001.~
Please tell me your name
この小説の夢小説設定簡易的な夢主設定
夢主は
・女子高生(深陽学園の女子生徒)
・デザイナーの卵
・特殊能力の持ち主(MPLS)
・蟬ヶ沢(スクイーズ)とは昔からの知り合い
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
1.雨の日は
雨の日のことだった。
******
携帯電話の画面を見つめて、窓の外を眺める。外は生憎の雨である。
画面を操作して出すのは彼の連絡先。何か連絡をするには遅い時間。仮に連絡が来るとしたら任務の時だろう。
雨の日は気持ちが落ち込みやすいのは気圧の変化のせいだ。
この気分が落ち込んで、寂しく思うのはこの天気のせいなのだろう。
雨はどしゃぶりほどの雨量はなく、小雨より多いくらいだ。
フェイク・シーズンで両親の蝶への意識をそっと彼らが見ているテレビに向けさせる。これでしばらくは彼女が外に出たことに気づくことは無いだろう。
玄関を開けて、家の前の公園の駐車場へ行く。そこに彼は車を停めるのだ。呼んでもいないし、一切連絡していないので、彼は来ていない。そのはずだった。
蝶は思わず、くすりと笑ってしまった。
駐車場にはとても見慣れた車が見えた。その車から傘を差した中年男性が出てくる。
「呼んでないんだけど?」
「私達が会うときは雨の日が多いじゃない。ノルマよ、ノルマ」
蟬ヶ沢はウィンクをして蝶の傘を仕舞い、自分の傘に入れる。蝶は傘を持っていた手で蟬ヶ沢の手を繋ぐ。お馴染みの彼の意識の向きが見える。しんみりとした感触から干した布団のような温かみのある意識の感触が蝶へ向けられた。
「どんなノルマよ」
「貴女に会うノルマ」
「ストーカーはやめてくださーい」
漫才をしつつ、蟬ヶ沢のエスコートで車に入る。車のCMで聞いたことがある気障な曲が流れている。
車に入ってからは二人とも無言になる。話題がないから黙っている訳では無いのだが、蝶も蟬ヶ沢も黙ってしまった。居心地が悪くないので、蝶も特に話しかけずにいる。
蟬ヶ沢と同じ空間にいる時は独特な空間になる。これが彼以外の人ならば、蝶へ向ける意識が明らか視えるのだが、彼に関しては直接触れないと視えない。
彼といて気が楽なのはそれもある。触れないとどこに意識が向いているのか分からないのは怖いかもしれない。でも視えないのに害を与えることがないと分かるのだ。
窓から反射で映る蟬ヶ沢を見る。丁度こちら見ていて、目が合った。映った蟬ヶ沢はにやりと笑い、手招きしてきた。
振り向くと、彼は両手を広げて蝶を迎える。
蝶は素直に側には行かない。行きたいが、なんとなく照れくさい。
蝶が迷っている間に蟬ヶ沢は彼女を抱えて、自分の膝に乗せた。睨まれても彼はしれっとした顔で蝶を両腕で閉じ込める。
悔しくなってきたので、後頭部を後ろにいる人物へぶつける。少しだけきつく抱き締められ動けなくされた。
胸に耳を当てる。心拍数は高くもなく引くくもない。
いつぞやの不審者に狙われた時のことを思い出す。あの時は蟬ヶ沢はかなり慌てていた。今みたいに両手に抱えていたときは、すぐに放したが今は逆に放してくれない。
放さなくてもいいのだが。
外の雨脚は悪くないが、良くもない。ひたすらしとしと降り続いている。
「雨、やまないね」
「……そうね。でも、やまなくてもいいわ」
そうだね、口だけの動きで返事をし、蝶は夢の世界に入った。
2.cute aggression
腕に蝶を抱えたまま座席を少し傾ける。
寝ている顔を見る。
少しだけつねる。すぐ会えたと言うのにこの子はすぐに寝てしまった。
天気が悪いとこれだ。気分は落ち込んでしまう。
******
スクイーズとしての任務として一仕事終えた帰りだ。
ぱらぱらと降る雨を眺めながら、スクイーズは車を走らせる。
気分はいつもよりも沈んでしまっている。あの子と帰りが一緒なら気晴らしでも出来るのだが、時刻は未成年を外出させたくない時間である。
出てくれるなんて期待はしてないと言えば嘘だが、こんな時間はきっと彼女は起きていないだろう。
どうせ十数時間後に職場で会うのだが、今抱いている願望は職場では絶対にしたくない。
未練がましくいつも彼女を下ろす駐車に停車する。
缶コーヒーでも飲んだら帰るかと、車から出る。
スクイーズは固まった。
公園の入り口に蝶がいた。
******
蝶を見つけるやいなや、すぐに車に入らせた。こんな夜更けに出歩くことに叱りたいが、嬉しさもあり、自分でも口角が上がっているのが分かる。
ふざけてこっちに来ないかと両手を広げるもそっぽを向かれてしまったが、かかえて膝に乗せる。頭突きをされたが、まったく痛くない。意地悪で少しだけ腕の力を強くする。
無理矢理にでも離れようとするのだろうと思ったが、予想に反して腕の中にそのまま収まってしまった。
このまま行かなければいいのになと自分勝手なことを思う。
腕の中に入れて撫でていると、蝶は寝てしまった。自分の願いが通じたのかと思うと悪いことをした気がするが、自分が撫でたことで寝たと思うとこそばゆい。
蝶を撫でていると蟬ヶ沢もうとうとしてきた。かくんと一瞬落ちて、目が覚めて、腕の中の蝶を確認する。幸いにも彼女は起きていない。
「起きないわね……」
蝶の頭を撫でながら、そとの雨を眺める。
雨は嫌いではないが、少し気分は低くなる。落ち着くこともあるし、
落ち込むこともある。今はその中間地点だ。
冷えた中で唯一のぬくもりのせいだろう。
出会って十年、十数年前、システムを裏切り隠してきたが、自分勝手な理由で明け渡さないようにしているに過ぎない。
自分の我儘だ。
今がもう少し続けばいいのに。
でも、どうせならちょっと起きて欲しい。
頬をつねってみるが、起きる気配はない。
しばらく頬を弄る。
もっと、何かしてみようかしら。
手の甲にキスとか。
そっと蝶の手を持ち上げると、
「ふ……うう、うん?」
蝶が起きたのですばやく元の位置に戻した。
「おはよ。と言ってもまだ夜だけど」
「ごめん、寝てた」
「良いわよ。気にしてないから」
雨脚は先程より弱まっている。
「雨、だいぶ治まってきたけど、どうする?」
蝶がちらっと上を見た。返事はせずに、ゆっくりと頭を再度預けた。