001.~
Please tell me your name
この小説の夢小説設定簡易的な夢主設定
夢主は
・女子高生(深陽学園の女子生徒)
・デザイナーの卵
・特殊能力の持ち主(MPLS)
・蟬ヶ沢(スクイーズ)とは昔からの知り合い
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ここ最近会えていない。蝶のスケジュールが合わない訳では無いが、彼女に手伝いを頼む余裕がないのだ。彼女に仕事の手伝いを頼むときは基本的には蟬ヶ沢からのみなのだ。他の者と組ませても問題はないが、仮にも蝶がこの事務所に来ているのは監視の為なのだ。監視の為に来てもらっているというのも奇妙なことだが、そこをきにする者はいない。
蝶の家の近くに車を停める。蝶の部屋にはやや明るさを落した明かりがついている。彼女が寝る時は電気を全て消すらしいので、もしかしたら起きている可能性がある。
いきなり電話を掛けては驚かせるだろうと、短めに通信を入れる。
起きれいればいいなと淡い期待を抱いて、端末の画面を見つめる。
時刻は深夜11時。蝶はラジオを聞きながら勉強を終えたので眠りに着こうとしていた。勉強と言っても学校で要求された課題ではない。個人的に必要な知識の為に薬学を学んでいるのだ。
長時間座りっぱなしで筋肉をほぐすために背を伸ばしていると、携帯端末に通知音が鳴る。来たことに驚きはしない。こんな時間に連絡を入れる相手は一人くらいしかいないのだ。画面を見て相手を確認すると、予想通り蟬ヶ沢だった。
「…………」
内容は敢えて確認しない。部屋の電源を完全に消して、電話を掛ける。通話のボタンを押して一秒かかったか分からないくらい素早く出たので、思わず失笑してしまった。
携帯電話を肩で押さえながら耳に当てる。カーテンを頭一つ分開けて外の様子を見る。
外にはよく知っている車が停車されていた。運転席には蟬ヶ沢が乗っている。
「お疲れ様。仕事をさぼってきたの?」
「さぼってないわよ。今日の分が終ったらその帰り…………と、定期の監視よ」
「定期の監視……ねぇ」
後者の発言が明らか取ってつけたような嘘だったので、からかってやろうと思ったが、より面白いことを思い付いたので止めた。
「セミさん、ちょっと待ってよ」
携帯端末から「な、なに。ちょっと!蝶?!」と音量を小さく配慮しながらも荒げる声がが聞こえるが、蝶は完全に聞き流して普段着に着替える。携帯端末を再度耳に当てつつ、窓から屋根へ降りる。から、と瓦の破片が落ちる音がしたが、親の近所の住人が気付くことはなかった。しかし、蝶の部屋を見ていた蟬ヶ沢はぎょっとなり、慌てて車から出て蝶の家に駆けこむ。
蝶は屋根を歩き、一番低い場所まで移動すると、
「よっと」
降りたが、着地する前にすかさず蟬ヶ沢が受け止める。頭一つ半以上は大きい蟬ヶ沢に抱きしめられている為に、足がぶらりと浮いた。
「危ないじゃない。降りるなら降りるって言ってよ」
「サプライズもいいでしょ」
「危険なサプライズは反対よ」
蟬ヶ沢はゆっくりと蝶を下ろすと、手を引いて車に乗せた。
助手席に乗った蝶は蟬ヶ沢に訊ねる。そもそもここに来た理由をまだ聞いていないのだ。
「で、セミさんどうしたの?」
蟬ヶ沢は唇を少し噛んで、何か耐えているような、恥ずかしがっているような、なんとも困った顔をしている。
「撫でて欲しい……のよ……」
思わず引きぎみになる。
「…………どこを」
「頭……」
蟬ヶ沢が頭を抱えて俯く。
「やっぱり今の忘れて頂戴」
「いや、無理だって。忘れさせるならEの人を呼んでよ」
「冗談でも呼ばないで!!!」
「そ、そう……」
蟬ヶ沢はああもうと呻きながら、どんどん頭を落とす。表情こそ見えないが、頭を隠しても首から見える素肌から真っ赤になっているのか解る。
だだをこねる子供みたいだなと思いながら蟬ヶ沢をなだめる。
「…………副業の方、そんなに嫌だったの?」
「それは嫌でも好きでもやらなきゃいけないなら、いや、そうじゃなくってね…………」
そろりと手を伸ばし、小動物を撫でるくらいの力加減で撫でる。大の大人が少年に見えるくらい丸まってなんだか小さく見えるのだ。
「頭を撫でるくらいならいくらでもするって。安心してよ。今の状況は見られてない」
「……う、うう……」
「あ、親が出てきた」
「嘘!?」
綺麗に声を裏返させて、飛び起きる。あまりの勢いに蝶は手を離してしまう。
「うそ」
飄々と言う蝶に大袈裟に深呼吸をする。
「驚かせないでよ……」
「セミさんが気にしすぎなのよ。見えないって言ってんのに」
「見られたらマズイって思っちゃうと……怖いのよ」
「怖い……ねえ」
「私は……まだ……」
座席から身を乗り出し運転席にいる蟬ヶ沢に抱きつき、べしべしと乱暴に頭と背を叩く。
「はいはい、大丈夫。セミさんのことは守ってあげるから安心してよ」
「信憑性ないわねぇ」
「心配なら撫でててあげるよ。撫でられると不安がなくなるらしい。で、どうなの?」
「…………熱いし、痛いんだけど」
「ご希望の行動をしている……ず……のに…なあ…」
「蝶がしているのは叩くでしょ。撫でるのはこうよ」
と、蟬ヶ沢は蝶の頭を撫でてて実演する。しばらく撫でてから気付く。蝶が叩かなくなり、両手ともぶらりと下げているのだ。
「…………蝶?」
時計を見て思い出す。今は深夜一時を越えようとしていた。
「…………」
ちらっと寝顔を見てからそっと寝室に寝かせて帰った。