蟬ヶ沢さんは心配性
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夢主は
・女子高生(深陽学園の女子生徒)
・デザイナーの卵
・特殊能力の持ち主(MPLS)
・蟬ヶ沢(スクイーズ)とは昔からの知り合い
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005.助手席の君
平均年齢が成人を越すなかでの未成年はひときわ目立つ。蟬ヶ沢のデザイン事務所で唯一未成年の人物がいる。正式な職員でもないかといって誰かの親戚でもない。誰かが迷子を見つけて保護として連れてきたわけでもない。保護で連れてくるような年齢でもないのだ。
唯一の未成年の蝶はデザイン事務所で噂になっている。何年も前からこの事務所にいて仕事の手伝いをしているが、正式な職員ではない。人事部でもデータベースは載っていない、ほぼ無関係の人物なのだ。名前が出るときは手伝いをしたとき、アルバイトとして隅の隅に書かれる。
なんとも説明しがたい人物で、女子高生ともなると男性職員のいい興味の的である。
****
事務所には蟬ヶ沢も蝶もいるが、別の部屋にいる。所謂デザインするための部屋だ。職員は五人ほどそれぞれ書類をまとめたり、調べたり、急用ではないが消化した方がよい依頼をこなしている。
二人がいない部屋である職員が二人に関して話始めた。
部屋は扉がないので、それなりの声量で言えば廊下まで聞こえるだろうが、上の階までは届くことはない。普通の人間ならば。
人事部の職員がぼそりと呟いた。
「蝶って、セミさんの何なんでしょうね」
話しかけてきた人物の隣の職員が聞き返す。
「何って?」
「ほら、娘さんて訳でもないのに、なんでいるんだろうなって」
「それもそうだな」
「あんな言葉遣いだから、あっちが好きなのかって思っちまうけど、そうでもないし?」
蟬ヶ沢は女性の言葉遣い、いわゆる女言葉を使う。女言葉を使うだけで、彼の好みが同性なのかは職員でもいまだ謎である。職員も特に気にしていない。
「まさか彼女だったりしてな!」
「年の差ってやつか!」
蟬ヶ沢はどう見ても中年なのだ。年の差としてはなかなか離れている。
「そうでなかったら、誘おうぜ!」
「あなたたち聞こえているわよ」
いつのまにか蟬ヶ沢が彼らの近くに来て、べしっとゲラゲラ笑う男達の頭をボードで叩いた。
****
帰りの運転で蟬ヶ沢は蝶に尋ねた。
「………最近、変な男に絡まれてないわよね?」
「この間のドリフト男以外なら報告するようなことはないよ」
「その言い方だと私が変な男ってポジションになるわよ」
「セミさん、それは本気で言っている?」
「どこが変なのよ」
「うーんまあ、色々。で、なんでたまそんなこと聞いてくるのよ」
「ここの職員にナンパとか、彼氏いるのとか……私が……とか」
後半は恥ずかしさで言えずに誤魔化した。
「後半何言った?」
蟬ヶ沢が窓の外を見て、後方を確認する。
「なんでもないわ、ほらほらそろそろ停めるわよ。荷物の確認して」
「…………」
蝶が無反応なので、蟬ヶ沢もなんと反応したらよいか困ってきた。
蟬ヶ沢が声を掛けようかと思った時、蝶がやけに真剣な声音でとんでもないことを言う。
「セミさんの彼女なら喜んでなるわね」
蟬ヶ沢は見事なドリフトをして停車した。