001.~
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この小説の夢小説設定簡易的な夢主設定
夢主は
・女子高生(深陽学園の女子生徒)
・デザイナーの卵
・特殊能力の持ち主(MPLS)
・蟬ヶ沢(スクイーズ)とは昔からの知り合い
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蟬ヶ沢は酷く緊張していた。
目の前には愛しい人の肌。触れたいと思っていた肌が目の前にある。
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蝶が大学生になり、見習いとして蟬ヶ沢の事務所に所属することになった。
蝶と出会ってから既に十年以上は越えている。
プロとアマチュアであっても同じデザイナーとして、友人として、または戦友として。
少し前から恋仲として。
蝶が蟬ヶ沢のマンションに泊まるのはさほど珍しいことではない。蝶が高校生の時には何日か泊まったことがある。
初めてこの部屋に通した時を思うと恥ずかしさで今すぐこの場を去りたいくらいだ。
自分が任務の中で記憶喪失に陥った時に、初めて蝶を蟬ヶ沢の自宅に泊めた。正しくは、蝶を泊まらせざるを得ない状況だった。敵の能力で無理矢理記憶喪失になっていたせいもあってか、記憶喪失の時の記憶も残っている。
ここまでの関係の歴史を振り返ているのは、自分への情報整理に過ぎない。
今望んでいることが、恋仲なら許容されるかどうか必死に考えているのだ。
もう少し肌に触れたい。
合成人間としての処置の副作用なのか、性的な欲求は中身ごと退化してしまって、申し訳ないくらい湧かない。
ただ、触りたい。
手ぐらいなら任務の時でも、普段の付き合いでも、何度も触れている。それ以上はない。
一度だけ蝶から口を重ねられたことがあったが、あれは付き合うよりも前の出来事で、蝶から告白後の出来事だ。
自分からはあまり手を出さないようにはしているつもりだ。仮にも人の子を預かっているのだ。保護者として節度を持たなくてはならない。
それに、蝶が嫌がることはしたくないのだ。
もしかしたら、望みすぎて嫌がられるのが怖いのかもしれない。
寝所に一緒に寝ていて襲われることなんてないと信じているように、蝶は身を蟬ヶ沢に預けている。
横たわって流れた髪の毛から首筋が見える。
呼吸する度に僅かに体が揺れて、首を覆っていた髪の毛が落ちていく。全て落ちきってくれるかと思いきや、髪の毛は全て落ちきらず、首を隠し続ける。
内心落胆した。どうせなら落ちきってしまえばいいのにと。
手を首筋から下へ。心臓のあたり、寝巻きのボタンにまで届くと、蝶が蟬ヶ沢の手を掴んだ。心なしかきつめにつかまれているきがする。
「どうしたの」
強張った顔で蟬ヶ沢に問う。どうしたと問われても、この触れている手をどう説明しても意味はひとつにしか思われない。
「だめ?」
甘えた声音で尋ねるが、蝶は困惑して視線を落としてしまった。
文字通り肌を合わせたいだけと言って、信じてもらえるだろうか。行き着くまでの過程と一つとしてあるのなら、同じようなものかもしれない。
「怖いならもう止めるわ。ごめんなさい」
「そうじゃなくって」
らしくなくたどたどしく言う。
「怖いって訳じゃない」
「嫌?」
「それも違う。むしろ嬉しいかって聞かれると、それも少し違う」
指から心拍数が上がっているのが分かる。
「いきなりだったから、心の準備をさせて欲しくて」
怖がれた訳ではないようなので安心する。
「安心して、と言えるか分からないけど、触るだけよ。……それとも」
意地悪な心が思わず漏れた。
「する?」
拳銃の弾丸すら視認出来る眼を持っているはずなのに、豪速球で投げなつけられた枕には反応できず、顔面で受け止めた。
****
部屋は灯りを付けておらず、光源はカーテンでうっすらと透けて見える月明かりだけ。
何も身に付けていない状態が落ち着かないのか、布団で身を隠している。
気心が知れた中でも堂々と正面からは恥ずかしかったのだろう。後ろを向いていた。
蟬ヶ沢は酷く緊張していた。
目の前には愛しい人の肌。触れたいと思っていた肌が目の前にある。
正直この背中には蟬ヶ沢以外の人間が見ても対して性的な魅力は感じられないだろう。
蝶のだと分かるだけで胸が高鳴る。
手を伸ばし、触れる直前
「本当にこれだけだよね」
念を押して聞いてきた。
「そうよ」
つっ、と指先で背中をなぞる。
