ゲルリッヒ砲の一撃
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夢主は
・女子高生(深陽学園の女子生徒)
・デザイナーの卵
・特殊能力の持ち主(MPLS)
・蟬ヶ沢(スクイーズ)とは昔からの知り合い
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2.Sqeeze
カチューシャの鑑定後、スクイーズは研究室に連れてこられた。対峙させらえたのは十代と思しき少女だった。軍服を身に着けているが、コスプレじみているが似合っていた。
じろじろと見てしまっていたからか、少女が襟をくいっとひっぱり服を見せる。
「ああこの恰好か。かっこいいだろう。ドイツの軍服はかっこよくてね。好きで着ているんだ。さて、早速だがシャワーを浴びてきてくれ。刺さった破片も取り除いてもらっていいが、手当はこちらでさせてもらうよ。ていうか、カチューシャも先にそうさせるようにしてよ。折角の美少女が台無しだわ」
「うっさいわね。ほら、行くわよ」
と会ってすぐに挨拶することなくシャワー室に連れてこられた。
改めて軍服の少女と対峙する。彼女は三岐華中と名乗った。
「呼吸はどう?出来てる?」
「ま、まあ、はい」
「最初は驚いたよねえ。水槽の中にいるのに呼吸が出来るなんてさ。いやだって、他の連中が動かせ―動かせ―ってうるせーのなんの。折角手術に成功して時間も経ってないのに、」
「その、どんな手術をしたんですか?それってさっき私やそこの…」
カチューシャはスクイーズの視線を感じ、そっけなく言う。
「カチューシャ」
「ああ、ありがとう。カチューシャさんみたいにこう必殺技みたいのが出るのはなんですか」
「必殺技って……」
「必殺技みたいなものじゃないんですか。ヒーローにもありますよ。腕を組んで光線だしたり、武器からビームを出したり。俺の必殺技パートワン!って感じに」
「じゃあ、その必殺技の攻略するから、ちょっと触るよ」
と三岐はスクイーズの服をめくり、聴診器を当てて聞く。呼吸も心臓も正常に動いている。
「うん?」
三岐は首を傾げる。聴診器を当てたままスクイーズに言う。
「ちょっと、君がカチューシャに攻撃したやつ、私にも撃ってくれない?」
「え……」
「大丈夫、腕だけでいいから。そうだなあ。うん、こっちの壁に腕を出すから、壁を破壊しない程度に、壊してもそんな困らないけど、小言を言われるくらいだし、うん」
「ええ……」
スクイーズは困ってカチューシャを見るが、彼女はさっさとやれと言わんばかりに顎で三岐に振る。
スクイーズは水槽に入っていた時のこと、カチューシャに放つ前に隠れていた時のことを思いだす。肺に空気を入れて、入れて、詰め込んでいく。中の肺がエネルギーを溜めているのが分かる。エネルギーを溜めながら、的である三岐の腕を見て、彼女本体を見る。攻撃してもいいよと言われたものの、これを放ったら腕はひとたまりもないのではないだろうか。
口から衝撃波を飛ばす瞬間目を瞑ってしまった。ぐしゃりと腕が木端微塵になる音が聞こえた。恐る恐る目を開けると、腕は無事だった。しかし、肩から下の袖は引きちぎられていたことがこの腕は確かに吹き飛ばされたことを証明していた。
当の腕をふっ飛ばされた本人は楽しそうに聴診器の音を聞いていた。痛くないのだろうか。
スクイーズの視線に気づいた三岐は照れくさそうに笑って聴診器を離した。
「失礼。腕や足の二本や三本はよく他の合成人間に渡しているから慣れてんのよ。で、君の能力についてだけど、移植されたのは確かに私の肺なんだけど、それが完全に別ものとして変わっている。変異しているといってもいいくらいね」
うんうんと一人合点している。
「君のコードネームはそうだね。空気を圧縮するってことで"スクイーズ"にしよう。カチューシャ、ネーミングはしてもいいんだっけ?」
「名付けてから聞かないでよ……。まあ、いいんじゃない。ゲルリッヒ砲よりはましだわ」
「カチューシャも名付け親になろうとしていたの。譲ろうか?」
「いらない!」
カチューシャはどすとすと音を立てながら早歩きでスクイーズを連れて三岐の元を去った。
******
カチューシャとスクイーズが去った後、一人研究室に残された三岐は壁面に飛び散った自分の血液を見ながら呟く。
「ゲルリッヒ砲……ね。確かに、あの肺ならそう名付けた方がいいくらいね」
肺に圧縮された空気を放つ。発射の瞬間ですら普通の呼吸と変わらなかった。
彼は直視しようとしなかったが、吹き飛ばされた腕は圧縮された空気と、空気の振動により細胞どころか分子までも揺さぶられていたのだろう、この腕の治りが通常の治りよりも少しばかり遅かった。
「あまり多くは撃てないでしょうね……。肺もだけど、体に負荷がかかっている」