001.~
Please tell me your name
この小説の夢小説設定簡易的な夢主設定
夢主は
・女子高生(深陽学園の女子生徒)
・デザイナーの卵
・特殊能力の持ち主(MPLS)
・蟬ヶ沢(スクイーズ)とは昔からの知り合い
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
蟬ヶ沢は夜間も事務所で仕事をしていた。締切には間に合うが、少し納期を早めた方が後に何かミスが発見された時に早めに対処出来るので、自分の為の保険でもある。
作業を進める一時間、休憩として一度パソコンの画面から目を離す。背を伸ばしたり、簡易的なストレッチをしたり。
窓を見ると月が高い位置に昇っており、今の時刻が日付を跨いだことを気付かせる。
窓を開けて空を眺める。
なんとなく月をしばらく魅入る。今日の月はいつもよりも何だか惹かれる気がするのだ。
見ている内に気付く、今日は満月なのだ。
綺麗だなと思ったと同時に一人の人物を思い浮かべる。
携帯電話を取り出し現在時刻を確認する。時刻は深夜一時。ぎりぎり起きているかどうか厳しい時間だ。通信でも入れて確認しようかと指を動かしかけて止まる。連日のバイトで疲れてしまって寝ていそうな予感がするのだ。
彼女を起こしてまで今思ったことを言うのも可哀相である。携帯電話をしまい、作業の続きを再開しようとデスクに戻る。
「セミさんいるー?」
「!?」
まさか来るとは思わず椅子から転げ落ちる。いつもならば受け身も取れるはずなのだが、情けなく後頭部を勢いよく強打する。失神しなかったのは頑丈に作られた体のおかげか。痛みは通常の人と変わりなく感じるので、後頭部を両手でさすりながら静かに悶える。
「ちょっと!セミさん、大丈夫?」
蟬ヶ沢のらしくない反応に驚きつつも、机を周り蟬ヶ沢の元へ駈け寄る。手を差し伸べ、引っ張り上げる。
「またなんでこんな夜遅くにいるのよ……」
「緊急の任務が入ったから、その帰り」
「ああ……なら、早く帰りなさいよ……」
「『あいつに送ってもらってよ』って」
蝶は誰なのか言いはしなかったが、彼女の物まねで理解し蟬ヶ沢は顔面を手で覆った。
「あのおせっかい……」
「まあ、送ってもらおうとか期待していないわけでもないけど、それより手伝った方がいいと思ってね」
蝶はデスクに詰まれた資料の山とパソコンの画面を指さす。
「それはありがたいけど……もうこんな時間よ」
「朝までに戻れればいいよ。ほら、手伝えるのはどれよ、教えて」
蟬ヶ沢はため息を付いて、資料を渡す。こうなると彼女は本当に朝まで手伝うのだ。
*****
蟬ヶ沢が時間指定で依頼主に依頼主に届くように設定し、送信ボタンを押した。
「あー、一応、一区切りは出来たわ。おかげで助かったわね」
隣に話しかけるが返事はない。蝶は下の階の来賓室のソファに寝かせている。蝶は自分の仕事を終えると眠気が来て舟を漕ぎだしたので、別室で待ってもらっていたのだ。
階段を降り、部屋に入る。部屋は少し冷えているが、蝶にはジャケットが掛けられている。袖を握り、丸くなっていた。
すぐには起こさず、すぐそばでしゃがみ込み、頬を突く。軽くつねるが、まったく起きる気配はない。
「蝶は今日の月を見たのかしら」
仕事を手伝ってくれたのはいいが、満月も一緒に見たかったのだ。こうも熟睡されては起こすのもかわいそうだ。
起こすのは彼女が家に着いてからにしようと、抱き上げると、首に腕を回された。
「おわった?」
「おわった」
「ごめん、ねてた」
「寝てなさいよ、まあ、あと一時間もしたら夜明けね。ちゃんと起きれる?」
「おきれる」
「朝までいようか?」
「つうほうしてやる」
そういっても腕を話す気はないらしい。
蝶の家に着き、蝶が車の扉を閉めずに話しかけてきた。
「そういえばさあ」
「なによ」
「セミさん、今日の夜の月って見た?」
「藪から棒にどうしたの。そりゃ、見たけど……」
心臓が跳ねたのを自覚した。
「見たならいいや」
「何よ、気になるわね」
「セミさんも見たならもういいの!」
やや乱暴に扉を閉められてしまったが、すぐに扉が開けられた。
「なあに?忘れ物でもした?」
「ん」
とだけ言って、蟬ヶ沢のジャケットを返した。
「ありがと」
一瞬だけはにかんで、今度はゆっくりと扉を閉めて家に帰って行った。
ジャケットは蟬ヶ沢が運転していた間に畳んでいた。広げると、一か所だけ皺が深いところがあることに気付いた。袖だ。丁寧に皺を伸ばしてあるが、それでもうっすら見える。
なんとなくジャケットを羽織らずに、畳んで助手席に置いて蟬ヶ沢も帰路に着いた。