触れた瞬間びくりと震えたが、あとは大人しく触られている。後ろで何をされているのか気になるのか首が僅かに回るが、見るまでには至っていない。
遠慮なく背中から触れ、ウエスト、肋骨、手を前に回し胸へ。背中にはぴったりと密着する。
肩も、胸も、背も、遮るものがない。
触れる面積が増える度に喜びが込み上げる。そこにいる実感が見ている時とは違う実感がある。腕や胸に呼吸している動きが伝わる。
張り付いた皮膚の一体感がくすぐったい。
蝶が肩を揺らしてくすくすと声を押さえながら笑う。
身を少し離し、うなじに噛みつく。
噛みついたうなじから、背中にうっすら見える傷の跡を見つけては唇でなぞっていく。
ほとんどは綺麗に治っているが、強化された目では見えてしまう。ぱっと見では解らないかもしれないが、目を凝らすと裂傷や火傷の痕が見えるのだ。
守ると決めたくせにこの様だ。任務に連れていく度に傷は増える。これからも蝶には傷を負わせていくのだろう。
「ねえ、そろそろ、そっちを向いてもいい?」
蟬ヶ沢は答えずに振り向かせるが、蝶を見る直前に顎をぐいと持ち上げられ、枕の上に置かれた時計を見せられた。
正面も見たかったが、見る前に抱きつかれ、拝むことが出来なかった。
蟬ヶ沢はため息をつく。
(惜しいことをしたわね)
性的な興奮はなくても興味はある。
見れなかった悔しさで、少しだけきつめに抱き締めて意地悪をする。
「苦しい」
案の定、不満そうな声で抗議してきた。
「じゃあ、見せてよ」
「文字通り舐め回すほど見たでしょ」
「それはそれ、これはこれ」
「前はまだいや」
蝶はぴったりと顔をつける。
「傷……増えた?」
「そんなに危ないことはしていないわ」
嘘は言ってない。
蟬ヶ沢ースクイーズの任務は、任務の通達、対象の処理が殆どで、戦闘することがあまりない。あくまでも蝶が知る限りでは。
スクイーズのみでも任務はそれだけに留まらない。処理の任務でも相手と直接戦うこともある。
昔は特に傷を負いやすかった。再生能力が常人より優れていても深手を追えば痕が残る。
「今は仕事の話は止めましょう。時間が勿体ないわ」
「どうせ明日は休みだよ」
「もう片方はお休みだろうがお構い無しでしょ」
蟬ヶ沢の端末がチカチカと音を鳴らした。
「ほらあ」
蟬ヶ沢があまりにも情けなく言ったからか、蝶は背中をぽんぽんと叩いて慰めてきた。
****
二人が任務を終えた頃には夜明けが近い時刻になっていた。
駐車場に停めた車に乗り込み、一休みする。
「もう寝ようって気がしないわね」
蟬ヶ沢は帰りに買ってきたカフェオレを蝶に渡す。
蝶は礼を言って受け取り、冷えた手をカフェオレの缶で温め始めた。
「今寝たらきっと起きるのはお昼だね」
「貴女は少し寝なさいよ。疲れが取れないでしょ」
「若いから平気」
「そう言った時に次の任務が来るのよ」
タイミングよく通知してきた端末をぶらぶらと揺らして見せる。システムはこちらを監視しているのではいかと思ってしまうくらい、いいところで邪魔をしてくる。
「じゃあ、この後セミさんの家で寝てもいい?」
「……………」
蟬ヶ沢が無言で頷くと、蝶はにやりと手で電話をする仕草をしてきた。
「何かしたら、レインさんに言いつけるからね」
蟬ヶ沢は人を狼みたいに言っちゃって失礼ねと言いながら、携帯端末を眺める。
「次、休みが合いそうなのは一ヶ月後……。泊まりは当分出来ないわね」
「毎日泊まっていたら、それじゃあ同棲しているようなものじゃん」
「どうせなら一緒に暮らす?」
「嫌」
事実上の申し込みにも関わらず即決で断られて、蟬ヶ沢は二分ほど思考が働かなかった。やっと自分が言った事と、その返答の意味が飲み込めたが
「…………なんでよ」
としか言えなかった。
「今くらいがいい」
これまた蝶はすぐに答えた。
「これ以上望んだらバチが当たりそうじゃない」
「ジンクスなんて私は信じないわ」
ジンクスと言った後にぶるっと身を震わせた。誰かを思い出し掛けた。
「ジンクスは守りたいものだけ守ればいいよ」
****
蟬ヶ沢の家に着くと、蝶は蟬ヶ沢を引っ張りながら家に入った。
これから眠るとは思えないほどのはしゃぎぶりに、苦笑いしてしまった。
「慌てなくてもベッドは逃げないわよ」
勢い良くベッドに飛び込み、ぎしりと音を立ててる。
「ねえ、セミさん」
ん、と布団をかけようとしていた蟬ヶ沢は止まる。
蝶ははにかんで
「ドリームミー、スイート。なんてね」
と、囁いた。
「……………」
しばらくして寝息が聞こえると、蟬ヶ沢は大きくため息をついて、蝶を抱き締めた。
「ああもう、夢の中まで独り占めしてしまいたいわ」