ゲルリッヒ砲の一撃
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夢主は
・女子高生(深陽学園の女子生徒)
・デザイナーの卵
・特殊能力の持ち主(MPLS)
・蟬ヶ沢(スクイーズ)とは昔からの知り合い
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3.創作
スクイーズはあれから合成人間として施設と呼ばれる場所でひたすら自分の放つ攻撃を練習させられていた。
あるとき、スーツを着こんだ男たちに引き連れられ、見知らぬ男女に会わせられた。
今日から君は彼らと過ごすと言われ、顔を向ける。
彼らはまるで久しぶりに親しい者と再会したようなとても嬉しそうな顔で出迎えた。あまりにも嬉しそうなので、自分もそうすべきだろうかと思い同じようにしてみようとはするが、愛想笑いは出来ても彼らのようには笑えなかった。
合成人間としての任務と訓練もこなしつつ日常の生活はこの"両親"の下で過ごせと言われた。
彼等との生活は順調そのものだった。本当の親の様に親しみと愛情を込めて接しているのが、スクイーズにも分かる。スクイーズも不器用ながらも彼らの為になることは積極的に行った。
学校に通う中でスクイーズはクラスメイトとの諍い等も起きず、成績も悪くない。傍から見ればただの子供に見えるに違いない。暮らし始めてしばらくすると、学校は長期休みに入った。普段の生活で学校の生活に従事する時間以外は合成人間としての訓練と任務をこなしていたので、休みに入るとスクイーズは学校の課題をさっさっと終わらせると自身の能力の練習に集中していた。
学業でも、任務でもそつなくこなす彼は少し困ることが起きた。長期休みに入った課題として、美術作品もしくは個人研究の提出が課せられていたのだ。作りたいものも、研究したいものも無かったのだ。
初めて"両親"に相談した。彼女らはまた会った時のように酷く喜んだ。スクイーズには何が嬉しいのか分からないが、まともに頼ったのはこれが初めてなので、子供らしいところが見れたのでそれで喜んだのだろうと思うことにした。
"両親"はそこで彼の創作意欲のきっかけのひとつとしてある創作のイベントに連れ出した。
イベント会場に来るまでの人々は凄まじい密度で、会場内に入ると一層その密度は増した。
そこにあった作品はどこれも魅力的で、好奇心が尽きることが無い。きっと一日いても時間は足りず、飽きることは無いだろう。
アクセサリー、フィギュア、ぬいぐるみ、グッズ、別の場所では本までも売られていた。
ひとつ、彼は“それ”に吸い込まれるように見入ってしまった。たぶん、なにかのヒーローものなのだろう。彼はあまりテレビを見ないのだ。
ヒーローもののフィギュアの他に展示されているものだと戦車や大砲の模型がある。
展示しているものを管理している。
男は壮年で、スクイーズと同じか同じくらいの男の子も男と同じ席にいた。
男は一つ一つ丁寧に説明される。その中にゲルリッヒ砲があり、彼はあ、と声を出してしまった。
男はこれが気になるのかと、スクイーズの側にゲルリッヒ砲を寄せた。
知っている奴に散々聞かされていたからどんなものかは知っていたが、見目は知らなかったのだ。
通常の大砲と異なり先端は細い。同じ合成人間の一人はこれをスクイーズのようだと言われたが、その見た目を知っても何が一緒なのか理解出来なかった。
大砲の造詣は素晴らしかった。土台がまずリアルな地面で、草木は土埃で汚れ、地面もどころどころ着弾痕で穴があけられている。その地面から戦争の真っただ中だと分かる。何発も撃たれたであろう大砲は汚れ、その側には最大発射数を超えたであろう先端が使い物にならなくなったゲルリッヒ砲も置かれている。
スクイーズは食いいるように見つめてしまった。この大砲は確かに戦として活躍すべく作られたのであろうが、その活躍がほとんどなく戦争を迎えてしまったと聞く。
少しだけ"彼等"が羨ましいと思ってしまった。戦争がなくなくなっても、その存在意義を失っても人を魅了している。
世界は少なくとも前よりは戦争は少なくなった。でもまだどこかで戦争は起きる。この国は起きないとは思われているが、合成人間が暗躍するほどの不穏さはある。戦争の場合は国同士、組織同士の対立だが、合成人間が対立しているのは特殊能力を持つMPLSと呼ばれる人間だ。彼等からこの世界が支配されないようにする為にもMPLSの捜索は行われている。MPLSに遭遇するのは滅多に起きないしい。スクイーズも遭遇したことがない。
いるのかもわからない者を追いかける戦争なんて終わるのだろうか。終われば自分も別のところで誰かを魅了することが出来るだろうか。
後ろからスクイーズの名前を呼ぶ声が聞こえた。振り向くと"両親"が息を切らして向かってきた。
親に引っ張られながら、男に名前はなんなのかと聞いた。あれだけ話していたのにも関わらず、お互い自己紹介を忘れていたのだ。
二人して笑いながら改めて自己紹介をし、男は日和と名乗った。
*****
それからは何か出展があるとよく出かけるようになった。世間も長期休みに入った所もあり、出展は様々な場所で開催されていた。小さい規模でもその創作に対する熱意は変化しない。
色んな街を歩いていくうちに雑貨、洋服店も見てきた。特に、ロリータを扱う店は見ごたえがあった。世界観を強く意識し、洗練されたコーディネートは男性であるスクイーズから見ても素敵だと思った。ただ、直接入るには躊躇したのでほぼ外から眺めるだけであったが、それだけでも素敵だと分かった。
気がつけば、課題である美術作品の課題、個人研究の提出は前者に決まっていた。
美術作品の課題は手製のデザインブックにし、美術作品としてと個人研究も兼ねた。長期休み後は彼の作品は特殊なものとして教員たち含め"両親"には好評だったか、クラスメイトには興味がほとんどもたれることがなかった。