じて、完全に手持ち無沙汰だ。明日はPWの新店舗の準備だ。寝なければ支障が出る。それは分かっているが、少しばかり落ち着かない。
ちらりと寝室の扉を見る。扉の向こうには蝶が寝ている。明日が早いからと、自主的に一緒に帰ってきた。まだ女子高生だという認識が薄いのか、ベッドに連れ込まれそうになったので焦った。私だってまだ捕まりたくないのよと必死の抵抗もあり、ベッドは彼女が占拠している。
視界がふにゃりと柔らかいもので覆われる。小さくも細い蝶の手だ。
「せみさん」
文字までも丸くゆるく表記されそうな声に苦笑いする。
「寝なさいよ」
「せみさん寝てないじゃん」
「ちょっとは寝たわよ」
「……」
触れているから蟬ヶ沢の心理状況は彼女に筒抜けだ。振り返ればジト目で睨まれる。
「今から交代セミさんがベッドで寝て」
「いいわよ。このままソファで寝るもの」
蟬ヶ沢は蝶の手から逃れてソファに転がる。クッションも兼ねた大きめの膝掛けも広げて仮眠の形を取る。
蝶はソファの背もたれから乗り上げ、蟬ヶ沢の上に乗る。
「あなたねえ、襲われてもいいの」
「襲わないって“視”えてるからいいの」
大人が寝られる大きさといえども二人が寝転ぶのは難しい。蝶が落ちないように両手で抱える。
「通報しない?」
「しない」
「……半径五キロ圏内に誰かが来る意識は視えないのよね」
蝶は少し視線をきょろきょろ見て言う。
「いないし、レインはたぶん寝てるし、キャプテンも寝てる」
蝶の能力は便利だ。他人の探知に優れた能力は他にないだろう。探知対象によっては蝶に負荷がかかるのが欠点だが。探知には大なり小なり負荷がかかるらしい。
感謝と謝罪も兼ねて、わしゃわしゃと蝶の頭をもみしだく。蝶が恥ずかしがってべしべし叩こうが、合成人間にとっては痛くも痒くもない。この非力さにはにやけてしまう。特殊な能力があっても、この子はただの女の子だ。
蝶を抱き締める。
「ちょ、セミさん!?」
「なあに?」
意地悪で足を絡めて、逃げられないようにする。
「ベッドで寝てよ……」
「このままでいさせてくれたら」
「レ、レインが来るかもよ」
蝶の手を握る。
「来るかしら」
蝶が意識的に探知せずともレインは来ない、触れた手から感覚は伝わる。蟬ヶ沢と蝶だけの特殊な意思疎通は誰にも教えていない。
ベッドで寝ろとは言われたが、このままの方がいい。ベッドで寝てしまえば彼女は逃げてしまうだろう。膝掛けは彼女にもかかるようにして本格的に仮眠しようとする。
胸に顔を埋められ罵られる。
「……ばか」
「いつものことよ」